陽だまりシリーズ:小日向未来<放浪>   作:ヨザリイコイ

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オセアニア国は1984年の段階ではまだまだやっていけました。しかし2017年の段階でもそのままでいられるのでしょうか?
本来はハンナさんを奪還する内容でしたが、上記のことを考えて内容を変更しました。


chapter15.マイケル・ライクハート

 愛情省の何処かの階にある無人の廊下を突き進む。するとテレビのようなものが壁にかかっているのが見えた。あれが噂に聞くテレスクリーンだろうか。だとしたら気をつけて通らないと。見たところテレスクリーンの画面は真っ黒だから電源が切れているのかもしれない。でも油断は禁物だ。

 ゆっくりと歩いて通り過ぎる。イオノクラフトだと音が出てしまうからだ。抜き足差し足、忍び足。抜き足差し足、忍び足。抜きあ……。

『そこに誰かいるのか』

 ギクッとして恐る恐るテレスクリーンのある方に顔を向ける。画面には50代くらいの黒いオーバーオールを着た男の人が映っていた。でも男の人はどうやら私のことが見えていないらしい。

『誰もいないのか?いやそんなはずはない。確かに飛行機が飛ぶような音がした 』

 ま、不味い。見つかったかもしれない。

『もし誰かいるのだとしたら隠れたままでいいから聞いていてほしい。君はおそらく捕まったプロレを助けに来た外国人だろう。残念ながら彼女は愛情省には居ない。私の邸宅だ。すぐに来たまえ。私はマイケル・ライクハート、党内局員だ』

 ここには居ない?もしかしたら罠かもしれない。でもそれなら省庁の中ではるはずだし…。取り敢えず行ってみようかな。ハンナさんの消息も気になるし。

 私は元来た道を引き返してロンドンの夜空にまた身体を浮かべた。党内局員の家って何処にあるのかな?

 バイザーを使って探すことにした。

 

 

 

 

 

 

 ロンドンの郊外にそれはあった。豪華なお屋敷が何軒もある住宅街だ。でも…何処かみすぼらしい感じがした。

「ここかな…」

 Inner Party members blockと書いてある標識もあるから多分ここなのだろう。取り敢えずライクハートという人の家を探す。表札読めるかな。筆記体苦手なんだよね…。そもそも表札自体あるのかな?

 

 

 

 

 

 中に入ってみると先程のみすぼらしい感じがした理由がよくわかった。ここはかつて高級住宅街()()()のだろう。恐らく主人公が来た頃は。

 だけど今目の前に広がる建物はどこもかしこもボロボロだ。ハンナさんのアパートよりはマシだけども。

 15分くらい歩き回っているとライクハートと書かれた表札が見つかった。ずいぶん痛んでいるようだけど。

 そのまま入るわけにはいかないので、ギアで飛びながら建物の中を偵察することにする。すると2階の方で生命反応がした。

 2階のバルコニーに着地して反応の出所を調べる。どうやらこの奥の部屋のようだ。急がないと。

 中に入ろうとすると鍵がかかっている。当たり前か。さてどうやって開けようか。よくみると廊下にテレスクリーンがかかっているから泥棒のように叩き割って入るわけにはいかない。どうしよう。

 

 

 

 

 

 しばらく思案してみた結果、アームドギアを使って焼き切ることにした。アームドギアの先に光を集めて、細くビームを出す。そうやって引き戸の近くのガラスを溶かしていく。

 1分も経たないうちにガラスは溶けた。そのときパキッと音がしてヒヤリとしたが、テレスクリーンはなんら反応を示さなかった。無視したふりをしているのかもしれないが。

 奥の部屋のドアに手をかける。それを押して中に入るとそこには…。

 ハンナさんとさっきのテレスクリーンに出ていた人がいた。

 

 

 

 

 

「姿を見せてはいかがですか」

 男の人がさっきよりも丁寧な口調で話しかけてきた。神獣鏡でサーチしてみたが、変なものは一つもないようだ。テレスクリーンもないというのも何か変だが。

 おかしなものがないようだから、変身を解く。

「こちらへお掛けください」

 丁寧な口調で椅子に座ることを勧められた。

 椅子に座ると男の人の使用人らしき人が、三つの持ち手が欠けたマグカップと何か透明な液体の入った瓶を運んでテーブルの上に置いていった。

「今はこんなものしかありませんが、どうぞ」

 男の人に勧められてハンナさんと2人で飲んでみた。でもなんだこれ……。ご馳走になっておいてこんなこと考えるのも失礼だけど、酷い味だ。なんといったらいいのか、例えようのないくらいに不味い。

「ヴィクトリー・ジンです」

 そういえばお話の中にそんな飲み物があった。こんなに酷い味なんだ。お酒飲んじゃったことは気にしないでおこう。

「申し遅れました。私は党内局員のマイケル・ライクハートです。あなたは?」

「小日向未来です」

「あなたが彼女に匿われていた外国人ですか」

「そうです」

「そうだよ。私が匿ってたのはこの子さ」

 ハンナさんと2人でマイケルさんの質問に答える。

「それにしても…」

 私は部屋の中を見回してこう言った。

「テレスクリーンがないんですね。この部屋…。どこにもそれらしいものないようですし」

「それに関しては誠にお恥ずかしい話なのですが…、テレスクリーンは廊下にある一台だけしか我が家にはないんです。故障していて録音機能も使えないものが今は多くてね」

 マイケルさんは禿頭を撫でながらそう言った。

「物不足が深刻化しているんです。長年の資源の浪費が祟ったのか我々党内局員の方も今ではこの有様です」

 よく見てみるとマイケルさんの黒いオーバーオールはヨレヨレでその上あちこちに穴が開いていた。それに靴もだいぶ傷ついている。

「党内局員はそこそこ良い暮らしが出来たと聞いたことがあるのですが…」

「そういやロンドンの何処かで何でも持ってる連中がいるって聞いたことがあるな」

 ハンナさんがそういうとマイケルさんはこう言った。

「それは昔の話、といっても30年程前の話ですがね。今のご時世、党内局員と党外局員の差といえば住んでいる家と特権の有無くらいです」

 なんとそこまで酷くなっているとは。

「ダブルシンクはなさらないんですか」

 気になって聞いてみた。

「今ではそんなことしていられませんよ。もはや現実を無視してはいられないのです」

 マイケルさんは溜息をついた。

「おっと。雑談が長くなってしまいましたな。実はお二人をここに連れてきたのは訳があります」

「訳、それは何さ?」

「御二方、私に協力していただけませんか?」

 マイケルさんが頭を下げてそう言った。協力…?

「それは私達に党内局員に入って欲しいと…?」

「そういうことです」

 何だかすごいことになってきた。

 党内局員って、私、政治なんてやったことないよ!?

 

 

 




新キャラクターのマイケル・ライクハート。党内局員の改革派の1人です。
さてこれから何が起きるのか?
乞うご期待!

余談ですが、本作のオリジナルキャラクターの風貌は読者の皆様のご想像にお任せします。
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