狭いベッドで2人寝ているときだった。
ドンドンドンと荒々しくドアを叩く音がする。
「何なんだよ。一体…」
「五月蝿いなぁ」
私達は寝ぼけ眼を擦りながら起きた。時刻はまだ0時だ。こんな遅くに誰だろう。変な人だったら嫌だなぁ。
もしもの時に備えて、LiNKERー爆撃にあったとき無事だった5本から1本を取り出して打っておく。
「はぁーい、どちら様で」
ハンナさんがランプを点灯してドアを開けるとそこには、
真っ黒な服を着て、警棒を持った男の人が立っていた。
「ミク、逃げて!」
ハンナさんが慌ててドアを閉めようとした時にはもう遅かった。
思想警察の隊員は、鳩尾を殴りつけて彼女を取り押さえ、外へ運び出していった。
私はハンナさんの声に、慌てて窓から飛び出して逃げようとした。でもそこにも既に梯子がかけられていた。思想警察の隊員が今にも窓を破って入ろうとした。
「R…Rei shen shou jing rei zizzl」
なんとか聖詠を唱えて、天井に向けてビームを一発撃つ。穴を開けてそこから全速力で上空まで逃れる。兎に角、目一杯の速さで多分ヘリコプターでも届かないようなところまで飛ぶ。
下を見るとグレートブリテン島がよく見える位置までたどり着いた。助かった。でもハンナさんは?
あのままだと無事では済まないのは確かだ。何とかして助けに行きたい。でも何処にいるんだろう?
一番考えられるのは、愛情省だ。あまり覚えてはいないが、小説では確か心が折れるくらい激しい拷問をかける場所だった筈だ。あんな所に連れていかれているのだとしたら早く助けにいかないといけない。でもあそこは非常に厳重な警備が敷かれている。入り込むのは簡単にはできない。
次に考えられるのは、強制労働キャンプだ。でもそれは何処にあるのか、全くわからない。それを探すのにはかなりの時間がかかるに違いない。ハンナさんがもし愛情省にいたのなら、それこそ手遅れになりかねない。
それならば愛情省に潜り込むしかない。でもどうやって?さっきも考えたが、ああいう場所はかなり厳重な警備が敷かれている。下手に行ったところで取り押さえられるか殺されるのがオチだ。正面から無理矢理突入しようものなら尚更のことだ。
それなら空からならどうか。これも大して変わらないだろう。如何に神獣鏡を纏っていても、忽ちヘリコプターに囲まれてにっちもさっちもいかなくなるに決まってる。
何とか姿を隠せられればいいのだが。それならば相手に気づかれずに入り込むことが出来る。でもそう簡単には…、ん?
そういえばこのギアにはステルス機能があるらしい。それを発現させることができれば助けに行くことが出来る筈だ。
「ハンナさんには瓦礫に埋もれていたところを助けてもらったし、それに私を匿ってくれた」
LiNKERを一本取り出しながら心の中で想いを浮かべる。
「今度は私がハンナさんを助けたいんだ!だから力を貸して!神獣鏡!」
首にLiNKERを打ち込む。身体の中がものすごく熱い。副作用だ。
でも今はそんなことは気にしてはいられない。倒れるならハンナさんを助けてからゆっくりとそうすればいい。そう考えて眼下のグレードブリテン島を睨む。
その時だった。ギアの形が変わった。まず色合いが全体的に灰色と滅紫を基調としたものに変わった。次に上腕部に装甲が取り付けられ、バイザーにはアンテナが増設された。バイザーを閉じると「ステルス機能起動」と表示されている。
「ステルス型のギアってわけかな」
そう呟いて私はロンドン目掛けて、降下を開始した。急がないと!
如何でしたか。
小説オリジナルのステルスタイプのギアの登場です。見た目は大して変わりませんが。
次回、オセアニアの絡繰が一つバレます。
お楽しみに!