ウルトラマンエレメント   作:ネフタリウム光線

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 TK-18支部を巡る攻防戦第2ラウンドが開幕!ウルトラマンエレメント、そしてフレロビを投入し、一気に怪獣たちを蹴散らしていくIRIS。だがもちろんその戦闘もトントン拍子で進むはずはなくー
 長きに渡る戦いに、一つの区切りが付いたその時、ローレンはとある決意を固めることになる。


第28話「好転」

第28話「好転」〜怪獣軍団・異人ダーム登場〜

 

『ジェア!!』

 TK-18支部へと駆け付けるや否や、すぐに怪獣の群れへと突撃していくウルトラマンエレメントとフレロビ。その様子を、余裕の表情で本館司令室から眺めるダームの姿があった。

「…きましたね。」

「おぉ…支部長、エレメントです。」

 ロープで縛られ、部屋の隅へと追いやられていた3人の首脳陣のうち、司令官が、支部長の耳元にそう囁いた。

「…うむ。思いの外早い救援だな。…とはいえ、そう簡単に打破できる状況ではないぞ…。」

 それもそうである。IRISが投入した戦力は、現状ではエレメントとフレロビのみ。それに対して、敵は20を超える大型怪獣を主力とし、今彼らの目の前に佇んている老人、ダームが司令塔となっている。しかも、こいつは怪獣のコントロールも可能という難敵だ。加えて、今は別のフロアにいるらしいが、空間操作のキュリも控えている。多勢に無勢とはこのことで、もちろん、IRISにも今後さらなる増援が来るであろうことは間違いないと見ていいのだが、戦術兵器や陸兵を建物に近付けるためには、如何せん、一体でも多くの怪獣を処理しなければならない。如何にエレメントと雖も、流石に分が悪すぎる。

『シャアアア!!』

 そんな心配をよそに、ズンッと鈍い音が響いた。エレメントの拳が、メリメリっと一体の怪獣の腹に食い込んだ衝撃音だ。攻撃を受けた怪獣は声にならない悲鳴をあげながら、数歩後退し、片膝をついた。どうやら彼らは、劣勢という現状を気にもせず、目の前の敵を倒すことだけに集中してくれているようだ。

『イクタ、これだけの数だ。全力で飛ばしていては変身を保てなくなる可能性もある。』

「だからといって、手を抜けばやられる。何かいい策はないか?って聞きたいんだろ?わかってるって。」

 イクタは聞かれる前からも、優位に進めるための作戦を模索していたようだ。

『それで、何か思いついたか?』

 怪獣の尻尾攻撃をしゃがんで避けながら、エレメントはそう問いかける。

「フレロビが俺の指示通りに動いてくれるんなら、或いはな。」

『ふむ……それは難しいかもな。』

 エレメントは嘆きながらも、走り寄って来る2体の怪獣の突進攻撃を、まるで五輪の体操選手のような前方宙返りで躱すと、着地時に近くにいた別の怪獣の頭部をかかとで蹴り落とした。

『シャッ!』

 怪獣の頭を足場として着地したため、少しよろけはしたが、すぐに体勢を整え、銀色に光る瞳で怪獣たちを睨み牽制する。その姿には、今までにない凄みを感じることができた。

『やるじゃん。ハッ!』

 そこから数十メートル間隔をあけて、フレロビも果敢に戦っていた。不思議なことに、怪獣の群れの猛攻も、フレロビには一切通用せず、攻撃の一つも当たっていない。

「…そういえばあいつ、俺らと戦ったときもすぐに動きを見切って攻撃が当たらなくなってたよな。どんな能力なんだ?あれは。」

『…推測だが、リディオの残したデータからするに、心を読むアビリティだろう。心の声が聞こえているのか、直感的なものに近いのか。詳細なことは不明だがな。』

「となると、怪獣の動きのほぼ全てを掌握できているわけだ。場面によっては、未来予知よりも正確に目標の次の動きがわかるかもしれない。」

 イクタは使える、とそう確信した。その能力を活用し、こちらにも情報を与えてくれるのならば、無駄のない動きで戦闘を行うことができるに違いない。問題は協力してくれるか、だが。

『ガァァァァ!!』

 そんなこんなで考え事をしているときに隙を作ってしまったらしく、エレメントは怪獣の体当たりを左半身に喰らい、そのまま地面に転がり込んだ。ゴォォォ…という音が、砂塵とともに舞い上がる。

『ノワァ!?』

 すぐに立ち上がり反撃を…と言いたいところではあったが、先ほどかかと落としをお見舞いした怪獣に両腕を掴まれ、そのまま持ち上げられてしまう。

『は、離せ!』

 腕は力一杯捕まれ動かすことができないので、両足をジタバタとさせ振りほどこうとするが、それよりも早く、集まってきた怪獣たちに次々と殴られ始めたのだ。

『グオッ!グハッ!こ、これはいかん!』

「ダームめ、どこかで怪獣たちに指示を送ってやがるな…。おい、とっとと振りほどけ。このまま嬲り殺されたいか?」

 イクタがエレメントを急かす。

『わかってる!…し、しかし…』

『ガァァァァァァ!!』

 怪獣たちは、一向に攻撃をやめてくれる気配はない。むしろ、さらにここ目掛けて集まってきている。このままでは笑い事ではなくなってしまう。どうにかしなければーと、その時だった。

『ハァ!!』

 フレロビの飛び蹴りで、エレメントに纏わりつくようにウジャウジャと集まっていた怪獣たちの一部が吹き飛んだ。さらに、エレメントを捕まえている個体にもパンチを浴びせ、力ずくで彼を解放することに成功する。

『お、おぉ助かった…。まさか君に救われるとはな…。』

『僕の相手もそっちに流れたからだ。それじゃあ面白くないんでね。』

 フレロビは無表情で、エレメントの感謝の言葉を軽くあしらい、彼をおいてすぐに次の攻撃動作に取り掛かった。

『…まぁ何にせよ恩に着る。よし、気を取り直していくぞ!エレメントグニール!!』

 エレメントはそう叫び、左腕を上へと掲げた。その掌の中に、どこからともなく現れた光り輝く大きな槍が握られる。

『シェアアアア!!』

 エレメントグニールを強く握りしめ、再び怪獣の群れへと特攻するエレメント。器用に振り回し、怪獣たちに確実にダメージを与えていく。

「ふむ、あれは厄介な武器ですね。暴れてもらうのは困ります。…司令官さん。」

 これまで無言で戦いの様子を眺めていたダームが、そう口を開いた。

「何だ。」

「固定砲を起動させてください。今すぐにです。」

「なに…。操作方法は教えてやったはずだ!勝手にやれ!だがエレメントは切り抜けてくれるさ。その攻撃に意味はないぞ。」

「いえ、意味はありますよ。あなたがその手でエレメントを攻撃する、ということにです。私は操作のやり方を忘れてしまってですね…。いやぁ、歳のせいでしょうか?」

 ダームはとぼけた顔でそう言った。

「貴様…ふざけるのもいい加減に…!」

 怒鳴り付けようとした司令官の顔の横を、音もなく実弾が通り過ぎた。司令の顔には薄い傷口ができ、その後方で壁に小さな穴が空いていた。

「ひいっ!」

 3人まとめてロープで縛られていたため、弾は同時に情報局長の顔もかすめていたのだ。彼がそう小さな悲鳴をあげる。

「あなた方の命は私の掌の上です。そのことを、お忘れなきように。」

「……クソ野郎め…!…イクタ、エレメント、避けてくれよ…。」

 彼らの無事を祈りつつ、司令は指示に従い自動砲台を起動させた。基地のあらゆる箇所の地下に隠されていた砲台が次々に顔を出し、その大きな口をエレメントやフレロビへと向けていく。ダームはその隙に、怪獣たちを数十メートル退かせていた。

『何だ?怪獣たちの動きがおかしいぞ。』

 急に戦うことをやめ、小走りで離れていく怪獣たちを見て、エレメントは違和感を覚える。その次の瞬間だった。ドドドドド…という連続する轟音と共に、彼らの周囲目掛けて砲撃が始まったのだ。

『うわ!!』

 流石のフレロビも予想外の奇襲に対応できず、数発をマトモに喰らい吹っ飛んでしまう。

『ノワァ!!』

 エレメントには直撃弾こそなかったものの、付近に次々に着弾する砲弾の爆風や衝撃波を受け、同じく飛ばされていた。

「ちっ…まさか俺の作ったシステムから攻撃される日が来るとはよ。」

 イクタはそう呟きながら頭を掻いた。

『だが、防ぐのみだ!』

 エレメントは左腕のミキサーを起動させ、タイプチェンジを試みる。

『ケミスト!スチールエレメント!!』

 その機械音声と共に、彼の身体は眩しい金属光沢を放つ銀一色のものと化した。鋼鉄の戦士、スチールエレメントだ。

『エレメントシールド!!』

 エレメントの前方の大地より、相当な面積を誇る鉄のカーテンが出現し、すぐに彼の視界を遮るほどの高さにまで成長。砲撃をガキィンという耳を擘く金属音を鳴らしながら弾き返し始めた。

『よし!』

「いや、まだだ。」

 しかしすぐに、そのシールドにも亀裂が入り始めた。このままでは、決壊してしまう。

『どうなってる!?私のシールドがこうも早く…』

 エレメントは慌てながらも冷静に、咄嗟に鉄の壁から後退し距離をとって決壊に備える。

「俺の作った防衛兵器だ。怪獣を砲撃だけで仕留められるように、とんでもない威力に設定してある。いくらあんたと雖も、あれだけの数の砲台から一斉に叩かれるならこうもなるさ。」

『むむぅ…。』

『道理でめちゃくちゃに痛いわけだ。面倒なもの作ったねぇ…。』

 その隣で、フレロビがフラフラとしながらもゆっくりと立ち上がった。身体からはまだ白煙がモクモクと上がっている。

「あんた、マトモに喰らってたよな。その程度のダメージで済んだのか。悪運の強いやつだ。」

『ふん。…だがどうする。まずは砲撃を止めないと、怪獣に近づけない。』

 土埃をパンパンと払い落しながら、フレロビがそう言った。

「砲台を潰す案なら俺にある。任せろ。問題はその後だ。怪獣が多すぎる。あんたのアビリティがなければこちらが力つきるのが先になってしまうんでね。協力を願いたいが。」

『……それ、僕に何かメリットある?あるのなら、力を貸してやらんこともないけど。』

「メリットか。……これといってないが…。」

『なーんだないのか。…まぁいいよ。癪だが、こりゃエレメントの力がないと、この僕でも苦しいんでね。あくまで欲しているのはエレメントの力であって君のではないんだけど。それに、君から僕に協力を要請してくるとはね。僕が優越感浸れたし、良しとしよう。』

「なら、とりあえず交渉は成立でいいんだな。……来るぞ。」

 イクタがそう言うのと同時に、遂にシールドが大破。彼らを再び、砲弾の雨が襲う。

『おい、どうすればいい!?』
 光の槍を握りしめるだけで、ただ上を見上げているだけのエレメント。

「その身体ならある程度は問題ないよな?飛び込め!」

 イクタの意思で、その大きな身体は大地を蹴り飛び出した。

『お、おい!…あだだだだ…』

 彼は自ら猛攻の中に飛び込んだことにより、躱せたはずの余計な攻撃まで身体に喰らってしまい、時折悲鳴をあげながらも、どうにか吹き飛ばされずに突き進んでいく。スチールエレメントは全身が鋼鉄の戦士であるため、ある程度の衝撃にはシールドを張らずとも耐え、体重も倍以上に増えているため激しく飛ばされることも少ない。だが、一度のジャンプで飛べる距離は格段に短くはなっており、そもそも致命的な弱点として、飛行状態には入れないと言うものもある。

『グッ…ハァ…』

 地面に小さなクレーターを形成させながら一旦着地する。

「よし、この距離ならばなんとかなる。一気に突っ込む!」

 エレメントグニールを改めて握り直し、柄の底部にあるスイッチを、握り拳で軽く突き上げるようにして1度だけ押した。すると、円錐部分が真白く輝き、ドリルのように回転し始める。回転数はグングンと上昇し、次第に螺旋状の銀色のオーラも出現し始めた。

『スチールエレメントスマッシャー!!』

 自身が鋼鉄の光り輝く槍へと変化したエレメントが、地を蹴り出し、宙に浮かびながら超高速で怪獣軍団目掛けて襲いかかる。敵勢を一気に宙へと蹴散らしながら、エレメントは本館への距離をグングンと縮め、ある程度進んだところで右足を突き出し、思い切りブレーキをかけ、続けて左足も差し出し、瞬間的に速度を落とし、地面を数十メートルに渡り抉りながら、静止した。その背後には、ようやく宙から地面へと叩きつけられた数十の怪獣たちが悲鳴を上げている。

「怪獣は任せた!俺らの仕事はここからが本番だぜ!」

 イクタは、フレロビ、そしてエレメントに同時にそう声をかけると、さらにエレメントミキサーの操作を進める。

『ケミスト!ハイドロエレメント!』

『ハイドロエレメントレイン!』

 今度は水色のオーラを漂わせ始めたエレメントグニールの刃先を真上へと掲げ、エネルギーが一定量チャージされたことを確認すると、スイッチを二度入力する。光槍はそれを引き金に水色のエネルギーを打ち上げると、それは上昇を続けたのち、破裂し一気に拡散。細かなエネルギー弾が雨のように、基地一帯に降り注いで行く。この全方位攻撃により、死角にあった砲台にも確実にダメージを与えることができた。加えて、エレメントの生み出した特殊な水分をも含んでいるため、例え外傷程度の被害しか受けなかった個体でもショートし稼働しなくなってしまっている。エレメントは、というと、今ので水素を使い果たしたのか、通常の姿、ノーマルエレメントへと変身していた。

「…怪獣を蹴散らし強引に射程距離まで進行し、全砲台を一瞬にして機能停止に追い込むとは、流石にウルトラマンの戦闘力は別格ですね。」

 ダームは感心しながらも、まだどこか余裕が残っている様子だ。

『…砲撃が止んだ…。どうやったんだ?…まぁ、なんでもいい!』

 その背後数十メートルで怪獣と戦闘していたフレロビは、エレメントの行動全てを見ていたわけではなかったため、状況を理解できていたわけではなさそうだったが、この機を逃すまいと、一気にギアを上げていく。

『ソゥラ!』

 掛け声とともに、大きく口を開け、そこから光線を吐き出した。その攻撃で、同時に5体ほどの怪獣が爆死する。

『…まだまだ、いくぜ!』

「怪獣は、ある程度はあいつがどうにかしてくれそうだな。」

 その様子を流し目でチラッと視界に入れながら、イクタがそう言う。

『ある程度は、だがな。私たちもすぐに、フレロビを援護せねば…。』

「いや、俺たちにはまだもうひとつ、仕事がある。」

 イクタがエレメントの身体をコントロールし、片足を大きく上げ、ピンっと張った後に思い切り大地に打ち付けた。その『四股踏み』のような動作の衝撃波で、あたりの瓦礫が瞬時に飛散していき、一帯を真っ直ぐな平地にしてのけた。

「さ、次はあれ、やんぞ。」

 エレメントの両腕を胸の前で十字に交差させ、必殺の光線を繰り出した。

『ケミストリウム光線!!』

 その目標点は、司令部から死角となる本館の一角だった。その箇所を、威力を落とした必殺光線で攻撃し、戦車一台くらいなら通行できそうな穴を強制的に生み出す。

『何の真似だ?』

「じきに来るIRISの部隊がスムーズに突入できるようにフィールドメイクしてやったんだよ。あとは、怪獣の掃討に集中するのみ!余力を残せればなお良しだ!いくぞ!」

「おっと、調子に乗られては困りますよ!」

『ガァァァァ!!』
 フレロビの方へと向かおうとしていたエレメントの行く手を、突如現れた大きな怪獣が阻んだ。その頭上には、ダームが乗っている。

『…貴様か…ダーム!』

「かのウルトラマン様に名を覚えてもらっているとは光栄。…まぁ、あなた方も結構躊躇なく攻撃してきますね。仮にも自らのホームグランドなのに。」

「今はお前らの拠点だろ。だから叩き潰すまでだ。」

 イクタがそう答える。

「…なるほど。とはいえ、基地を荒らされる痛みはあなたもよく理解されているでしょう。私たちとてそれは同じ。これ以上は、黙って見ているわけにもいきません。ここは私と、尋常に勝負願いたい。」

『尋常にだと?ふん、どうせマトモに勝負する気などないだろう。さしずめ、この私の消耗を主要目的とし、怪獣戦力にこれ以上の損害を出さないため、そしてIRISを簡単に突入させないため、それらを考慮しながらの戦いになるのではないか?』

「ほほう。まぁ、当たりでしょうな。私や怪獣、そしてあなたが派手に暴れれば、アリンコサイズの隊員の突入は絶望的になりますし、あなたの変身が解けたその時に、怪獣が1体でもこちらに残っていればもう私どもの勝ちのようなものですからね。それに、異人態となり、猛威を振るうことができるのは、私だけではない。」

『…キュリか…』

「そういうことです。私たち相手に奪還作戦など、ハナから無謀だったというわけですよ。」

 ダームの余裕は、そういった根拠のある自信に基づいていた、ということか。もしかしたら、未来が読めるローレンにより、背後から、IRISの反撃を見越した作戦を組むようにと伝えられていたのかもしれない。

「…ふん。その表情、今すぐ青ざめたものに変えてやるよ。」

 イクタはニヤッと、笑いならそう言った。

「…その威勢、いつまで持つか楽しみです。」

 双方が顔に浮かべる自信に満ちた面持ち。先に崩れるのは、果たしてどちらの顔かー

 

 

 その数時間前であった。体力が戻ったキュリが、捕虜となったイイヅカ等を連れ、ローレンの元へと戻っていたのだ。隊員たちは、キュリの後ろで片膝をつき、大きな椅子に踏ん反り返るローレンに対して、まるで国王に謁見する配下のような姿勢を取らされている。

「……。」

 キュリやIRISの兵士たちを無言で見つめる銀髪の青年、ローレン。しばらくの間沈黙が続き、隊員たちは冷や汗で背中を湿らせていた。

「こいつらが地下の兵士か。…この程度の場面で緊張するほどのメンタルしか持ち合わせていないとはな。こんな奴らに、今まであらゆる手を妨げられてきたのだと思うとイライラする。」 

 ようやく、ローレンがそう口を開いた。

「お、俺たちはまだ新米なんだ!先輩たちはこうではない! IRISを侮辱するな!」

 ホソカワがそう声を荒げた。

「…ふん、生き残ったのが新米だけとはな。ますます、地下の兵には興ざめだ。」

「なんだと…!」

  立ち上がろうとするホソカワを顔の前に、キュリの腕が伸びた。

「立場わきまえなよ。殺すぞ。」

「……ちっ」

 ホソカワは聞こえない程度の舌打ちをし、おとなしくもう一度片膝をついた。

「さて、お前たちは捕虜なんだからな。俺の質問には答えてもらう。拒否や嘘をつくことは許されない。その場合はお前らを殺すだけではない。今すぐ俺自身が地下に赴き、一瞬で地下世界を滅ぼすことも可能だということを忘れるな。」

 前置きの脅し文句を述べ、威圧のある眼光で隊員たちを睨みつける。

「まずは、ウルトラマンエレメント、そしてイクタ・トシツキのことについて、知っていることは全て話してもらおう。奴らの未来はこの俺とて正確にはつかめない。戦闘では敵を知ることが全てだ。それが勝敗を左右する。戦う前に、正確な情報が欲しいからな。奴らの所属する基地で勤めているお前らだ。新米と雖も、知らないわけはなかろう。」

 知らないも何も、彼らはそのイクタの直属の部下なのだ。だが、その事実はローレン側は把握していないらしい。

「…もちろん、イクタさんの事も、そしてイクタさんがエレメントであることも知っている。」

 イイヅカがそう切り出した。

「エレメントの事なら、今までの戦闘ログが残っている。隊員として目は通しているから、語れないことはない。」

 そうも言った。キョウヤマが驚いたような顔で、イイヅカに耳打ちをする。

「おい、仲間を売る気か!?」

「…そこの者。今はこいつが話している。黙っていろ。」

 キョウヤマの行動に気がつき、そう静止するローレン。

「…見損なったぞ…イイヅカ…!」

 彼には静かにイイヅカを睨みつけることしかできなかった。イイヅカはそんな視線をよそに、話を続けていく。

「エレメントは主に4つの姿を持っている。うち3つは特殊能力に特化した姿だ。元素をエネルギー源にしているだけに、他にもまだ未披露の能力があるかもしれないが。そして、強化形態としてさらにもう一つの姿もある。この形態は特に強力だが、持続時間は他の姿に比べると極めて短い。」 

「ほう。思っていたよりは語れそうだな。」

 ローレンが鼻を鳴らす。

「で、その特殊能力について教えてもらおうか。」

「…前述の通り俺は新米だ。ログしか読んでいないため、実際に見たわけじゃない。だから、断片的なことしか喋れないぞ。」

 イイヅカはそうはぐらかした。

「なら、実際に何度も戦っている私の方が詳しいだろうな。おそらく、既にローレンに報告をあげているモノで全てのはずだ。あれから新規のデータはない。」

 考えてみれば当然だが、キュリやラザホー、ダーム達の戦闘報告も、彼の元には上がっているようだ。となると、エレメントの能力もある程度は把握できているはずだ。なぜ今更、改めて聞き出そうと思ったのだろうか。これは、イイヅカの頭の中にも浮かんだ疑問であった。

「そうか。だが、情けないことに我々には主に敗戦の記録しかない。追い詰めたことは何度かあったが、いつも敗れている。それは何故だ?」

「何故、と俺に聞かれても…。」

 こればっかりは、本当に答えようがない。

「あんた達は強い。もしもエレメントだけ、が相手だったら、何度か彼は負けていた。だが、イクタさんがいる。だからこそ、エレメントは負けないんだ。そうとしか言い切れない。」

「…やはり奴のリディオ・アビリティか。まぁ、その能力は大方予想がついている。」

 ローレンは腕を組んでそう呟いた。

「リディオ…アビリティ…?」

 サクライが、なんのことやら、という顔でそう聞き返す。

「…なんだ、知らないのか。…まぁ、新米なら仕方ない。だが今は関係がない話だ。」

 ローレンは台座のそばに備えられていたグラスを手に取り、軽く水分を補給すると、話を続ける。

「では、質問だ。エレメント、もしくはイクタ。何か致命的な弱点はあるのか?」

「…活動に制限があること…としか言いようがないが……。」

 イイヅカは、今この瞬間も頭をフル回転させながら、策を考えていた。ここで敢えて嘘の弱点を教え、次回戦闘時にエレメントを優位に立たせることも可能かもしれない。だが、話に聞けばこの男ローレンは未来が読めるとのこと。にわかには信じがたいが、つい先ほど、そこのキュリという女の空間移動能力を体感したばかりだ。本当と仮定すれば、その能力で嘘を教えたことがすぐにバレる可能性がある。となれば、自身だけでなく、仲間の命も保証できなくなる。やはり大胆に攻めることは避け、大人しくしておくべきか…。

「……そうか。ふん、新米ならその程度かもな。キュリ、次回からはなるべくベテランを攫ってくるようにしろ。」

 ローレンはため息をつきながら、横目でキュリを睨みつけた。

「お、おう…。すまん…。」

「まぁ、新米にしてはよく喋った方だ。お前は賢い。仲間の者、こいつの英断で命は助かったことを感謝するんだな。」

 ローレンはそう言うと立ち上がり、キュリが没収していたアイリスリボルバーを彼女から受け取り、それを弄りながら奥の部屋へと歩いて行った。キュリも、それに続いていき、次第にその空間には隊員達だけが取り残される形となった。

「…イイヅカ!お前!IRISを売りやがったな!」

 キョウヤマが我慢から解放された為か、耳を劈くような大声で怒鳴りつけてきた。

「落ち着け!冷静に状況を把握しただけだ!それによく考えてみろ!俺は別に、敵に新たな情報は一切与えていない!」

 それはその通りである。

「そうだ。敵に情報を与えず、結果的には俺らの命を助けた。それだけで十分じゃないか。」

 サクライが、イイヅカをフォローする。

「でも…敵としては新しい情報は仕入れることはできなかったわけでしょ?それなのになんで、私たちを殺さなかったのかしら。」

 アヤベのその疑問は、この場にいる全員が抱えているモノでもあった。

「…俺らが嘘をつくかどうか、そこを試したかったんだろう。敵側だって、俺らが新米とわかった瞬間、情報の方への期待度はある程度捨てたようなもんだ。一番欲しかったものは手に入らなかったが、エレメントの動きに制限をかけられるコマにあることは間違いないからな。」

 イイヅカはそう分析していた。

「人質としての利用価値、か。TK-18支部の数少ない生存者だからな。確かに、敵側が劣勢になるようなことがあれば、俺らを盾にすることができる。」

 サクライも同じことを考えていたらしい。

「もし嘘をついていたり、黙秘を続ければ殺されていた。だが、それは敵としても望ましくない。できれば殺したくはなかったはずだ。だからこそ、イイヅカの対応に少しは満足したのだろう。」 

 ホソカワの言葉に、キョウヤマを除く全員が同調するように頷く仕草を見せた。

「…怒鳴ったことは悪かった…。お前は本当によく考えているな。それに比べて俺は、感情的になることしかできない。恥ずかしい限りだ。」

 キョウヤマは頷く代わりに、深く頭を下げた。

「よせって。お前の言うことも一部正しかったんだ。IRIS組織としての戦略上でなら、黙秘を続け殺されていた方が良かっただろう。」

「人質となればトドメを刺せなくなる可能性があるからな。それに、敵には知られてないようだが、俺らはイクタ隊長の直属の部下なんだ。これ以上ない阻止力になる。」

「…でもこれはチャンスだ。俺たちは今、IRISの一員として敵のリーダーに最も近い場所にいる。隙をついて、ダメージを与えることだって!」

 ホソカワの言葉に、全員がハッとする。暗いことばかり考えて、この状況をポジティブに捉えることを忘れていたのだ。

「でも、相手は未来を読めるんでしょう?こっちが何かを計画して、あいつが未来での身の危険を察したら…。今度こそタダじゃ済まないわよ。」

「忘れるな。今ベストなのは、縁起が悪いし、俺自身も覚悟が決まっていないから言いにくいことだが、俺らが死ぬことにある。成功してダメージを与えるか、失敗して死ぬか。どちらに転んでも、組織的には戦況が好転することになる。ホソカワ、いい案を思いついてくれた。」

「…組織のために…いや、地球の未来のために命を使える…。地球の未来を背負うものとして、こんなに光栄なことはないさ。」

 キョウヤマは嬉しそうに、そして強がるように言ったが、その声は震えていた。死を覚悟で入隊した隊員とはいえ、一人の人間なのだ。自分たちの死こそがベスト。それは受け入れたくはない現実であることに間違いはない。

「…そうと決まれば、早速立案だ。時間は限られてる。急ぐぞ。」

 サクライとイイヅカは、それでも冷静さを崩さなかった。彼ら二人を軸に、隊員たちがこれからとるべき、最善の行動を練り始めることになる。

 

 

「いきますよ。ふんっ!」

 ダームが杖を振り上げ、怪獣を動かした。雄叫びをあげ、大地を揺らしながらまっすぐにエレメントへと突っ込んで行く。

『シャッ!!』 

 迎え撃つように、ポーズをとり同じく走り出すエレメント。2体がぶつかり合い、取っ組み合いが始まる。

『ガァァァァ!!』

『シュワッ!!』

 ふたつの大きな力は互角のようだ。両者の両足が地面をえぐり取りながらの鬩ぎ合いが続く。

『むむぅ…すごい力だ…!!だが…シェーアッ!!』

 エレメントは一瞬力を抜き、少しヨロけた怪獣の腕をつかみ直し、手首を捻ってその場で回転させながら、地面へと叩きつけた。ズゥゥゥンという重い音が響く。

『ガハァァ…!』

「うわっと!」

 倒れた怪獣から振り落とされ、踏み潰されそうになったダームは慌てて飛び去り、安全な場所へと退いた。

『ジェアッ!!』

 仰向けに倒れた、無防備な怪獣の腹を、片足で思い切り踏みつけ、さらにダメージを与えていく。

『セェェイ!!』

 そして掬い上げるように足を入れ、怪獣をダームの方へと蹴り飛ばした。

「…よっと…。まぁやはり、強いですね。」

 それもさらに避け、降りかかる土埃を払いながら、そう呟くダーム。

「ですが、私の勝ちは約束されているのです。」

 ダームはニヤッと笑みを浮かべると、自身を異人化、さらに巨大化させ、怪獣を庇うようにエレメントの前に立ち塞がった。

『あなた方では勝てない。』

『そうだといいな。だが、私たちはそう簡単なことでは諦めない。それを忘れるなよ!』

 エレメントは一気にケリをつけるつもりなのか、残されたエネルギーを使い、強化形態ネイチャーエレメントへとパワーアップを果たした。赤と銀に加え3つめの体色として、新たに緑色のストライブが出現し、そこのみが、一瞬だけ眩い輝きを放ち、辺りをグリーンに照らし出す。しかし、この変身でエネルギーの多くを消費してしまったため、遂に胸のランプが赤く点滅し始めた。エレメントに残されている時間も、ごく僅かである。

『後1分だ。』

 エレメントが、短くそう叫んだ。

『……何が、でしょうかね?』

『決まっている。貴様の余命だ!!』

 エレメントグニールを強く握りしめ、先ほどまでとは比べ物にならない速度で、彼は瞬時にダームとの距離を詰め、その腹を目掛けて思い切り槍を突き出した。大きな火花を散らし、後退するダームを相手に、間髪を入れず、槍による斬撃を行っていく。

『シェア!!ジェア!!』

『グッ……!!』

 ダームは思わず、静かな悲鳴を上げ、そのままヨロけ、その場に倒れ込んでしまった。

『エレメントスマッシャー!!』

 ダームが倒れたことにより、エレメントは次の標的として、数十秒前まで戦闘を行っていたあの怪獣をロックオンすると、スイッチを一度だけ押すことで発動するグニールの固有技、エレメントスマッシャーで突撃。たったの一撃で怪獣を仕留めることに成功する。突然の奇襲に、怪獣は悲鳴をあげる間すらなく爆死してしまった。

『馬鹿な…どうなっていると言うのです!?私たちの勝ちは約束されているはずでは…!?』

 もう彼の顔に余裕はなかった。浮かんでいるのはむしろ、狼狽である。

「ローレンの予知か。じゃああいつに伝えておいてくれ。俺ら相手にそんなもの無意味だってな。まぁ、お前はここで死ぬから伝言すら不可能なんだがな。」

 イクタは冷たく吐きつけた。

『…タダでは死にませんよ…。エレメント!!あなた諸共道連れです!!』

 ダームはそう叫ぶと、基地内にいた全ての怪獣を制御下においた。完全異人態だからこそできる恐ろしい芸当だ。フレロビと戦闘中だった怪獣たちも、目を真っ赤に染めて、こちらへと向かってくる。生存していた怪獣は全部で14体。それら全てが、彼らの元へとやってきたのだ。

『……むむぅ…これはやばいかも。』

「おいおい、何が貴様の余命は後1分、だよ。カッコつけたのにそれって、情けなさすぎるぞ。自分の余命と間違えたんじゃねーか?」

『う、うるさい!先ずはダームをやる!そうすれば、怪獣もおとなしくなるはずだ!』

「急げよ。どさくさに紛れて逃げられたらシャレにならん。奴を殺すなら、ここしかない!」

『わかっている!シェア!!』

 槍の矛先をダームに向け、走り出すエレメント。しかし、今怪獣はダームの支配下なのだ。怪獣たちはワラワラとエレメントの元へ群がり、彼を押し倒し、次々にのしかかり始めた。さらに不幸なことに、エレメントグニールを落としてしまう。

『ヌオッ!こ、こら!そこをどけい!!』

 エレメントも必死に抵抗し、怪獣たちを押しのけようとする。だが、一体一体が体重3万トンは優に超える大型怪獣なのだ。そう簡単には脱出できそうにない。

『…死ぬのは、あなただけのようですな…。では、私はこれにて。』

 エレメントグニールを拾い上げ、あとは怪獣たちに任せこの場を離れようとするダーム。武器を奪われ、命ある状態で逃げられてしまったら、この奪還作戦は利益を得るどころか、さらなる損害を生むだけだ。ここはなんとしても、ダームを逃すわけにはいかない。

『フレロビウム光線!!』

 エレメントの窮地を救ったのは、またしてもフレロビであった。放たれた光線はダームを直撃し、火花を多く散らしながら、。その衝撃でエレメントグニールは大きく宙を舞い、それを空中でフレロビが掴んだ。

『何度も言わせないでよ。僕から楽しみを奪うから逆恨みを食らうんだよ、ボケジジイが。』

『ふ、フレロビ!決め台詞を吐いた直後ですまないが、助けてくれ!』

 エレメントが情けない声でそう叫んだ。

『ハァ…困った奴だ。僕がいないと何もできないなんてね。』

『……なんとでも言えばいい。』

 フレロビは再び光線を吐き出し、エレメントに群がっていた怪獣たちの一部を吹き飛ばした。あとは流石にネイチャーエレメント。軽くなった怪獣たちを自力で払いのけ、再び立ち上がった。 

『さて、これで終わらせますか。』

 フレロビが両拳を胸の前で組み、ポキポキと音を鳴らす。

『うむ。トドメだ。』

 エレメントはフレロビから槍を受け取り、スイッチを二度入力し、先端をゆっくりとダームに狙いを定めるために動かすと、刀身部分、つまり円錐状の部分が、先端から3つの面を作るようにパカーっとゆっくり開き、内部からレールガンのような砲身が姿を表す。

『ケミストリウムエクストラウェーブ!!』

『フレロビウム光線!』

 二つの必殺光線が、怪獣たちを、そしてダームを飲み込んだ。

『ガァァァァァァ!!』

『ぬおおおおお!!』

 二人は、断末魔をよそに、そのままクルリと振り返り、それぞれに決めポーズをとった。その後ろで、つい今まで命だったものが大きく火を吹き、爆発した。

 

 

「全軍!!突撃!!」

 部隊長の指示で、空から、そして陸から多くのIRIS隊員がTK-18支部本館へと突入を始めた。残党がいないか、また、生き残りの怪獣がいないかを隅々まで確認しながら、確実に調査を進めて行く。

「結局、ほとんどの仕事を俺らでやってしまったな。」

 その光景を、IRISの専用車両の中で休憩しながら眺めるイクタがそう呟いた。

「当然さ。しかし君とエレメントはもっと僕に感謝すべきだ。誰のおかげで、この戦いで勝利を収めたのか、よく考えてみるんだな。」

 フレロビはいつもの様子だった。だが、以前とは異なり、その言葉は全てが嫌味、というわけでもなく、多少は冗談が混じっているようにも聞き取れた。

「まぁ、今回ばかりはその通りだぜ。助かった。」

「…そう素直に礼を言われても、小恥ずかしいものだがね。」

「じゃあどうしろって言うんだ?」

 イクタが少々不満そうな顔でそう訊ねる。

「いや、それでいいのさ。」

「部隊長!!TK-18支部の支部長、情報局長、司令官の生存を確認しました!他にも多数、生存している職員がいます!」

 車両内に、通信の声が響いた。

「了解。直ちに保護せよ。そして引き続き生存者の捜索を進めろ。」

「了解!」

「よかった、支部長たちは生きていたようだな。」

 イクタがほっと胸をなでおろす。

「…全滅よりは遥かにマシだ。けど、沢山死んだ事実は今後も重くのしかかるぞ。特に、君はこの支部では責任の発生する立場にありそうだからね。」

「そんなの覚悟の上だ。でも、この戦争を早急に、勝利で終わらせること、地上を奪還すること、そして平和を取り戻すこと。それが何よりも先決のはずだ。」

「まぁ、その通りだけど。……怪獣を操作できる爺いは消去した。これで、戦況は大きくこちらに傾いたはずだ。君の思い描く通り、早急に且つ勝利で終戦に持ち込むためには、ここで畳み掛けるしかないぞ。」

「あぁ。今まではあいつや、怪獣兵器を操るラザホーがいたからこそ、敵は怪獣を主戦力として作戦を組み立てることができていた。だが、今この瞬間から、もう怪獣はコマじゃない。むしろ脅威へと変貌した。これからは地上での戦闘も増えるだろう。操る能力がないという等しい条件下で戦場に散らばる怪獣をどう動かすか。これが今後の鍵だ。」

「…だろうな。」

 そうだ。敵は従来通りの戦法を取ることが不可能となったのだ。それに対してIRIS側には少数ではあるものの、支配下における怪獣兵器が存在している。無か有かで言えば、優位に立つのは当然有を持つもの。地下で行動するための拠点を失った、一人の戦士が散った。文字に表せば、一見壊滅的な被害を受けたようには思えない。しかし、戦術的被害は尋常ではない。敵にとってこの敗北は、非常に大きな意味のあるものとなった。

 

 

「……遅かったか…!」

 地下での異変に気付き、TK-18支部へと駆けつけたキュリとローレン。その地は、至る所で上がる火の手、そして散乱する怪獣の残骸から放たれている悪臭が支配しており、見るも無残なものとなっている。

「……ダームも死んだか。まずいな。」

 ローレンがそう呟いた。

「どう探っても、俺らに不利な未来しか見えない。まさか、ここまでやるとはな。エレメント…。」

「で、でも!まだ私がいる!それに、エレメントだってローレンの敵ではないはずだ!」

「…エレメントは倒せる。その未来なら見える。」

「…なら、なんで不利になるんだ…?地下なんて所詮、エレメント頼みの戦術じゃないか。」

「……キュリ、この状況を打開するには、賭けに出るしかない。お前の力もいただくぞ。」

 ローレンはキュリの肩に手を置き、そう言った。

「賭け……?」

「……俺が……ウルトラマンになる。」

 彼はニヤリと笑った。なぜかその顔に、キュリはただならぬ恐怖を覚えたのだった。

 

                                              続く。

 




投稿後に、28話に文章が不自然な箇所が複数存在することに気が付きました。pixivさんに投稿している分の修正は完了済みです。時間が出来次第、こちらも同じく修正に入らせていただきます。5月3日現在では、正しい文章(あくまで、作者が書き表したかったものです。文法的誤りはご愛嬌のほど…)の方はpixivさんの方で確認できるという状態です。
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