少し短いかもしれませんが、楽しんでいただけると幸いです。
それではどうぞ。
「(一緒に暮らさないか……か……)」
友希那は考えていた。
その理由は先程、燐子から悠里からの伝言を聞かされたからだ。
「(でも私は……歌う事以外、何もできないし……)」
そう。友希那は音楽で歌う事以外、何もできない。
自覚はしてるのだ……
だけど、"悠里の事が好き"だという想いだけは負けてないと思ってる。
「……」
スマホと睨めっこする友希那。
画面の電話帳には『悠里』の文字が。
「…………」
かけたい。今すぐにでも。
悠里の声を聴きたい。しかし突然かけたら彼に迷惑をかけてしまうのではないか?
スマホの時刻を確認する……
朝の7時50分。あと10分で8時になる時間だった。
燐子から聞いたのが、つい先程の事なので、悠里は起きてたとの事。
「にゃ~」
何処から現れたのか、悠里の愛猫のメルが部屋に入ってきた。
ちなみに部屋といっても、水無月家の一室なのだが。
「…あ。メルちゃん……」
「にゃ~♪」
友希那がメルに気づくと、メルは友希那の膝に座りながら嬉しそうな鳴き声を上げた。
まるで『少し座らせてもらいます』という感じで。
猫好きな彼女としては断る事もないし、寧ろ大歓迎なのだが。
「にゃ? っ! にゃー♪」
「あ…… ちょ……!?」
メルは友希那のスマホの画面を見た瞬間、目を輝かせて、えいや!と器用に通話ボタンを押す。
すると、コール音が鳴った。
まさかメルが通話ボタンを押してしまった事に慌てる友希那。
『…もしもし?』
「にゃー♪」
『……その声……メル? なんで友希那ちゃんのスマホ使ってるの?』
違う。メルちゃんが間違って押しただけだと直ぐに出て誤解を解かねば! と思った友希那だが、メルが器用に彼女を静止した。
まるで『申し訳ないんですけど、少しだけ静かにしてください』と言ってるように、メルの瞳が訴えていた……
器用な猫……もとい、悠里の家のにゃーんちゃん。後、仕草が可愛いと友希那は思った。
「んにゃ~」
『偶然、テーブルに置いてあったからって……友希那ちゃんが見たら、怒られるよ? いや……怒んないか……』
「んみゃ~!」
『他人のスマホですから、扱いには気を付けてますよって……まぁ、そうだよね。他人のスマホを使って電話って……なんか不安になるよね?』
「にゃ!」
『そうそう。もし壊しちゃったらどうしようってなるよねー……』
「……(なんで悠里は、にゃーんちゃんとお話できるのかしら?)」
毎度毎度、見てて疑問に思う友希那。
悠里は小さい頃から野良猫と普通に会話をしてる為、猫好きな自分からすれば羨ましいシチュエーションである。
しかもちゃんと会話が成立してるのが逆に凄い。
まして猫と電話をするという神技を現在進行形でやっているのだが。
「にゃー?」
『…えっ、今? 朝ご飯用のコーヒーを淹れてるとこ』
「にゃん。にゃー?」
『燐子ちゃんが僕の伝言を友希那ちゃん達にも話してたって? 燐子ちゃん早いな……さっき電話をしてくれた後なのに……』
燐子が悠里に電話?と一瞬疑問に思った友希那だが、さっきの伝言の時間と辻褄が合った事を聞いてて納得した。
『ねぇ、メル? その話を聞いてた……
「っ!!?」
突然、昔の渾名でメルに話し始めた悠里に友希那は危うく声を上げそうになった。
……なんとか両手で口を抑えたが。
「んにゃう」
『最初はフリーズ状態だったけど、外の空気を吸ってくるわって言って誤魔化してた? 顔は真っ赤だったけど……ね。なるほど。ゆきちゃんらしい』
「……(悠里お願い。お願いだから、それ以上はっ……! その呼び名で呼ばないで!? 嬉しいけど恥ずかしいから……っ!)」
悠里の言葉を聴くたびに顔を真っ赤にする友希那。
ある意味、公開処刑である……メルと自分しかこの場に居ない事が不幸中の幸いか。
それでも友希那にとっては堪ったもんじゃない。
「にゃー?」
『最後に訊きたい事があるって……何? 良いけど……手短にね?』
仮にも友希那のスマホを使わせてもらってる為か、メルは主人に最後の質問をするようだ。
その証拠に、申し訳なさそうな表情をしながら友希那に顔を合わせる。
それを見た友希那は、なんてお利口なにゃーんちゃん!と同時に安心感もきたそうな……
「にゃ。んにゃ~?」
『……え? もしこの場に、ゆきちゃんが居たら何て言いたいかって?』
「っ!!?(待って!? メルちゃん何を言ってるの!?)」
電話越しに悠里がそうだね~……と言ってるのをよそに、友希那は膝に座ってるメルに慌てた表情で視線を向ける。
彼女の言いたい事が伝わったのか、メルは『まあまあ♪』と言ってる……気がした。
やっぱり言いたい事があったらコレかな。僕が言っても説得力がないと思うけどさ?と悠里は言うと……
『ゆきちゃん、好きだよ』
「…………えっ?」
その言葉を悠里が言った瞬間、友希那は素の声を出し、メルが主人に悟られないように電話を即座に切った。
「…………」
「友希那~? いる? 入るよーって、えっ……ちょっ……友希那!?」
慌てるリサの声を聞き、偶々近くにいた燐子達もどうしたのか!?と思い部屋の中に入ると……?
「…………にゃ、にゃーん……私も……ずっと前から悠里の事が好き……ふみゃあ~」
「あ、あの、今井さん……友希那さん……ど、どうしちゃったんですか?」
「アタシも分かんない。ただ、アタシでも見た事ないくらい幸せそうな表情してるんだけど……」
顔を真っ赤にし、リサでも見た事ないくらい幸せそう?な友希那が座っていた。メルを膝に乗せたまま。
「あの。紗夜? 私の気のせいかもしれませんが……今朝の燐子の時に似てませんか?」
「奇遇ですね。私もそんな気がします」
「海未ちゃんと紗夜ちゃんもなの? 私も今朝の燐子ちゃんみたいな気がしたの」
海未、紗夜、千聖が順に言う。
なんか今朝も同じような現象を見た気がするなと思うのであった。
「にゃ~ん♪」
その真実を知るのは、悠里の愛猫のメルと友希那だけ。
彼女と一匹?のみ知る……というやつなのであった……
余談だが、友希那が目覚めたのは1時間後である。
読んでいただきありがとうございます。
間に合って良かったです……
次回も頑張りますので、よろしくお願いいたします。
本日はありがとうございました。