紗夜ちゃん、日菜ちゃん、誕生日おめでとう。
前回の予告通り、前回の続き兼纏めになります。
短いかもしれませんが、楽しんでいただけると幸いです。
それではどうぞ。
悠里がタワーの頂上の鉄骨付近に座ってる衝撃映像を見た3人は、現在位置を確認した後、急ぎ足で展望台を出た。
「あの、近いって行っても広すぎぎませんか!?」
「それには同感です。いくらなんでも広すぎです。どのくらいの敷地なんですか!? ここは!」
海未の言葉に紗夜も同じ事を口にする。
夜中だというのに、大声を出してしまうのは余り良くないと自分でも分かっていたのだが、どうしても本音が出てしまうのだ。
それくらい藍音学院の敷地は広いのだ……
「昔、悠里が迷子にならないように気をつけてねって言ってたけど、私でも迷子になりそうだから……慣れないものね」
「…迷子に……」
「なるくらい広いって……」
苦笑い気味に説明する千聖に、紗夜と海未は驚愕する。
「幸い、今のペースで歩くと、10分近くで着きそうね」
「えっ。そんなにかからないんですか?」
「ええ。悠里の"近く"っていう表現はだいたい、歩いて10分か長くても20分くらいのペースなのよ……多分」
「断言は……しないんですね……」
「でもだいたいの確率で合ってるから、大丈夫だと思うわ。きっと」
千聖と海未のやり取りを聞いてる時、紗夜はふと思った。
「(…どうして……悠里さんは、あんなに……)」
悲しそうな表情をしていたのだろうか……と。
映像を見た時にしていたのを紗夜は見逃していなかった。
「さっきの悠里……悲しそうな感じだったわ」
「……はい。まるで……
「どういう事?」
千聖の言葉に海未は話した。
中学一年の時に、一度だけ、さっきの映像と同じ悲しそうな表情をしていた事を。
なんでも弓道部の大会の期間の時に、海未の目の前で先程の表情をしていたと彼女は言う……
そして終いには、弓道部を退部にさせられてしまったと海未は紗夜と千聖に話す。
「それ以来……学校でも悠里君と会える回数が減ったんです。おかしいですよね? 隣のクラスなのに、何ヶ月かに1度会えるか会えないかなんですよ……? ティアに訊いても、悠里君に会ったら伝えとくって……」
「「…………」」
「それが卒業式まで続きました。卒業式の日も悠里君は居なかったんです。数日くらいした後に、私と穂乃果とことりの3人で悠里君の家に行ってみました。けど……悠里君どころか、
ぽつりとぽつりと暗い表情で話す海未の話を聞いた紗夜と千聖は言葉を失う。
それと同時に、紗夜は
「次があったらいい……ってそういう事だったんですね……」
「「えっ……?」」
それは、紗夜が悠里と初めて出会った時の言葉だった。
そして自分も海未と千聖に、初めて悠里と出会った時の事を話す……
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紗夜が中学一年の時だった。
弓道部の大会で自分の番が来るまで時間があったので、自主練習をしようと歩いていた時だった……
「……?(何かしら……? どこからか矢を射る音がするけど……)」
偶然だった。
普通なら、観客の声でかき消されるくらいの小さい音……
気になった紗夜は、僅かに聴こえる音を頼りに音がする方へ歩いて行った。
「(音が近くなってる……こんな場所で誰が……?)」
辿り着いた場所は、会場から少し離れた使われていない古いテニスコート。
見た感じ、誰も来なさそうな場所だ。
しかし、矢を射る音は今も鳴っている。ここで間違いないようだ。
こっそりと近くまで行き陰に隠れ、どんな人なのかと思い覗くと、自分と同い年くらいの少年が制服の上着だけを脱ぎ、ただひたすら的に向かって矢を射って練習していた。
しかも的に当たった矢を回収して、元居た位置で射っては、回収。その繰り返しである。
「あ、あのっ……」
気がつけば紗夜は声をかけていた。
声をかけられた少年は、紗夜の方を振り向き……
「…はい……何か……?」
何食わぬ顔で答えた。
まるで、なんでこんな場所に人が来るんだ?と言わんばかりに首を傾げた。
「…もしかしてここの関係者の人ですか……?」
「違いますけど……その。すみません……貴方が矢を射る音が会場に行く途中で聴こえたので気になって……その……」
「…あそこから? よく聴こえたね……あ。水無月悠里です」
「どうもご丁寧にありがとうございます。氷川紗夜です……」
なんだこの自己紹介は……と紗夜は思ったが、こっちにも非があるので何も言わない。
「あの……悠里さんは、どうしてここで練習を?」
「……んー? まぁ……紗夜ちゃんになら言ってもいっか。顧問ととあるバカが、"お前は落ちこぼれだから出場無しな"って言われて、ここで1人でやってた」
ベンチに座った悠里は持参したスポーツドリンクを飲みながら紗夜の質問に答える。
隣に座って聞いた紗夜は驚きを隠せなかった。
「…なんでって顔するのも分かるけど、僕……部活内では……毎回こんな扱いだからさ……ここに来る時だって、後輩に大会衣装……ユニフォームか、この場合。
紗夜の表情を見た悠里は続けて今の状況を話す。
「……そんな事されて……なんで誰にも相談しないんですか!!」
「したところで、揉み消されるのは目に見えてるからかな。あと強いて言うなら、幼馴染みを危険に晒したくない」
「幼馴染み……?」
「…うん。同じ弓道部に所属してる子なんだけどね。紗夜ちゃんと同じ真面目で優しくて、こんな落ちこぼれな僕にでも声をかけてくれる子。今日、紗夜ちゃんと当たったりするかもね」
2人の試合すら視れないのは残念だけどねーと言う悠里。
「…まぁ僕の場合、普通の人以上に努力しなきゃ無理なんだけどね。だが世間が認めない。それは変えようがない事実……」
「……認めます」
「えっ?」
「私が認めます。私が悠里さんが今日まで努力していた事を認めます! 周りが何て言おうと……」
「…………」
同情ではなく、これは紗夜の本心だった。
その証拠に彼女は悠里の手を優しく取る。彼の手はボロボロで指先からは切り傷が出来ていた…………
自分も人一倍練習していたからこそ解る。
彼は自分より………人より何十倍以上の努力をしてきたから……
「…だから……そんな悲しい顔………しないでください」
初対面の人に向かって自分は何を言ってるんだろうと思うが、紗夜は何故か
「…………ありがと。次があったらいいな………」
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「……これが私が知ってる事です」
海未と千聖に話し終えた紗夜は黙ってしまう。
今になって考えてみれば、あの言葉は自分も含まれていたんじゃないかと思う。
「…ちょっとこの話、悠里を見つけたら、本人に問い詰めるわ。私もいくつか確認したい事もできたから」
そう言うと千聖は携帯を取り出す。
気づけば悠里がいるであろう、タワー前に着いていたようだ。
「…………」
『…はい。もしもし』
「…悠里、今すぐそこから降りてきて。海未ちゃんと紗夜ちゃんが心配してるから」
『ちーちゃん、何を怒ってるの? 口調があからさまに怒ってるよね。僕、何かした? ……いや、何かしたんだから君が怒ってるんだけども』
「いいから降りてきて。真面目な話なんだから」
『…分かったよ』
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「…はぁ」
夜中に携帯から千聖からの着信が鳴り、出ると彼女は怒ってた。
それもかなり。
タワーから真下を見下ろすと、海未と紗夜もいるのが確認できた………
表情が何やら暗い………
「…てことは……それ関連か何か…………か」
そう思った悠里は、よいしょとその場から立ち上がり、首につけてあるチョーカー型のペンダントのボタンを押す。
カチッと鳴ったのを確認した悠里は、肩の力を抜き、タワーの頂上から飛び降りた。
(…なんかこの事も言われそうだけど………まぁ別にいっか)
空中でそんな事を考える。
まぁ最悪、ギアクロニクルの力だという言い訳を使えばいいだろう。
…………上手くいく確率は低そうだが。
そう思いながらも悠里は、3人が待つ地上に舞い降りる。
読んでいただきありがとうございます。
間に合って良かったです……(汗)
た、誕生日回とは……(こ、こんな筈じゃ……)
話を切り替えて。
トライアルデッキが発売するまで、あと7日ですね……(早いわ)
あと1話くらいしたら、ファイト回になります。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。