ハリー・ポッターと不死鳥の姉   作:駆華野 志想之介

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後先考えてませんでした(笑)
とりあえずは賢者の石を書ききろうかと。


賢者の石
生き残った双子


よく、生まれる瞬間の記憶があるという話がある。きっとわたしのそれも似たようなものなのだろう。

記憶の一番初めに存在するのは、包み込むような笑顔を浮かべた父と母だった。

そして父と母が何かに気づいて慌てはじめ、父が何かを言って部屋から出て行った。おぼろげだが、「時間を稼ぐ」と言っていたか。

そしてその後部屋に訪れたのは父ではなく、ローブを着た男性だった。

わたしたちを守るように立ちふさがる母。

その男がなにか枝のようなものを突き出すと緑の閃光が瞬いた。母が力が抜けたように床に倒れこみ、動かなくなる。

現状が理解できないわたしと双子の弟は、侵入者をただ見ているしかなかった。

「予言の子が二人?いや、男女の双子ということなら……」

そして枝がハリーとレイラに向けられる。

 

「アバダ・ケダブラ」

 

瞬間、緑が瞬く。

光が消えたときローブの男はどこにもいなかった。見れば弟の額には稲妻の傷が走っていたが、気絶していたので泣くことはなかった。

わたしも目に痛みを覚えたが、数分後に入ってきた男性に目を奪われた。

ねっとりした黒髪、鉤鼻、土気色の肌をした両親と同年代らしい男性が部屋に飛び込んできたと思うと膝をつき、母を抱いて泣き叫んでいた。

そこでわたしの記憶は途切れる。

気がつけばゴロゴロと低く唸る音で目を覚ます。顔を上げれば髭もじゃの巨人が見えたが、またすぐに意識を手放した。

 

そして今度はドーンという衝撃で目を覚ました。弟とともに包まれた毛布を覗く半月メガネの老人と厳格そうな女の人が窺えた。

 

「ハグリッドや、いったいどこからオートバイを手に入れたのかね?」

「ブラック家のシリウスっちゅう若者に借りたんで。先生、この子たちを連れてきました」

 

わたしたちを抱えた大男が、ソーッと注意深くオートバイから降りる。

 

「問題はなかっだだろうね?」

「はい先生。マグルが群れ寄って来る前に連れ出せました。ブリストルの上空を飛んどった時は、二人とも眠っちまいました」

 

弟はぐっすりと寝ていて、わたしだけが起きているからか、メガネの老人はわたしの頭を優しく撫でる。触れている手のひらを通して、何か大きな力を感じる。それと同時に体が熱くなるのを感じた。

メガネの老人が驚き手を離す。わたしを見た女の人と大男は驚愕に目を見開いた。

 

「これは……片目だけじゃがトムと同じ……」

「先生、この子は一体」

「おそらくは、ハリーに撃退されたヴォルデモートの力の一部が、幼かったこの子にひっかかってしまったのじゃろう」

「そんな、取り除くことは出来ないのですか?」

 

老人は顎髭を摩りながら唸り、再びわたしの頭を撫でる。

 

「今は無理じゃ、未熟な魂に結びついたものを切り離すには危険が大きい」

 

大男と女性がわたしたちに別れの挨拶をして離れていき、最後に残った老人がライターを取り出してカチッと言わせた。それまで暗かった道路が街灯によって照らし出される。

 

「幸運を祈るよ、ハリー、レイラ。十一歳になったら、ホグワーツで会おう」

 

 

 夢を見ていた。何度も見ている同じ夢を。

 枝から光が出たり空飛ぶオートバイが登場する夢だ。1991年の科学が発達している現代において、それは妄想なのだと切り捨てるしかないのだが。

 しかし彼女、レイラ・ポッターにはそうできない理由があった。昔から頭に血が上ったり、興奮したりすると左の目だけが赤く染まるのだ。それに気づいた当初困惑したが、それまでにも何度も見た夢の影響で慌てふためくまではいかなかった。不安もあったために一度伯母であるペチュニアに相談したが、生まれつきの体質だと一蹴された。

 特に不便もないので気にしないでいるし、日常生活で頭に血が上ることはまずない。しかし、もし外でなってしまったらとの危惧から、伯母夫婦から片目だけ隠れるように髪を伸ばせと言われている。この夫婦は自分と弟が何かまともではない行動をしたりするのが大嫌いだった。

 普段の生活ではピンで留めたりゴムで縛ったりと動きやすくしているのだが、伯母の買い物について行く時は下さなくてはならず少し不便さを覚えている程度だ。

 なので今朝、起床して弟とともに寝ていた布団をそろりと抜け出ると手早く着替え、濃い赤色の髪を梳かし、ベッドのそばに置いておいたヘアゴムで髪をポニーテールに結ぶ。

 まだ夢の中にいるであろうハリーの髪を優しくひと撫でした後、そっとドアを開けた。

 

 居間に向かうと昨日の夜言われていた通りにフライパンをコンロに置き、火を通してベーコンを焼く。

 時計をちらりと見たところでペチュニアおばさんが寝室から出てきた。

 

「ちゃんとベーコンを焼いてるかい?」

「もちろんです。今日は特に、焦がしたら大変ですから」

 

こちらが素直に従っていれば取り敢えずメイドのようには扱ってもらえることを学んでいたレイラは、反発することもなく日々を過ごしていた。しかしハリーは感情的というか素直というか、かなり表に感情が出やすかった。

 その双子であるハリーは今、床下の戸をドンドンと叩くおばさんに起こされているところだった。

 そういえば今焼いているこのベーコン、焦がしては大変と言ったが、それは本日が伯母夫婦の一人息子であるダドリーの誕生日だからである。

 食卓のダドリーの席には誕生日プレゼントが山のように積まれていて、乗り切らない分が床にまで置かれていた。

 バーノンおじさんも起きてきてテーブルについて朝刊を読み始める。そのタイミングでハリーが起きてきた。

 

「おはようレイラ、バーノンおじさん」

「おはようハリー。髪を梳かして、ボサボサだよ」

 

 目の前まで来たハリーの頭を、ベーコンの加減を見つつ手櫛で整える。

されるがままのハリーを見ていると、一人になるときが来た場合本当に大丈夫だろうかと心配になる。

 ハリーにお皿を出してもらい、そこにベーコンをのせていく。よし、焦げてない。

 卵も焼いてテーブルの上にベーコンと一緒に置くとダドリーが母親に連れられてキッチンに入ってきた。父親にそっくりでピンクの顔だ。そのダドリーはテーブルにつくなりプレゼントの数を数えていたが顔色を変えて両親を見やる。

 

「三十六だ。去年より二つ少ないや」

「坊や、マージおばさんの分を数えなかったでしょう」

「それでも三十七だ」

 

 ああ、ダドリーの顔に血が上って赤くなってきた。この従兄弟、癇癪を起こすと面倒だ。テーブルをひっくり返される前にハリーと同じタイミングでベーコンに食らいついた。

 結果として癇癪が起きることはなかったが、プレゼントをさらに二つ買うことにしたようだ。

 おばさんが「それでいい?」と尋ねる。

 

「そうすると、ぼく、三十……三十……」

「三十九よ、かわいい坊や」

 

 それならと納得して椅子にドッカと座り込む。おばさんは鳴り出した電話を取りにキッチンを出て行った。

 それにしても、もう直ぐ初等教育も終わるはずなのだが、足し算は最初の二、三年でやった気がする。…………きっとそういうことだ。

 

「バーノン、大変だわ。フィッグさんが足を折っちゃって、この子たちを預かれないって」

 

 おばさんが怒ったような困ったような顔で現れた。それを聞いていたハリーは嬉しそうにしている。例年アドベンチャー・パークやらに行っている間わたしたちはフィッグ婆さんの家に預けられていたからだ。おばあさんの家はキャベツの匂いが家中に広まっている。無理矢理猫の写真を見せてくるが、猫は好きなのでハリーほど疲れはしない。

 結局家で留守番させておくわけにもいかないということで、ついて行くことになった。その際ダドリーがウソ泣きで嫌がったが、おばさんに説得されて渋々従った。

 移動中の車内でハリーがオートバイが空を飛んでいる夢を見たと言った途端おじさんが怒鳴った。

 似た夢を見ていたとは意外だった。

 なぜこの伯母夫婦はこの手のまともではなさそうな話題が嫌いなのだろうと考えるが、結局いつも分からないままだ。

 

動物園について様々な動物を眺めているとハリーがゴリラのいる檻を眺めていた。

 

「どうしたのハリー?」

「見て、レイラ」

 

 ハリーの指差す先には一頭のゴリラが頭を掻いていた。

 

「まるでダドリーみたいだよね」

 

 小声だったがおもわず吹き出しそうになってしまい、口元を手で隠してクスクスと笑う。なんだかハリーも嬉しそうだ。

 レストランでお昼を食べたがダドリーがパフェが小さいとかで癇癪を起こした。

 その後、爬虫類館を見た。ひんやりとした館内は壁に沿ってガラスケースが並んでおり、中には照明がついていた。

 その中でダドリーが目をつけたのは館内で一番大きなヘビだった。ケース前のダドリーたちには目もくれず、ぐっすりと眠っている。

 

「動かしてよ」

 

 ダドリーは父親にせがんだ、おじさんはガラスを叩いたが、ヘビは起きない。

 

「もう一回やって」

 

 ダドリーが命令した。おじさんは今度は強くドンドンとガラスを叩いたが、やはり眠ったままだった。

 

「つまんないや」

 

 興味の失せたダドリーが行ってしまった。おじさんとおばさんもゆっくりとその場を後にした。残ったのはハリーとレイラだけだった。

 レイラも別のところへ行こうと足を進めたところで声が聞こえた気がした。

 

『いつもこうさ』

「わかるよ」

 

 振り返ればまるで、起きたヘビがハリーに話しかけているようだった。

聞き違いかと思ったが、レイラは以前、草むしりをしていた時に見たヘビと話したことがあったために、これが現実なのだと思った。

どこから来たの?いいところ?

などとハリーが話し続けているとドスドスという足音が聞こえた。

 

「どけよ!」

 

 ダドリーがハリーにパンチを食らわせ、ハリーはコンクリート床にひっくり返った。

「ハリー!?」

 

 怒気とともに、殴ったハリーを気にもしないダドリーを睨みつけると、その次の出来事は一瞬だった。ガラスに手をついて中を覗き込んでいたダドリーが叫び声を上げて飛びのいた。ハリーとレイラは息を飲んだ。ガラスケースのガラスが消えていた。

 ヘビはそのままズルズルと外に這い出した。館内の客たちは叫び声をあげ、出口へと駆け出した。

 

『ブラジルへ、俺は行く――ありがとよ。アミーゴス』

 

 ハリーは呆然としていたが、レイラがおもむろに口を開いた。

 

「元気でね」

 

 ヘビはそれにウインクを返すと、スルスルと消えてしまった。

 

 かんかんに怒ったおじさんは無言のまま帰りの車を運転していたが、ダドリーの一言が火に油を注いだ。

 

「ハリーがヘビと話してた。そうだろ、レイラ?」

 

 なぜその話をこちらに振る。顔を上げればおじさんの顔がさらに真っ赤になっているのが見えた。

 家に着いて玄関の鍵を開けたとき、おじさんは怒りのあまり声も出なかった。やっとの事で「行け――物置――出るな――食事抜き」

 と言うと、椅子に倒れこんでしまった。

 おばさんは急いでおじさんに飲ませるブランデーを取りに行った。ハリーとレイラは不安を募らせながらも、その日は早めに眠ることにした。




評価お気に入りなど下されば、狂喜乱舞します。
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