chapter1.消えた陽だまり
このお話を読んでいる皆さん。初めまして。小日向未来です。響にとっての陽だまりの未来です。
自己紹介はさておき、一つ質問を。皆さんは、泊りがけで遠い場所に出かけたことってありますか?
別になんだっていいんです。旅行でも、出張でも、遠征でも。はたまた留学でも。この中でやったことがあることが、何かしら一つはあるでしょう。
でも、そこから帰れなくなったことって、ありますか?
いきなり訳の分からない場所に飛ばされてしまったことって、ありますか?
普通はないですよね。えぇ、そうですとも。お話の中で起こることだと思うでしょう。
ところが私の身には、それが起きてしまったんです。おまけに、方々で酷い目にあったりしましてね。無論、得なことも多かったのですが。
このお話は、そんな私の体験に関するお話です。それでは、時計の針を2017年の9月20日に戻す事にしましょう。
どうぞ!
「それじゃあ、元気でね。響」
街の中にある公園で私は親友、立花響にお別れを言いに来ていた。この響は並行世界のもう一人の響で異変の原因にもなっていた。その響を助けたことで私の役目も終わり、今日帰ることになっていた。
「うん。未来もね。別の世界から助けに来てくれて、本当にありがとう」
響はとても寂しそうにしていた。無理もない。
「大丈夫。いつかきっと、また会おうね。その時はもっとゆっくりお話ししよう」
「わかった。またいつかね」
幾らか哀しげな表情を和らげて響はそう言った。
「響、また今度、楽しみにしててね」
「また会える日を楽しみにしてるよ」
そう言って私は響と別れた。そしてマリアさん達との待ち合わせ場所へ行こうとした。その時だった。
私の頭上に巨大な魔法陣が現れたのだ。それだけではない。魔法陣の中から鎖が伸び私の身体に巻きついた。私は慌てて振りほどこうともがいたが、力及ばずその中に引き摺り込まれた。私の意識はそこで闇に飲まれた。
水が流れる音と小鳥のさえずりが聞こえる。あれからどのくらい経ったのか。私はそこで目が覚めた。雨でも降った後なのだろうか。土が湿っていて霧が深い。辺りを見渡してみた。私のいるところの横に小川が流れている。水の音はこれだろう。そして周りは背の高い木が鬱蒼と生えている。どうやら山の中らしい。でも何で私はこんなところに?それに今気づいたが服装もおかしかった。普段着じゃないのだ。手にグローブ、脚に大きなアーマーが装着されている。体にはボディースーツ、手には扇のようなものが握られている。神獣鏡を装着しているのだ。でも私は聖詠を唱えた覚えはない。何で装着しているのだろう。
「ここどこだろう。確か向こうの響と別れて…、変な鎖に巻きつかれて…。私、なんでこんな山奥にいるんだろう。それにあの時ギアは装着してなかったし….」
私は辺りを見回して困惑するのだった。