仕方ないではないか。他の小説のアイディアが浮かばないんだもの。
ーーああ。俺は、負けたのかーー
喰種収容施設「コクリア」の最下層で倒れ伏しながら有馬貴将は考える。
ーーああ、こんなにも泣いてくれる奴がいるとはーー
自分を倒したカネキケンと零番隊の班員たちが自分の周りで涙しているのを見て、柄にもなく困惑する。
ーー俺は、奪い続けてきたこの人生で、何かを得れたのだろうかーー
周りの命を奪い続けてきた自分の人生を振り返り、寂しさを少しだけ感じる。自分や、自分の仲間たちがしてきたことに意義はあったのだろうか。彼らが涙する理由など無いにも等しいのではないか。
そんなことを考えていた有馬の耳の中に、カネキケンの声が入ってくる。
「有馬さんーー。貴方は僕のーー」
お父さんみたいでしたよ。
涙ながらにカネキケンが漏らした言葉を聞いて有馬はいや、と自分の考えを否定する。
ーーいや、こんなにも俺のことを慕ってくれる者がいるじゃないかーー
「そろそろ行くぞ。」
「はい…。」
零番隊の隊員とカネキケンが自分に向けて深く頭を下げてから去って行く。
一人になった場所で、徐々に感覚が無くなっていくのを理解しながらも有馬は弱々しく、しかし満足気に笑う。
ーー俺は、何かを残せたらしいなーー
奪い続けてきた自分の人生の終わりでようやくささやかな幸せを手に入れられた無敗の捜査官は最後に幸せそうに微笑んで、その生命活動を停止させた。
その日、一つの魂があらゆる英霊を収める場、座に完全に登録された。
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藤丸立花はただの女子学生であった。
そう。であった、のだ。
今、彼女は人類の歴史を修復し、世界を救うことのできるただ一人のマスターになっている。
初めの頃は戸惑いもあった。
恐怖もあったし、何よりも自分の理解が追いつかなかった。
本当に自分なんかが世界を救う救世主などというものになれるのか、と。
だが、今は違う。
気高く振る舞いながらもその実孤独であったカルデアの所長の死、多くの英雄たちとの触れ合い。
それらは、ただの一般人であった立花を大きく変えた。
それらの出来事で、立花は勇気を得ることができた。
故に、今日も立花は召喚を続けるのだ。
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「えーい、今日は何回やってもサーヴァントが来ない!」
二十回召喚をしても礼装しか出ず、地団駄を踏む立花をサーヴァントたちはまたか、と言った風に見る。
「まあまあ、落ち着きなさいな、愛しい我が子よ。あなたは努力してるんですもの。きっと英霊も答えてくれますよ。」
「やれやれ。今までに三百回ほど召喚しようとしたのに、十五人しかサーヴァントを召喚できていないマスターがおかしいと思うのだがね。」
「まあ、嬢ちゃんもやれることをやってるんだ。そこまで言わないでやれって。」
「ヒャッ!?ク、クーフーリンさん!さり気なくセクハラをするのはやめて下さい!盾で峰打ちしますよ?!」
「おっと、そりゃ勘弁。」
自分の後ろでサーヴァントたちが好き勝手やっているのを見て怒りに震えながらも立花は言う。
「ちょっとみんな!?もう少し応援してくれないの!?主従だよね?だったらせめて応援くらいしてよ〜!」
「お、おう、そうだな!」
「あ、ああ、君も努力しているんだ。な、なんとかなるさ!」
「マスター、頑張って下さい!沖田さんは応援してますよ!別に召喚を延々とやり続けるくらいなら早くレイシフトして斬りたい、とか思ってませんから!」
自分のサーヴァントたちの心の篭っていない応援を聞いてサーヴァントたちの薄情さに涙目になりながらも立花はヤケクソになって呼付を取り出しながらも立花はそれを召喚ルームの床に叩きつける。
「ええい、こうなったらヤケだ!ダヴィンチちゃん工房から取ってきたこの呼付で絶対に召喚してやる!」
『ちょ、呼付がちょくちょくなくなってたのはそれが理由だったのかい!?』
「ええい、うるさい!さあ、こい、強いサーヴァント来い〜!」
呼付の中から魔力の輪が出現し、部屋を輝かせる。
魔力の輪の色は、虹色だった。
『ちょ、なんだい、この数値は!?通常の霊基を遥かに上回っているぞ!?』
無線越しのダヴィンチの声に部屋の中のサーヴァントたちは静まりかえり、新たに自分たちの仲間になるであろうサーヴァントが姿を表すのを待つ。
虹色の輪が一際大きく輝いてその場の全員が目をつむった。
「ーーッーー。」
誰かが息を飲む。
虹色の輪が収まったところにいたのは、目を奪われるような白と、なぜか幻視できてしまう彼岸花だった。
「これが、サーヴァント召喚、というやつか…。
それでは改めて。
サーヴァントルーラー、真名は有馬貴将。
問おう。
お前が俺の、マスターか?」
無敗の白き死神が、カルデアに降り立った。
有馬さんってカッコイイよね。