仮面ライダーフリード   作:うしとうなぎ

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 2ヶ月もの間留守にしてすいませんでした。
 いつもどおりの文字数ですが、相変わらずのクォリティとようやく動き出すストーリーでお送りします。

 お楽しみください。


第五話「動かぬケツイ」part2

    4

 

「何なんだよ、あの人……」

 翌日、チームのテナントに帰っていた康介はそんな事をずっと呟いていた。

 帰ってくるなり会議室の椅子で眠りこけた彼は起きがけに先日のことを思い出したのか、恨みがましく親指を噛む。

「仕方ないで……そんなこと、できんのかよ……」

 思い出すのはあの時のやり取り。

 ――…………仕方なかった。

 陸が、あの時発したのはそれだけだった。

 何が仕方なかったのか、どう仕方がないのか、それを問おうにも陸からはなにも聞き出せないだろう。

「はあ……」

 終いに不貞腐れた康介は溜息を吐き、スマホを取り出した。

 電源を点けたディスプレイに浮かび上がるのは二人の男の子が写った写真。どちらも嬉しそうに笑い、肩を組み合った、過去の思い出の写真。

「――俺は、絶対に、」

「絶対に……なんですか?」

「うおわあっ!?」

 突然背後から声をかけられた事に驚き、咄嗟にスマホを隠した。

 振り向いた先にいたのはいつも受付に座っているはずのラッキィだった。

「なんで、あなたがここに!?」

「なんでってそれは瀬良さんがここにいるからですよ? 昨日はここでお泊りになったようで、おはようございます」

「あっ、おはよう、ございます。ずっとここに居るわけじゃないんですか?」

「はい、そうですね。ですが、到月さんはここの空き室を使って寝泊まりしています」

 どうやら出勤時間と言うことらしい。

 ラッキィは基本朝から部屋の掃除、その後は休憩を挟みつつ受付をしているという。

 こうして日常的な話を聞くと、人が死んだという事実を康介は忘れてしまいそうになる。

 例え自分が死んでしまっても、変わらず世の中が回り続けるような、世界に見放されたような感覚が。

 それを紛らわすために康介はラッキィに話題を切り出していた。

 

「――到月さんがその子のお母さんを見殺しにした、と」

「はい」

 神妙な面持ちで頷く康介。

 しかしラッキィは真剣な彼とは対比的にただ微笑んだ。

 予想外の反応に暫くキョトンと目を開いた康介だが、ラッキィは艶然とした笑みを崩さない。

「瀬良さんが他人に隠したいことがあるように、到月さんも到月さんで案外隠していることがあるんですよ。例えば彼は、助けられなかったことはこれが初めてではないんです」

「だからあんなに素っ気ないってことですか? 慣れすぎているから」

「それは違います。今も悔やみ続けていますよ? なんなら先日の件もその対象のようで。度々相談も受けます」

 と、ラッキィは陸について教えてくれるが、康介はまだ納得できなかった。

「だったらなんで、なんで陸は平気な顔が出来るんですか?」

 それは素朴な疑問だった。

 理由から導いた達観ではなく、純粋に思い当たった疑問。

 なぜそれほどの重荷を背負って尚、自責の念に潰れずに平然と冷めた対応をしているのか。

 それに関してもラッキィはすぐに答えてくれた。

「案外簡単で、誰もがやっていることですよ」

 ラッキィはそれだけ言うと話を切り、ニコニコとしたままカウンターへと向かっていく。

「……え? それだけ?」

 酷く簡潔な答えに康介は不意を付かれ、彼女の背中が消えてからその答えの不確実さに気づいた。

 結局その後再び問い詰めたが、本当の意味を康介が知り得ることはなかった。

 

 

    5

 

 

 天上に向けてそびえ立つ鉄骨の縁が再び光を放ち始める。空は藍染めのような空色から段々と鮮やかな空色へと移り変わっていく中、一点だけ蝋燭のようにぼんやりとした陽光が、そこに立つ陸の顔を焦がしていた。

 そこは廃墟。

 前日まで建設現場の要となっていた資材が散乱する鉄屑の山だ。既に使い物にならなくなった鉄骨が異様な捻れ方でそこらに捨て置かれている。

 その一部、地面に向かって垂直に立てられた鉄骨の傍に陸は佇んでいた。

 彼は(まぶた)にかかる黒髪をどかし足元に転がっていたものを拾い上げる。

 それは乾いた血がこびり付いたスパークだった。

「ああ、……おれは」

 スパークを握りしめながら鉄骨を見上げる。

 これ自体は切り口が『エ』の字になった典型的な鉄骨なのだが、根元から広がる真っ赤な染みがここで起きた事の凄絶さを物語っているようだった。

 そんな光景にこれまでの既視感(デジャヴ)を覚え、気づけば陸は衝動的に鉄骨を殴りつけていた。

「また、……まただ。どうしようもできないのか……!」

 憎たらしげに吐き捨てる。

 

 この一年半の間、ヴォルトとして活動した陸の功績は歴代には見ない程に優秀なものだった。鎮静化させたヴォルトは軽く二百体を超え、救ってきた命や日常はそれ以上ある。戦いの中で開花させていったセンスに鋭利過ぎる五感と経験からなる知識を複合させ、どんな相手だって倒してきた。

 これだけの成果を見れば、誰もが陸を救世主かなにかと思うだろう。現に表向きだけならそうだ。ヴォルトが傷害事件を起こすこの街において、人間の味方をする唯一のヴォルト。それが絡鳴市の住人にどれだけの期待と希望を抱かれていることか。

 その一例が康介である。いつかは過度な期待を裏切られ、どこに向けようもない怒りをぶつける。

 陸はそんな人間をどこまでも見てきた。人の欲望に直に触れるからこそ、ただの欲望とは別の何かを。しかしそれを悪いことだと陸が思ったことはない。それどころか正しいとも思っていない。

 そんな気持ちを抱きながらも陸は無償に他人へ手を差し伸べる。

 なぜか? と問われても、既にその答えを陸は失ってしまっている。

 いくつもの悲劇に立ち会う中で理想は汚濁していき、目標を取り落とした。

 その意味で言えば康介の言うとおり、陸はヒーローではないのだ。

 

「――とにかく、主犯を探すしかない」

 そう判断し足早にこの場を去ろうとすると、丁度建設現場に入ってきたピークと鉢合わせた。

 ピークは意外そうに目を見開いたが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。

「よっ! まーだここに居たのか」

「ナイスタイミング、丁度お前のところに行こうとしてたんだ。……でも、なんでここに?」

「そりゃ後始末のために決まってんだろ。派手に散らかしやがって」

 そう言って縦に刺さっていた鉄骨を無造作に倒す。

「おい。それは、」

「ん? 倒しちゃまずかったか?」

「いや、なんもない。それよりも話したいことがある。……ヴォルトが変身者の制御を離れて暴走することなんてあるのか?」

 

 

    6

 

 

 二人が各々の決断を下す中、ここでもまた彼らと近しい存在が決断を迫られようとしていた。

 寄る辺(よるべ)をなくした女の子が、一人うずくまっている。親からの遺伝か若干茶けた黒髪を背中に流し、おめかしした水玉のワンピースでひっきりなしに目元を拭っている。

 その姿は小さ過ぎて誰の視界にも映らない。

「ママ……どこに行っちゃったの?」

 か細く、か弱すぎる声は誰にも届くことはない。

 彼女の目の前に現れた青年以外には。

「どうしたの? おじょーちゃん?」

 女の子と同じ目線になった青年は人懐っこく笑いながらも、その目は大きく開かれている。

 幼い子供には分からない些細な狂気が彼女を射抜く。

「おれがおじょーちゃんの話聞いてあげるよ?」

「でも、しらない人には気をつけてってお母さんが、」

「だーいじょぶさ。おれは君のおかーさんがどこに行ったか知ってる。ほら、知らない人じゃないだろ?」

 そう言うと女の子もぱあっ、と明るい顔になる。

「お母さんどこにいるの!?」

「おかーさんはね……死んじゃったんだよ」

「え……?」

「死んだんだ、君のおかーさん」

 唖然する女の子とは逆に青年の笑みは段々と深くなっていく。

 それとは対比的にやがて死ぬという単語を理解したのか、そのあどけない顔が蒼白となって震えている。

「うそ」

 女の子は恐る恐る青年を見上げた。

 目があった顔に張り付くのは柔らかい笑顔と、絶対に笑わない双眸。

「嘘じゃない」

 弓なりの口から響く重々しいトーンが幼い心を叩きのめそうとする。

 それでも彼女は認めたくないものを嫌々と否定した。

「うそだ」

「嘘じゃない」

「うそだ!」

「嘘じゃない」

「うそだ!!」

「嘘じゃない」

「うそだよ!!」

 否定するものと突きつけるものの応酬。

 女の子が一番強く言い放った最後の言葉だけ青年は言い返さなかった。

「――じゃあうそにしてみる?」

 彼女の眼前に差し出した黒いスパーク。

 底知れぬ禍々しさが触れるものを拒絶しようと渦巻く。震えて立つ女の子を暗黒に飲み込もうと渦巻く。

「きみが望むならおれはこの力をあげよう。きみの言ううそが嘘であると証明できる力はもう手の中だ。どうする?」

「わたしは……」

 …………

「あーあ、取っちゃたね。選んだからには働いてもらおうか」

 ――青年の周りに渦高く積まれた人の山。それは死体か、あるいは……

「おれの臨む結果のために」

 

 

    7

 

 

「どうしてそんな事を」

 ピークはゆっくりと首を傾げる。

「今回のヴォルトは異常だ。今まで起こらなかったことを網羅するみたいに披露してきた。一般人は固有能力を知らないだろ?」

「ほう、そりゃあ興味深い」

「お前がどう思うかなんかどうでもいい。あるのかないのか聞いてんだよ」

「さっき言っただろ。まずそれを知ったところでお前はどうするつもりだ」

 正論をぶつけられ言葉が詰まる。

「それは……」

 知ったところで自分は何をしようとしていたのか、胡乱になった思考では思い出せない。

 知っていようと知っていまいと行きつく終着点は一緒のはずだ。暴走しようと自分が制圧すれば同じ事なのに。

「意味のない詮索はやめておいたほうがいい。俺たちが見つけるべきなのは大元だ。それで全てが終わる。暴走や異常が起きるのもわかるが、最優先すべきなのはそっちだ。お前はお前の仕事をしろ」

「…………分かったよ。おれがやるべきことはそれだけだからな」

 そういって立ち去ろうと背を向けたところで呼び止められた。

 改めて向き合ったピークの顔は今までにないほどに真剣だった。

「なんだよ、もう話すことはないはずだ」

「一旦頭を空っぽにしてこい。今のお前じゃ誰も救えない」

 は? と陸は反射的に返していた。

「なんだよそれ。おれのやってる事が間違いだって言うのか」

「考え過ぎなんだよ、陸。俺達はヴォルトになった瞬間から人間であることを捨ててる。そいつらの行いが正義か悪かなんて考えてるんじゃ覚悟が無いのと一緒だ。自覚しろよ、お前のやりたい事を」

 いつの間に拾い集めた鉄棒を小脇に抱え、宥めるようにピークは言う。

 確かにヴォルトは欲望で動くとは言うがそれが実践に直結した覚えがないのは密かに感じていた。

「おれはやりたいようにやってる。それで今まで充分だったし、そういう自分勝手が欲望じゃないのか」

「お前本気(マジ)の脳筋か? そうやってまともに向き合わなかったせいで行き着いた結果がこれだろうが」

 ピークが顎で指し示すのは足元の惨状。

 空想上の欲望で引き起こした、陸にとっては悪夢のような光景が錯覚として繰り返される。

 苦い顔をする陸にピークは辟易したような嘆息をついた。

「陸、お前がヴォルトになった時に誓ったことはなんだ。人間をやめた到月陸はなにを欲望にしたか思い出せ!」

 そうだ、陸は自分の中に引っかかる違和感に答えがついた。なぜ自分が無性に手を伸ばしたくなる理由を失っていたのか。他人の行いを見定めなければと駆られる理由が。

 それは正真正銘、欲望の欠如だった。

 理由を失ったのではなく、前提をわかっていなかった。つまり欲望の定義自体を見誤っていたのだ。

「おれの欲望……なんだったんだ。おれ、」

「だから一度頭をすっきりさせろって言っただろ。そのままじゃヴォルトどころか、仮面ライダーもまともに扱えないまま悲劇を生み出し続けることになるぞ」

「…………」

「ほら行った行った。お前の仕事を全うしろ」

 邪魔だと手を払うピークに、陸は大人しく従った。

 今ここにいてもやれることはない。自分がやることはあくまで一つだと、それをピークに教えてもらったように思えたから。

「おれが人を守る理由、今度こそ守らなきゃいけないと思える理由……」

 突如響いた悲壮感に満ちた、戯けた喚声を背に。

 いつもは年不相応な少年らしい笑みを浮かべる顔は、今だけヴォルトと対峙するときと同等の眉根を寄せた精悍な面だった。

 

 

 

    8

 

 

 絡鳴市はビルだけが立ち並ぶオフィス街としての側面を持っているのは主に中央と呼ばれる場所のみで、そこから東西南北に分かれたエリアにはそれぞれが役割持っている。北は飲食店やデパート、様々な専門店や娯楽施設がある商業エリア。

 陸たちの本拠地はここにある。

 西は巨大な港や埠頭、工場に縁取られた工業エリア。南から東にかけては外界に繋がる橋があることからか観光客用の施設が多い。

 このように言ってしまうとザックリと分けられてるように思うが、実態は境界がだいぶ曖昧で食い込んでいる箇所があったり、隙間を居住区域で埋めていたりと、満遍なく広がった街になっている。

 その中で西と中央の間は自然に溢れるエリア。康介はここに先日訪れたことがあった。もちろんあの女の子と関係する事だ。

 彼女の名前は立島亜里沙(たてしまありさ)。偶然にも巻き込まれてしまった被害者だ。

 突然ヴォルトと関わることになった彼女に妙な親近感を持つというのは失礼な事だけれど、なぜか康介は亜里沙を被害者と割り切る事ができなかった。

 再び同じベンチに座りながら昨日の公園を眺める。いつまで見てもやはりというか、昨日と同じ顔しか見せない。

 たった一日の出来事を経て、康介は自分がどれだけ浅短な考えでここに来たかを思い知った。

 そして、自分はここにいるべきではないと感じてしまっていた。だが逃げることはしない。康介にとってこれは決定事項なのだ。絡鳴市に来る前から決めていたけじめのようなものである。

 

 それにしても。

 今、康介が見ている光景はどこか既視感(デジャヴ)を感じる。

「またこの前みたいに……って、流石に考えすぎか」

 否応なく考えてしまうのはやはり先日の景色。その一部始終を収めていなくとも凄烈を極めたであろう事を察せる廃墟。そしてその下に眠った一つの儚い命と正義を謳う怪人の冷たい眼差し。

 物悲しい事件はいまも恐らく続いている。真実を解明する為に警察が動き出すはずだ。しかしその深い領域については警察の管轄でその内容を知る由はただの一般人である康介にはない。

 一般人は日常の中を暢気に過ごすしかやることがないのだ。

「お前、やけに暗い顔をしているが、後ろめたい事でもあるのか?」

 すぐ側から声を掛けられて、康介は一瞬遅れて首を左へ向けた。

 隣にグレーのジャケットを羽織った男が座っていた。開いたジャケットの前からは赤と黒のチェックシャツが見える。長い足を包む黒のパンツ、それとほぼ同色のショートストレートにした髪に強調された、端整な顔立ちは陸と比べるとクールな雰囲気。寡黙なのか口を真一文字に引き結んだ表情は、つい先程発言したのかを疑うほど眉一つ動いていない。

 やがて銃弾のように真っ直ぐ濃いブラウンの瞳を向けられて、口元を緩く開け、返す言葉を探し倦ねているのを男は察したらしい。

 右頬だけで薄く笑い、やおら視線を前に向けて口を開いた。

「ここで思い詰めた面をする奴は、大抵得体の知れない私情を持ち込んでいた。迷惑なやつらだ」

 男の吐き捨てるような言い方に康介は若干嫌悪感を抱いた。

 個々の持つ悩みや事情を思惟(しい)することに罪があるわけじゃない。少なくとも康介はそう思えた。

「……あの、それが俺になんの関係があるんですか?」

「お前のような奴はきっと真っ先に死ぬだろうな。死体を処理するだけにどれだけの人数が動くか知っているか? 一人の死につき十数人が動く。誰も知り得ない独断を起こす度にその数の人間が巻き込まれる。つくづく迷惑だ」

 最後の一言まで、憤怒も嘲りも、男の口調から全く感じられなかった。大勢の言い分だとでも言うように。

「…………」

 その触れた者を凍傷にするような冷徹さに、再び康介は返すべき反論に言い淀んだ。

 果たして男の持論が正しいかというのはわからなかった。他人の言葉を借りているような言い方に賛同できなかったのは事実だ。男の言い方がそう思わせたのであって、その内容はあくまでも個人の意見としか思えなかったから。

 なのになぜ、自分はそれすら指摘できないのか。

 その疑問に康介が呆然としたままでいると、男が弾かれたように立ち上がった。

 何事かと身を強張らせた康介は、すぐさまその理由を理解した。

 この公園に明らかな異物が混じっていた、視界の大半を埋める緑と焦げ茶のコントラストの中に、輝くように存在する白。

 身体中に植物のようにも見えるボロ(きれ)を纏っている以外の特徴が見当たらない(というよりそのボロ布が身体を隠している)不気味なヴォルト。

 気づけば視界にいたと言っても遜色ない突発な出現。ひっそりと魂を刈りに来る死神のようで。

 その死神っぷりはそいつの数メートル右にいた、走り込みをしている男性が、まるで幽霊をみたかのように転げ回る程だ。

 頭と足の位置が置き換わるほどに転げた男性の不様さに、ようやくそこになにかが居ることを理解した民衆が遅れて騒ぎ出した。

 思い思いばらばらな方へ散っていく人達に、男は小さく舌打ちを鳴らし、隣で未だ茫然とヴォルトを見ている康介の肩を引っ張って引き起こした。

「暢気に突っ立ってるのはお前の自由だ。だから良心で言ってやる。逃げるぞ」

「あ、ああ……」

 康介は胡乱げにただ頷くしかなく、よろよろとヴォルトに背を向けた。

 刹那、背後から物恐ろしい殺気が漂う。

 なにを引き金にしたのか、ヴォルトの標的がこちらに向いたのは明白だった。

「……オ゛……オ゛オ゛…………」

 腹の底に響くように反響する、怨嗟の唸り声に背筋が凍りつきそうになり、動けなくなっていた足が自ずと動いていた。

 未だになれない仮借なき存在感、敵意の目を向けられたときの過呼吸になりそうな重圧、足から這い上がり心臓を握りつぶさんとする恐怖、すべてが人の形に集約され、休む間もなく康介に襲いかかる。




 珍しく次回予告。


 死霊使いのヴォルト――ネクロンの出現に、未だ決意の固まらない陸は内心焦りながらもネクロンと対峙する。だが、ネクロンに変身する立島亜里沙の掲げる欲望の強さと、順応に等しい進化速度の圧倒的な力の前に敗北を喫してしまう。
 それでも陸には諦められない未練と、奥底に封印された過去の欲望が、残された最後の余力を再燃させる。
 ネクロン(死に取り憑かれた者)とスケルトン(死を受け入れた者)、奇しくも近しい二つの力が衝突する。

「ここまで来た意味を思い返せ! おれは変われない! まだ変わっちゃいけない!」



 

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