キリト「皆がヤンデレすぎて怖い」   作:エーン

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大変ながらくお待たせしました。

本編は下です


74話 キリトはある人と再会する

和人「うぅ…いてて、たまにはスグとどっか出かけるとかしてみようかな。一緒にいる時間も必要だ」

 

朝起きてベッドから出る。部屋を見渡してもいつも通りの俺の部屋…当然だが。

スーツを着てネクタイをし荷物をまとめてドアを出る。部屋を出てダイニングに来るとスグはまだ起きてないようだ。まだ寝ているのだろう。

俺はパンを焼いて冷蔵庫からバターを取る。少し携帯を覗くと、3人がひょっこり顔をのぞかせてくる。

 

ユイ「おはようございます!パパ!」

 

和人「うん、おはようユイ。それと…」

 

他二人もユナの左右に立ち手を振るって笑顔で言う。

 

ユナ「おはよ!ゆっくり眠れた?」

 

ストレア「おはよー!昨日は色々と大変だったね?またALOに来てくれれば癒してお姉さんが癒してあげるよ~?」

 

ちらっと胸を主張するように腰を曲げてくるストレア。それを見てユナが鋭い眼光でストレアを見る。

 

和人「あ、あははは…こ、今度な」

 

少々雑に答えてしまったか。するとユナはすぐさまストレアから画面の奥にいる俺へと目を移し、身振り手振りで今の俺の返事に反応したのだ。

 

ユナ「はぁ!?今度って、キリト!まさか本当にやってもらうの!?」

 

和人「へ?いや、違う!そんな、まさか!」

 

ストレア「いいんだよ~?甘えちゃっても!なんてったってMHCPなんだから!」

 

ユイ「それは私も一緒です…」

 

朝から騒がしいが、そのおかげで目が覚めた。

 

和人「今日も会社行くから、帰ってくるのは遅くなるよ。帰ってきたら、とりあえず顔を出そうと思う。少しの間なんだけどね…」

 

ユナ「大丈夫、そっちの事情をちゃんと知っているから。それに、キリトはALOのために、皆のためにがんばっているもんね」

 

和人「…そう思ってくれるんだな。ありがとう」

 

ユナからそのようなお褒めの言葉を受け取るが、根をたどれば原因は俺にあるといっていい。俺が起こした騒動なため、しっかりと責任もって終わらせないといけない。

 

ストレア「にしてもさ、キリト」

 

和人「ん?」

 

ストレア「なんかさっき焼いてたよね?パン」

 

和人「あ、そうだった!?」

 

急いで俺はトーストの下へ戻る。この香りはもうすでに…俺に察せられる。

 

焦げた…。

 

スグ「おはよーお兄ちゃん…ん?パン焦がした?」

 

◇◇◇◇◇◇

 

女社員「おはようございます!」

 

和人「おはよう。さ、頑張るか」

 

自分の席に向かおうとすると、向こうから背の高い人物が歩いてくる。もとい世話になっている人だ。メガネをかけた、菊岡さんだ。

 

菊岡「おはよう、和人くん」

 

和人「おはよう…ございます。どうかしましたか?」

 

菊岡さんはしばし間をおいて、喉から出そうか考えた末言葉を発する。

 

菊岡「少々時間が欲しいんだ。今、あるかな?」

 

和人「はい、まぁ…ありますけど」

 

菊岡「よかった。実はナツキが話したがっているんだ。では案内しよう」

 

そして方向を真逆に菊岡さんは進んでいく。しばしナツキさんのことについて思考がめぐる。安岐ナツキ。GGOとUWでは看護としてここで努めてくれている。陸上自衛隊の訓練も受けているのでそれなりに国防や武器にも詳しく、頼れる人だった。しかしここ数か月彼女のことについては音沙汰ないという状況だった。俺もいつしか考えなくなったが、今名前が出てきて少し困惑する。

 

女社員「呼ばれたんですか?」

 

和人「うん、すぐ戻る。君は自分のタスクを進めておいて」

 

俺はそう言って歩き出す。菊岡さんは一度振り返り、ちゃんと来ていることを確認するとまた歩き出す。

どこか菊岡さんには心残りというか、焦りを感じさせるオーラがあった。何があったかはわからないが、さっき俺がナツキと会うよう促そうとしたときも間があった。いったん考えるほどの事情があるのか、それともまた別か―。考えても結果は出てこないのでここでやめ静かに歩き続ける。

いずれ皆がいるようなデスクは消えて薄青い廊下へと導かれる。左右には会議室や実験室のようなことを書かれた扉が並び立ち、上の明かりが床と俺達を照らしている。時々窓を覗いて並ぶ部屋をみるが物静かで、人が誰もいない。菊岡さんも無言なため一層寂しさ、空虚感を感じさせる。この場所には入社にも立ち寄ったことがあったはずだがその時の記憶はもうかなり消えていた。

静かなこの雰囲気に流石に俺は気持ち悪い汗を感じ、菊岡さんに声をかけようとする。一度口を開けるが口を閉じ、唾をのんで声を出す。

 

和人「一体…ナツキさんはどこにいるんでしょうか…?」

 

急に沈黙を破り少し焦ったように歩きながら顔だけを少しこっちに向けてくれる。メガネが光を反射していた。

 

菊岡「この先の作業部屋だよ。私が彼女に貸した部屋なんだが、どうもこんな先を好んでね」

 

わざわざナツキさんがこんな奥を選ぶとは、菊岡さんはなにか疑問に思うことはなかったのだろうか。だが一応それなりに知識があって協力してきたので今更疑う必要はないと思いそのまま渡したのか。

だんだん向こうの壁が見えてきた。俺はふと来た道を振り返るがここからでも来た時の扉が見える。そこまで道は長くなかったようだ。だがこの沈黙が廊下を長く錯覚させていた。

左に曲がりすぐ見える扉。左には『実験室32』という言葉が書かれている。

 

和人「実験室…?」

 

菊岡「彼女の事だから、そこまで大層な実験はしてない。君と彼女を合わせる前私が入ったのだが、特別何かが置いてあるわけでもなかった。ただ大きなパソコン本体一機…ぐらいだろう。もちろんアドミニストレータの封印に手を貸してくれているよ」

 

和人「そうだったんですか。では私もナツキさんには感謝しないといけないですね」

 

菊岡「それは中でね、じゃあ」

 

扉の前に菊岡さんは立ち、ドアを3回ノックする。

 

菊岡「私だよ。桐ケ谷君を連れてきた」

 

と、と、と、と足音が扉奥から聞こえ、ドアノブをひねる音が聞こえる。キィと音を鳴らしてドアを開く。

 

ナツキ「よくここまで来てくれたわ、和人君」

 

和人「は、はい。また会えてうれしいです」

 

扉から出てきたのはもちろん安岐ナツキ。メガネをかけ、クリーム色の長い髪を後ろで結び下ろしている。ただ看護師という恰好はしていなく、スーツの姿だったことが意外だった。

 

和人「それで…話とは?」

 

菊岡「それは、彼女の部屋で。私は、ここまでだからね」

 

するとそのまま来た咆哮とは逆へ向かって帰って行こうとする。思わず呼び止める。

 

和人「あの、一緒に話さないんですか?」

 

菊岡さんに届くように声をだす。だが、彼は振り返っても声は出さず苦笑いして帰っていく。

少々俺には女性に対して畏怖を感じるところがあるので、二人っきりという状況がどれだけ危険か、というのを知っている。そのため全く関係ないだろうナツキさんにも疑いの目をかけてしまう。

だが、ナツキさんはナツキさんだ。特に変わった様子もないだろう。一応警戒しつつも、ナツキさんの方へ向く。

 

ナツキ「少し話したかったのよ。積もる話もないわけじゃないから、二人でね」

 

和人「…わ、わかりました」

 

ナツキ「あ、その前に」

 

彼女はすぐさま俺のポケットに手を入れて携帯を握る。もちろん俺の携帯だが。

 

ナツキ「…電源は、OFFっと。一応…ね?」

 

和人「な、わざわざそこまでしなくても…。ただのお話なんですよね?」

 

ナツキ「えぇ。そうよ、ただ私、他人に会話を聞かれるのがちょっと嫌なのよね。大丈夫、帰るときにしっかり返すから」

 

そしてドアを開けてもらったまま部屋へと案内される。部屋は無機質といえばそうだが、デスクにPCとややでかめな本体。

すぐにナツキさんはドアを閉める。

 

和人「…」

 

ナツキ「あら、緊張しているの?大丈夫、ほら、そこにある椅子にすわって?」

 

椅子に座るときでさえ俺は彼女から目を離さなかった。そっと座ると、ナツキさんはその向かいにあるベッドに座る。

 

ナツキ「…この携帯、充電しておくわね」

 

一度座ったがまた立ち上がり、PC近くにある俺の携帯と同じ端子の線を見つけ携帯に線を差し込む。その線の先はよく見えないがきっと壁にある電源プラグへへと続いているだろう。

その後再度ベッドに座り直しこっちに向き直る。俺は部屋の中を見回すが特に怪しいものはなさそうだ。ただ机にはアミュスフィアが一つ。

 

ナツキ「どうしたの?そんなに部屋を見回して。何か気になる物でもあるの?」

 

和人「…いえ、特には。ただ、ナツキさんもゲームするんだな…って思っただけで」

 

俺は話しながら目線をアミュスフィアに向けていた。あの看護師であり忙しそうな人のことなのでこのような娯楽に時間を費やすことさえも難しそうと思っていた。そもそもVRMMOにも興味さえなかったと思っていた。

それをナツキさんは見ると、少し鼻で笑い言葉を続ける。

 

ナツキ「アミュスフィアのことね。だって少年君がALOで色々とお困りのようだから、私も手伝う上で必要だったのよ。でも特にそこまで遊んでないわね」

 

和人「へぇ…どんなアバターなんですか?」

 

ナツキ「いえ…よくわからないわね。というか、その話を続けたら盛り上がっちゃうでしょ?君の事だから」

 

和人「あ、すみません。そちらの要件でしたね」

 

ナツキ「いいのよ。それで、まぁ積もる話とは言ったけど…特にいっぱいあるわけではないわ」

 

和人「あ、その前に一ついいですか?あの…今回の件にわざわざ手を貸してくれてありがとうございます。ナツキさんがいれば心強いです」

 

ナツキ「あら、ありがとう。今回の話はそのことよ」

 

近くにあるファイルを手に取りナツキさんは一枚の紙を見ながら話し始める。

 

ナツキ「貴方がALOに放ったのはアドミニストレータ。UWでは最高権力者、もといゲームマスターともいえるほどのコマンド値を有していた。だがフラクトライトを維持したまま、意識もありつつ力を有して尚生きかえってきた。それも、皆が遊ぶALOにね」

 

和人「…はい」

 

ナツキ「あら、落ち込むことはないわ。和人はよくやってる。私もその分頑張るから」

 

俺は警戒心を解きつつ彼女の援助に感謝をしていた。

 

ナツキ「それで、彼女は向こうで権限を有しつつ支配を進めようとしている。もちろんALO内の敵を使ってね。ただ彼女は好都合なことに敵には思考が存在しないため思う存分操れるのよね」

 

和人「はい…」

 

すると俺は驚くことを聞かれる。

 

ナツキ「そういえば…最近彼女と会ったりした?」

 

和人「え?…あ、はい。上空にある島にいてそこで会いました。どうやら俺を欲しがっているようで…」

 

ナツキ「なるほど…。それで?彼女は?」

 

和人「支配の過程が完了し、実行に移す直前で再度問う…と。あいつの力は計り知れません…全く太刀打ちできなかったのです」

 

しばしナツキは手を顎にあて考える。

 

ナツキ「…まぁ、あれほどの力を持っていれば誰でも勝てないわ。けど、外部からの封印はできるわ。そのために頑張っているのだからね?」

 

和人「一応その方針で今は進んでいますが」

 

ナツキ「なら、一刻も早く封印するものを作らないとね。あ、あとUWにいた皆の調子はどう?」

 

UWにいた皆。ユージオだったり、アリスだったり、後輩たちだったり。その人たちの事だろう。

 

和人「はい、仲良くできています…よ」

 

ナツキ「何よその変な間は。ま、それならいいけどね」

 

彼女はファイルにある別の書類を手に取り話を続ける。

 

ナツキ「私はそこにあるPCで作業をよくしているわ。最近は介護というよりも業務というか、作業に専念しているわ。菊岡さんにこの部屋を借りたのは、さっき言ったことのため。別に怪しいことなんてないわ」

 

和人「別に疑ってなんかいませんよ」

 

ナツキ「あら?そうなの?ありがと」

 

再度目を書類に通し、今後のことについて話し始める。

 

ナツキ「私は今まで通り、このプロジェクトを手伝い続ける。あなたも一緒にやってもらう。ただたまにはALOに行っては皆と交流することも必要よね?」

 

和人「あ、ありがとうございます」

 

ナツキ「菊岡さんにももちろん協力してもらっているし、必ず終わらせましょ」

 

書類をいったんしまい、ファイルをちかくにある小さな机へ置いた。俺は特になにもなく、ナツキさんの会話につきあっているだけだった。

彼女が深呼吸すると言葉を話し始める。

 

ナツキ「それよりも、和人君。何か無理してない…?」

 

和人「へ?」

 

そっとベッドから立ち上がり、ゆっくりと歩み寄ってくる。

 

ナツキ「私はあなたを介護したのよ?だから悩みにももちろん、答えてあげる。メンタルカウンセラーみたいなもんだからね」

 

和人「別に悩みなんて」

 

ナツキ「うーそ。あるでしょ?私に会う時も、部屋に入るときも、そして今もなお。何かに警戒しているそぶりが丸見えよ。君が気づいていないだけで」

 

和人「え?…そう、そうだったんですか。すごいですね、流石ナツキさんです」

 

ナツキ「ふふ、伊達に看護師していなから」

 

なんとも強い味方が今まで裏で働いていたようで、これには感謝してもしきれない。自然に俺は笑みを作っていた。

 

和人「でも、大丈夫です。ありがとうございます」

 

ナツキ「そう?」

 

心配がまだ拭えていない彼女だが、やがて瞬きをゆっくりし俺を見つめなおす。

 

ナツキ「でも…まぁ、必要以上に踏み込むのはだめよね。わかった、無理しないでね?」

 

和人「助かります」

 

ナツキ「はい、話は以上。もう帰っていいわよ」

 

和人「あ、これだけでいいんですか?」

 

ナツキ「えぇ。別に積もる話はなかったのよ。久々に会えてよかったわ。…あ、そういえば携帯ね」

 

ナツキさんは俺の携帯を充電の線から外し、俺に渡してくる。少々熱いが。

 

和人「助かりました。それでは、失礼しますね」

 

ナツキ「えぇ」

 

俺はドアに近づき、ロックされていた(知らなかった)ドアを開けて廊下に出る。

 

ナツキ「いい?自分を責めないでね。それじゃあね」

 

和人「はい、それでは」

 

俺は廊下に出てナツキさんの部屋を後にした。最後まで彼女は手を振ってくれていたのだ。

 

 

 

 

 

ナツキ「…」




ご朗読ありがとうございます!
実は新生活が始まってしまい、この半年間その生活に追われていました。慣れない新生活に色々と悩まされ、時間が本当にないほど忙しかったです。今はある程度ゆとりが生まれ少しずつ自分の時間が確保できました!がんばります!
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