陽だまりシリーズ:小日向未来<放浪>   作:ヨザリイコイ

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ここで前回の補足をお伝えします。
現在、未来のいるところは、スコットランドの片田舎にある強制労働キャンプの跡地です。愛情省廃止の際に放棄されたものを未来の反対派閥の保守派が占拠していました。
さてこんな状況で未来はどうなるのか。


chapter22.脱出

  「もういや、もうむり…」

 ここに閉じ込められてからもうすぐ2週間になる。多分、今は1月くらいかな。年をこんなところで越すことになるなんて。私が何したっていうの。

「体痛いし、それに寒いし…。誰か助けに来てよ、ねぇ、誰かぁ」

 毎日、拷問にかけられたり、畑仕事をさせられたりで、体がガタガタだ。おまけに暖房もないから寒い。ベッドに横たわっているけど、全然眠れない。思い切って逃げ出そうとしたけど、結局失敗して、余計に酷い目に遭わされただけだった。

「おい!」

「は、はい!何でしょうか」

「お前、料理はできるか」

「は、はい。一応は」

「そうか。ならばお前が今夜の夕食の支度をしろ。すぐにだ」

「わ、わかりました」

 そのまま台所まで引っ張っていかれた。

 

 

 

 

 

 燃料庫のとなりに台所はあった。随分と古いものだった。まさか薪を使うことになるとは。

「何をしている!早くしろ!」

  「は、はい」

 食材は色々あった。野菜、魚、牛肉などなど色々ある。プロレ達が見たら大騒ぎしそうなものばかりだ。

 まさかプロレ用の食材じゃないよね。あのとき盗まれたやつじゃ。

 そんなことを考えながら、黙々と食事の支度をした。しないとどんな目にあわされるかわからないからだ。

(あぁ、作る相手が響ならなぁ)

 作りたくもない相手に料理を作らなきゃいけないのがこんなに辛いことだとは。

 

 

 

 

 

 

 向こうは盛り上がっているみたいだ。お酒飲んでるのかもしれない。私を見張っている看守もそこに混じっている。私を台所の支柱に鎖で繋いでおいて呑気に飲んでる。人をまるで犬みたいにして…。悔しいけど、今は言いなりになるしかない。

「さてと、火が消えないように薪を…」

 薪を火に焚べようとしたときにふと考えた。これ、うまくいけば逃げられるんじゃないかと。隣には燃料庫がある。こっちには火がある。おまけにここは木造だ。何とかなるかもしれない。幸いなことに足枷を付けられていない。絶好のチャンスだ!

 どうにか気付かれないように燃料庫から何か持ってきた。見てみるとガソリンって書いてある。何とかなりそうだ。

 でも…、もしこんなことしたら、あの人達はただでは済まない。あの人達にも何かあったら悲しむ人がいるはずだし。だからといって、何もしなかったら私の方が危なくなる。どうしたら…。

「おい!そこで何してる!」

 まずい!見つかった!良心が咎めないわけじゃないが、こうなったら仕方がない。

「ごめんなさい!」

 私はガソリンの入った一斗缶と火のついた薪を宴会の会場目掛けてぶん投げた。

 

 

 

 

 

 

 それから何があったのか、何処をどう逃げたのか全く覚えてない。気がついたときには何処かの川のほとりにへたり込み、ゼエゼエと荒い息をついていた。

「た、助かったんだ」

 何とか逃げ出すことに成功したみたいだ。追っ手が来る気配もない。一先ず安心だ。

 それにしてもロンドンへはどっちに行けばいいんだろう。

 どさくさに紛れて持ってきた鶏肉をかじりつつ、私は上を見た。そこには満開の星空が私を見守っていた。

「お目当の星はと…」

 

 

 

 

 歩きながら空を見上げる。北極星の位置を確かめないと。今はコンパスも何もない。

 今、私は南に向かっている。理由は簡単。寒くて仕方がないからだ。だから少しでも暖かいところに行こうとしている。

「南に行こう、さっきまでいたところは北にあるし」

 今はただ歩いて行こう。もうこわいことなんてない。

 

 

 

 

 8日間歩くとどこか大きな道に出た。標識を見てみるとロンドンまであと300マイルと書いてある。つまり500キロほどある。遠いなぁ。バスか何かあればいいけど、今の私は一文無しだから乗れない。

「歩こう…」

 

 

 

 それから7日間歩き続けた。でもロンドンまであと220マイルある。でももう足が痛くて歩けない。ヘトヘトだ。

「車でも通りかかってくれたらいいんだけど」

 道の脇でへたり込んでいるとトラックが通りかかってきた。よろめきながらも立ち上がり、親指を立ててみた。運良くトラックは止まってくれた。

「こんなところで何やってん…ミクか?」

「え…」

 運転手はハンナさんだった。

「どうしたんだよ、こんなところで!それにその格好!おまけにそんなに痩せて!何があったんだよ。と、取り敢えず乗れよ」

 ハンナさんに抱えられて、私はトラックの助手席に乗せられた。やっと知ってる人に会えて、もう歩く必要もないから少し安心したのか、私は寝てしまった。

 

 

 

 気がついたときには、私はベッドで寝かされていた。

「あれ、ここは」

「病院だよ」

 ハンナさんやマイケルさん達がそこにいた。

「申し訳ありません。こんなことになってしまって」

 マイケルさんが頭を下げて、私に謝った。

「あの人達、一体なんだったんですか」

「保守派です。私の考えが気に入らない連中ですよ」

「そうですか」

「一応、今回の件から彼方此方で調査した結果、保守派が潜伏している場所が250箇所くらい見つかりました。全て摘発したので今後は物資が奪われることはないと思います」

「それは良かった」

「ミクさん、あなたをこんな目にあわせてしまって本当に申し訳ありませんでした。ここは私の部下が警備を担当しています。安心して心と体を休めてください」.

「どうも…」

 今はもう休みたい。

 響、私何とか生き延びたよ。




何とか逃げ出し保護された未来。
そろそろこの世界ともお別れになります。
次回、第2章最終回です。
乞うご期待!
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