だからといってお腹がふくれるわけではないのですが。
愛情省の廃止の日から改革は猛烈な勢いで進んだ。
翌日には真理省が今迄情報を改竄していたことを謝罪。街頭に新しく設置されたラジオ(テレビだと党員に怖がられかねないらしい)と号外のザ・タイムズからこれからは事実のみを伝えることを確約。
12月13日には豊富省が食料品と日用品を緊急輸入した。青いオーバーオールを着た人達が大喜びしていたっけな。確かあの人達専用のお店、物がいつもなかったらしいから。
15日には平和省から戦争(正しくは戦争のふり)の終結が伝えられた。捕らえていた外国人の人達も皆解放して、それぞれの国に帰した。
どんどん国が変わっていく。ウィンストン・スミスもオセアニアがこうなるとは、思ってもみなかっただろう。
そんなことを思いつつ、私達はカフェ(チェスナットツリーカフェっていうらしい。何処かで聞いたような名前だ)でコーヒーを飲んでいた。3ヶ月ぶりのちゃんとしたコーヒーだ。
「コーヒーってこんな味なのかね?」
「そうだよ。今迄のが酷すぎたんだよ」
2人でこうやってコーヒーを飲んでいるのは訳がある。
それはやることがないからだ。
「党員の仲間入りをしたとはいえ、やっぱり元がプロレじゃ相手にされないのかね」
「さぁ、どうだろう。私なんかここじゃ外国人だし」
特に仕事もなく、ここにいる。
「しかし党の政治屋ばかり見てないで、プロレのことも見て欲しいよ」
「確かにね」
改革が始まってもプロレの人達の生活状態はあまり良くなってない。早いとこ手を打った方がいい。
どうしたもんかと考えていると、マイケルさんから使いが来た。
すぐに来て欲しいらしい。何だろ?
2人でマイケルさんの所に行った。来るなりこう聞かれた。
「プロレ達の生活状態はどうなっていますか?」
口を揃えて返した。
「さして良くなってません」
畳み掛けるようにしてこう続けた。
「特に食う物が全然ないよ。あれじゃ干ぼしになっちまう」
「プロレまで改革の恩恵が届いてないですよ。早く手を打った方がいいです」
マイケルさんは少し首を傾げていた。
「プロレにまで食料品が回っていない?妙だな、そんなはずは無いのですが…。兎に角、もう少し輸入することにしましょう。外貨もまだ残ってますしね…。そうだハンナさん、食料品の輸入のために海外に出向いてください」
ハンナさんは目を丸くした。そりゃそうだろう。いきなり外国に行けって言われたんだから。
「唐突だね」
「買い付けの際に何か妙な動きがないか監視していてください」
「まぁいいさ。わかったよ」
「マイケルさん、私は」
マイケルさんは辺りを見回してこう言った。
「未来さんには別件で見てもらいたいものがあります。残ってもらえますか」
「分かりました」
その後、ハンナさんはいつぞやの白髪の男の人(エドワード・スカーレットというらしい)とともにオーストラリアに向かった。
それにしても別件って何かな。
ハンナさんがエドワードさん共々、マイケルさんの執務室から下がると私は屋敷の奥にある小部屋に案内された。
マイケルさんは入るときに辺りを見回し、中に入ってからは怪しいものがないか調べ、何もないことがわかると戸に鍵をかけた。
「どうしたんですか?」
「未来さん、これから貴方に一つ任務を任せたいと思います。この仕事は危険を伴います。ですが貴方でないと出来ない仕事だと私は考えております」
「どんな仕事ですか」
「内容の説明の前に貴方に質問したいことがあります。貴方が初めてこの屋敷に来た時に装着していたもの、あれは何回でも装着できるものですか?」
「いえ、あと3回しかできません」
「そうですか…。では1回につきどのくらいの時間、装着できますか?」
「確か7〜8時間くらいです」
「わかりました。質問は以上です」
「…まさか神獣鏡がらみの依頼ですか」
「あれはそういう名前なのですか。えぇ、そうです」
「内容次第ではお断りしますよ」
「かまいません。では本題に移ります」
マイケルさんのいう任務、それはこんな内容だった。
「我々が輸入した食料品や日用品の量は、プロレも含めたオセアニアの全国民に充分に行き渡るくらいありました。それなのにそうならないのは、恐らく誰かがどこかにもちだしたのだと思います。今度輸入された品でもそういうことが起こるかもしれません。そうならないよう見張りを頼めますか」
未来さんの初仕事が決定しました。
うまくいくのかどうなのか、
次回乞うご期待!