キリト「皆がヤンデレすぎて怖い」   作:エーン

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GOODEND4 シノン編 最強のパートナー

時は数日前に坂戻る。

 

それはある日の、アルヴヘイム・オンラインの中でのことだ。俺は一人ダイシー・カフェに向かい、あるクエストに一緒に行くメンバーを探していた時のことだった。

そこでたまたまあったのが、水色の髪にケットシーの象徴ともいえる猫耳の生えた、落ち着いた様子のある一人の女性。シノンだった。

 

シノン「キリト、少し話さない?」

 

キリト「あぁ、いいよ」

 

少し警戒心はあるが、ここでは何もできないことを考えて近くに座る。丸いテーブルに手を置いてシノンは話し始めた。

 

シノン「…私、知っているわよ。最近、仲良くしている会社員がいるってことをね」

 

思わず心臓が跳ねた。こんな言葉だけなのに、重みを感じ胃が悪くなるようだ。眼を見開いてシノンを見た。

 

シノン「…ただ仲良くしているだけなら…いや、仲良くしていることさえ私にとっては許すことはできない。正直、今すぐでもその女性とは縁を切ってほしい」

 

キリト「そ、そんなこと…」

 

シノン「できないの?ねぇ。知ってる?私は嫉妬深いっていうこと。そしていつでもキリトを見ていること」

 

低い声が、俺の脳を凍らせるように入ってくる。ここ最近の彼女たちの行動は異例を超えてきており、そろそろまずいことが起きてもおかしくないと思ってはいたが、シノンがすることはなんだろうか。

 

シノン「いい加減別れないと、許さないわよ」

 

キリト「…別れなかったら、どうするつもりだ」

 

シノン「…そうねぇ。あなたの思っていること以上のことが起きるわよ」

 

キリト「…」

 

シノン「嫌だったら別れなさい」

 

シノンの眼は黒く、何も写さなかった。いや、その黒く闇の中の眼の奥に居るのは俺だ。俺を狙っているのだ。別れろなんて言われたら、普通に抗えばいいものを。今はそうはできない。もし抗ったら彼女の言っている何かが起こる。

それはどんなことかわからないが、もう目は正気の沙汰じゃない。

 

キリト「…」

 

声すらでない。脳が回らなかったのだ。

 

シノン「…まぁ、ここまで言ったからにはちゃんと別れるんでしょうね。それじゃあね」

 

シノンはダイシー・カフェのドアを開けてここを後にした。

俺はしばらくして机に肘をついて両手で頭を抱えた。彼女の言葉がよみがえる。それは決して忘れることのできない忠告だ。

 

『嫌だったら別れなさい』

 

等々の言葉が脳をうろついている。幻聴なのか、ものすごいめまいを感じてしまう。

仮想世界なのに汗が出てきているようだ。プログラミングされた汗が机に滴り落ちる。その汗は時期に渇き、その頃になると俺は少し落ち着いていた。

 

…どうなるんだ…ほんとに…。

ここで決心しないと、何かまずい気がする。一体どうなるんだ…これ。

何かまずい予感がする。こう…なんだ。死…か。

 

キリト「シノンッ!」

 

決心したんだ。なにか、周りの何かが消えそうな気がして。

今のシノンには、何かがある。このままだと、そう、まるで、標的を定めてトリガーを引くように。

 

キリト「シノン…わかった。別れよう。だから何もしないでくれ」

 

シノン「…本当?」

 

キリト「ほ、本当だ。だから何もしないでくれ。絶対に…頼む…」

 

シノン「わかったわ。じゃあ、何もしないわ」

 

キリト「本当…か?」

 

シノン「えぇ、本当よ。じゃあ私は『やらないといけないこと』がある」

 

キリト「え…なんなんだ、それ」

 

シノン「…」

 

シノンはそのまま、何か『暗い顔』をしてログアウトした。

本当に何もしないのだろうか。少し心配になってきた。ちょっと気になるな。俺もログアウトして少しシノンと話さないといけなさそうなきがしてきた。

指をスライドさせてログアウトボタンを押した。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

携帯をもって俺はシノンに電話をした。

プルプルプルプル…ずっとその音が鳴りやまないままだった。つまり、出ないのだ。

にしても暗い顔をしていたが、何を重んじていたのか。

 

キリト「…シノン」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

夜中。

私は携帯を手に触り、メッセージを送った。

…。

 

詩乃「…そろそろ…か」

 

海を見る。

確かに来るとは言っていた。断っても、来ると。

何をするのか、想像がつかなかった。とりあえず集合時間には来るようにした。

港、潮風があたり、風が強かった。目立たない黒い恰好ということで灰色のコートを着た。

地平線の奥、色通りの船が来た。光りがともってたが、いずれ消えて黒いまま迫ってくる。

 

詩乃「あれか…」

 

船が港の近くに来て、水を壁に打つ。

少し緊張する。

船の床を渡る音が聞こえ、こっちに迫ってきた。

 

「…おめぇ、断ったって本当か」

 

詩乃「えぇ、そうよ」

 

「なぜだ。憎いんだろ。殺したいんだろ」

 

詩乃「もういいのよ。用済みよ」

 

「…」

 

一歩前に出て、こっちに迫ってくる。タンクトップに焼けた肌。短髪に筋肉質だった。

それがさらに圧を出していた。

 

詩乃「な、何よ」

 

「おめぇ、調子乗ってんじゃねぇぞ」

 

突如腕を伸ばし、強引に腕をつかんでくる。

 

「このへカートⅡをどれだけの労力で手に入れたと思ってんだッ!ざけんな!お前の要望だ!」

 

詩乃「や、やめてよ!」

 

無理やり離れて逃げようとするが、力は圧倒的に相手が勝っていて、たとえ振りほどいても追いつかれるだろう。

どうすればいいのか。下手すれば命さえ…。

 

「とりあえず、約束は守ってもらう。へっへっへ」

 

詩乃「な、何でよ!貰ってないのよ!」

 

「運ぶのが仕事。つまり、運んだからにはそれなりの報酬を。だ」

 

詩乃「ひっ…」

 

強引に引かれ、ある場所へと歩かされる。

向かっているのは倉庫のような場所で、そこは誰も近寄らないように見える。錆びているシャッターを片手で男性は開けて、ギギギと音を立てながら開ける。

まさか、ここに連れ込むのか。

 

「おら!入れ!」

 

詩乃「くっ…」

 

投げられて倉庫に入れられ、更に警戒する。約束通りということなら、まさか。

シャッターを片手でとじ、持っている携帯のライト機能を使い、倉庫内、主に私を照らす。

 

「おら、早く脱げ」

 

シノン「い、嫌よ!」

 

「そうか…」

 

すると、今度はコートをつかまれ、強い力で脱がされる。

 

「ほら、自分で脱げ。じゃなきゃ次は服を破いてまで脱がすぞ」

 

詩乃「結果は…同じじゃない…」

 

必死に自身の身を守ろうと隠す。しかし男性は不敵な笑みが浮かばれ、両腕で、シャツをつかまれる。

 

「ほぉ、いいスタイルしているねぇしのちゃん」

 

詩乃「触らないで!」

 

ビリッ。

服が破れる音が聞こえた。

私のシャツが破られ、下着が露わになる。

 

「いい下着だねぇ。犯しがいがあるってもんだなぁ!」

 

詩乃「や…やめ…」

 

もう、何もできない。

このまま…私は…。

 

ビリッ。

ズボンが破かれる。下着が露わになる。

壁に逃げるものの、何もない。出口もない。もう、終わりだ。

…ほんとに早まりすぎた。勝手に危ないサイトに頼んで、殺す目的で借りたが…。約束だって軽く飲んでしまった。どうにかなるって思ってた。

あの時普通にもらって、殺しておけば…。

 

詩乃「…」

 

終わりだ。

 

「へっ。そんじゃ、それも…」

 

…ごめん。

 

肩をつかんでくる。

何も抵抗できない。ここで犯されて…終わるんだ。

頬に何かが伝る。

 

…さよなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめろッ!」

 

シャッターを片手で支え、そこに立っている一人の男が見えた。

…あそこにいるのは…。

目の錯覚か。

黒いコートをまとい、それは幾戦も勝ち抜いてきた装備…。そう、まるで…皆の英雄…黒の剣士…。

 

「誰だおめぇ。今邪魔すんじゃねぇよ」

 

「今すぐその手を離せ!」

 

手に持っているのは…剣?漆黒の…剣?

瞬きを繰り返すと、そこにいたのは普通の格好の男性で、手に持っていたのは傘だった。雨なんて降ってなかったはず…。

いたのは…彼だった。

 

詩乃「キ、キリト…」

 

和人「…助けに来たぜ。詩乃」

 

詩乃「どうして…」

 

和人「詩乃が俺に助けを呼んだんじゃないか。そうだろ」

 

詩乃「…」

 

『私は携帯を手に触り、メッセージを送った』

 

やっぱり、信じてよかった。彼のこと…。

これまでずっと、ひどくしていたけど…でも来てくれた…。

 

「こっちにくんじゃねぇよガキが」

 

しかし彼は歩みを止めない。傘をまるで剣のように握っている。

 

和人「…」

 

「へ、ぼこぼこにされてぇらしいな」

 

和人「そんなつもり、一ミリもない」

 

「なら、ここに来たのが運のつきだ。死ねぇ!」

 

猛烈な拳が、彼の顔へと迫る。

 

詩乃「キリトッ!」

 

リアルじゃありえないと思っていた。そんな動きをしたのだ。

ひらりと避けると、傘の先端をしっかり相手に向けて。

 

キリト「はぁあああああああああ!」

 

一瞬。キリトに見えた。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

コートを身にまといながら逃げる詩乃の前を俺は走る。

 

和人「はぁ…はぁ…。とりあえず、ここまで逃げれば大丈夫だろう」

 

詩乃「…本当にごめんなさい…和人君。私はなんてことを…」

 

涙を流しながら俺の胸に顔を埋めた。

俺はそっと頭に手を置いた。

 

和人「詩乃が無事で本当に良かった」

 

詩乃「ありがとう、本当に。危険を顧みないでよくあんなことを」

 

和人「当然だ。俺の大切な人が危険な目に会ってたら、助けに来るのが当然だろ?」

 

詩乃「大切な人って…明日奈以外に使っちゃだめじゃないの?」

 

和人「たとえそうでも、詩乃は大切だろ」

 

そっと、抱きしめる。

これまで彼女のやってきたこと、今一度振り返ってみようか。そもそも皆がおかしくなったのはSAOの時代からと思っている。

シノンも確か、SAOにやってきた。それも不可思議な力によって。あのあとはシノンは俺たちと一緒にSAOを攻略した。一緒にSAOを出て、そしてGGOもやった。一体何が彼女たちをああやったのだろう。

確かシノンの最初は…。

一緒に戦っていた時、俺に矢を撃ってきて小屋へとノックバックした。なんてあった気がする。そっからはちょくちょくあったけど、シノンは急に姿を隠すようにコソコソとやっていた。なるほど、今回にすべてつながるのか。

 

和人「詩乃、君のやろうとしたことは…」

 

詩乃「そう、私がやろうとしたのは…あなたの女社員の殺害。そのためにこれまでコソコソ動き、ターゲットをどこで撃ちぬくか、だった」

 

和人「けど、君は止めたな。よくできたな」

 

詩乃「…誉められることじゃない。むしろ怒られるべきよ」

 

涙を止めず話す。

 

和人「誉められることでいいんじゃないか。そんな涙を流せるのも、君にまだ善良な心があった証だ」

 

詩乃「そうかな…ねぇ…」

 

和人「ん?」

 

詩乃「また、いつもの様な関係に戻れるかな。皆と…」

 

和人「きっとなれるさ。絶対に」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

GGO内 オンラインマッチングルーム

 

シノン「バックアップは任せて!」

 

キリト「あぁ!」

 

カゲミツG4の刀身を伸ばし、荒野を駆け抜ける。

長い前髪が走るとともになびき、コートもなびく。瓦礫や土が舞いながら、最短距離を責めながら責める。

 

「くっ…!」

 

ダダダダッ!アサルトライフルの銃声が響き、銃弾の行先を示すレッドラインは俺の頭、肩、胸、足、を乱雑に狙っている。銃弾が迫る。

正確に剣を振り、光の中へと銃弾が溶けていく。火花が散っていく。

 

「なぜそんな動きがぁ!?」

 

キリト「今だ!シノン!」

 

スコープ越しに、ターゲットを逃さない正確無比な目。レッドラインが相手の頭へと絞られた。

呼吸を整え、トリガーを強く引いた。

 

シュン。

 

空気を貫き、俺の顔を横切り、相手の頭へと行く。

 

パシュン。

 

相手の頭が打ちぬかれた。

 

シノン「ふぅ…」

 

キリト「よし。さてと…」

 

残りのデュオチームの相手は、1グループか。

 

キリト「行くぞ。シノン」

 

シノン「えぇ、勝ちに行くわよ」

 

荒野を歩き、次の相手へと向かう。

 

シノン「私は最強の戦闘パートナーを持ったわね」

 

キリト「それはこっちのセリフでもあるぞ。さぁ、勝つぞ!」

 

 

 

GOODEND4 最強のパートナー




読んでくれてありがとうございます。

しばらく忙しい日々でした。猛暑日ですね最近。暑いですね…。この小説は着実に終わりに近づいています。

最後の最後まで、投稿ペースは酷いかもしれませんが、よろしくお願いします。





























???「さて、この小説も終わりに近づいているということを皆さんはどのように思うか。この彼女たちの突然の変異をどう思うか。全てはいずれわかるわ。この小説の最後に。全てが明るみにでるわ。それでは」


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