ロケット研究者として有名な並川博士が帰ってくるとのことで、大忙しだ。
親父さんが子供達やライダーガールズを連れて群馬にハイキングに行っている間に、一文字さんは取材の準備、滝さんは護衛任務の準備に取り掛かっている。私はその手伝いだ。ハイキングに行くことも進められたけど、なんか群馬の山には近寄りたくないんだ。どうしてだろう。ここに来る前に、何かあったのかな。
まあ、そのうち思い出せるか。そのうちが早く来て欲しいものだけど。
「エミさんの行方が分からない?わかったよ、親父さん。すぐに行くね」
エミさんが山の中で急にいなくなったって、親父さんが電話で知らせてくれた。1時間探したけど見つからないらしい。それは大変だ。何かに巻き込まれたのかもしれない。
急いでサイクロン号を引っ張り出し、走らせようとする。すると……、
「麻由ちゃーん」
後ろから呼ばれたので振り返ると、件のエミさんがそこにいた。
「あれ、エミさん。ハイキングに行ったんじゃなかったの?」
「途中で具合が悪くなって一人で帰ってきたの」
「具合が?」
言われてみれば、青白い顔をしている。貧血かな。それにしては、青すぎるけど。目の周りが特に。化粧品使ったというよりも、絵の具を塗りたくったような顔だ。
「うーん、具合が悪いんじゃしょうがないか…。でも黙って帰っちゃダメだよ。親父さん達、かれこれ1時間くらい探し回ってたみたいだから」
「ごめんなさいね」
「それじゃあ、私は親父さんに電話しておくから。お大事にね」
エミさんが家に帰っていった。私はそれを見届けてから、親父さんに無線機を使って連絡した。
「もしもし親父さん。エミさん、東京に帰ってきてたよ」
「何だって」
「何でもね、具合悪くなって先に帰ったんだとか」
「しかしエミが居なくなってから、まだ1時間半も経っていないぞ。あいつ、どうやって帰ってきたんだ」
「そこまで行くのにどのくらいかかるの」
「車で2時間半だ。列車とバスを乗り継いでも帰れるが、それだともっとかかる。神隠しか、瞬間移動でもせん限りは帰ってこれない筈だ」
「えっ」
それじゃああの人、どうやって帰ってきたんだ?
「親父さん、急いで帰ってきて!私は一文字さん達に知らせて、あの人を見張っておく」
夜までエミさんの動きは、特になかった。
「思い過ごしかなぁ」
コカ・コーラの瓶を空にして見張る。これで5本目だよ。お腹タプタプ。太らないからいいけどね。そういう意味では、この身体は便利だ。体型維持するのに、苦労しなくて済むし。
そんなことを考えつつ、エミさんの家の周りをうろついていた。これじゃ不審者だ。
途中、滝さんや親父さんと交代交代で見張っていたが、特に何もなかった。
動きがあったのは、懐中時計が夜中の2時を指した頃だった。何でこんな時間に。薄気味悪いな。
「出てきた出てきた」
エミさんは寝間着のまま、袋を抱えて家を出た。何だろう、あれ。歩いて行く方角には、一文字さんの家が確かあったな。
「夜中の2時になんて、どこ行くつもりだろう」
この辺りには、こんな時間に開いている店なんてないよ。当然、一文字さんの家の方にもない。
「ますます変だな」
まぁ、いいさ。後をつければ分かる話だ。
行った先は、一文字さんの家だった。合鍵を使って、中に入っていった。なんか届けるよう頼まれたのか?若い女の人一人で夜遅くにそんなことをさせることはしないはずだけど…。
「そもそもあの中身が気になる。あれは何だ」
尾行にならなくなってしまうけど、中に入って調べてみるか。
一先ずエミさんが帰るまで植え込みの陰に隠れることにした。
エミさんの姿が見えなくなるまで、息を殺して身を潜めていた。
そして見えなくなったところで、家の中に入った。
寝たふりをして待っていた一文字さんがカメラのレンズを持っていた。
「そのレンズを渡しにきたんですか?」
「ああ。だが撮影に必要な機材は全て揃っているし、持ってきてほしいとも頼んでいない」
「差し入れでしょうかね。それにしては色々と変だけど」
「こんな時間にこっそり置いて行くのは、おかしいだろう」
余りにも怪しいからそのレンズを一文字さんが分解した。すると中からとんでもない物が出てきた。鉄砲の弾だ。
「こいつはソ連製のトカレフ弾じゃないか。するとこれは発射装置か。まるでスパイ道具だ」
「これ気付かずに使っていたらとんでもないことになっていましたね」
「全くだ。エミちゃんは一体どこから持ってきたのやら」
またあいつらかな。懲りもしないで。
結局、今日は解散して、明日に備えることとなった。
やってきた博士の帰国の日。
港に出迎えの人や取材陣が押しかけていた。私も一文字さんのアシスタントということで、そこに行った。
「さてさて、敵さんはどう出てくるかね」
こっちに作戦がバレた場合の予防策ぐらい立てている筈だ。仮に港で何も起こらなくても、別の場所で騒ぎを起こすに決まっている。抜かりがないからね。
港では特に何も起こらなかった。そう。港では、だ。博士が研究所に戻ってから、問題が発生した。
研究所の周りを滝さんと二人で手分けして見回りをしていると、滝さんがあのエミさんに連れられて、何処かに向かっていた。そっと後をつけるとサバイバルナイフを持った戦闘員が出てきた。
滝さんに加勢して二人掛かりで蹴散らすと、カラスの鳴き声のような変な声をした怪人が襲いかかってきた。新型だ。
「誰だ!」
「俺は怪人プラノドンだ」
プラノドン。名前から察するに、プテラノドンの怪人みたいだ。見た目もそれっぽい。でもプテラノドンじゃ、何ができるのか、皆目見当がつかない。
様子を伺っていると火の玉を口から吐き出してきた。
滝さんはあちこち飛び回って全て避けたけど、私は一発掠ってしまった。
「あちち!」
「おい、大丈夫か!」
「大丈夫です」
ベタな怪獣映画の怪獣みたいに、火を噴くのね。まぁ、これくらいならそれ程、大変じゃない。他は無いのかな。
「今度はこれでも喰らえ!」
翼を広げてこちらに突風を浴びせてきた。結構強い風だ。でも風なら好都合だ。
突風を利用して変身し、プラノドンに頭突きを当てる。頭の角の部分が身体に突き刺さるから、これはかなり効く筈だ。
しかしその考えとは裏腹に、大したダメージにはなっていなかった。
プラノドンが空に舞い上がったのを追っかけて、こっちも飛び上がりショルダータックルをぶつけ、そのまま空中戦にもつれ込んだ。
向こうは火球を放ってくるけど、避けずに突っ込み、左腕で一気に顔面を打ち抜いた。さらに腕のコードを伸ばして、首に巻きつけて締め上げる。
「これでどうだぁっ!」
プラノドンも苦しいのか翼をばたつかせている。 しかししばらくすると急に大人しくなり翼を広げた。
「どうかしたのかな」
「ええい、ままよ。こいつでどうだ!」
その様子をこちらが訝しんでいると、頭の触覚がこちらに向けられた。すると急に雑音が聞こえてきた。それだけじゃない。
「わっ、な、何だ」
力が抜けていく感じがするのだ。それに何だか身体が重い。全然思うように動かない。そのまま地面に叩きつけられてしまった。
「ァアー、これは予想外。俺の発狂音波が通用するとは思わなんだ」
発狂音波?それで身体の調子がおかしいのか。
「まぁいい。これからは俺の番だ」
それからは防戦一方に追い込まれてしまった。力が入らなければどうにもならない。攻撃が大して入らないし、入っても殆どダメージを与えられなかった。
結局、異変を察知した一文字さんが援護してくれたから助かったが、滝さんは攫われてしまった。
その場に倒れていたエミさんを病院に運び込み、調べてもらった。すると耳の中に妙な物があることがわかった。カプセルのようなものらしい。耳から摘出された後、カプセルを割ると中から変な機械が出てきた。受信機らしい。
「こいつでラジコンみたいに操っていたのか」
摘出された受信機そのものは、まだ動いているみたいだ。親父さんが持ってきたスピーカーに繋ぐとこんなことが聞こえた。
「滝、博士を乗せた車は、生田ドライブウェイに進入した。狙撃地点通過まで、残り約7分だ。心してかかれ」
二段目の策がそれか。しかし7分だと、この病院から飛ばしていかないと間に合わない。
病院の屋上から飛び降りて、一気にドライブウェイの方向へ向かう。バイザーのナビゲーションに従い、プラノドンの電波の受信先を特定する。20秒で、さっき摘出されたものと同じ周波数に固定してある受信機の位置がわりだせたので、方向を修正してさらに加速する。プラノドンの音波が聞こえ出したらまずいから、今のうちに飛ばしておく。万が一、聞こえてもどうにかすると親父さんは言っていたけど、どうするつもりだろう。何かあてがあるのかな。
車が通りかかる寸前で滝さんを発見し、銃を捻じ曲げて使えなくした。
襲いかかってきた滝さんと揉み合っていると、一文字さんが到着して首に手刀を打って彼を気絶させた。
それを見ていたプラノドンが、またもあの音波を流して、私を無力化しようとした。でも今度は力が抜けることがなかった。あれ?
「普通に動ける。なんでだろう」
相手も想定外みたいで、慌てている。しめた。
空に上がり、ダブルスレッジハンマーを頭に叩きつけてふらつかせ、身体を逆さに持ち上げて地面目掛けて急降下する。
「これは効くよぉ!」
地面に頭から激突したプラノドンは、どこかで見たような映画のワンシーンみたいに足を立てた後、ばたりと倒れて爆発した。案外呆気ないものだ。
滝さんからも受信機が無事に取り出されて、今回の件は終わった。滝さんやエミさんは、今回のことを私達に謝っていたけど、そもそも2人のせいじゃないし、どうにもならないことだったからね。すぐに水に流した。
一文字さんたちが並川博士の息子のアキラくんにプレゼントを持っていっている間に、親父さんにどうやって音波を無効化したのか聞いた。
「ジャミングだ。同じ周波数の音を流して、音自体を単なる雑音にしたんだ」
「どうやったの?」
「なに、知り合いにアマチュア無線をかじっている奴がいてな。そいつに頼んで流してもらったわけさ」
「へー」
「それにしても麻由。音波で調子が狂ったということは、お前のあの姿は、音が関係しているのかもしれんな」
確かにそうかもしれない。でも今までのショッカーとの戦いでは、特に音が関連した戦いはなかった。偶然、そうだっただけだと思うけど。
でも音か。音。音。
「ん?」
頭の中で少しだけ音、いや歌が聞こえた。歌声は私のものだ。歌詞からして始まりと終わりがテーマなのかな。よくわからないけど。
音というか歌かな。もしかしたら関わっているのは。
早く知りたい。
パイルドライバーで怪人を倒した麻由。
そして自分の力が音に関わっているものだということに気づきました。
いつ小日向未来に戻れるのやら。
次回乞うご期待!