変異特異点 理想国家 ブリテン 作:メイトリックス大佐
だが、しかしそれが正義の味方を目指したはずの男には耐えられなかった……
「何……?ウーサー王の嫡子で騎士を率いて現在この島を治めているのはアーサー王という名ではなかったかね?」
「我らの王の名はそんな名前じゃないぞ?」
混乱する自分の耳にカルデア経由でマスターから連絡が入ってくる
『私だ。……あぁこちらは安全だ。……そうか、そちらは城下町に。奇妙なことが起きている?……あぁこちらでも確認した。この時代にアーサー王はいないと?……私も同じ意見だ。間違いなくそれが特異点の原因だろう。……そうか君は王への謁見を目的に行動し、私は情報収集に単独でと。いや君の指示に異論はない。そのアーサーではない王が特異点の可能性が高く、それ以外の可能性を私が探るというのは理に適っているだろう。私自身がアーチャーのクラススキルである単独行動のスキルを持っていることから言ってもそれが最適解だろう、了解したマスター』
マスターからの連絡で、やはりこの特異点がアーサー王のいないブリテンであることが確認された。「アーサー王伝説」が歴史に影響を与えなかったということはありえないと言ってもよい。彼らの物語は後の騎士道に影響を与え、かの獅子心王と呼ばれたリチャード一世のように彼らに憧れた君主も存在していたという。そのような物語が消え去れば人理に影響がないということはありえない。
しかし、マスターには言わなかったが
『私は国を守れなかった。国を守るために王となったのにその責務を果たせなかった。その時に思ったのです―――岩の剣は、間違えて私を選んでしまったのではないかと』
生前の折、セイバーは俺にこう言っていた。アーサー王ではない王が就き世界が回っている特異点。彼女以外にブリテンを回せる人物はいたのか?―――答えは、否。ありえない、ありえないありえない。誰も滅びの運命を避けられなかったからこそ、理想の王を求めそれに適したアルトリアがアーサーとなったのだ。それを成せる人物がいたならば女性である彼女を男装させて王にするなどという戯けた発想は出てこない。犯人として、そして考えられるのはモルガンが聖杯を手に入れた可能性だが、現在の治世ややり方といったものから、魔術や神秘を用いず政で解決しようといったものが伺えることからその確率は低いだろう。
――――――ならば考えられることは一つしかない。この特異点を作った黒幕はおそらく己の知る彼女なのだろう。
特異点には中心がある。フランスではジルドレ元帥が、アメリカでは女王メイヴが持っていたように……。キャメロットは別の王が治めている。それではどこにいるのか――――――
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「だから、君はここに現れたのかい?アルトリアの鞘よ」
「ふんっ、やはり貴様は気付いていたか、花の魔術師」
アーサー王の最期はべディヴィエール卿が聖剣を湖の精に返還し王はアヴァロンへと向かうで締めくくられている。彼女に所以ある場所ということで、生前調べていたアーサー王伝説が残されていた湖に来たのだが
「酷いじゃないか。僕が夢魔と人との混血だと知って、君はその剣を投げたな」
「英雄王や魔術王に匹敵する千里眼を持つ貴様が気付いてないことがありえるのかと思っていたがやはりその通りか。世界は平和そのもの、人々が疑問に気づくなどありえん。例え、円卓の騎士といえども気付かんだろう」
セイバーはおらず、落胆しかけていたところにカルデアで縁を結んだこともあるトラブルメーカーが現れたのだ、破魔の力を持つ干将と莫耶を投げつけたがうまく躱されてしまった。
「なぜ、気付いているのなら対応しない!この歴史は間違っている。彼女が……アルトリア・ペンドラゴンが成した全てが消え去るなど人理を無視したとしてもあってはならないはずだ!それを貴様は容認するか、彼女の師であり後見人でありキングメーカーとも呼ばれたお前が!答えろマーリン!」
「少し落ち着きなさい。僕は人の感性とはずれていることは自覚している。だけどね、僕もこのような結果が……一見平和に見えているがその裏での犠牲があったことは容認できない」
マーリンは飄々とした態度ながらも珍しくその顔つきは厳しいものとなっている。
「ほう?ならなぜ貴様は何もしていない?犠牲という言葉を使ったな。ならば、その犠牲になっている相手も推測できる。セイバー……アルトリアが犠牲になっているな」
「その通りだよ、あの子のマスター・衛宮士郎のその成れの果て。そして、君は気付いているんじゃないのかい?」
「あぁ、気付いてしまったとも。この特異点の犯人、そして犠牲になっている人物がな」
その事実はオレの根底に関わることだ。なぜなら
「マーリン、この特異点の犯人は……オレが愛した、衛宮士郎の可能性の一つであるオレが救えなかったアルトリアが聖杯を手に入れ選定をやり直したことが原因の特異点だな!」
座にある知識として、現在特異点にいるオレが知っているどの可能性のアルトリアでもない。ヘラクレスから守るために殿を任された世界のアルトリアでもない、未熟な自分に負けた世界のアルトリアでもない、影が現れ敗退したであろうアルトリアでもない。
――――――――――――オレが、いや俺が生前助けられなかったアルトリアが原因であることを確信してしまったのだから。
それは過去の過ち、何の落ち度もなかった。
ただ服を着る時ボタンがずれてしまった。そのような小さな何かがずれてしまったことで一つの悲劇がおきた。
体は剣で出来ていた男は抑止の奴隷として、人を守るために人を殺すという矛盾で摩耗した。本当の自分はただ人が笑ってくれれば良かったのに。
大切なものを捨て、本当に守りたかったものさえ失った。
ならば、女はどのような道を辿ったのか――――――――――――