穂乃果ちゃん、誕生日おめでとう。
ネオネクタールのクランタイプが『フォース』という事が意外でした。
イメージ的には『アクセル』のイメージがあったので……(苦笑)
短いかもしれませんが楽しんでもらえると嬉しいです。
それではどうぞ。
降水確率が低いから雨なんて降らないよ。そう思った事はないだろうか?
それが"稀"なのか"よく"なのかは人それぞれだと思うが。
雨雲に覆われた空を見上げながら、その"稀"に見舞われた1人の少女がむぅ、と頬を膨らませてた。
傍から見たら、不貞腐れてるようにも見えるが。
「むぅー」
地面を打つ雨音に対して憂鬱そうに目を向けながら、高坂穂乃果は不満げに声を上げた。
下校の際、雲の流れが嫌な感じにはなっていた。
更に言うなら、移動中に雨粒がパラつき始めた時点でも嫌な予感はしていた。
────先程も説明したが、こういった事は稀にある事だ。だがしかし。
「もー! いつになったら止むのー!?」
延々と降り続く雨に、雨宿りができそうな屋根の下で、両手を上げ頬を膨らませながら、ついに怒鳴ってしまった。
そう、本日の高坂穂乃果。傘を持ってないのである。
彼女は普段、降水確率が1桁で傘を持って歩く事はない。
折り畳み傘なら話は別かもしれないが、悲しい事にそれは持ってない。
スマホを取り出し、時間を確認してみると、雨で足留めを喰らってから、既に1時間近くは経過していた……
「アーシャ、どうしよっかー……」
『いや、こればっかりは私に言われても……』
自らの分身ユニット、アーシャへ声を掛ける。
音ノ木坂学院特注のデッキケースから、連動している穂乃果のスマホの画面に、ネオネクタールの姫君が現れる。
長年の付き合いだから穂乃果の言いたい事が分かるのか、苦笑い気味に答えた。
『お母さんには連絡入れたんでしょ?』
「ちょっと前に入れたよー? そしたら……」
『そしたら?』
「傘を差して帰って来なさいって……。その間に店番はやっておくからって……」
『あれ? 話の論点がズレてる気が……』
穂乃果の家は和菓子屋なので、よく店の手伝いをする事もある。
人手が足りない時は、高坂家に居候しているネオネクタールのユニット……主にアーシャの友達に手伝ってもらっている。
「あ~あ。花怜ちゃん達、来ないかなぁ?」
ここで花怜達が来てくれれば、グッドタイミングなのだが、生憎と上手くいかないのが現実というものだ。
花怜は日直の仕事、海未は弓道部、ことりは母である理事長のお手伝い。
なので、今日は穂乃果1人で帰る事になったのだ。
周りを見れば、意外にも自分と同じ、傘を持っていなくて、足留めを喰らった人達の姿がチラホラと見受けられる。
小さい溜息を吐く。さっきから、これの繰り返しである。
隣でポンと傘を開く音が聞こえ、穂乃果は隣に視線を向けて見る……。
用意のいい大学生だろうか。1人の女性が持っていた折り畳み傘を広げて、穂乃果の前を通り過ぎ、雨の中を悠々と歩いて行った……。
「いいなぁ……」
『いっそ家まで走ったら?』
「それはちょっと……」
アーシャが穂乃果に提案する。
一瞬、それでもいいかなと思ったが、なんとなくダメな気がして却下した。
体操着なら兎も角、今は制服だ。鞄の中の教科書等を濡らしてしまったら、穂乃果的にはたまったもんじゃない。
それに家族にも心配させる訳にはいかない……。そう考えてた時、穂乃果の近くでまた傘を開く音が聞こえた。
釣られて顔を向けてみると、開かれた傘の下に見知った顔が見えた。
「あれ……? ゆうちゃん……?」
「…ん? ほのちゃん?」
そこに立っていたのは、先週、音ノ木坂学院でまさかの再会したばかりの幼馴染み。
「…何してるの、こんなところで?」
「それは穂乃果の台詞だよ。ゆうちゃんこそ何してるの?」
一旦開いた傘を閉じ、悠里が穂乃果の傍に寄って来る。
「…ああ、さっき友達を家まで送って、そのまま家に帰ろうかなと思った矢先に急激に甘い物……正確には和菓子系が食べたくなっちゃって。ほのちゃんの家で"穂むら饅頭"買おうかなと思って今に至るという訳です。はい」
ちなみに悠里が何故ここにいるのか説明すると、千聖と花音を家まで送ってあげていたのだ。
そして自宅に帰ろうとした時に、甘い物が食べたくなり、穂乃果の家の和菓子屋に行く事になったのである。
「ほのちゃん、傘は?」
「…持ってない。普通、確率が1桁の時点で持たないよー」
「天気なんて急に変わる事もあるからね。僕は今朝の予報を見た時に、雨マークが出てたから持って来たんだけど」
「いいなー……」
羨ましそうに穂乃果が呟く。それを見た悠里は……
「…僕の傘に入る?」
「えっ! いいの!?」
「良いも何も、ほのちゃん帰れないでしょ?」
「うん! ゆうちゃんありがとー」
と、提案してきた。
これを聞いた穂乃果は大喜び。思わず悠里に抱きつく。
「えへへ~♪」
「…なんかやけに嬉しそうだけど、どうしたの?」
「ゆうちゃんとこうやって一緒に帰れるのが嬉しくって」
雨の降る道路へと歩き出しながら、嬉しそうな様子の穂乃果に悠里はそれもそうだねと答える。
その後は何の会話もする事もなく、悠里は穂乃果が雨で濡れないように傘を差してあげつつ尚且つ、穂乃果の歩くペースに合わせて一歩一歩雨の中を歩く。
今日は意外と車の通りが少なく、傘に当たった雨の音が響く中……
「……ゆうちゃん♪」
ギュッと悠里の腕にしがみつくと、穂乃果は嬉しそうに悠里に寄りかかる。
「ほのちゃん、どうしたの?」
「えへへ~♪ なんでもな~い。 もうちょっとこのままでもいい?」
「それは別に構わないけど……」
機嫌が良い穂乃果の様子を不思議に思った悠里にそう答えながら、穂乃果は今日だけは傘を忘れて良かったのかも。そう思うのだった。
余談だが。
無事に家に着いたのはいいが、悠里と腕を組みながら帰って来た姿を見た穂乃果の母と妹の雪穂にからかわれ、顔を真っ赤にする穂乃果があったという。
読んでいただきありがとうございます。
間に合って良かったです。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。