第36話「決着」
『デヤァ!』
飛んできた紫色のエネルギー弾を左腕で弾くのは、イクタの変身したーというよりは、今では本来の姿とするのが適切であろう、ウルトラマンエレメント・モードアムートだ。赤と銀をメインとした色調やその身長、体格こそ、先代の同名巨人と似通ってはいるが、そこに、黄金に近い黄色のラインが入っていることや、そのパワーの大きさなどが異なっている。火星のウルトラマン、マフレーズを攻撃した際に、まだ自身でもその詳細については知識の少ない、第3のアビリティを使用したのだが、それからというもの、その攻撃を行った利き腕でもある左腕に感覚がないに等しい、つまり異常が起きていた。そのため、このように敵の飛び道具を弾いても、特に痛みも感じていないのである。
『ハァァァァ!!』
そして、その紫の光弾を間髪入れずに叩き込んでくるのが、これまでの間地下世界を脅かし続けてきた、黒ローブ組織の親玉ーといっても、今や最後の一人だがーである、ローレンの本来の姿、ウルトラマンアノイド。黒と暗い紫が基本色調で、ところどころに艶があり高級感を醸し出す明るい、アメジストのような紫も含まれている。体格や、単純な攻撃力ならばエレメントと同程度だが、未来予知や空間操作のアビリティがある分、優位に立ち回る戦術を取りやすい。一対一というこのシチュエーションの元では、例に習って、アノイドーローレンーが有利であろう。
『ちっ、徹底して遠距離戦に持ち込みたいのかよ!エレメントシールド!』
回避するための動作のその先を読んだ飛び道具を配置してくるため、かわし続けるには限界がある。しかし、シールドもタダで張れるものではない。走る、飛ぶなどといった動作に比較すれば、エネルギーの消費は大きいのだ。
シールドの背後に隠れつつ、飛び道具で応戦するのも手段の一つだ。上手くいけば、隙を生み、得意の肉弾戦に持ち込むことだって可能だろう。だが、彼はこれまでの戦闘で、多様な光線、第3のアビリティ、持てる最高火力の必殺技と、大技を使いすぎている。胸のランプも赤く点滅している現状を見れば、それは好ましくない戦法となるのだ。
『消耗しているのはローレンも同じだ。この弾幕攻撃も、そう長くは持たないだろう』
イクタの脳内に、今やその意識だけが残された存在となり棲まう、ウルトラマンエレメントはそう推測している。
『わかってる。けど、慎重に動かないとな。あいつはまだ、第3のアビリティを隠してる。じっとここで堪えても、逆に飛び出して殴りかかりにいっても、どちらの場合でも不意を突かれたらヤバイ。……この、左腕の異常の原因ははっきりとはしないが、そんなこと言ってられねぇな。出し惜しみをすれば負ける。……俺にも元素操作の力は使えるのか?』
『エレメントグニールと同じだ、理論上は可能だろう。だが、君のアビリティではない分、精度は私が使用するものと比べれば格段に落ちるかもしれない』
『そうか……。でも、ないよりマシだ。攻撃手段にはなる。さて、どの元素をどう扱うか…』
と、そこまで考えながら、彼はふと気づいた。もしかしたら、あの第3の能力は、単に体積をそのままにした伸縮ではなくーそうもなれば、この左腕の異常にも頷ける。この仮説が正しければ、その使用リスクは想像を絶するものにもなるだろう。
『どうしたイクタ?険しい表情をしているが……』
『……なぁ、俺たち人間や、ウルトラマンも怪獣だって、元素の、原子の集合体だろう?』
『そりゃそうだが、それがどうしたんだ?』
『いや、あんたのアビリティは、元素を好きなように操作できることだったよな。自由に組み替えたり、自身に取り入れたりできていた。そのあんたのゲノムデータを引き継いでいる俺の第3の力は、それに派生した、というか、性質が少し似ているもの、かもしれないなと思ったんだ』
『君はいつも回りくどい。つまり、何が言いた……そうか、そうだとしたら……』
エレメントも、何かに気がついたようだ。
『このアビリティ、多用は禁物かもしれねぇな』
『おそらく語感がいいからとテキトーに名付けたのだろう、モードアムートというネーミングが、的を得ている可能性があるぞ……!気をつけろイクタ!君の推測通り、禁断のアビリティかもしれん!』
『何をブツブツ唱えている!』
もうこれ以上考えている余裕はなさそうだ。勢いが衰えるどころか、さらに増してくる弾幕に、シールドも耐え切れそうにない。
『……でも、地下の人類は、IRISは、これまで長い間、多くの時間や犠牲を費やし戦い、そして制限された生活に耐えてきたんだ。最終目標の地上奪還はもうすぐそこだ。私情に任せてこの決戦に負けるわけにはいかねぇ。例えこの身がどうなろうとも、俺はー!』
イクタは思い切り大地を蹴り、飛び出した。迫り来る弾丸を恐れもせず、着実に距離を詰めてゆく。その後方では、決壊したシールドが爆散していた。
『……エレメント!貴様は俺の前に敗れ去る!その未来、この手で確定させてやろう!』
『やってみなよ!』
ローレンの目前に着地したイクタは、そのまま流れるようにキックを繰り出す。
『シェア!』
だがそれは空振りに終わった。目標は、遙後方へと移動していたのだ。
『ポプーシャナ!!』
怒鳴るように、残る最後の覇獣ポプーシャナを呼びつけた。彼の作り出した空間のゲートから、その大きな頭部を表す。
『パダァァァァァァァ!!』
現れるやすぐに、クイッと上空へと垂直になるように顎を上げ、口の中で水色に光るエネルギーを蓄え始めた。
『パダァァァァァ!!』
そして充分にそれがチャージされたのち、口から放たれた。特殊なエネルギーの練られた大量の水だ。水は、瞬く間に広範囲へと広がり、イクタの足元を掬う。
『お、重い!』
水は、くるぶしの辺りまでの深さしかなかったのだが、それでも足を上げることができない。
『確実に仕留めてやる……!』
動けないイクタに狙いを定め、ローレンは再び、先ほどマフレーズに放ったものと同じ光線を繰り出そうと、動作に移ってゆく。
『水を止めなければ!イクタ!』
『わかってる!ケミスト!』
そう叫んだ瞬間、イクタの足元の水が、飛沫をあげた。まるで爆発が起こったかのようだ。
『何!?』
動作をキャンセルし、彼を睨みつけるローレン。どうなっている?
『別に、エレメントの能力を使っただけだ』
『私は主に合成に使用していたが、こいつめ、周囲の水の元素を弄り、原子構造を破壊させよった…』
水から逃れるため、すぐに宙へと浮くイクタ。そう簡単にはやられるわけにもいかない。
『……だが、そんな芸当が多用できるのであれば、俺を殴る際、俺の身体を分子や原子レベルで構造を破壊することだって可能だったはずだ。それができていないということは、分解できる程度に限度があるのか、相当消耗するのか……。何れにせよ、そこまで警戒する能力じゃない』
そうは言いつつも、ローレンはふと、思いもかけずその場に片膝をついてしまった。ランプの点滅速度が速まっている。限界なのだろう。
『そこまでだな、今度は俺の反撃のー』
隙を生んだローレンへと、エレメントグニールを握りしめ急接近していくイクタ。
『番だ!!』
大きく振りかぶり、槍を振り落とした。勝負あったかー?
とも思われたが、その槍の刃先は、再び直立したローレンの掌の中で収まっていた。グッと握力が込められているため、引き抜くことができない。
『な、まだそんな力が……?』
いや、確実に力を失っていたはずだ。困惑するイクタは、さらに自身の目を疑った。奴の胸のランプは点滅をやめていたどころか、通常時の色に戻っていたのだ。
『……これが俺の奥の手だ。流石に、想像の範疇外だったようだな、エレメント!』
そう言い、槍ごとイクタを放り投げる。
『どうなってる?回復魔法でもあるのかよ……』
事態が飲み込めないのも無理はない。実際にそのようなものでもなければ、この現象を説明することができないのだ。
だがよく見ると、ローレンの肉体は、先ほどまでとは打って変わってひとまわり、まではいかずとも、小柄になっているようにも見て取れる。もちろん、それでも充分ウルトラマンらしい巨体ではあるのだが、確かに小さくなっているのだ。
『……自身の体内で核融合を発生させることのできるアビリティだ。枯渇しかけたエネルギーも、体内で新たに、莫大な量を生み出すことができる。もっとも、代償として想像を絶する量の細胞が破壊され、その分が新たに作られることもなくなる。まさか、一度の融合でこれ程身体に変化があるとはな……しかし、貴様さえ倒せれば、例え身長がアリ以下なれど惜しくはない!復讐を果たせることに代わりはないのだからな!』
『マジかよ……。これ、不利すぎるだろ……』
がっくりと肩を落とすイクタ。敵は、身体に疲労や傷を残しながらも、エネルギーだけならフル回復。対してこちらには、回復できるような手段はない。
『……まだ可能性は残されている。ネイチャーモードのように、自然エネルギーを利用することができれば……』
エレメントはそう呟いた。
『ありゃ確かに莫大な力が手に入るが、その自然エネルギーを使用する際に同じく膨大なエネルギーを消費するのが難点だったろ。今それをやれば自殺も同じだ』
『……自身のエネルギー消費を最小限に留めつつも、ネイチャーモードと同じかそれ以上の精度で自然を操る方法があるとしたら、どうする?』
脳内に棲まう者は、思わせぶりにそう言った。
『そんな都合のいいもんがありゃ、とっくに使ってるよ……第一、あんたでもできなかったその芸当を、どうやって……』
とはいえ、そんなことを考えている余裕はない。目の前には、再び力を取り戻した難敵が堂々と仁王立しているのだ。今できることで、勝つための作戦を立てなければ。
『いや、待てよ?自然の力を操る……か。……試す価値はある……!これに賭けるしかない!』
何かを閃いたようだ。
『腹は決まったか?覚悟しろ、エレメント!』
ポプーシャナの生み出した、今度はなんの変哲も無いただの水だが、尋常では無い量と速度で流れ出るそれに波乗りするような形で、彼が迫りかかってくる。
『ハァァァァァァ!!』
劔のように鋭く、長いかぎつめでの斬撃を繰り出そうとする。
『死ねぇぇぇぇぇ!!』
『デヤッ!』
イクタはそれに対し、何やら小型のカプセル状のものを真下の地面へと投げつけることで抵抗した。着弾点から、ウルトラマンたちの身長をもゆうに超える巨大な氷山が現れ、これが敵の攻撃と水流をブロックする。爪が氷山に食い込み、ローレンは一瞬、動きが止まってしまった。
『これは、IRIS最初の怪獣兵器となった、氷獣ゲフールの……。気が付いてくれたか。これが私からの最後の贈り物だ、イクタよ』
エレメントがそう呟く。ゲフールとは、ローレンから休戦協定の条件として渡された怪獣カプセルを研究し、これをIRIS用に改良するための、最初の実験対象ともなった怪獣だ。これは完璧には成功せず、確保できたのはその怪獣の持つ能力とエネルギーだけだった。それでも冷凍光線を放つための弾丸には改良できたため、怪獣’兵器’としては、立派に機能している。
『まだだ!』
今度は、指笛をふき、待機していた嵐獣テペストルド、さらにマフレーズにやられ、ノビていた炎獣マグナマーガをも召喚した。特殊なエネルギーの込められた突風と、表面がマグマで煮えたぎる噴石のような巨大な岩石の同時攻撃が、ローレンを支援するポプーシャナを襲う。
『パダァァァァァ!!』
それらが命中し、敵怪獣の身体は大きな爆発を起こした。だが、まだ倒し切れていない。
『怪獣には怪獣をってことか。小癪な』
『いや、ちょっと違うね。……その目ん玉おっ広げてよく見ていろ!もしかしたら、俺は今からお前の目の前で自ら命を絶つことになるかもしれない』
『……?何のつもりだ?』
『だから、あんたのアビリティで占ってくれよ。俺の、30秒後の姿をよ』
『俺の能力は占いでは無い……!……が、まぁいいだろう。死にゆく宿敵の最後の要望だ。応えてやる』
勝ち誇った表情で、そう返答した。遂にヤケになったか、エレメントよ、とでも言いたげな顔だ。だが、一瞬にしてそれは険しいものへと変化する。それどころか、焦りの側面も垣間見えないわけでも無い。
『その顔……エレメント、どうやら、まだ勝算はあるみたいだぜ』
『うむ。さぁ、反撃するぞ……!』
打って変わり、勝ち誇った表情を見せるのはイクタの方だった。
空の戦場では、ドドン!という大きな音を立て、火星宇宙艦隊の旗艦が炎と黒煙をさらに激しく昇らせていた。もう限界だ。
「よし、これ以上の攻撃は停止だ。敵は非常に強力な爆弾を持っていて、自爆すれば我々や、下で戦っているウルトラマンまで巻き添えを食らう見込みとの情報もある。ここからは慎重に動くぞ。まずは、降伏勧告だ。それに従わなければ、船内に速やかに突入。爆弾と、その起爆装置の差し押さえを最優先に行う」
イケコマが指示を飛ばして行く。
「突入の際には、動きに無駄が出ないように我々が案内いたしましょう」
捕虜となった火星兵がそう言った。武器こそ取り上げられているが、貴重な情報源として起用できるため、特に動きに制限はせず、保護したクワハラ隊員の乗る機体の中では自由に活動できるようにしている。協力してくれているとはいえ、ここまで無警戒でいいのだろうか、とは誰もが思っていたが、今は戦争の早期終結のために、戦うことだけに集中しなければならなかった。
「……ところで、君たちの指揮官は、勧告を受け入れるような人物かね?」
イケコマは念のため尋ねた。
「拒否するでしょう。断言できます。我々味方からの撤退の案をも頑なに拒否されていました。だからこそ、我々は自らの命を守るために逃げてきたのです」
即答だった。なるほど、劣勢な上、撤退すらせず最後まで戦おうとしているのだ、こちらの目線からでも薄々そんな気はしていたが、これでは確かに、何人かの兵士は逃げ出しても何ら不思議では無い。戦略上、絶対に撤退は許されない、最後まで死力を尽くさなければならない場面は、戦争中であれば出てくるだろう。敵にとっては、いまがその時ということだろうか。それとも、指揮官がただの無能なのか。
「しかし、一応呼びかけは行おう。我々とて、このまま一人の犠牲も出さずに終えたいし、より平和的な解決策があるのならば、そちらを選択したい。彼らに、再び我々地球に住む地球人と、この星で共存する気があるのならば、交渉にも臨んでくれるはずだ」
「共存する気……ですか」
火星兵たちは苦い顔をした。その表情から、降伏勧告などやる前から結果は見えているということは、全隊員が察してはいたが、やはりそれでも、IRISはあくまで和平を望んでいるという姿勢は見せなければ。
「……火星の指揮官に告げる」
機内に装備されてあるマイクを通し、イケコマの声が遂に空に響いた。
「我々は地球地下人類を守る組織、IRISだ。これ以上の戦闘の続行は、我々にも、そしてあなた方にとっても無益と見られる。加えて、この状況、あなた方が不利なのは火を見るよりも明らかかと思われる。お互いの未来のため、是非ともここで今すぐに抗戦能力を放棄し、あなた方の故郷へと帰還するか、この地球で我々と共に暮らしていくか、選択されたい」
緊張していたのか、ところどころを噛み、その言葉もぎこちなく、どこか遠回しな表現ともなってしまったが、趣旨は伝わっただろう。
「劣等民族がバカにしよって……!」
大方の予想通り、大統領はこれを受け入れるどころか、むしろ憎悪の感情を増幅させていた。
「だ、大統領!これが、敵からの最後通告かと思われます!これを無視すれば、間違いなくこの船が沈むまで攻撃を受けます!堪え難い屈辱ではありますが、ひとまずこれを受け入れ撤退し、また戦力を整えてー」
残る部下たちは、必死の説得を続けていた。
「ふざけるな!私はこの国際軍の最高司令官!全ての国の首脳から、この入植作戦を任されておるのだ!独自に秘密裏開発していたウルトラマンマフレーズをも披露し、この作戦成功を経て他国との軍事力の差をも見せしめ、地球再移住後も世界を牛耳る国家として君臨する手筈だったのだ!それがマフレーズを失い、多くの兵士を死なせ、この損害を出しながら敗走でもしてみろ!我々は世界の指導者から一転、信頼と国力を失った笑い者だ!」
「信頼と国力は時間が経てば取り戻せます!私たちの国は、それほどの力がある国です!ですが、大統領のお命はどれだけの時間が経っても戻らないんです!ご自身の命を大切にされてください!」
「いい加減にー!」
あまりにしつこく説得してくる部下に手を上げようとした瞬間だった。
「いい加減にするのはあんただろ!」
それより先に、別の男が、大統領の頬を引っ叩いた。ローレンに攻撃されて以降伸びていた、この船の艦長でもあり、もともと指揮をとっていたウッズ大佐だった。
「大佐!もう大丈夫なのですか?」
ビンタを喰らった大統領よりも先に心配されたのは、先ほどまで意識のなかったウッズだ。
「ウッズ大佐……貴様、自分が何をしたのかわかっているのだろうな……!?」
「もちろん。死刑でもなんでも、いかなる処分をも受け入れる覚悟であります」
ビシッと堂々とした敬礼を見せつける。
「ですが、その前に……私も、地球に残された劣等民族を忌み嫌っていました。それは、歴史で、彼らのせいで戦争が起こり、地球が滅び、火星に移住せざるを得なかったと学んだからです。……しかし、敵は野蛮だと推測されていた前評判とは大きく異なり、高度な技術に戦闘能力を擁し、我々のことも考えて、平和に解決する策を見出そうともしている。対して我々は、頑なにプライドだけを気にし、無意味な戦闘を続行するだけ。これではどちらが野蛮で教養のない者なのか……。敵側の方がよほど、貴方より知性を感じ取ー」
それ以上台詞は続かなかった。ウッズの眉間に真紅の空洞が開き、そこから赤い液体が流れ出始めたからだ。
「……おい貴様ら、戦う気がないのなら、せめてこの裏切り者の死体の後始末くらいしたらどうだ?」
そう吐き捨て、ため息をついた後、まだ発射口から煙をあげている銃をその場に放り投げて、マイクの方へと近づいた。
「通告ありがとう、地下の諸君。返事を大変長らくお待たせしてしまった」
「お、返答がきたぞ……!」
その声は、冷静さを取り戻したのか、かつて火星で国民や他国の首脳を魅了させた、カリスマ政治家らしい、丁寧でゆっくりとしたトーンだった。
「結論から言えば、君たちからの申し出は受け入れない。だが、条件さえ私の指定したものにしてくれれば、すぐに戦闘を停止しよう」
「条件……?」
「そうだ。君たちは共存と言ったな。それでは、地球の領土の50%は、我々火星移住人類のものとし、君たち民族は許可なく一切立ち入ることができないものとする。加えて、IRISが得た科学技術や兵器、そのデータなどはすべて我々国際軍に引き渡し、組織は解散とする。続いてー」
「聞いてられっか、こんなもの……馬鹿げている!イケコマさん、突入の指示を!」
隊員たちは、自分たちが劣勢だということをわかっていないのか、まるで戦勝側のような条件を淡々と突きつける大統領に呆れてしまったのだろう。
「だ、だが、この場面で突入を決行すれば、敵側からしてみれば、交渉中に攻撃してくる野蛮な敵というレッテルを張る良い機会になってしまう……!くそ、隙を与えただけになったか……」
「むむぅ歯痒い!」
全員、とにかく大統領が喋り終えるまで待機するほかなかった。
『エレメントブースター!』
イクタがそう叫ぶと、エレメントグニールにセッティングされていた青い小型の装置が、彼の右腕を目掛けて飛来し、そこに収まった。
『さっき、贈り物と言ったか?ありゃ、どういう意味だ』
その動作の最中、彼はエレメントにそう問いかける。
『すぐにわかる。いや、もうなんとなくわかっていたのではないか?何故、地下という、私の作った閉ざされた空間にあれだけ強力な、性質の異なる三体の怪獣がいたのか……』
『あの怪獣たちが、そうってわけか……細かいことはいいや、勝つためだ!しっかり受け取ってやる!』
ブースターから光線を発射し、それを二体の怪獣に命中させた。これは、怪獣をエネルギー体に変換する特殊光線だ。実体を失い、光り輝く光球のようなエネルギー状態になった怪獣たちを、自らの元へと引き寄せる。
『ゲフール。あんたも頼むぜ』
ゲフールのエネルギーが込められたカプセルも用意した。これで、三体の地下怪獣のエネルギーが揃ったことになる。
『……全部計算していたのか?』
もう一度、彼は脳内の存在へと訊ねる。
『賭けだった。地下に余計な脅威を生むことになったのではないか、そう心配したこともあった。一応、目を覚ますのは私が地下で活動を始め、その波長を感じ取れた後になるよう設定は施していた。なんとか、予定通りに起動してくれたがな……』
『仕込みだったわけか。その仕込みに凍らされたんだな、あんた。笑えるぜ』
ゲフールに冷凍され、戦闘不能になったことを思い出しながら、イクタはそう笑った。
『う、うるさい!……全ては、私の力を継ぐ予定だという、未来に現れるIRISが生む新たなウルトラマンエレメントに力を与えるためだったんだ。もちろん、知っての通り、私はそもそも私という過ちを生み出しておきながら、また同じくして人間をウルトラマンへと進化させる計画には反対ではあった。それでも、地下世界の守護神となるであろう、その者に万が一があった場合に備え、IRISには無断で独自に用意したのがこれだ。さぁ使ってくれ。もう、こんな負の連鎖はここで、君の、私の、私たちの手で断ち切ろう』
『そのつもりさ……デュアルケミスト!』
そう叫び、ブースターのセットされている右腕を高々と掲げた。青き装置は、キラキラと輝き始め、まずは周囲の土や草木などを吸い込んでいく。ここから、必要な元素や自然エネルギーを取り出すのだ。この過程を経て、イクタの身体には緑色のストライプ模様が追加された。ネイチャーモードへの変身が完了した合図でもある。しかし今回は、これだけでは終わらない。
『……これは……これが貴様の奥の手か……』
その様子を、ただ眺めるだけのローレン。
さらにエネルギー化した怪獣たちもが、今度は左腕のエレメントミキサーへと吸い込まれた。
『成功してくれよ……!ファイナルケミスト!』
『ファイナルケミスト!フルパワーチャージ!』
イクタの声とは別に、ミキサーから合成音のような電子音が発生した。ネイチャーモードに加え、怪獣の持つさらに強力な自然エネルギーが、イクタの体内へと流れ出してゆく。
『こ、これは……すごいパワーを感じる……!』
『ガイアースエレメント!!』
その電子音が、変身の完了を告げた。その身体は顔を除いた全身を青と緑が大半を占め、まるで地球そのものを表しているかのような配色をしている。モードアムートであるイクタの身体にあった黄金に輝く箇所も所々残されており、全体として一回り大きくもなっていた。正真正銘、これが最後の変身、最後の形態だった。
とはいえ、胸のランプは点滅したままだ。回復したわけではない。すぐに、決着をつけなければ。
『……さぁ、いくぞローレン!』
バッと駆け出し、超高速移動でローレンの懐へと潜り込んでいく。
『あくまで接近戦を望むか……いいだろう!正々堂々、貴様を正面から倒す!』
空間移動で距離を取る選択肢もあったが、ローレンは真っ向からのぶつかり合いに応えた。ウルトラマンエレメントガイアースモードのタックルをがっちりと受け止め、ここでまたもや鬩ぎ合いとなる。
『全力で行くぞ!!』
二人の声が、タイミングよく重なり、調和して周囲に響いた。
『ファイナルケミスト!ハイドロエレメントレイン!』
そう叫んだエレメント=イクタは自身の体を一瞬にして無数の水滴と変え、空へと舞った。そしてその後すぐに、鋭利に光る水の槍となり、ローレンの周囲へと降り注ぐ。
『自分を水に……?だが……ハァァァァァァァ!!』
口から破壊光線を繰り出し、降り注ぐイクタを次々に吹き飛ばしていく。 『ポプーシャナ!来い!』
ついに一滴の水滴も残すことなく、ほとんど全てを吹き飛ばした。すでにイクタの生体反応は感じ取れないが、隙を与えず、間髪入れずにーと怪獣を呼び出そうとしたのだが、そのポプーシャナからは返答がない。
『ポプーシャナ……何を……』
不審に思い、振り返ったローレン。その目に写ったのは、ポプーシャナの生み出した水から身体を生やした液体状のイクタの攻撃を受け、まさに絶命しようとしている瞬間だった。
『ハイドロエレメントブレード!!』
自身が水の劔となり、怪獣の首に斬撃。たったの一撃で、海の覇獣を死へと追いやったのだ。
『……それがその姿の力……?』
『いや違うね。これはあくまで、俺の第3のアビリティだ。この姿は、自身の消費エネルギーをほんの僅かに留めながら、尋常じゃない量の自然エネルギーの恩恵を受ける……要するに、超省エネのパワーアップに過ぎない』
『第3のアビリティだと……?だが、それは、身体のー』
『俺もそう思ってたけど、違うみたいだな。あれは、単に身体が伸び縮みしたわけじゃない。無意識のうちに、アビリティを使って俺自身の身体の原子や分子の構造を組み替えてたみたいだ』
『……原子構造の組み替え……自身を液体に変えたのはその応用か……だが、再び元の姿に戻るためには、さらなる自身の再構築が必要なはず。よって一度使用するためには、アビリティの往復使用が必須なはずだ……。一度分解した人体の原子や分子の再構築など聞いたことがない……そんなもの、身体が持つわけが……』
ローレンは、この短い時間にイクタの能力と、そのリスクまでをも的確に分析できていた。
『ご指摘通り……だいぶ身体がおかしいよ。負担はやばそうだ……』
液体から、先ほどまでの実体へと再変身をしながら、イクタはそう答えた。
『本当は今ので、怪獣諸共あんたも倒すつもりだったが、あの破壊光線の火力……あんたの核融合能力も、ただの回復術じゃないようだな。まぁ、普通に考えればそうだが』
『当然だ。回復ではなく、エネルギーを増幅させるものだ。攻撃の威力を高めることだって容易……制限はあるがな』
ローレンは先ほどよりもさらに小さくなっていた。
『エレメントにも似たような技はあった。気体化や鋼鉄化がそれだな。あれは、俺の身体ではなかったし、あいつは俺とケミストしないことにはただのエネルギー体。負荷はエネルギーの減少の延長でしかなく、時間さえ経てば疲労や傷と同時に回復していた。でもやっぱ……生身でやると、やばいなこれ』
そう言いながら、元に戻った体を一通り動かしてみたが……右手を動かそうとすると左足が動く、など、明らかな異常がみられた。連発すれば、いずれ自分が自分で無くなる可能性だってある。それにローレンも、能力を二度使っただけで従来より一回りも小さくなっている。お互い、ハイリスクなアビリティを背負わされたもんだ。
『次の攻撃で仕留めなきゃ、俺もヤバイ。……行くぞ!』
すぐにどうすれば希望する箇所が動くのかを把握し終え、再び目標へと迫るイクタ。
『望むところだ!』
ローレンは走り寄ってくるイクタの次の動作を読み切り、一瞬だけ死角となる部分へ潜り込み、核融合によりパワーを増幅させたキックをお見舞いしようとする。
『今度こそ消え去れ!!』
『……ファイナルケミスト!スチールエレメントブロック!』
ローレンが死角へと移動したその瞬間に、攻撃を警戒してイクタは全身を一瞬にして金属へと変え硬質化させる。敵のキックはゴキんッという鈍い重低音だけを残し、イクタの身体は吹き飛ぶどころかビクともせず、今度はローレンに隙が生まれる形となった。
『何……!?』
『ジェアァァァ!!』
金属の塊となったイクタは、両掌をガッチリと組み合わせ、無防備な敵の背中に強烈な鉄槌を浴びせた。金属元素を取り入れたエレメントの硬質化とは違い、隅から隅まで、自身の全身の原子を金属化しているのだ。物理的な重みが違う。
『グホワッ!』
口から唾などを吐き散らしながら静かな悲鳴をあげ、その場にうずくまった。かなり効いたようだ。一方イクタは金属態を保てなかったのか、すぐに強制的に元の姿へと再構築される。
『くそがぁ!デヤァ!』
流石にローレンだ、倒れた後は少しも隙を見せず、すぐに両足を揃えて突き出し、イクタの腹にめり込ませた。元の通常の姿に戻っていたため、これをまともに喰らい後方へと吹き飛ぶ。
『グワッ!』
どうにか宙で体を捻らせ、横っ腹から着地し、ゴロゴロと転がりながら受け身を取れたことで、大ダメージは防げたものの、とんでもない威力であった。ただのキックにしては重い。またパワーを増幅させていたのだろう。他人のことは言えないが、リスクをわかっていながらも出し惜しみなく攻めている。両者ともに、あとがない証拠でもあった。
『イクタ!もう構造変換はやめるんだ!どんな副作用が出るのか、未知数なんだぞ!もし死んでしまったら、何もかも終わりだ!』
エレメントが忠告した。確かにそのようだ、もう満足に体を動かせない。一瞬のうちに分子や原子を破壊しては構築、さらにそれを破壊して元の構造へと再構築、という自然界の法則を根本からひっくり返しかねない荒技を連続しているのだ。どんな異常が発生しても、なんらおかしくはない。
『……心配すんなって……もう終わる……全部終わらせる!ハァァァァァ!!』
残る力を振り絞り、イクタは大きく両腕を上げた。その頂点に、至る所から大量のエネルギーが、虹色のオーラという目に見える形で集まり始めた。まるで、全地球の自然がイクタの、エレメントの味方をしているかのようにも見えた。
『……暖かい、眠くなるくらい暖かい光だ……』
虹色のオーラに包まれながら、イクタはそう呟いた。これが、地球の自然エネルギーなのか。
『地球は……貴様が壊したのだ……貴様に、この星の力を使う権利はない!』
思いのままに地球の大自然を操るウルトラマンエレメントの様子を見て、さらに憎悪が爆発したローレンは、憎しみに任せ、こちらも残る力を出しきらんと、口の中に禍々しいオーラを蓄え始めた。
『ケミストリウムガイアース光線!!シェアアァァァァァ!!』
虹色のオーラを最大限にチャージし終えたイクタは、胸の前で両腕を交差、同タイミングで、彼の後方に巨大なウルトラマンエレメントのシルエットが出現し、同じポーズを組んだ。二人のウルトラマンエレメントの腕が重なった瞬間、最強必殺技が放たれたのだ。
『超アノイドローレンシウム光線!ハァァァァァァァ!!』
負けじと、ローレンは口から凄まじい破壊光線を繰り出した。二体の最後の必殺技は、空中ですぐに衝突した。激しい競り合いが予想されたが、これに反して、エレメントの光線が圧倒的に勝っていた。グイグイと、ローレンの光線を押し流していく。
『くそっ!うおぉぉぉ!!』
紫のウルトラマンは更に身体が縮まった。同時に、光線が息を吹き返す。そして間も無く、真白く輝く爆発が生じた。一瞬にして範囲が拡大してゆく爆風に、二体は為す術もなく巻き込まれていく。
『ノワァッ!?』
『うおっ!?』
気がつくと二人は、ウルトラマンの姿ではなく、人間態に戻っていた。戦いは終わったのだろうか、どちらが勝ったのだろうか?二人は同時に、そのようなことを考えていた。
だがその場は先程までの戦場ではなかった。彼らの姿は、青く澄み渡った大空、緑豊かな大地。そして永遠に続いているのではとも思える広大な湖……という、とても美しい空間の中にあったのだ。
「どこだ、ここは」
最初に口を開いたのはローレンだった。
「天国かもな。仲良く死んだりしていて?」
そう呟いたイクタにとっては、どこか見覚えのある景色だった。確か、ここはー
『残念だが、ここは天国ではない。君と初めてコンタクトを取った場所だな、イクタ』
エレメントの声がこの空間中に響いた。そうだ、確か、地上人が最初に襲撃して生きたあの日、このような夢を見ていたのだ。
「この声はエレメント!?どこだ、どこにいる!?」
ローレンはかっと目を見開き、憎しみのこもった声で叫んだ。声は聞こえるが、どこにもその姿は見当たらない。
『ローレン、君にはどうしたって謝りきれないことをしてしまった』
ふっと、彼の目の前にエレメントが実体化して現れた。身長は彼らと同じ程度のものでしかないが。
「……!出たなエレメント!」
さっと身構え、戦闘態勢に入る。
『私そのものは、とっくに君に殺されている』
勢いよく殴りかかってきた彼の拳は、命中することなく、すり抜けた。
「……化けて出てきたのか?」
ゆっくりと振り返りながら、そう訊ねる。
『まさか。この空間も、この私の姿も、イクタのガイアースの力を借りて、エネルギーによって生み出したに過ぎない』
「昔あんたの声を聞いた時も、作り出した仮想空間を俺に見せていたわけか」
『そうだ。今君達がいるこの空間は、私がこの世に生を受けた場所でもある。美しいだろう?誇りに思えるふるさとだ』
「だが貴様は、その故郷諸共、地球を死の星に変えた……!そして我々の先祖を見捨てー」
エレメントが口を開くたびに、彼の中では憎悪が肥大化しているようだ。
『本当に申し訳ない。許してはもらえないだろう……だからこそだ……!』
そう言いながら、突然ローレンを抱きしめた。抱きしめる、といっても実体はないので、彼を構成しているエネルギーが纏わり付いた、というのが的確か。
『私は、君のどんな憎しみも受け止める覚悟だ!……君をここまでの復讐鬼にしてしまったのは他でもない私だ!私のせいで、君はたくさんの無関係の人々を殺めてしまった……たくさんの憎しみを、地下の人類の心に植え付けてしまった……!』
「離せ!」
纏わりつくエレメントを突き放そうとするが、ガッチリと固められているため動けない。
『私に償うチャンスをくれ!』
「ふざけるのもいい加減にしろ!何を言い出すかと黙って聞いていれば……!俺の前から消え去れ!それが貴様にできる唯一の償いだ!」
「でも、あんたが罪を重ねてしまったのも事実だ、そうだろうローレン。いつかあんたへの復讐を果たそうとする輩も絶対に現れる」
イクタが横から割って入ってきた。
「だったらなんだ?そいつを殺せばいい話だ。俺はウルトラマンだ!」
「……あんたが狙われたら、それでもいいかもな。でも、歴史は続くんだ。あんたが、先祖の復讐心を引き継いだように、遥か未来で、次世代同士が争うとしたらどうする?未来にまで、この地下と地上の争いを持ち込むつもりか?俺らの世代でけじめつけなくちゃいけないんだよ。望み通り、もうエレメントは死んでる。今は俺が操る地球のエネルギーでこうして姿を現せているが、俺の体も限界だ、これ限りだろう。あんたの復讐はもう終わったんだよ」
「……ならどうしろと言いたい。俺に死ねといっているのか?俺が死ねば、その連鎖は止まると言いたいのか?」
『そうじゃない!私は、私の罪を償うために、この意識という存在さえ永遠に消し去ってしまってでも、地球を元の姿に戻す!……復讐が終わったら、地球を支配するのだろう?地上人という正当な支配者が、正しい未来を作るのだろう?ならば、それが君の償いだ』
どうやら、もう時間切れだ。空間とエレメントは徐々に消滅し始め、気がつけば彼らは、先ほどまでの戦場に大の字に転がっていた。上空では、火星の宇宙船とアイリスバードが睨み合っている。
「……イテッ!」
起き上がろうとしたイクタだったが、痛みが走るだけて身体が動かない。隣に転がるローレンも同じ様子だった。
「……戯言を……。俺の復讐はまだ終わっていない。地下のやつらを……」
「ブレないな、あんたは。スッキリするまで暴れまわるがいいさ。何度でも迎え撃ってやるよ」
相変わらずのローレンに対し、イクタは笑うことしかできなかった。
「……だが一つだけ認めてやる。この戦争は、俺の負けだ」
そう呟いたローレン。よく見ると、左足が吹き飛んでいた。
「そうかい。じゃあ、当分の間地下人類は殺されずに済むな」
「……最後にいくつか質問がある。なぜエレメントを憎まない?貴様も、エレメントと、地下の組織に振り回されたはずだ。俺と違い、人工的に生み出された命のはずだ……。そして何より、地下に閉ざされ、この戦いに巻き込まれ、多くの戦友を失ったのも元をたどればエレメントのせいのはずだ。わけがわからない」
どうやらローレンは、イクタの出生に関して少しは知識があるようだった。未来が見える能力を応用し、どこかで知る機会があったのだろう。
「そうだな……。確かにエレメントのせいでこんなことになったさ。でも俺はそのおかげで、地上に再び返り咲くための力を手にできた。隠されていたたくさんの真実を知れた。そしてこうして、青い空を眺めながら昼寝ができる。得たものの方が大きいから、だろうな」
「……ならば、俺は憎くないのか?」
「憎いに決まっているだろ。実際に直接地下に甚大な被害を出したのはあんただ。エレメントが憎いのはわかるよ。でも、自分のやったことの責任まで転嫁しやがっている」
だんだん、喋るのすら辛くなってきた。
「ではなぜ俺を殺そうとしない?復讐を果たそうとは思わないのか?」
「……質問ばっかりだな。復讐ってのは、何も殺すことばかりじゃないと思う。あんなに俺や地下を見下していたあんたに負けを認めさせた。見返したわけだ。これも充分な復讐だよ。いろんな形があるはずだ」
「……今の俺には理解ができない」
「そうか。なら、また今度ゆっくり話し合おうぜ」
遂にはもう、口を動かす体力すら失い、彼らは静かに眠りに入っていった。
その上空では、意を決したIRISが、敵の旗艦へと突入していく様子が見受けられた。
次回、最終回