陽だまりシリーズ:小日向未来<放浪>   作:ヨザリイコイ

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ヤドクガエルがいるのだから、アマゾンの熱帯雨林を探してみたら、こんな蝶がいるやもしれません。私としては、いて欲しくないですけど。


chapter49.アマゾンから来た蝶

 アマゾン川で新種の蝶が見つかった。その名もギリーラ。怪獣映画の怪獣みたいな名前だ。その蝶が標本にされて、日本に持ち帰られてきたことで、新聞やニュースは大賑わいだ。

「たかだか蝶1匹でここまで話題になるとはなぁ……」

 パイプを咥えて新聞を読んでいる親父さんが、意外そうな面持ちで呟いていた。

「新種の蝶だからじゃないの。人間、新しい物にはみんな目がいくから」

「そうかもしれんな。しかし写真を見て思ったのだが、鮮やかな色の翅だな。こんなに鮮やかな色なら、案外、前から見つかってそうに思えるな」

「本当にね」

 親父さんもいっていたけど、目が覚めるような青色の翅に黒いまだら模様という鮮やかな色合いなんだよね。かなり人目につきやすい見た目だけど、そこに住んでる人は、なんで手を出さなかったのかな? 

 

 

 

 

 

 

 

 3日後、その答えが分かった。ギリーラは毒を持っていたんだ。スズメバチみたいに。

 なんで分かったか。ギリーラが教えてくれたんだ。態々、改造人間になって、レーシングクラブに来て。

 勿論、歓迎した。全身を使って。

 

 

 

 

 

 

「こいつ!」

 ギリーラに体当たりを食わせて、窓から外へ突き落とす。蝶の怪人だから中にいた方が戦いやすいだろうけど、親父さんがいる以上、それは良い選択ではない。だから敢えて外へ突き出す。

 地面に倒れたギリーラを見て、私も窓から飛び出して、その上にのしかかろうとした。

「早々、捕まる私ではない」

 背中の翅を使って、身体を逸らし、口から毒矢を発射してきた。

「おっと!」

 バイザーを咄嗟に閉じて、間一髪のところで矢を食い止める。だがこれだけでは終わらない。毒矢を連射しながら、私に近づいてきた。

 軽業師みたいに空中で矢を避けるが、全部は避けきれなかった。といっても刺さったのは、足のスラスターだからダメージは皆無。それよりも問題は、ギリーラがこれから何を仕掛けてくるかだ。

 距離を取りながら、相手の出方を見つつ、何がくるか予想する。

 ギリーラは、急に動きを止めて、ホバリングしだした。何かするわけではなく、翅をばたつかせている。翅についているものでも、飛ばそうというのかな。そして蝶々の翅についているものといえば……。

「鱗粉?」

 何の毒かは知らないけど、住宅地の上でばら撒かれたら不味い。

 急いで下に回り込み、飛び上がりざまアッパーカットを叩き込む。しかし胴体には当たらず、翅に穴を開けただけだった。おまけに殴ったときに、鱗粉がかかったせいで右手が痺れる。

 ただ向こうは向こうでバランスを崩したらしく、地面に落ちながら消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 家に戻ったら親父さんが居なかった。まさかショッカーに捕まった? 親父さんのことだから、戦闘員ごときに遅れは取らないと思ってたけど、それが裏目に出たか。

 兎に角、探しに行かないと。でもショッカーの連中のことだから、証拠を残すようなことはしないだろうし。

「まてよ。ショッカーはこういう時には、研究所の近くとかに基地を作るんだよね。たしか蝶を研究していた施設が、利根川の上流にあったはずだから……」

 

 

 

 

 

 

 利根川の上流まで、サイクロンを飛ばしてあちこち探し回ると…………、いた。戦闘員がうろついていた。しかも女戦闘員。これはやりやすい。そんなに強くないらしいから。

 早速、捕まえて茂みに引き摺り込み、基地の場所を吐かせる。するとここから西に100メートルだと教えてくれた。

 そいつを倒して身ぐるみ剥がし、女戦闘員に化ける。これじゃ追い剥ぎだよ。

「悪く思わないでね。それにしても……、ちょっと恥ずかしい……」

 レオタードなんて着たことないから、どんなものかと思ったけど、こうも体のラインが浮かぶと恥ずかしいものだ。

「さてと基地まで急がないと」

 戦闘員を埋めたところを見つつ茂みから出て、基地へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 基地の入り口まで行くと、中から人が暴れている音がした。中を覗くと、大立ち回りの真っ最中。でも本郷さん達、親父さんを人質にされて動けないみたいだ。親父さんを捕まえている地獄大使をなんとかしないと。

 戦闘員から鹵獲したワルサーP38を取り出して、大使めがけて引金を引く。弾丸は頭に命中したけど、堪えたような気配はない。寧ろ涼しい顔でこっちを向いた。流石、大幹部。全く効いてない。

「お前は……」

 振り返って、鞭を構える地獄大使。しかしそれがいけなかった。隙を見た本郷さんに組み付かれて、親父さんが逃げ出してしまった。

 地獄大使と本郷さんの取っ組み合いをすり抜けて、親父さんのところに駆け寄り縄を解く。

「お、俺のことよりも、あの毒入りカプセルを始末してくれ……。奴等、あれをダムに放り込む気だ……」

「わかった! 滝さんは、本郷さんに加勢して! 毒は私がどうにかする!」

 地獄大使に押され気味の本郷さんに助太刀するように滝さんに頼みながら、毒入りのカプセルのところに駆け寄る。

 するとギリーラが飛び出してきて、私に体当たりをしてきた。前よりも何か重くなっている。見てみると翼が金属質のものになっている。なるほどね。装甲を追加したわけか……。

「此奴をお前に渡す訳にはいかん!」

「どきなよ。怪我じゃ済まないよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 ギリーラが、翅を広げてこちらに向かってくるのを確認して、後ろに下がりながら変身する。

 ギリギリのところで避けて、カプセルの保管場所へと近づく。しかしいい処分方法が思いつかない。でも思案している暇はない。ギリーラはこちらに飛びかかろうとしている。でも全くこちらに襲い掛かってこない。毒カプセルが後ろにあるからかもしれないけど、それだけじゃなさそう。表情がおかしいもの。怖がっているみたい。

 後ろをチラと見やると、カプセルの他に火薬箱があった。もしかして、火に弱いのかな。

 着火のためにワルサーを拾おうとすると、毒矢を放ってそれを阻止してきた。間違いない。こいつは火に弱いんだ。

 再度、ワルサーを拾おうとするも、今度は銃そのものを毒矢で砕かれた。弾丸は暴発こそしなかったが、本体がこれじゃどうしようもない。

 仕方がないので、滑り込み足払いを食わせる。

 倒れ込んだギリーラの胸に拳を叩き込もうとするも、左目に毒矢を目に打ち込まれた。

「ぎゃッ!」

 不味い。片目が死んだ。思わず目を押さえそうになったところを、ギリーラに踏みつけられる。

「ちょうどいい。この中身をお前に飲ませてやる」

 カプセルを取り出したギリーラは、接合部を開こうとしてきた。でも撥ね退けようにも時間がない。

 とっさに痺れが残っている右手を翳して、顔を庇う。何とか顔は無事で済んだが、右手が溶けてしまった。

「うぐぁアア!」

 痛みに転げ回る。ただこれでギリーラの足が離れて、這い出ることができた。

 残った左腕で足に手刀を叩き込んで奴の態勢を崩し、首を掴んで火薬箱の上に落っことす。

 火薬塗れになったのを見て、痛みに耐えつつ目から毒矢を引き抜き、転がっていたワルサーの弾丸を拾おうとする。しかし毒矢の弾幕がそう簡単には、いかせないようにしている。

 攻めあぐねていると、横から銃声がして、火薬に着火した。みるみる火が上がり、カプセルとギリーラに燃え移った。

 

 

 

 

 

 

 カプセルは爆発し、ギリーラは断末魔をあげながら燃え尽きていった。

「怪人はこれで片付いたみたいだな」

 何処かで拾った拳銃を片手に、滝さんがこちらに来た。どうやらとどめを刺してくれたみたいだ。

「助かりました、滝さん。火種がなくて困ってたから」

「いいってことよ。それよりもお前がギリーラを抑えておいてくれたから、本郷達がダムの汚染を防げたんだ。ありがとうよ」

「どうってことないですよ……」

「その体じゃ、その言葉の説得力は皆無だ」

 右手と左目が完全にダメになってしまった。治るのに3日は要るね、これは。入院する羽目になるよかましだけど。

「取り敢えず帰ってゆっくり休んでろ。まだ病み上がりでもあるんだから」

「お任せしますね……」

 ふらふらと空を飛びながら、レーシングクラブを目指す。

 まるで瀕死の蝶のように。

「ギリーラという蝶の存在も、燃えてなくなってしまえばなぁ……」

 飛びながらそんなことを願う。

 存在していたら、また誰かこの蝶を利用しようとするやつが出てきてしまうから。そもそもあの蝶々だって、そんなこと望んでないだろうしね。




さて辛くもギリーラに勝利した麻由。
次回はどんな改造人間が襲いかかってくるのか。
乞うご期待!
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