ウルトラマンエレメント   作:ネフタリウム光線

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 遂に地上へ辿り着いたイクタ達だったが、待ち伏せしていた黒ローブの奇襲を受けてしまう。部隊を守るため、再び覇獣イニシアに立ち向かうエレメントだったが、その体にある異変が生じる。一方で、地下世界でウンターヴェルとの戦闘を繰り広げるIRISは、作戦部隊全滅のピンチを迎えていた。エレメントVSイニシア、IRISVSウンターヴェル、それぞれの運命はー?


第2章 地上編第1部〜VS覇獣、そして黒ローブ〜
第9話「覚醒」


第9話「覚醒」〜天の覇獣イニシア 地底怪獣ウンターヴェル登場〜

 

 ローレンの指示によりとある砂漠にやってきていたラザホーとキュリの目の前に現れたのは、地底怪獣の掘った地下トンネルを抜け、地上に到達したIRIS精鋭部隊の乗った、アイリスバードの群れだった。砂漠の砂を巻き上げ、次々と上昇していく飛行機たち。

「抜けた…抜けたぞ!!ここが地上なのか!?」

喜びながらも、半ばまだ疑っている様子で声をあげたトキエダ隊長。

「あぁそのようだ!人類が150年ぶりに地上へ帰ってきた瞬間だぜ!」

イクタが答える。

「そうか!そうだよなぁ!あまりに急すぎて実感が湧かないが、遂にきたんだな!」

イクタの返答を聞き、今度こそ純粋な喜びの声を上げるトキエダ。

「しかし砂嵐の規模が想定よりも小さい。気を抜いてはダメです!ここからは、地図のない未踏の地ですからね!」

オリバーが、浮かれている隊員たちに注意を喚起する。

「わかってるって。総員、常に戦闘用意。イクタ、まずは広大な森を探そう。その森一帯の放射能を除去し、戦闘機を木々に隠すように着陸。その後、各員地上に降り立ち、拠点の設置、現地の調査、各サンプルの回収と、任務を遂行していくぞ。オリバーの言う通り、ここは未踏の地。しかも、強力な怪獣がうじゃうじゃいやがる。長居すればするほど、俺たちの生存確率は低くなるしな。」

トキエダがそう言った。

「そうだね。地上を満喫するのは、任務を終わらせてからでも遅くはないな。レーダー展開。最も近い森林地帯を探すぞ。」

「了解!」

アイリスバードの群れは、隊列を整えると、ラザホーたちの頭上を飛び去って行った。

「おいおい、あいつら、あたしたちに気づかずどっか行っちゃったけど。いいの?ローレンはあいつらがここに来ることがわかってたから、ここにいろっていう指示を出したんじゃ?」

キュリがラザホーに問いかける。

「…そうだな。あまりに急で気が抜けてた。」

ラザホーはイニシアのカプセルを取り出すと、銃にセットした。

「あいつらには悪いが、早速ここで死んでもらおう。」

ラザホーは銃を構え、引き金を引いた。

 

 

『ピギャァァァァァァァ!!』

地底怪獣ウンターヴェルの咆哮が戦場に響き渡る。怪獣は長い角から電撃攻撃を繰り出しながら、IRISの陣営へと歩みを進めていく。

「固定砲、砲撃用意!残りの無人機も全て離陸させろ!各支部に援軍要請!現場にいる戦闘員、直ちに戦闘用意!非戦闘員は早く避難しろ!」

超音波作戦用に臨時設立されている陣営の構えるテントの中で、フクハラ支部長が指示を出していく。

「支部長!攻撃準備は整いました!」

「よし!攻撃開始だ!」

自動固定砲台、無人戦闘機、そして戦闘員の乗る有人戦闘機が一斉に火を吹いた。怪獣の周囲で大爆発が連鎖する。

「ほほう。これはこれは。途轍もない火力ですなぁ。」

ダームは感心しながらも、表情には余裕がある。

『ピギャァァァァァァァ!!』

悲鳴をあげるウンターヴェル。だが、それでも歩みを止めない。

「こいつ……本当に効いてるのか!?」

「力押しがダメなら…。まずはあの角を吹き飛ばせ!その次に足だ!攻撃能力と機動力を奪え!」「了解!」

飛行機たちは旋回し、ミサイルからレーザー攻撃に切り替え、角を狙っていく。

「おっと、そう簡単にはやらせまい。」

ダームは杖を振り回した。すると、怪獣の動きが変わる。怪獣はしゃがみこみ、両手で角を覆うようにして防御態勢に入った。レーザー光線を、両手の甲が弾き返す。そのままやり過ごした後、顔を上げ、旋回する戦闘機を狙い電撃を放った。4機の戦闘機が撃ち落とされる。

「支部長!無人機制御不能!4機が墜落します!」

ドドーンという爆発音と共に、無人機は一瞬にして鉄屑と化した。

「マズいな。このままじゃ、無人機だけじゃない。俺たちも死ぬぞ。」

パイロットたちから冷や汗が流れ落ちる。

「おやおや、その程度では、彼らの不在のうちにこの地下を守り抜くことはできないでしょうなぁ。」

ダームは杖を振り下ろした。次の瞬間、怪獣は大きく口を開けた。口内に、光輝く光球が浮かび上がる。

「これで最後ですな。ご臨終。」

ダームは不敵な笑みを浮かべた。

「おい、なんかヤバそうだぞ…!」

ただならぬ気配を感じ取ったテレビ局のスタッフたちが、撮影を中止し車に乗り込んでいく。

「くそっ!こんな時イクタならどうする!?」

支部長は滝のように流れる汗をぬぐい、頭をフル回転させていく。 

「イクタ殿がいない以上、エレメントは現れない。悪あがきはよしなされ。どうせ、数秒後にあなた方は地上を飛び起こして、天国にいますからね。……いや違いますな。この地下よりさらに下。地獄だ。あなた方なんて、地獄に落ちればいいんですよ。」

怪獣は大きく膨らんだ光球に食らいつき、口の中に頬張った。鋭い光の筋が、口の隙間から伸び始める。そしてその口を大きく開いた。眩い破壊光線が放たれた。

 

 

 そこは近未来的な建築物が多く聳え立つ街だった。まさに大都会、という名称がふさわしい場所だ。その中心にある一際大きな敷地を持つ建物の中に、鼠色のスーツを着た男が入っていく。

「スカンイット大統領!お疲れ様です!」

建物の門で警備をしていた2人の男が敬礼をする。

「うむ。お勤めご苦労。」

スカンイットと呼ばれた男は彼らにそれだけ言うと、そのまま門を通過する。建物の内部に入ると、さらに黒のスーツを着用した男が2人立っていた。

「お待ちしておりました大統領。さぁ、こちらにお荷物を。」

1人がスーツの上着を、1人が鞄を手に取り、スカンイットの後ろにピッタリとくっつき、歩き始めた。

「それで、地球の方はどうなっている。」

しばらくした後、スカンイットが口を開いた。

「はい。どうやら動きがあったようです。」

「ということはやはり、No.13は地下の方に加担していたか。」

「えぇ。上手くいってるようですよ。恐らくはNo.13…ウルトラマンエレメントの能力を使い、地上を再び人類の住める環境にすることが目的かと推測されます。」

黒スーツの男は淡々と答える。

「そうか。ならば計画は順調に進んでいる、ということだな。」

男たちは歩みを止めた。彼らの前には大きな扉があり、そこには大統領室というプレートが埋め込まれていた。扉を開け、入室すると、スカンイットは奥の大きな椅子に座り、机に肘を置き、頬杖をついた。

「であれば、我々もそろそろ動かなければならない。アルチアン大統領、そしてヤマモト首相に連絡を入れろ。軍の準備だ。」

「かしこまりました。と、いうことは、地球帰還作戦を決行するのですね?」

「そうだ。この火星の民の多くが、故郷地球に帰りたがっている。加えて、火星だけでは資源的な問題も浮上する。それに、有能な遺伝子を使い人工的に人間を作りすぎた。人口の増加も激しい。まぁ、150年もあればこうなることなどわかっていた。いや、違うな。150年前から、当時からこういった計画だったというわけだ。」

「地球に残っている人類はどうなさるおつもりですか?」

「火星に行けなかった貧困層の遺伝子など必要ないに決まっているだろう。全部殺せばいい。とにかく、彼らに連絡を入れるんだ。わかったな?」

「はっ!」

黒のスーツの男たちは敬礼をすると、退室していった。

 

 

「トキエダさん!こちらイクタ!一番近い森林を探知したぜ。ここから5時の方向、120キロ先だ。」

「そうか!思ったより近くて助かったよ。ではそこに行こう。」

トキエダは安堵したように言った。

「あ、そうだ。ここらの砂漠を過ぎると、油田地帯があるらしい。もし怪獣との戦闘になったら、過剰に火力を使うのは危険だぜ。」

イクタが突然思い出したように、注意を促した。

「そうだな。それにここは未知の地。どの場面での戦闘でも、無理は禁物だろう。」

その時だった。後方から、

『シャリガァァァァァァ!!』

という奇声が聞こえてきた。

「おい、今何か聞こえなかったか?」

ゴームズ隊員が問いかける。

「レーダーが生命体をキャッチした。早速怪獣のお出ましか?」

オリバーが少し不安げな顔を見せる

「仕方がない。まずはやり過ごそう。それができないのなら、倒すまでよ。」

トキエダがそう言った。

「そうだな。」

編隊は左右に列を展開させた。怪獣の通り道を作るためだ。だがレーダーに映っている怪獣は進路を変え、左へと展開していたイクタの飛行機めがけて、さらにスピードを上げた。すでに目視できる距離にまで接近している。

「おいありゃ、この間本部を襲ったプテラノドンみたいなやつじゃないか!?」

よく見ると、その頭上にはラザホーとキュリの姿もある。

「地下の勇敢なる兵士たちよぉぉぉぉ!!決着をつけようぜぇぇぇ!!」

高速で飛行中の戦闘機の分厚い窓ガラス越しにも聞こえるほどの声量で叫ぶラザホー。

「ちょっと、うっせーよばか!」

キュリがラザホーの腰に蹴りを入れる。

「いてっ!?おい落ちたらどうすんだ!?あと年配者をもっと敬え!」

「へーへー。」

キュリは面倒臭そうに返事を返すと、イニシアの頭上に座り込んだ。

「あたしはここでドロンするよ。爺さんも回収しなきゃいけねぇし。あんた1人でも十分でしょ?」

「もちろんさ。ここはイニシアの領空だぜ?それに、最後の切り札も使い切るつもりだ。」

ラザホーは覚悟を決めたような顔をしていた。

「……それじゃあ意味ないんだってば。予知通り死ぬよ?言ったでしょ、ローレンの予知を覆せるのは、エレメントかイクタくらいよ。あんたは大人しくしてなさい。」

「いや、違うな。能力者であるお前だって変えれるはずだ。それに、未来ってのはどんな細江なことでも常に動いていく。楽勝だ。」

「…はぁ。あんたも頑固オヤジだねぇ。…万一危なくなったら逃げろよ。絶対だからな。」

そう言い残すと、キュリは姿を消した。

「……じゃあ、行くぞぉぉ!!」

イニシアはさらに加速すると、アイリスバードの編隊に切り込んで行く。

「うおっと!?こいつ、こんなに速かったのか!?」

「前回よりもさらにスピードを上げてやがる!しかもここは地上だ。空に制限がない!」

「でもそれは俺たちも同じだろ!!」

トキエダが反撃のため、レーザー光線を発射する。だが、イニシアには当たらない。

「トキエダさん!みんな!先に森に行って、任務を進めてくれ!ここは俺が引き受ける!」

イクタの乗るアイリスバードが、先頭に出る。

「何言ってる!?流石のお前でも、あのクラスの怪獣を1人で受けるのは無理だ!!」

「わかってる!いい感じに時間を稼ぐだけだ!とりあえず、任務が先だ!そうでしょ!?」

イクタは叫ぶ。

「……イクタ隊員!お前に特別任務を課す!怪獣相手に時間を稼げ!以上!」

トキエダは意を決し、そう指示を出した。

「イクタ了解!」

イクタの機体を残し、編隊は森を目指しての飛行を再開した。

「流石だなイクタ!いやエレメント!再びお前との1対1とはな!決着もつけやすい!」

イニシアは口からエネルギー弾を吐き出す。イクタの機体は音速を超えるスピードで飛び回り、攻撃を避けつつのカウンターを狙っていく。

「レーダーからみんなの反応が消えたな。そろそろ大丈夫だろう。エレメント!!」

エレメントミキサーを取り出し、腕に装着する。

『うむ!』

「ケミスト!エレメントーーー!!」

『シェアアアア!!』

眩い光を放ち、身の丈55メートルの光の巨人が姿を現した。

『ジャッ!!』

空中でファイティングポーズをとる。

『シャリガァァァァァァ!!』

空中を各々の最高速度で飛び回り、何度も体を交錯させていく2体の巨大生物。何度目かの体当たりの後、2体は互いにバランスを崩し、地へと落ちた。

『シェア!』

着地後素早く体制を整えなおすと、エレメントはまだふらついていたイニシアに飛びかかった。しかしイニシアはすぐにエレメントを振り払うと、再び飛び立った。

『エレメント光輪!』

すかさずエレメントは光り輝く飛び道具で追撃を狙う。だが、命中しない。

「フハハハハハ!いいぞぉ!!熱い!熱いぜ!」

いつのまにか地上へと着陸していたラザホーが茶々を入れる。

『イクタ!奴は前回の戦いから、私たちの攻撃パターンをある程度予測できているようだ!』

「そのようだな。となれば、この間と同じ手は使えない…。」

『単純な身体能力でみれば、奴の方が私より上だろう。だが私には元素の能力と、君の頭脳がある。また新たな手はないのか?』

「只今考え中だ。」

『早くしてちょうだい。』

その会話の間にも、イニシアは空中で体をひねり、縦に旋回すると、エレメント目掛けて急降下を開始していた。

『シャ!?』

反応が遅れたエレメントは、そのまま体当たりをもろに食らってしまう。数百メートル吹き飛ばされると、その場に倒れ込み、しばらく立ち上がれずにいた。

『ノワァ…』

やっとの事で立ち上がったエレメントだが、その瞬間、イニシアの強大な爪に捕まり、飛び攫われてしまう。

「おいヤベェ!この間と同じパターンだぞこれ!!」

イクタの言う通り、同じように弄ばれ、痛めつけられるエレメント。

『シャリガァァァァァァ!!』

イニシアは楽しそうに声をあげる。

『シャリガァァァ!!』

その後振り落とされたエレメント。途轍もない速度で地に叩きつけられた。

「いってーな…。おいあんた、大丈夫か?」

『どうにか…な…。だが、もう大丈夫だ。反撃の準備はできた。』

エレメントから、思いがけぬ発言が飛び出した。

「…あ、あんたが考えたのか。珍しいな。」

イクタも目を丸くする。

『いや、違うな。考えたのではない。ただ単に、そんな運命だった。それだけだ。』

「?」

イクタは、エレメントが何を言っているのか理解できなかった。だが次の瞬間、少しではあるが、その意味を理解した。イクタの右腕に、新たな装置が装着されていたのだ。

「……なんだこれは…。」

『エレメントブースター。私の新たな…いや、真の力だ。』

「どういうことだよ?」

『詳しいことは後からでいいだろう?まずはイニシアを倒そう。』

「……腑に落ちないけど、まぁそうだな。ただ、後からちゃんと、わかりやすく答えろよ。」

『約束しよう。では、そのブラスターに力を込めるんだ。」

イクタは右腕を空に掲げた。

『デュアルケミストリウム!ネイチャーエレメント!!』

聞き覚えのない、新たな機械音声がそう発すると、エレメントは再び光に包まれた。赤と銀の体に、新たに緑色のストライプが刻まれていく。

『ネイチャーモード。それがこの姿の名前だ。』

「………あれは……あの姿はっ…!」

ネイチャーモードを見たラザホーに、苦い記憶が蘇る。

「そうか…。放射能の影響か!だから…!」

ラザホーは苦虫を噛み潰したような表情をする。

『シェアアア!!』

エレメントはビシッと戦闘態勢をとると、イニシアに向かい走り出した。

 

 

 眩い光線が照らしあげた戦場では、その場にいた全員が頭を伏せていた。

「……?」

数秒経って、頭を上げ始める隊員たち。

「なんで俺たち、生きているんだ………。」

辺りを見渡す者もいる。そしてその視界に入ったのは、光線を遮る大きな光のシールドだった。

「……なんだ、あれは!?」

「遅くなってすみません!!」

その声は上空から聞こえた。3機のアイリスバードが、シールドを放っていたのだ。

「おお!!援軍部隊か!!」

支部長が歓喜の声を上げる。

「……。ウンターヴェルの破壊光線を遮るとは、やはり彼らの科学力は侮れない…。」

悔しそうな顔をするダーム。その背後に、キュリが現れた。

「何してんのよ。1人も殺せてないじゃない。」

「これはこれはキュリ殿。申し訳ない。思いの外、手強い相手ですな。」

「地上に行く兵士たちを止められなかったし、現に奴らは既にあの頑固親父と戦闘を開始している。ローレンの予知もある。あたしたちも地上へ戻るべきよ。」

「そのようですな。あれをご覧なさい。」

ダームが杖で指した方向では、怪獣がIRISによる猛反撃を受けていた。

『ピギャァァァァァァァ!!』

怪獣の悲鳴が轟く。

「ウンターヴェルも、『トランスモード』を使用してももう無駄でしょう。」

「そうね。じゃあ、退くわよ。」

ダームは、キュリと共に姿を消した。

「これでトドメだぁぁぁ!」

戦闘機からはミサイルが、固定砲からは砲弾が一斉に放たれ、怪獣は火の海に飲まれた。

『ピギャァァァァァァァ……』

怪獣は力尽きたのかその場に崩れ落ちると、爆死した。

「やったぁぁぁぁ!!やりましたよ!!」

隊員たちが飛び上がって喜んでいる。

「よしっ!!」

支部長もガッツポーズをする。

「君たちのおかげだ!君たちが駆けつけてくれなければ、我々は皆死んでいただろう。名前を教えてくれ。本部で表彰式を行うよう、本部長に連絡を入れたい。」

支部長は通信機を通じ、援軍部隊にそう言った。

「ありがとうございます!しかし、私たちは任務をこなしただけです。表彰などを受ける権利はありません。」

男性の声が、そう答えた。

「……そうか。だが名前は教えてくれ。個人的に感謝をしたい。この場にいる隊員たち全員が、そう思っているはずだ。これは命令だ。」

「了解!私はEGー04支部所属、ジェニファーと申します!」

「自分はCHー34支部所属、イルソンと申します!」

「同じくCHー34支部所属、グアンユゥです!」

「そうか。ジェニファー隊員、イルソン隊員、グアンユゥ隊員。改めて礼を言わせてくれ。ありがとう!」

「光栄です!それでは、我々は支部に帰還いたします!」

3機のアイリスバードは、その場を去って行った。

「申し上げます!支部長!例の黒ローブの姿は見当たりません!逃走したと思われます!」

1人の隊員が、支部長の元に報告してきた。

「そうか。逃げ足の速いやつらめ。引き続き地下世界一帯で厳戒態勢をとる。各支部に、常に強大な戦力を動かせる準備をさせるように伝えるんだ。奴らは、イクタたち精鋭が今ここにいないことを知っているようだ。その隙を突いてくるかもしれん。」

「了解!しかし、奴らは何のためにこんなことを…?」

「さぁな。だがどんな理由があろうとも、生命の命を脅かす奴らは許すことのできない輩どもだ。それに変わりはない。見つけ次第ひっ捕らえろ。抵抗するならば殺せ。」

「了解です!」

「では解散だ!各員ご苦労!所属する基地に帰還したまえ!」

支部長の一声で、本作戦は終了した。

 

 

『セヤァァァァ!』

エレメントの拳が、イニシアの頬を凹ませる。一瞬顔面が歪んだ後、数百メートルほど飛ばされるイニシア。地面と激突し、その衝撃波が砂を含み、辺り一帯に広がる

「ぐうぅぅぅぅ!!」

ラザホーはその突風に耐えられず、よろめいてしまった。

「なんてパワーだ……。これなら勝てるぞ!」

『うむ。だがこの姿の力は、こんなものではないのだ。』

『シャリガァァァァァァ!!』

起き上がったイニシアは、怒りで顔面を赤く染め、エレメントに向かって猪突猛進。だがその特攻を素早くかわし、上空へと飛ぶエレメント。イニシアも、すぐに方向転換をし、彼を追うように飛んだ。

『シャリガァァァァァァ!!』

エネルギー弾を連続して吐き出し、反撃を試みるイニシア。その数は尋常じゃなく、まるで大海に浮かぶ無数の機雷の様に、エレメントの進路を防いでいく。

「これが奴の本気か!?」

『そのようだな。だが問題ない。』

まるで瞬間移動でもしているかのような超スピードで攻撃をかわし続けるエレメント。だが流石に全ては避けきれないのか、一発の弾丸がエレメントが反応できないであろう距離にまで接近していた。

「危ない…!」

『ジュアアアァァ!!』

直撃寸前の弾丸を右腕で迎撃したエレメント。その腕からは白い煙が上がっている。その様子を見て、勝てないことを確信したのか、イニシアの表情に変化が訪れる。一瞬目が泳いだ後、イニシアはくるりとエレメントに対して背を向けると、全速力で逃走を開始した。

「やばい逃げられる!本部襲撃時に計測された奴の最高速度はマッハ6だぞ!」

イクタが叫ぶ。

『マッハ6か。ならば平気だ。今の私の最高速度は、マッハ15なのだからな。』

「え?」

ビビュン!という音を立て、イニシアを追い始めたエレメント。静止状態からいきなり最高速度に達したため、イクタは乗り物酔いのような感覚を覚える。瞬く間に追いついたエレメントは、イニシアに抱きつくと、そのまま地面に向かって急降下した。ドンッ!という音を立て、2体の巨大生物は着地。エレメントの巨体の下には、すっかり伸びてしまっているイニシアの姿があった。

『私たちの勝利だ。』

エレメントはそれだけ言うと、イニシアから離れた。しばらくした後、イニシアは爆死した。

「………ハハ……。ハッハッハッハ!まさか覇獣がここまで簡単にやられてしまうとはな!ハー、これでもう俺には後がなくなったってわけだ!」

ラザホーは気がおかしくなったのか、突如笑い始めた。

「……素晴らしいパワーだぜエレメント。熱い戦いをありがとう!……お前はこの汚染された地上の大気に触れ、その姿を得たようだがな、お前ばかりが最強だと思って調子に乗るんじゃねぇぞ!」

『負け惜しみかね。みっともない。君も男なら、そのようなことはやめることを、オススメしよう。』

エレメントがそう言った。

「負け惜しみか。そうかもな。だがエレメント。俺もお前も似た者同士だ。そして少年、君もな」ラザホーは笑いを止めると、急に真顔になりそう言った。

『なに?どういうことだ?』

「そうだな。こういうことだよ!」

ラザホーはローブを脱ぎ捨てた。紫色の肌、赤色の頭髪、そして頭には短い2本のツノが見て取れる。

「あいつ……やっぱり宇宙人か何かか?」

その姿を見たイクタがそう推測する。

「そうだ。俺も宇宙人だろう。だが、この宇宙に生けるものは全て『宇宙』という大きなエリアに住む『宇宙人』だ。そうだろう?」

「なにガキの屁理屈みたいなこと言ってやがるんだあんた。はっきりしろよ。」

イクタがイライラ気味にそう言った。

「まぁ何が言いたいかってことはな、俺も君も、そしてエレメントも、同種族ってことだ。同じ、『地球人』というカテゴリーにおける、同種族なんだよ!!」

そう叫んだラザホーの体に異変が生じた。まず腕だ。皮膚にヒビが入り、割れ目から爬虫類のような肌が現れる。顔も変形し、文字通り『鬼の形相』となる。数十秒で、ラザホーは怪人とかした。

「!?」

目の前で起きている光景を理解できないイクタ。ラザホーの変化はまだ終わらない。怪人体となったラザホーは、なんと巨大化までやってのける。みるみるとその体は拡張を続け、エレメントと同じくらいの身長にまで達したのだ。

『はぁぁぁぁぁぁ…』

深く、そして長く息を吐きながら、両腕を軽く曲げ、腰の両サイドで構えるラザホー。まるで、試合に臨む前の空手家のようなルーティーンだ。

『……まさか、そう来るとはね。』

エレメントも、驚きを隠しきれていない様子だ。

『異人ラザホー。これが俺の…いや、俺たちの真の姿だ。そうだろう?リディオ・アクティブ・ヒューマン、イクタ・トシツキ…。』

砂漠で、新たなる戦いが幕を開けようとしていた。

 

 

 森林地帯に到着し、あたりの安全を確認した精鋭部隊のそれぞれの機体は、まずは放射能除去作戦に入ろうとしていた。

「レーダーには怪獣らしき反応はない。万が一現れても、森林なら身を隠せる場所も多い。隙を見て逃げることも可能だ。焼き払われない限りだが。」

「とりあえず着地しましょう。放射能を除去しないと。」

「そうだな。よし、総員、放射能クリーナーをミサイルの弾頭に装備しろ!」

「了解!」

普段は怪獣への攻撃用兵器であるミサイルの弾頭が、爆薬から放射能クリーナーに切り替わる。

「準備ができた機体から、森に撃ち込んでいけ!」

トキエダの指示で、20の戦闘機から次々にミサイルが発射されていく。1分も経過しないうちに、全てのミサイルが発射し終えた。

「放射能値測定開始!現在人間に害のない基準値から大幅に数値が離れていますが、1秒毎に少しづつ減少しています。」

「しかし、放射能にはのは半減期ってもんがある。150年も経つのに、まだここまで汚染されているとはな。レジオンみたいに放射線を放射し続ける怪獣とかがいたりするのかもしれん。」

トキエダはそう推測した。

「あと数分で基準値に、数十分で基準値を下回る見込みです。」

オリバー隊員が報告する。

「よし。では基準値になったところで着陸を開始しよう。だが、飛行機から降りる際は、全員念のため防護服を着用したままにするように。」

「了解です。」

「放射能値、基準値に達しました!これより着陸を開始します!」

しばらくして、オリバーがそう言った。全機が、地上に向かって垂直に着陸していく。

「しかしイクタのやつ流石だな。あのプテラノドンが追ってこない。」

トキエダは、そう言いながら飛行機から降り立った。重そうな放射能防護服を身につけている。

「ですが遅いですね。時間を稼ぐだけでいいのに、ガチで戦闘とかしてるんじゃないんですか?」

オリバー隊員がそう言った。

「まぁ奴ならやりかねんだろう。だがまぁ、心配はいらんさ。気には食わんが。」

イケコマがぼやく。

「そうですね。彼は彼の仕事をしているわけですし、こちらもこちらで、任務を進めないと。」

チェン隊員がそう言った。

「だな。よし、では各二人組を組め。各々でこの森を探索するんだ。拠点となる建物が築けそうな場所を探そう。」

トキエダがそう指示を出した。

「了解!」

隊員たちが探索を始める。

 探索が開始されてしばらくが経った頃、キャサリン、オリバー班はある珍しいものに夢中になっていた。

「ねえオリバー!これ何!?なんか木から変なのが生えてるんだけど!」

「あぁ、これは確か……キノコって奴じゃないか?大方食用とされてるらしいけど、毒があるやつも多いらしい。」

オリバーが、キャサリンの問いに答える。

「ふーん。じゃあ、これは食べれるのかな!?」

「さぁな。ていうかそもそも、除染しなきゃみんな毒キノコだぜ。」

「あ、そっか。」

「ったく、こんなくだらない話をしてないで、任務を続けるぞ。」

歩を進めようとするオリバーの視界に、何かが入ったのか、オリバーはすぐに足を止めた。

「何?どうかした?」

キャサリンが訊ねる。

「……キャサリンこれを見ろ……。」

オリバーの指差す方向を覗き込むキャサリン。

「なになに?」

「昔小学校の図鑑で見たことがある……カブトムシだ…!絶滅していなかったのか!!」

急に目をキラキラと輝かせるオリバー。

「ほんとだ!私も図鑑で見たことある!あのキノコと一緒に、サンプルとして持ち帰ってもいいかな!?」

「いいと思うぞ!地下の科学ならクローン技術も充実してる。地下でも人気者間違いなしだぜ!カブトムシは!」

いつになくテンションマックスなオリバー隊員。

「あ、オリバー、あそこにもカブトムシがいるよ!おっきいやつ!」

「どこだ!?」

キャサリンの声がした方向に振り返るオリバー。その視界に、確かにとても大きなカブトムシが入る。確かあれは、コーカサスオオカブト、だっけ。実物は初めて見る。その大きさは身の丈45メートルもあり………オリバーはここまで思考を巡らせて、ふと疑問を感じた。45メートル。いくらオオカブトといえど、こんなに大きな種がいるのか?

「……いや、そうじゃない……キャサリンそこから離れろ!こいつは怪獣だ!!」

「うそー!?」

2人の隊員は、全速力で走り出した。

 

 

 

                                                        続く。

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