月の少年の休日日記   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
前回の予告通り、花音ちゃんと燐子ちゃんのファイト回です。
読者の皆様からしたら、今回は『え? どういう事?』とか『りんりんの使用クランがイメージと違う』と思う方がいるかもしれませんが、ご容赦くださいませ。

最近ファイト回を書くのが短く感じる時が偶にあります。
そんなつもりはないんですがね……(なんでだろう?)

尤も読者の皆様に楽しんでいただけると幸いです。

それではどうぞ。


第36話 極光の歌姫と白き竜

友希那と穂乃果のファイトが終わり、誰が小さい悠里を膝に乗っけるかを賭けた盛大なじゃんけんが終了して数分後……

 

『続いてのファイトは、黒色の選手です。選手は位置に移動してください』

 

すると6回戦目の合図が鳴った。

今度は黒色……花音と燐子だった。

 

「…………」

「今回のファイトで自信をつければいいと思えば大丈夫だよ。燐子ちゃんは優しくて、とっても強いんだから」

「がんばれ~♪」

「っ! うん……!」

 

少し不安な表情をしていた燐子だが、理由を察した小さい悠里が笑顔で言った。

瑠菜もサムズアップしてエールを送る。

 

「かのちゃんも頑張れ~」

「ふえっ!? う、うん……!」

 

花音にも応援するのを忘れない小さい悠里。

しかも花音は顔が赤い。昔の渾名で呼ばれるのが未だ慣れていないのだ。

 

デッキをシャッフルし終えた2人がファーストヴァンガードをセットすると、背景が朝焼けの海岸に変化した……

 

「あれ? まだ始まってないのに、背景が変わったけど……」

「稀に起きる現象だよ~。一応、2人が使うクランに反映してるの~」

 

リサの疑問に瑠菜が答える。

それを聞いて、へぇーと答えるリサは同時にある1つの疑問が生まれた。

 

「燐子って……何を使うんだっけ? アタシ知らないんだけど……」

「え? リサちゃん達も知らないの?」

「うん。練習の合間の時もレンタルデッキしか使わないし……友希那の時もそうだったよね?」

「そうね……」

 

そう。燐子のクランだ。

その言葉に千聖が訊ね、リサが理由を話す。

 

「白金さんが使うクラン……個人的なイメージですが、オラクルシンクタンクでしょうか?」

「ぶっぶー! さーちゃん、ハズレー!」

 

紗夜が燐子が使うクランを予想するが、小さい悠里がハズレだと言う。

ちなみに紗夜の膝に座ったまま。先程のじゃんけんで紗夜が勝利したのである……

 

「あ、あの……できればその呼び方は……控えてほしいのですが……」

「え? なんで? さーちゃんはさーちゃんでしょ?」

「…………」

「紗夜。もう諦めましょう。この頃の悠里君は今以上に頑固ですから……」

「そうよ紗夜ちゃん。今のうちに慣れておかないと、元の状態の悠里に戻った時に万が一に言われた時に対応できなくなるわよ?」

 

海未と千聖が紗夜の肩をポンと叩きながら言う。

その重みのある言葉に紗夜はぐうの音もない……

 

『ファイト……スタート!!』

 

「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」

 

そんなこんなで第6回戦目がスタートした。

ちなみに先攻は燐子になった。

 

「『エンジェリックスター コーラル』」

 

花音はバミューダ△。対する燐子は……

 

「『マイクロホール・ドラコキッド』……」

「「「「「っ!?」」」」」

 

リンクジョーカーだった。

小さい悠里、瑠菜、璃夢を除き花音を含めた燐子を知る全員が驚いた。

何せ、自分達が想像していたのとは真逆のクランだったのだから……

 

「これが、わたしの本当のクランの1つ……リンクジョーカー……です」

 

静かな声で燐子は呟き、先攻の為、ドローフェイズに入る。

 

「ライド、『グラヴィティボール・ドラゴン』。マイクロホールのスキルで、1枚ドローしてターンエンドです」

 

「私のターン。スタンドしてるからドローして、『フレッシュスター コーラル』にライド、1枚ドロー。燐子ちゃんのヴァンガードがグレード1以上だから、クイックシールド・チケットを手札に」

 

自分が後攻の為、花音はGゾーンがある領域から、クイックシールドを手札に加える。ファイト開始直前に気づいたのだが、ファーストヴァンガードの効果テキストが変わっていたのだ。

 

「フレッシュスターのスキル。ヴァンガードで登場した時、コーラルを含むソウルがあるなら、1枚引いて、手札から1枚ソウルに送るよ。ファーストヴァンガードがコーラルだから、このスキルは強制で発動するよ」

 

「……効果処理をどうぞ(ファーストヴァンガードで予想してたけど、松原さんのはバミューダ△の中でも随一のパワーを誇る『コーラル』……)」

 

燐子は花音のデッキを分析していた。

『コーラル』は主にソウルチャージがコストで多いカテゴリー。油断してると、パワーラインが7万やら、理論上の8万オーバーも襲ってくるから、怖いんだよねーと悠里がぼやいていたのを思い出した。

 

「バトルフェイズ、フレッシュスターでヴァンガードにアタック」

「ノーガードします」

 

ドライブチェックを花音は行うが、トリガーは無し。

 

1点目『白色矮星のレディバトラー』

 

「ターンエンド」

「わたしのターンです……スタンド&ドロー。『グラヴィティコラプス・ドラゴン』にライドします。メインフェイズ、『ルメートルコード・ドラゴン』を右前列、『スピノーダル・ドラゴン』を右後列にコールします」

 

そして燐子はバトルフェイズを宣言する。

 

「グラヴィティコラプスでヴァンガードにアタックです」

「ノーガード」

 

1『真空に咲く花 コスモリース』引

 

「ドロートリガー。ルメートルコードにパワー+10000、そしてドローします」

 

トリガー効果で、ルメートルコードのパワーは、20000まで上昇する。

 

「ダメージチェック……」

 

1点目『煌きのお姫様 レネ』引

 

「ドロートリガー。私も1枚引いて、ヴァンガードにパワー+10000」

 

ダメージトリガーの効果で、花音はヴァンガードのパワーを18000まで上げ、手札も増やした。

 

「グラヴィティコラプスのアタックがヴァンガードにヒットしたので、スキルを発動させます。わたしの山札を上から5枚見ます……」

 

燐子が軽くデッキを触れると、山札の上から5枚のカードが宙を舞った。

 

「あ。カードが浮いた! なんでなんで!?」

「言い忘れてたけどあれはね~? 藍音学院が独自に開発した、ちょっと変わったGIRS(ギアース)なんだよ~」

「ぎ、ぎあーす……? って……何……?」

 

瑠菜が穂乃果の質問に答える。

ギアースという単語の意味を聞き返す穂乃果。

 

「…正式名称、『Grand Image Reality System』。最先端のホログラム技術によってユニットや惑星クレイの地形を映し出し、よりリアルなファイトを実現するシステム。また、カードも同様に立体映像と化するためドローやトリガーチェックもカードに触れずに行うことができるっていう……まぁ、近未来にありそうなハイスペックシステムよ」

 

「へ、へぇー……そ、そうなんだ……」

 

淡々とした口調で璃夢が全員に説明する。

 

「その中から、グレード3の種族にサイバードラゴンを1枚まで、このユニットのいるサークルにレスト状態でライドするかコールしますが……当然、わたしはスペリオルライドを選択します」

 

グラヴィティコラプスの効果処理で、先程の5枚から、1枚のカードがヴァンガードサークルに置かれる。

 

「『トポロジカル・ドラゴン』にスペリオルライドです!」

「ふえぇ~!? 私まだグレード1なのに~……」

 

花音より先にグレード3にライドさせた燐子。

 

「イマジナリーギフト・フォース(ツー)をルメートルコードがいる右前列にセットします……続けてバトルフェイズ、スピノーダルのブースト、ルメートルコードでヴァンガードにアタックします」

 

ルメートルコードのパワーラインは、先程のトリガー効果も合わせて、ブースト込みで28000、しかもギフト効果でクリティカル2……

 

「(この攻撃は流石に防がなきゃ……) エレナでガード!」

 

SLD 20000、ガード成功

 

「ターン終了です……」

 

ターン終了を宣言する。燐子の一連の流れを見ていた観客席では……

 

「白金さん凄いわね、スキルを駆使して、先にグレード3になるなんて……」

「ええ。花音もダメージトリガーのお陰もあってか、ヒールトリガー1枚で防げたけど……」

 

紗夜と千聖がそれぞれの意見を述べた。

次は花音ターンだが、幸先が怪しくなってきた……

 

「スタンド&ドロー。『シャイニースター コーラル』にライド。登場時、ソウルチャージ1。コーラルを含むヴァンガードがいるなら更に追加でソウルチャージ1するよ」

「合計2枚……ソウルチャージですか」

 

しかもソウルチャージされたカードは、ノーマルユニットだったのが確認できた燐子。

これはつまり、花音のドライブチェックでトリガーを引き当てる確率が上がった事を意味していた……

 

「メインフェイズ、『ミニミニスパークル パルーム』を右後列、『魅了の粧飾 (チャーミング・メイク)ピャオリン』を右前列にコール。ピャオリンのスキル、コーラルを含む私のヴァンガードがいるなら、カウンターブラスト1枚払うことでスキルを獲得」

 

カウンターブラストを1枚支払い、ピャオリンにスキルを与える花音。

 

「バトルフェイズ、シャイニースターでヴァンガードにアタック」

「ノーガードです……」

 

1『恋への憧れ リーナ』☆

 

「効果は全てリアガードに」

「……? ダメージチェックします……(どうしてクリティカルもリアガードに?)」

 

2点目『アクシーノ・ドラゴン』☆

 

「クリティカルトリガーです。ヴァンガードのパワーを10000上昇させます」

 

これで燐子のヴァンガードは、23000となりガードしやすくなったかに思えたが……

 

「パルームのブースト、ピャオリンでヴァンガードにアタック」

「グラヴィティコラプスでガー……えっ!?」

 

このアタックは手札からガードする際、2枚以上でしかコールできませんと表示され、驚く燐子。

 

「ピャオリンのスキルはね? そのターン中、手札からガーディアンサークルにコールする時は、2枚以上でしかコールできないんだよ」

 

「だからさっきヴァンガードにクリティカルではなく、リアガードに乗せたんですね……」

 

まさかのガード制限を喰らい、花音の意図に気付く燐子。

しかも彼女は、ピャオリンのスキルは()()()()()()と言った。つまり、花音のユニット全てがその影響を受けるという事になる……

 

「そのアタックは受けます……ダメージチェック……」

 

3点目『グラヴィティボール・ドラゴン』

4点目『バイノーダル・ドラゴン』

 

「私はこれでターンエンドだよ」

 

想定外のアタックにより、合計4ダメージになってしまった燐子。

 

「わたしのターン。スタンド&ドロー。『シュヴァルツシルト・ドラゴン』にライド。イマジナリーギフト・フォースⅡをヴァンガードサークルにセットします」

 

燐子の背後に赤と黒、そして白が混じりあった巨大な竜が現れた。

 

「メインフェイズ、『アロマトルバー・ドラゴン』を左前列にコールします。アロマトルバーのスキル、登場時、カウンターブラストを1枚支払って、松原さんのリアガードを1枚……裏向きでバインドします。対象はピャオリンです」

 

アロマトルバーの持つ杖の先端から、赤黒い(リング)がピャオリンに当たった途端、ドロップゾーンとは別のバインドゾーンに裏向きで送られてしまう……

 

「シュヴァルツシルトのスキル、1ターンに1度、カウンターブラストを1枚払うことで、相手のリアガードを1枚、裏向きでバインドします。パルームをバインドです」

 

シュヴァルツシルトの口から先程と同じ赤黒い(リング)が放たれ、パルームもバインドゾーンに送られてしまった。

 

V『シュヴァルツシルト・ドラゴン』ギフト効果で元々のクリティカルが2

左前列『アロマトルバー・ドラゴン』

右前列『ルメートルコード・ドラゴン』ギフト効果で元々のクリティカルが2

右後列『スピノーダル・ドラゴン』

 

「バトルフェイズです……先ずはアロマトルバーでヴァンガードにアタックです」

「クイックシールドを使って、私のヴァンガードのパワーを5000上げて、ガードするよ!」

 

クイックシールドの効果でガード成功

 

「それなら……シュヴァルツシルトでヴァンガードにアタックします」

「ダブルクリティカルの可能性もあるけど……ノーガードだよ」

 

1『白色矮星のレディバトラー』

2『アステロイド・ウルフ』☆

 

「クリティカルトリガーです。クリティカルはヴァンガード、パワーはルメートルコードに回します」

 

クリティカルトリガーが出た事により、花音は3回ダメージチェックを行わなければならない……

 

2点目『憧憬の紡ぎ手 リリカ』

3点目『桃色の朝星 ララナ』

4点目『水色のトキメキ ミルトア』

 

「スピノーダルのブースト、ルメートルコードでヴァンガードにアタックします」

 

先程と同じ、ルメートルコードのパワーはブースト込みで、28000……この攻撃が通ってしまったら、花音の敗北が決定してしまうかに思えたが……

 

「レネで完全ガード。フレッシュスターをコストにするよ」

 

完全ガードの為、ガード成功

 

「ターン終了です……」

 

なんとかダメージ4で抑えた花音。

しかし盤面はヴァンガードのみ。ここからが正念場だった。

 

「私のターン、スタンド&ドロー(多分……このターンで決めないと負けちゃうな。燐子ちゃん凄く強いし……)、『オーロラスター コーラル』にライド。イマジナリーギフト・フォース(ワン)。ヴァンガードにセット」

 

これで花音のターン中、オーロラスターは23000となる。

 

「メインフェイズ、オーロラスターのスキル。カウンターブラスト1枚とソウルブラスト2枚払うことで、リアガードサークルとドロップゾーンからノーマルユニットを1枚ずつ手札に戻す。リアガードサークルに私のユニットはいないから、ドロップゾーンから、フレッシュスターを手札に!」

 

「(あれは……さっきの……完全ガードのコストで使ったフレッシュスターを手札に戻した……)」

 

「この時、戻したカードがコーラルなら、そのターン中、オーロラスターにパワー+15000」

 

「……っ!(ギフト効果も合わせてヴァンガードは38000。もしかして松原さん、このスキルを使う為にわざと……)」

 

先程のガードステップの時に、花音がわざとフレッシュスターをコストで使った事に気づく燐子。

 

「『フレッシュスター コーラル』を左前列にコール。スキル発動、ソウルチャージ1。ヴァンガードがコーラルなら、さらにソウルチャージ1。そして、そのターン中、このユニットのパワー+5000」

 

これにより、フレッシュスターは、パワー13000まで上昇する。

 

「『シャイニースター コーラル』を右前列にコール。スキル発動、グレード1のコーラルと同じで、合計2枚をソウルチャージ!」

 

「(合計で4枚……さっきもそうだけど……トリガーユニットがソウルに入ってない)」

 

燐子は花音の手札を見る。

そんなに多くはないが、恐らくドライブチェックでダブルクリティカルする可能性があるのだ……

何故ならオーロラスターのソウルにはノーマルユニットしかソウルインされていないのが証拠だった。

 

「シャイニースターのスキル、1ターンに1度、ソウルブラスト2枚払うことで、そのターン中、自身にパワー+10000。コーラルがヴァンガードなら、さらにパワー+5000!」

 

今度は、シャイニースターが一気に25000までパワーアップした。

しかし花音の進撃はまだ止まらない……

 

「オーロラスターのスキル、このターン、私は合計で4枚以上ソウルブラストした事で、コーラルを含む私のユニット全ての()()()()()()()()()()2()になるよ」

 

「という事は……松原さんの前列のユニット全てがフォースⅡを受けてる状態……」

 

花音が行った事……それはヴァンガードサークルを含めた前列のサークル全てに疑似的なイマジナリーギフト・フォースⅡを付与させたのだ。

 

「え? 待って……じゃあ燐子は、もうノーガードって言えないの?」

「うーん……言えなくはないけど、燐子ちゃんは今ダメージ4の状態だから……難しいかもね。ね? ちーちゃん」

「そうね。燐子ちゃんは気づいてるかもしれないけど、花音のデッキがトリガーでかなり圧縮されてるから、厳しいのは事実ね……」

 

リサの疑問に小さい悠里と千聖が答える。

 

「バトルフェイズ、オーロラスターでヴァンガードにアタック」

「手札を1枚捨てて、『真空に咲く花 コスモリース』で完全ガードです!」

 

完全ガードの為、ガード成功

 

「ツインドライブチェック」

 

1『あなたに届け パーシュ』☆

2『恋への憧れ リーナ』☆

 

「っ!? ダブルクリティカル……」

 

燐子の予想通り、花音はクリティカルトリガーを2枚引いてきた。

 

「パーシュのトリガー効果をフレッシュスターに、リーナのトリガー効果をシャイニースターに!」

 

これにより、フレッシュスターは13000から23000、シャイニースターは25000から35000にそれぞれ上昇し、加えて、2体共、クリティカルが3に上がった。

 

「フレッシュスターでヴァンガードにアタック」

「アステロイド・ウルフでガードです!」

 

SLD 15000、ガード成功

 

「シャイニースターでヴァンガードにアタック」

「(パワー35000……クリティカル3)……ノーガードを選択します」

 

ノーガードを選択した燐子。

自分のダメージは4。彼女はダメージチェックは3回行わなければならない。

 

5点目『シュヴァルツシルト・ドラゴン』

 

「1枚目はノートリガーです。セカンドダメージチェック……」

 

ここからは自分との勝負だ。

そう思いながら燐子は次のダメージチェックを行う。

 

6点目『綻びた世界のレディヒーラー』治

 

「ヒールトリガー……ゲットです。1枚回復して、ヴァンガードにパワー+10000。サードダメージチェック……」

 

深呼吸をする。

大丈夫。ここでもう1度、ヒールトリガーが出れば、次に繋げられる……と自分に言い聞かせる。

 

7点目『トポロジカル・ドラゴン』

 

しかし願いはかなわず、ヒールトリガーではなかった。

 

「ヒールトリガーではないので……わたしの負けですね……」

 

勝者は花音という形になった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あ。2人共お疲れー。かっこよかったよー」

「「えっ!? あ、ありがとう……」」

 

観客席に戻ってきた燐子と花音を出迎える小さい悠里。

その言葉に頬を赤くする2人。

 

「じゃあ後は、ちーちゃんだけだね♪」

「流れ的にそうだろうと思ったけど……私の対戦相手って……」

 

誰?と千聖が小さい悠里に訊こうとした瞬間、突如、背景が夜になり雨も降り出した。

 

「来てくれたみたいね。千聖、さっさと位置につきなさい」

 

何かの気配に気づいた璃夢が早く準備しろと急かす。

言われるがまま、千聖は指定の位置につき、デッキをシャッフルし、ファーストヴァンガードをセットする。

 

ちなみに千聖以外の8人は、瑠菜と璃夢そして小さい悠里の指示で、千聖の近くで観戦という形である……

 

パシャ……パシャ……パシャ……

 

遠くから足音が聞こえてきた。

しかも自分達がいる場所に近づいてきている……

 

「「あっ……」」

 

その人物を見て、花音とことりが驚く。

身長は悠里と同じくらい。黒い服を着ており、紫色のマント、極めつけは竜のような頭蓋骨の仮面で顔を隠してる少年……リフィだった。

 

「だ、誰なんですか……あの人……」

「…怪しいですね」

 

海未と紗夜が口にした。

それは他の一同の代弁でもあった。燐子に至っては怯えてしまってる。

これはマズイと思った花音とことりは、事情を知らない一同に話す。彼の名はリフィ・ハルジオンと言い、迷子になった自分達を助けてくれた事……

 

それを聞いた千聖を含めた一同はリフィに謝ったが……

 

「…お前達が僕の格好を見て、怪しいと思うのは自然な事だ。こんな事で気にしてたら、色々とやってられん」

 

そもそも謝る要素がどこにある?と言った。

……まぁ謝罪は素直に受け取っておこうと付け加えながら。

 

「ごめーん、待たせた?」

「…いや。寧ろ、予定通りの時間で助かる」

「そっかー。ちーちゃん、今からやるファイトは、ユニットが限りなく実体化するから~」

「え、ええ……」

 

小さい悠里とリフィが軽い会話をした後、小さい悠里は、今から行うファイトの注意事項を千聖に説明した。

一方で、リフィはデッキをシャッフルし、ファーストヴァンガードをセットし終えていた。

 

「……初期手札の引き直しはするのか?」

「2枚だけ引き直すわ」

「…そうか。僕は引き直しはしない」

 

そう言うとリフィは目を閉じて、千聖の準備が終わるのを待つ。

ギアースと同じで、彼の手札は浮いている。

ここで千聖。ある疑問が浮かぶ……

 

「(そういえば……悠里も手札の引き直しはした事ないわね……)」

 

それに何故か、目の前の少年は、初対面の筈なのに、何故か懐かしく感じる。

それは千聖だけじゃなく、友希那達も同じだった……

 

「ちーちゃんも準備できたみたいだね。じゃあ今から、僕がコイントスで先攻か後攻を決めるねー? 表が先攻、裏が後攻だよ。どっちがいーい?」

 

小さい悠里がコインを取り出し、2人に訊く。

 

「…お前が先に決めるといい」

「えっ……? じゃ、じゃあ……私は裏で」

「ほいほーい。さあコインはどっち向きになるのかな? かな?」

 

コイントスをする小さい悠里。

 

「なんと! 裏だったんだよ♪ だよ♪ という事で、ちーちゃんは後攻ね?」

 

そう言い残すと小さい悠里は、瑠菜に審判よろしくねー?と言いながら、璃夢の膝にちょこんと座った。

ちなみに璃夢はかなりご満悦。

 

「それじゃあ始める前に~……本当に後悔はないの?」

 

いつもののほほんとした口調から急に真面目な口調になり、リフィに問う瑠菜。

 

「ああ。言っただろう、僕にはやるべき事がある。誰に言われようと、これだけは変えるつもりもない」

「そっか~……」

「…すまんな」

「気にしないで~。わたし達もその辺は、理解してるから~」

「…………」

 

その言葉を聞いたリフィは、何も言わず瑠菜に始めてくれと目線で訴える。

 

 

「それじゃあ改めて~、第7回戦目~…………ファイトスタート~」

 

 

小雨が降る中、瑠菜の掛け声で7回戦目が開始されるのであった。




読んでいただきありがとうございます。
花音ちゃんと燐子ちゃんの使用クランについては、連載開始から決まってました。
燐子ちゃんのクランをリンクジョーカーにしたのは、少し変わった軸にしたいという自分の思いと、Roselia内で実は最強にしたいという点で、今回のような形にしました。
…先に言っておきますが、別に彼女はリバースとかしてません(ここ超大事)

次回もファイト回になります。
あと数話で第2章も終わります。頑張りますので、次回もよろしくお願いします。
本日はありがとうございました。


※次回予告

交流戦もいよいよ終盤戦。千聖の対戦カードの相手として現れた謎の少年、リフィ。

ところが彼が使うクランを見て千聖達は驚愕する。
問い詰める千聖だが、彼は「…そんな事、勝ってからにしろ」と一蹴。

千聖の想いが強まりユニットの攻撃が実体化。その衝撃で彼の仮面が外れ……


────次回、第37話『巡り逢うファイト』




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