先代巫女と六人の仲間達   作:負け狐

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集まった仲間がそれぞれに分かれて問題を解決するってクライマックスっぽいですよね。

多分。


拾玖 山を取り戻せ!

「これは、信じざるを得ませんねぇ」

 

 博麗神社に降り立った射命丸文は、そんなことを呟きながら肩を竦めた。特に主語も何も無い一言であるが、しかしそれだけでそこにいる面々への説明は充分。成程ね、と納得したように一同頷いていた。

 

「一応確認しますが、文様だからハブられたっていうわけでは」

「無いよ! あるわけないでしょうが! あんたはどれだけ私を貶めれば気が済むんじゃい!」

「おかしいですね。極々普通の考察だったはずですが」

「もう少し常識で考えなさいよ。何で私がそんな…………え? 何? 私嫌われてるの?」

「それは私の口からは……」

「え!? ちょ、ちょっと! 椛! 椛ぃ!」

 

 話を続けましょうか、とガクンガクンと部下を揺する同僚から視線を逸らしながらはたては述べた。あれはもうほっといていい、と言葉よりも目がそう告げている。

 それで、妖怪の山についてなのだけれど。そう言うと、ちらりと視線をある連中へと向ける。

 

「現在、『鬼』の命を受けた大天狗様――ああもう誑かされた連中なんかに様付けるのもあれだ、大天狗が妖怪の山にてクーデターを起こしています。おかげで私達は裏切り者扱い、天魔様は幽閉中。下っ端はなんだか洗脳されたように命令に従っている。完全に陥落してると言っても過言ではないわ」

 

 勿論、貴女達ではないですよね。とはたては述べたが、当たり前だろと呆れたように勇儀も萃香も言葉を返した。どうせやるならもっと派手に力尽くでやるさ。そう言いながら揃って高笑いを上げる。

 では、と彼女は視線を鬼二人から自称仙人へと向けた。

 

「ワタシハオニジャアリマセンヨー」

「あ、もういいです」

 

 よくよく考えたらこの人がそんなこと出来るような小賢しい頭持ってるはずなかった。そう結論付けたはたては、となるとやっぱり異変の元凶が犯人なのね、と呟く。

 それに待ったをかけたのは、話を静かに聞いていた一人の少女、フランドールであった。

 

「身内だから擁護する、というわけじゃないけど。それはお姉様のやり方とは違うと思うの」

「違う、とは?」

 

 そう訊ねたこの場で一番偉い(と無理矢理祀り上げられた)藍に向かい、さっきの鬼の人じゃないけど、と苦笑しながら言葉を紡ぐ。

 そんな犯人が分からないようなやり方じゃなく、陥落させたなら絶対に名乗りを上げているはずだ。そう言って彼女は真っ直ぐに皆を見た。

 

「単純なのね、貴女のお姉様っていうのは」

「うん、そうね。否定しないわ」

 

 だからあんな胡散臭い妖怪に隠れ蓑にされてしまうんだ。そう言ってフランドールは笑う。それにつられるように訊ねた幽香もクスクスと笑った。やがてそれは周囲に伝染し、博麗神社は笑いに包まれる。

 さて、ではどうしようか。そうしてひとしきり笑った後、藍はそうやって周りを見る。

 妖怪の山と、異変の犯人、そして黒幕探し。やることは大まかに分けて三つあるが、どこから手を付けるべきか。そう訊ねると、そんなことは決まっているとばかりに皆は頷いた。

 勿論全部だ、と。

 

「……言うと思った。まあ、紫様から一応の許可は頂いているから、皆存分にやってくれていい」

 

 やれやれ、と溜息を吐きながら、しかしどこか嬉しそうに彼女はそう述べる。残念ながら自分は手伝えないので、私の分もしっかり頼むぞと橙の頭を撫でると、分かりましたと力強い言葉が返ってきた。

 

「んじゃあ、どういう風に分ける?」

「あらインコ、いきなり出てきてリーダー面?」

「別にそういうわけじゃないっての。っていうか、だったら幽香やればいいじゃん、リーダー」

「嫌よ、面倒臭い」

 

 いいから話を続けましょう、という幽香の言葉に、誰が脱線させたんだよと飲子はぶうたれる。が、まあ確かにその通りなのでそれ以上何かを言うことはなく、こほんと咳払いを一つした。

 

「妖怪の山の奪還と、紅魔館の吸血鬼退治、後は『鬼』を見付けること。この三つの仕事を誰がやるかってことだけど」

 

 やりたいっていうのはある? そう尋ねた彼女へ、決まってるじゃないですかと声を張り上げる三人組がいた。当たり前というかなんというか、文と椛とはたてである。妖怪の山の奪還はこちらの仕事だ。そう言うと、異論は認めんとばかりに真っ直ぐに彼女を睨んだ。

 

「ま、そう言うと思ったし、別に私は文句ないよ。じゃあ次は――」

「ちょっと待った」

 

 誰か他にやりたい希望は、と言う前に。旧地獄の鬼二人が天狗の横に立っていた。そういうことなら、私達も手伝おうじゃないか。そう言うと勇儀と萃香は天狗三人の肩をバシバシと叩く。

 それを見ていた華扇が、私もそこが住処なんだから当然行きますよと前に出た。

 

「じゃあ天狗と鬼のタッグで妖怪の山を奪還だね」

「鬼じゃない、仙人!」

「え? ホントにこの組み合わせで行くの? 本気で? 三人の鬼と一緒に?」

「諦めましょうよ文様」

「あんたは達観してるわねぇ」

 

 軽くわいわいと騒いでいるが、あれは大分ヤバイのではないだろうか。この場で一番常識者である五歳児二人は揃って顔を見合わせた。

 

 

 

 

「と、いうわけで」

 

 早速作戦開始、と言うが早いか飛び出していった鬼と天狗を尻目に、飲子は決まった残り二つの組み合わせを眺めた。自分が向かうのは紅魔館の吸血鬼退治。レミリア・スカーレットをボコボコにするのが仕事だ。よし、頑張るぞと気合を入れたその頭にぺしりと衝撃が加えられる。

 何だよ、と振り向くと、呆れたような顔を浮かべたアリスが見えた。

 

「分かってるの? 今度の相手は木っ端妖怪とはわけが違うわ。ヘタしたらタダじゃ済まないのよ」

「うん……分かってる。油断しないよ」

「その言葉が嘘じゃないといいのだけど」

 

 そう言って鼻を鳴らすと、彼女は踵を返す。同じく吸血鬼退治組となった霖之助と魔理沙、橙、霊夢のいる方向へと歩いていった。

 そんな彼女の背中を眺めていると、やっぱり素直じゃないわね、と言う言葉と笑い声が耳に届く。隣を見ると、同じく吸血鬼退治組となったさとりがアリスを見て笑っていた。

 

「どしたの?」

「貴女に怪我をして欲しくないみたいよ、あの娘」

「は?」

「無茶しないで、怪我をしないで。そんな風に心配するなら直接はっきり言えばいいのに」

「……あー、まあ、アリスは素直じゃないから」

 

 そうね、とさとりは笑みを強くさせる。ところで、と笑みを浮かべたまま彼女は飲子に問い掛けた。私をこっちに選んだ理由は、と。

 

「えーっと、その」

「まあ言わなくても分かっているけれど」

「何だそれ!? 私照れ損!?」

「ふふっ。貴女の信頼に、しっかりと応えてあげるわ」

 

 そう言ってウィンクをしたさとりは、じゃあ私も向こうにいこうかしらと歩いていってしまった。

 少しだけ熱を持った頬を掻く。そのまま暫く佇んでいた彼女であったが、よし、頑張るぞ、と気合を入れると、両の拳を天に突き上げた。

 さて、そんな彼女を見詰める残りの黒幕探し組であるが。

 

「……明らかに人選を間違えているぞ」

「あら、そう?」

「そーなの?」

「あー、まあ、はい」

「何か問題なの?」

 

 命蓮、幽香、ルーミア、美鈴、フランドールである。探索、というより殲滅である。

 まあ決まったものは仕方ないのだが、と命蓮は溜息を吐く。とりあえずお前も手伝えよ、と美鈴に視線を向けると、分かっていますよと頷かれた。そんなやりとりを不思議そうにフランドールは見詰めるが、まだここに来て日が浅い彼女では分かるはずもなく。

 まあ、別にいいか。そんな風に結論付けると、じゃあどこから探そうかと皆に問うた。

 

「そうだな、まずは――」

「その辺にいる妖怪を片っ端から潰していけば当たるんじゃないかしら」

「おー、いいねー。疑わしきものはギルティ! あ、今閻魔っぽくなかった?」

「閻魔、か。……ふふっ、閻魔を犯人だってでっち上げて殴りに行くのもいいわねぇ」

「なーぐりにーいこーかー」

 

 誰だこいつらを探索に選んだ奴は。始まる前から疲れで頭痛がしてきた命蓮は、視線を地面に落とし右手で顔を覆う。大丈夫ですって、という美鈴の励ましがどこか遠くから聞こえた気がした。

 

「今からでも遅くない。俺は吸血鬼退治に」

「駄目ですよ! そしたら私があれの面倒見なきゃいけないじゃないですか!」

「あれ、ですって」

「酷いねー。傷付くねー」

「これはもう閻魔に喧嘩を売るしか無いわね」

「そーなのだー」

「やめろ!」

「やめてください!」

 

 力いっぱい叫ぶ二人と、ケタケタと笑う二人。そんな対照的な二人を見ながら、残されたフランドールはこう呟いた。

 

「何これ?」

 

 

 

 

 

 

 神社の喧騒など露知らず。一足先に行動を開始した天狗と鬼は、妖怪の山の麓でその頂きを眺めていた。さて、これからどう行こうか。そんな呟きが誰ともなしから漏れる。

 

「とりあえずさっき偵察に行った限りでは、私達は完全に裏切り者として敵視されていました」

 

 言外に、こっそりと侵入するのはほぼ不可能だ、と文が述べる。

 しかしそうなるとやることは一つしかないじゃないですか。そんなことを言いながら華扇は肩を竦めた。そうだな、と勇儀も萃香もうんうんと頷いている。

 聞かなくても分かるが、それでも訊ねなくてはいけない。そう思い勇気を振り絞った文は、何か通じあっている三人の鬼に向かって声を掛けた。そのやることとは何ですか、と。

 

「正面突破」

「大暴れ」

「見敵必殺」

 

 まあそうでしょうね、と彼女は頭を垂れる。何か小難しいことを考えるような面々はこの中では自分かあるいははたての二人しかいない。そしてその二人が何も案が出せない以上、結局取れる手段はそれくらいしかないのだ。大きく溜息を吐くと、文は何かを吹っ切るように自分の頬を叩いた。

 

「こうなりゃヤケだ! やってやるわよ!」

 

 一番乗りは頂いた、と言うが早いか彼女は山の中へとかっ飛んでいってしまう。幻想郷最速の自称は伊達ではなく、その姿は確かに鬼の三人でも捉え切れないもので。

 よっしゃ燃えてきた。そう叫ぶと、萃香も自身の瓢箪の酒をがぶ飲みしながら一目散に駆けていった。置いていきなさんな、と勇儀もその後に続く。

 

「さ、私達も行きますか」

「あ、はい」

「はたて様、声が小さいですよ声が」

「椛ノリノリ!?」

 

 何だか自分だけ温度違うんだけど。そんなことを思いながら、はたては二人に連れられるように妖怪の山へと侵入する。

 侵入、そう自分の中で思い浮かべたことに彼女は少しだけショックを受けた。ここは自分の住処のはずなのに、何者かによって気付くと自分が異分子になっている。普段はあまり考えていなかったが、いざこうなってしまった時に彼女の中に浮かび上がる感情は一つ。

 

「いたぞ、裏切り者の犬走椛と姫海棠は――」

「じゃっかましい! どけやこらぁ!」

 

 襲い掛かってきた木っ端天狗を吹き飛ばした。天高く空を舞い、そしてそのまま地面に激突する。明らかに聞こえてはいけない音が天狗の首辺りから響き、そのままピクリとも動かなくなった。

 そんな天狗には目もくれず、はたては他の天狗に、『敵』に目を向ける。こうなりたい奴は掛かって来い。そう仁王立ちして宣言すると、その気迫に思わず天狗達は後ずさった。

 その隙を逃す華扇ではない。そこ、と天狗達の中心の地面を吹き飛ばすと、慌てている連中の隙間を縫って駆け抜けた。それに続くように椛とはたても疾駆する。

 

「あれ、死んでないですよね」

「さあ? 多分大丈夫じゃない? まあ知ったこっちゃないですよ、敵だし」

「ああ、この人キレるとあかんタイプだ……」

 

 華扇の問い掛けにそう答えたはたてを見て、椛は盛大に溜息を吐いた。残りの三人もこんな状態じゃないだろうな。ついでにそんな疑問も浮かんだ。

 いたぞ、と天狗がこちらに向かってくる。これでまたはたてが天狗の首をゴキリとやっては堪らない。そう考えた椛は彼女が反応する前に天狗達の前に躍り出た。

 

「お命、頂戴」

 

 バッサリ、と天狗を切り裂く。悲鳴を上げる間もなく倒れた天狗を一瞥すると、左右に展開していた残りに向かうべく地を蹴った。

 そんな彼女に割り込む影。貴女も充分物騒ですよ、そう言いながら肩を竦めるのは華扇である。天狗一人の頭を鷲掴みにしながら、もう少し穏便に行きましょうよとそれを別の天狗に投げ付けた。まとめて木に激突すると、その衝撃でへし折れた木ごと地面へと落下していった。勿論ピクリとも動かない。

 

「私は峰打ちですよ。非殺傷です」

「私だってちゃんと手加減しましたよ」

「最初に見敵必殺とか言ってたのは誰でしたっけ?」

「私よ。それが何か?」

「いいから次! 来てるわよ!」

 

 はたての言葉に我に返った二人は迫り来る天狗共を見やる。鬱陶しい、と吐き捨てると椛は刀を、華扇は包帯を巻いた右手を突き出し構えた。それに合わせてはたても両手に風を集める。

 華扇が腕を振り下ろす。その衝撃で周囲の地面が吹き飛び、天狗達もまとめて吹き飛ぶ。それを何とか逃れた残りは、はたてが放ったかまいたちでやはりまとめて撃墜されていった。

 そして、それすら逃れた不幸な天狗は。

 

「邪魔だ、散れ」

 

 背後に迫り来る何か。そう認識するかしないか程度で切り裂かれ、地面にその身を横たえた。とりあえず全員呻いているところを見ると先程よりは手加減をしているようである。

 そのまま三人は先に向かった文達を追い掛ける形で妖怪の山を突き進む。通る道に屍の山を築きながら。無論比喩表現である。

 

「あ」

「ちょ、ちょっとこれまずいんじゃないですか!?」

「埋めれば大丈夫じゃないですか?」

「物騒にもほどだ!?」

 

 比喩表現である。

 




さらば妖怪の山(二回目)
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