稲刈りの晩から1週間たった。まだなんの音沙汰もない。まぁ、平和に越したことはないけれども…。このまま何も起こらずにいて欲しい。私はそんなことを考えながら、近くの川まで歩いていった。秋なので泳ぐことはできないが、石切りくらいはできそうだ。
川に着いた。辺りに人はいない。この季節なら当然だろう。そんなことを考えつつ、私は手ごろな石を拾った。とりあえず投げてみる。上手く跳ねない。昔は上手く跳ねたのだけど。久々にやるからか下手になっている。
また一個拾って投げた。また上手く跳ねない。また一個…また一個…、どうやっても上手くいかない。もう一個投げた。少し跳ねたと思ったら黒い影にぶつかった。
「え、まさか人!?」
びっくりしてそちらを見たら違った。黒いボディに赤紫の液晶パネルのような器官…カルマノイズだった。しかも昔、私を追いかけ回した個体によく似ていた。
急いでギアを装着する。
カルマノイズはただのノイズより段違いに強い。だから一人で倒せるかは不安だ。でもここでやらないと更に厄介なことになる。
私は気を引き締めて立ち向かった。
このカルマノイズはタコ型だった。確かそんなに攻撃手段はなかった筈だから、周りに人がいないかどうか、それと大きな音がしないかどうかを心配した方がいいだろう。
カルマノイズは触手を一本伸ばしてきた。すぐさまアームドギアから光線を撃ってこれを潰す。カルマノイズはこちらに近づきつつ再度触手を放つ。今度は複数だ。流石に一度に相手をするのは危険なので、一旦空に逃げてアームドギアを展開して閃光を放つ。触手は潰れた。間髪入れずに脚部から鏡を円状に展開する。
「当たって!」
前は使わなかった流星をカルマノイズに撃ち込む。かなり効果があったのだろうか。身体の大部分が吹き飛んでいる。
しかし再生されては意味がないので二発目を撃とうとした。再生……?
ここで私は妙なことに気づいた。カルマノイズには再生能力があるということを並行世界の響を助けに行く前に聞いていた。実際に何度も再生して最後は目の前から居なくなることが度々あった。しかし目の前にいるカルマノイズは消えはしないが、再生する気配が全くない。おまけに攻撃がそれほど鋭くない。なんというか動きが鈍い。
「このカルマノイズ、私が知っているカルマノイズよりもずっと弱い」
すぐに二発目の流星を撃ち込む。今度は触手も含めた残りの全身が吹き飛んだ。そして二度と再生してはこなかった。やっぱり何かおかしい。これは隆二さんに知らせたほうがよさそうだ。
「カルマノイズが弱体化している?」
「はい、私が以前戦ったものより能力が低くなってます。普通のノイズより少し頑丈なくらいの強さに落ちているんです」
私はあの後すぐに帰宅して隆二さんのところに知らせに向かった。隆二さんは例の太刀と薙刀の修理をしていたが、すぐに私を部屋に通してくれた。
「それは本当にカルマノイズだったのか?」
「外見だけで見れば、カルマノイズでした」
「外見だけはオリジナルか…。普通のノイズに誰かが細工したなんてことはあり得ない筈だしな」
「ノイズに近いものを作った人は居ましたが、おそらく無関係でしょう」
「そんな奴まで君の世界にはいたのか。まぁ、君の言う通り無関係だと思う。問題は何故カルマノイズが弱体化しているのかだ。一時的なものかもしれないし、何らかの要因で同じことが起こるかもしれない。原因が調べられない以上、次にカルマノイズが仮に出た場合に弱体化しているかどうか、すまないが観察しておいてくれないか。こちらも武器の修理に少し手間取っているんだ」
「わかりました」
こうして謎のカルマノイズ弱体化事件の幕が上がった。それにしても原因は一体何なのか。この時の私には知る由もなかった。