どうでもいい情報ですが、この子と同じやり方を使えば未来も女神になれます。
「あたし〜、プルルートぉ〜、よろしくねぇ〜」
聞いていて眠くなるような声で自己紹介したのは、神次元というところから来た女神のプルルート。何だか財宝を持ってそうな名前の子だ。今一つ何を考えているのかよくわからないけど、多分いい子。
「そういえば、変身はできるの?」
「できるよ〜。けど、あんまり変身しないようにって言われてるんだぁ〜」
変身しないように……ねぇ。具体的にどんな物になるのかはわからないけど、多分、手が付けられない状態になるんだろうね。この子のとろーんとした表情からは、想像もつかないようなのに。ちょっと見てみたい。
「何で止められてるの?」
「ん〜、何でかなぁ〜」
プルルートがぼんやりと考えている時、テーブルの向こうでピーシェがネプテューヌのソテーをこっそり取っているのが見えた。
「あー! それ私の!」
「ぴー、お肉食べる」
口の中にソテーを放り込んで、代わりに付け合わせのナスをネプテューヌ のお皿に移していた。
「ねぷてぬには、こっちあげる。はい」
「うわぁぁぁあ! やめてー! 私ナス嫌いなの!」
青い顔で叫ぶネプテューヌ。そういえば、この子ナスが大嫌いだった。自分の髪の毛や国の色と同じなのに。
「ネプ子、偶には食べてみたら? 我ながら美味しく出来たのよ」
「嫌だよ。この青臭い匂いを嗅いだだけで力が抜けるんだよー!」
アイエフさんに言われても、ムンクの叫びみたいな顔して首を横に振っている。
「そうかなぁ。別に秋茄子じゃないから体も冷えないし食べたら?」
「夏でも秋でもナスは嫌ーい!」
これは筋金入りだ。一生このままだろう。
「では、そちらの次元からこちらに大きなエネルギーが動いたことが確認されたと……?」
「はい。プルルートさんには、それを調査してもらうためにそちらへ行ってもらったんです」
向こうのイストワールさんとこっちのイストワールさんの会話を横で聞いている。帰る手段が向こうで見つかる可能性があるかもしれないからってことで、途中から同席している。
「事情は分かりました。こちらでもエネルギーの発生源を調べてみます」
「お願いします。それとそちらの……、小日向未来さんでしたね。ご自分の世界に3年近く帰れずにいるとのことですが……」
「はい。私を漂流させた連中に、ゲイムギョウ界が一番元の世界に近いって聞かされて、ここに放り出されたんです。帰る手段がここなら見つかるって言われて」
「あなたを漂流させた連中の意図はともかくとして、確かにこちらの技術でも次元間の移動は可能ですし、あなたが今いる場所でもそれは可能なようです。ただそれをやるには、こちらもそちらもあなたが元々何処にいたのか分からない限りはどうしようもないようでして……」
其処は同じなんだ。ここのイストワールさんが時間をかけて調べてくれた方法もそうだったけど、向こうも変わらないのか。
しかし困ったことになった。花立村に飛ばされる少し前に誰かと会っていたことまでは、どうにかこうにか思い出せたんだ。ただそれが誰だか分からない。それが誰かが……。
「分かりました。取り敢えず頭を捻って思い出せるよう努力します」
「こちらも他の手段を調べてみますね」
収穫は、無しか。
次の日、プラネタワーに顔を出すと、プルルートがお裁縫していた。作っているのは、ぬいぐるみ。のんびりと作っているように見えて、実際のところ作業はかなり早い。私が顔を出してから30分くらいの間に、ほとんど仕上がっている。結構、慣れているみたいだ。確か趣味で服とかぬいぐるみとか色々作っているんだっけ。今来ている服も手縫いらしいし。
「出来た〜」
二頭身にデフォルメされたネプテューヌのぬいぐるみが、ポンとテーブルの上に載せられた。可愛く仕上がっている。
「あんな短時間でここまでのもの作れるなんて凄いね。お金取れるよ、これ」
「えへへ〜、ありがとぉ〜」
それを見て、さっきまで部屋の中で鬼ごっこしていたネプテューヌ達もこっちに来た。
「おぉー! 私の魅力と萌えポイントがギュッと濃縮されているよぉー!」
「ぴぃも! ぴぃのも作って!」
「いいよ〜。先ずはピーシェちゃんでぇ〜、次はギアちゃんね〜。勿論、ミクちゃんのも作るよ〜」
私のも作ってくれるみたいだ。自分のぬいぐるみって見たことないから楽しみ。
「そのゴツゴツしたのも〜ふんわり作ってあげるから〜」
「あ、ありがと……」
神獣鏡の部分もそのまま作る気みたいだ。まぁ、私ここに来る時は大抵ギアを装着しているからね。人目を惹くからちょっと恥ずかしいけど、ピーシェが喜んでくれるから。
「それじゃあ〜、早速〜」
そう言って生地を広げたプルルートは、みんなが見守る中、そのまま寝てしまった。まだ太陽は真上にも来てないのに。ライオンみたい。
我ながら平和ボケしていた。ちょっと前まで穴どころか地雷が仕掛けてある所にいたのに。
マジェコンヌにアイエフさんが捕まったという知らせが来た。それで助けに行こうとして、落とし穴に嵌って捕まった挙句、畑の横にある納屋に押し込められてしまった。
逃げ出そうにも、身体の自由が利かなくなるようにサイボーグ用の枷を取り付けられて、まともに動くことすら出来ない。
しかも口にナスを丸ごと突っ込まれて、喋れない。ネプテューヌ対策でナス畑を作ったという作戦に呆れた表情を見せたら、この有様。吐き出しても、監視カメラでチェックしているらしく、新しいのをまた押し込まれるから堪らない。頭がクラクラしてきた。
「は、吐きそう……」
せめて火を通して欲しかった…………。
顔に水をかけられて目が覚めた。どうやら気絶してたみたいだ。
「あらあらぁ……、随分と面白い事になってるじゃなぁい」
口からナスを引っ張りだしてくれた人が、バケツ片手にこう言っていた。お礼を言おうとしてギョッとした。物凄い見た目だったから。
長い菖蒲色の髪の毛に、ボンテージ衣装って言うのかな。そういう格好している長身の女の人が、半笑いで私を見ていた。誰だろう。
瞳の中にパソコンの起動ボタンの模様があって、顔付きからすると多分……。
「え……、プルルート?」
「そうよぉ。又の名をアイリスハート」
普段とは似ても似つかない見た目と性格になったプルルート。成る程、これはみんなが止めるのも無理ない。
「あ、ありがとう。ナスを引っ張りだしてくれて」
「なんて事ないわよぉ。お陰でミクちゃんがナスを咥えたまま白眼をむいているところが見られたからぁ。とぉっても可愛かったわぁ」
「そ、そう」
嫌なところ見られたなぁ。相当変な顔だったんだろうし。
「それじゃあ、私は帰るからぁ」
「ち、ちょっと待って!」
「どうしたのぉ?」
「枷を壊して! お願い!」
これが壊れないと、身体の中の機械が動かないからどうしようもない。
「枷……、ああこれのことね。でもぉ、似合っているからこのままでいいじゃない。見ていていじめたくなるもの……」
「冗談じゃないよ!」
生活できなくなるから! それにいじめたくなるって……。さっきから思ってたけど、見た目通りの性格だ。
「まぁ、いいわぁ。このままだと可哀想だしぃ、こんな不細工な物よりもっといい物持ってきたからぁ」
ちょっと残念そうにしながらも、両手で枷を壊してくれた。力は強いみたい。
それにしても、もっといい物って、一体何を持ってきたんだろう。
「それは見てからのお楽しみぃ」
考えまで見透かされている。
あの後、アイエフさんを連れてプラネタワーまで帰った。
「マザコングやナスよりもっと恐ろしい人がいたけど……」
プルルートに目を向けたネプテューヌの言葉からして、戦い方もどぎついものだったみたい。
「え〜、どうしたの〜?」
「わー! 何でもない何でもない! この子はあまり変身させないようにしないと……」
「そうだね、危なくて仕方がないや……」
ひそひそ話をしているとプルルートがこっちに来た。
「ねぇねぇ、ミクちゃん〜。さっきのミクちゃん、と〜っても可愛かったよ〜」
「そ、そう?」
あの格好が似合ってたって言われても、あまり嬉しくないけど。
「でも〜、あんなのよりももぉ〜っと可愛くできるものがあるから〜、あとで私の部屋に来て〜」
「え、えーっと…………、嫌だって言ったら……?」
「どうなっちゃうんだろうね〜」
これは逆らうともっと酷い目に遭わされそう。ま、まぁ、いいか。そこまで酷いことはされないはず。
「お、お手柔らかにね……」
「大丈夫だよ〜。あたし、怒ってない時は、お友達にはそんなに痛いことはしないから〜」
そんなにか……、心配だ。
この後、未来がどうなったのかはご想像にお任せします。
いかにクレイジーサイコレズとして有名な未来でも、別のベクトルでとんでもないプルルート相手には流石にタジタジだったようです。
なお、あの枷は手製のものだったらしいです。
次回乞うご期待!