そういえば、ハリポタのアプリ?が出るらしいですね。
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自分の評価バーがオレンジなんて、夢のようやわぁ。
もうすぐクリスマス。十二月も半ばのある朝、スリザリンの談話室はいつもと同じ光景だったが、寮を出て外が見える階へと移動すれば、そこには辺り一面雪に覆われていた。
クリスマスが待ち遠しい中、魔法薬学の地下牢教室だった。吐く息が白い霧のように立ち上り、生徒たちはできるだけ熱い釜に近づいて暖を取っていた。その中でレイラとアルフレッドは集団から離れていた。アルフレッドは自分とレイラに「身体暖房呪文」をかけていたので、地下牢教室でも少し涼しいくらいですんでいた。
「かわいそうに」
魔法薬学の授業の時、マルフォイがハリーにそう言った。
「家……いや、次のクィディッチの試合では箒から落ちないようにロープで体を縛ってみたらどうだい」
クィディッチの試合以来、マルフォイはハリーへの態度を前よりも悪くしていた。本来なら一年生は参加できないクィディッチの寮チームに、才能があるからと特別に許可されて、さらには試合に勝ってみせたことに嫉妬しているようだった。
レイラはカサゴの脊椎の粉末を計りながら、ハリーたちの方をちらりと見るだけであった。マルフォイは夜中にハリーを呼び出して退学させようとした後から、ハリーの両親についての悪口をなるべく言わないようにしているようだ。先ほども、言いかけてやめていた。少しは成長したのだと思うと、レイラは少し嬉しかった。
「あーいうのが、良きライバル?」
「……は?」
隣のアルフレッドにボソリと言ってみたが、反応は良くなかった。
魔法薬学の授業が終われば、その日の授業はもう無い。レイラは昼食を取ると、図書館に向かった。
入学して三ヶ月の間にレイラの髪は長くなり、背中まで伸びてきていた。ハーマイオニーのように髪をフサフサさせるなどして手を加えようかと考えたレイラだったが、面倒であったためにほったらかしにしていた。
図書館につくと、レイラは人気のない場所の席に座った。持っていたハンドバッグから魔法薬学の教科書を取り出して、今日の授業で扱ったこと、先生の話した注意点をノートに書き込む。実習をしながら話を聞く魔法薬学の授業では、ノートを取る暇がないのだ。それにスネイプ先生は、教科書に載っていない知識も教えてくれるので、レイラにとっては面白く思えていた。
ノートを書き終えたレイラは自分の髪に触れ、指で梳かそうとするが、途中で引っかかってしまう。手入れを怠った、というよりは、手入れする気力が失せていた。何度直しても、いつのまにか髪がクシャッとなり、絡まってしまう。その度に根気強く手を入れたが、レイラは諦める選択をした。
レイラが暇つぶしに髪を目の前で解いていると、コツコツとローファーの音を立てて人が近づいてきた。
「やあ、アルフレッド。どうした?」
レイラは顔を本棚の間の通り道に向けることなく、相手の名を言い当てた。やってきた特徴的な銀髪の男子生徒は、呆れたようにため息をついた。
ちらりとアルフレッドを見て、その視線が自身の髪に向けられていることに気づいたレイラは「ああ」と苦笑した。
「手入れをしたってこうなってしまうんだ、困った髪だよ」
「今度ヘアブラシでもかけてやるよ。……綺麗な髪だ、もったいない」
かけられた言葉にキョトンとしたレイラだが、すぐに嬉しそうにへにゃりと笑った。
開かれていた教科書を閉じて、レイラは『十二世紀 魔法薬の製作者』という本を手に取って読み始めた。アルフレッドは邪魔をしないようにと、持ってきた本を黙って読み始めた。
図書室の司書であるマダム・ピンスが生徒を叱る声が聞こえる中でも、二人は構わずに本を読み続けていた。
カタリ。とアルフレッドの目の前の女子生徒が珍しく本を開いたまま、どこかへふらりと消えていった。
アルフレッドはちらりと、先ほどまで彼女が読んでいたであろうページを見る。読まれていた本、『十二世紀 魔法薬の製作者』の開かれたページには「元気爆発薬」と「骨生え薬」を発明した魔法使いについて書かれていた。
はしゃいだ様子を隠せずに席に戻ってきたレイラを見て、アルフレッドは最近彼女がよく笑うと思った。そんなレイラの最近の流行りは、自身の祖先たちの歴史を調べることのようだ。この日は初めてポッター家の人間を見つけたようだった。
スティンチクーム村のリンフレッド。彼はまだ魔法使いとマグルが共存していた頃に、近隣のマグルたちの怪我を魔法を使って治しており、その過程で「元気爆発薬」と「骨生え薬」の発明に成功している。
周りの者たちからフラフラ歩くやつ、放浪するやつなどの意味合いでポッタラーと呼ばれており、これが定着して彼はポッターと名乗るようになった。
というのが魔法界におけるポッター家の始まりのようだ。レイラから聞かされた薬の名前は、アルフレッドもよく知る有名なものだった。「元気爆発薬」などは、そこらのパブでもよく置いてあるものだ。
レイラは「骨生え薬」の作り方を調べ始めたので、アルフレッドは再び手元の本に目を落とした。
◇
クリスマスの日、スリザリン寮の生徒はほぼ全て自宅へと帰り、残るのはアルフレッドとレイラしかいなかった。
ベッドから起きたアルフレッドは、ベッドの足もとにプレゼントの包みがいくつか置かれていたのが目に入った。マルフォイやグリーングラスから贈られてきたものもあり、それらを抱えて、談話室のソファに座った。一番小さなプレゼントを手に乗せて眺めているうちに、暖炉の暖かさに眠さを覚えてきた。
アルフレッドの頭が眠さからガクリと揺れた頃、レイラが寝室から起きてきた。
「おはよう、メリークリスマス」
「ん……おぉ、メリークリスマス」
頭を振って眠気を飛ばし、レイラを見ると、彼女もいくつかの包みを抱えて、こちらに歩いてきた。アルフレッドの座るソファの前にプレゼントを置いたレイラは、ソファに腰かけて一番上から包みを開けていった。
一つのもっさりした包みをレイラが開けると、中からはえんじ色の手編みのセーターが出てきた。
「あったかい」
レイラがセーターを着てみると、セーターの前側に「L」と書かれていたので、きっとレイラの頭文字を入れたのだろう。
「贈り主は書かれているのか?」
「んー。あ、あった。モリー・ウィーズリー、ロンのお母さんだ」
同封されてた名前のメモには「暖かいクリスマスを願っているわ」と書かれていた。
次にレイラが開けたのは、アルフレッドが贈った小さな包みだった。中に入っていたのは、翡翠が使われたペンダントだった。レイラは翡翠を光にかざし、じっと見つめた。
「……きれい」
「ん、それは良かった」
「ああ、アルフレッドからだったか」
包みに書かれていた名前を確認して、レイラはまじまじとアルフレッドの目を覗き込んで、ふわりと笑った。
「君の目と、おんなじ色だな」
アルフレッドは一瞬、息を飲んだ。それほどまでに、レイラの微笑みは美しかった。きっとネフライトの翡翠が彼女の役に立つだろうと、贈ったアルフレッドはレイラがペンダントを首につけるのを、嬉しそうに見ていた。
レイラがいくつかのプレゼントを開けていく中で、最後の一つは誰からの贈り物かわからないものだった。小さな包みを開けてみれば、中には古い本が入っていた。一緒に入っていた、風変わりな細い字で書かれた手紙を、レイラが読み上げた。
「君のお父さんから預かっていたものをハリーに返した。ポッター家の家長に受け継がれるものであり、君には渡せなかった。代わりにわたしの蔵書から一つ贈ろう。読んでおもしろく、ためになるものであることを願う。
メリークリスマス」
レイラはフムと頷いて、贈られた本のタイトルを見た。
見たが、その本の文章はレイラには読めないようで、アルフレッドはそれを受け取って文字を見る。
「読めないぞこれ、知ってるか?」
「ああ、魔法界で一番有名で、知らないやつはほとんどいないだろうな。俺でも読んだことがあるさ、吟遊詩人ビードルの物語というんだ。……すごいな、ルーン文字で書かれてるってことは、これは原書だぞ」
「ルーン文字だって? わたしが読めると思って、贈ってきたのかい」
呆れたようにため息をつき、本のページをペラペラとめくっていくレイラ。試しに読んでみたようだが、ルーン文字がわからないらしく、またすぐに手放した。ふてくされたというよりは、本が読めないことが悔しいようだ。「読んでやろうか?」というアルフレッドの提案を、レイラは首を横に振って断った。
「それよりもルーン文字を教えてくれないか」
アルフレッドはそれに二つ返事で頷くと、紙と羽ペンを用意して教え始めた。
◇
クリスマスの朝は、少ない生徒と先生方でのクリスマスパーティとなった。魔法のクラッカーをハリーとフレッドが引っ張り、大砲みたいな大きな音がしたので、レイラはびっくりした。生徒たちが沢山のごちそうにありつく中で、先生たちもワインを飲んだりして楽しんでいた。普段はきびしいマクゴナガル先生も、クスクスと楽しそうに笑っている。
お昼にレイラは、ハリーとウィーズリー四兄弟が雪合戦をする様子を眺めながらアルフレッドと雪だるまを作った。腕に使う枝を探そうとしたら、妖精たちがちょうどいい枝を持ってきてくれたので、レイラは彼女たちにクッキーを渡した。
雪合戦を終えたハリーたちにバスタオルを渡して、レイラはグリフィンドールの談話室に入った。
「レイラ、見せたいものがあるんだ」
ヒソヒソ声でハリーに言われ、暖炉であったまるウィーズリー兄弟とアルフレッドを置いて、レイラとハリーは寝室へと向かった。
そこで見たものは、レイラが今まで魔法界でみたどれよりも不思議だった。銀色に輝き、水を織物にしたような手触りのマントだ。ハリーはそれをレイラの肩から着せた。
「下を見てごらん」
「え? …………え!」
言われた通りにレイラが下を見てみると、彼女の足がなくなっていた。鏡の前で自分を見れば、首だけが宙に浮いているようだった。
ハリーはマントと一緒に送られた手紙をレイラに見せ、そこにはレイラに本を贈った人の手紙と同じ字で文字が書かれていたことに気づいた。
「誰からなのか、わからないんだ」
「でも、これはお父さんの形見のような物みたいだね。大事に使うんだよ」
「うん」
マントの贈り主のことは、今は考えないようにして、二人はクリスマスを楽しんだ。ダーズリーの家にいた頃には、絶対に味わえない、素敵な日だった。
その翌日、不思議なほどに浮かれた様子のハリーから、夜中にスリザリン寮の前に出ていてくれと声をかけられた。疑問を持ったが、「見てほしいものがある」と言われ、レイラは「いいよ」と答えた。
夜、話を聞いていたアルフレッドに見送られて、レイラはスリザリン寮の談話室を抜けて外に出た。少しして、誰かが石の階段を降りてくる音が聞こえてきた。その足音が階段を降りて段々と近づいてくるのを聞いて、レイラはトネリコの杖を持った。
足音が目の前からして、でも誰もいないように見える。
——驚かそうとしてるのか?
レイラは小さな声で「浮遊呪文」を唱えて、杖を振るう。しかし何も起きず、もう一度試してみたが、失敗に終わった。
それならばとレイラは足音のする方に駆け寄り、体があるであろう場所に手を伸ばす。水布の感触がしたので、勢いよくそれを引き剥がした。
「何するんだレイラ!」
「ふふ、わたしをびっくりさせようとしてたんじゃない?」
「それは、その」
もごもごと何と言おうか考え始めたハリーの手を引いて、レイラは歩き出した。ハリーは慌ててレイラと自分に透明マントをかけて、姿を見えなくした。
「こっちだよ」
途中からハリーがレイラの手を引く形となって、二人はいくつもの階段を上っていく。ハリーに連れていかれて入ったのは、昔使われていた教室のような部屋だった。部屋の真ん中には、天井まで届きそうな背の高い鏡が置かれていた。金の装飾が施された枠には、二本の鉤爪状の脚がついている。枠の上には字が彫ってある。
「すつうを みぞの のろここ のたなあ くなはで おか のたなあ はしたわ」
ハリーは鏡の前に立って、夢中になって見ていた。レイラは何か映っているのだろうかと気になり、ハリーの隣に立とうとしたところで、奇妙なものを見た気がした。レイラからして左側、ハリーの後ろの窓際に何かがある。
——いや、いる!
バッ。とハリーをかばうように窓との間に体を割り込ませ、杖を構えた。
「レイラ……?」
ハリーが不思議そうにレイラに声をかけるが、レイラはジッと窓のそばにいるであろう何者かを見ようと目をこらしていた。
「誰だ」
低く発せられたレイラの声に応じたのか、景色がグニャリと歪んで、一人の老人が姿を現す。体の前で手を組み、意外なものを見たような表情で立つ、アルバス・ダンブルドアその人だった。
「ほっほ、見つかってしまったかの。ハリーや、また来たのかい?」
「ぼ、僕、気がつきませんでした」
先生が微笑んでいるのを見て、ハリーは安心したように息をついた。それを受けて、レイラも警戒を解いて杖を下ろした。
「何百人もの者が、君と同じように『みぞの鏡』の虜になった。この鏡が何をしてくれるのかは、もう気づいておるじゃろう」
「僕の両親を、見せてくれました」
「……のぞみを映す、鏡」
ダンブルドアは静かに頷いた。
「鏡は心の一番奥底にある一番強い『のぞみ』を見せる。鏡が映すものが現実なのか、はたして可能なものなのかさえ判断できず、みんな鏡の前でヘトヘトになったり、鏡に映る自分に魅入ってしまったり、発狂したりしたのじゃよ。
良いかハリー、レイラ。この鏡は明日に別の場所へ移す。もうこの鏡を探してはいけない。たとえ再びこの鏡に出会っても、夢に耽ったり、生きることを忘れてはならん。それをよく覚えておきなさい。さぁて、ハリー。そのマントを着て、ベッドに戻りなさい」
ハリーがマントを被り、その中にレイラも入ろうとして、ダンブルドアに止められた。
「レイラ、少しわしの話に付き合ってはくれんか。もちろん、寮まで送るとも」
心配そうに自分を見つめるハリーに、「大丈夫だよ」と声をかけて、寮に戻らせた。ハリーが出ていったドアを、ダンブルドアはゆっくりと杖を振って閉めた。
「すまないね、少し聞きたいことがあっての」
「構いませんよ、わたしも訊ねたいことがあったので」
レイラはそう言って、鏡の前に立ってみた。
「わしは「目くらまし術」を使って隠れていたのじゃが、どのようにして見破ったのかね?」
レイラは鏡から視線を外してダンブルドアを見た。半月眼鏡の縁が、窓から差す月の光を受けてキラキラと光っていた。
「少しだけ、あなたのいた場所に違和感を覚えただけです。そう思ったら、そこに誰かがいるような感じがしました」
「ほう、違和感とな」
「もしかしたら、左目のせいかもしれませんね」
ハッ。と、鋭く息をのむ音が、静かな室内ではっきりと聞こえた。その時にはレイラは目を鏡に向けなおしており、ダンブルドアには彼女の顔も、鏡に何が映っているのかも判らなかった。
「ヴォルデモートの力の一部が、わたしの中にあるのでしょう?」
「……なぜ」
ダンブルドアは、うめくようにそう呟いた。レイラは答えず、ただニッコリと笑う。
「取り除けないのですか? 十一年では、まだ足りないのでしょうか」
未熟な魂に引っかかったものを取り除くのは危険がある。そう、ダンブルドアが言っていたことをレイラは覚えていた。ダンブルドアはなんと言おうか考えた後、顔をふせた。
「君たちが死なずに済む方法は、今の所見つかっていない」
「そうですか。……このことはハリーには、どうか言わないでください」
「苦しみを、一人で背負うと?」
「ハリーには何も心配なく、ホグワーツでの生活を送って欲しいのです。その影でわたしに何があろうと、ハリーには教えないでください」
まっすぐ、射抜くように自身を見上げる少女の決意を受けて、ダンブルドアはゆっくりと頷いた。
「よかろう、君の言う通りに」
この時、ダンブルドアはレイラの頬に涙が落ちるのを見た。聞いてはいけないことだと解ってはいても、老人は知りたいと思ってしまった。
「君には、何が見えるのかね?」
レイラはまた、鏡を見つめた。その目に、脳裏に、鏡の光景を焼き付けるようにまじまじと。
「……父と母」
ポツリと言葉を落とすように呟いていく。
「その後ろにはおそらく、祖父母。曽祖父母。わたしたち、ポッターのみんなが」
レイラと同じ、深みがかった赤い髪に、そっくりの緑の目の女性。痩せて背の高い黒髪の男性は、メガネをかけていて、髪がクシャクシャだ。その隣の小柄な老夫婦たち。そのほかにも、十人以上の人々がいる。一番奥には黒髪の男性と灰色髪の女性がチラと見えた。皆は笑いかけ、手を振ってくれていた。涙が頬を伝って、落ちていく。やがてレイラは、鏡から数歩下がって、涙を拭った。
「ハリーはわたしが、守ってみせるよ」
涙を拭いたハンカチを顔から離して、レイラはチラリとも、鏡を見向きはしなかった。
調べても判らなかったのですが、ハリーが分霊箱だってホモ爺が気づいたのっていつ頃なんでしょう。
騎士団あたりですかね。