お気に入り、評価も増えて、嬉しい限りです。(*´ー`*)
裏タイトル :『レイラさん、ストレート』の巻。
「みぞの鏡」を見た後、レイラは談話室に戻り、待っていたアルフレッドに何があったかを短く話した。
「みぞの鏡か、聞いたことがあったような……ああ、隠しものをするのに便利だと言っていたか」
「隠しもの?」
話を聞いたアルフレッドは、「みぞの鏡」について心当たりがあったようであり、その内容をレイラに教えてくれた。
「詳しいことはわからないが、あの鏡にはものを隠すことができる。取り出すにはソレを見つけたいと念じればいい」
「なんだ、ずいぶんと簡単なしくみだな」
「いや、穴がある。隠したものを使いたい者が見つけたいと念じても取り出せない。昔、黄金を鏡にしまい込んだ男がいて、見事に取り出せなくなったらしい」
——それはなんとも、欠陥ではないか。いや、魔法だからこそか。
そこでレイラはふと思いついた。
「取り出せなくなったら、鏡を割ればいいんじゃないか?」
「その場合、しまった物は何処かへ消えるらしい。俺が聞いたのはこれくらいだな」
ふむ、とレイラは顎に手を置いた。その鏡がホグワーツにあるということは、鏡の中には何かが隠されていると考えられる。そしてダンブルドアはそれを別の場所へ移すとも……
「ああ、そういう」
どうしたのかと、不思議そうにアルフレッドがレイラを見る。
「三頭犬の廊下を覚えているかい?」
「禁じられた廊下だな、もちろん。隠し扉についても見ている」
「なら話が早いな。ダンブルドアは鏡を別の場所へ移すと言った。校内に隠すとしたら、犬の下の隠し扉は最適だろう。鏡に入れる物は……グリンゴッツの金庫からハグリッドが持ってきたものが有力だな。持ち去った後に盗もうと金庫に入った者がいたようだし」
今度はアルフレッドが顎に手を置き、考え込んだ。その様子を見て、レイラは楽しそうに細い足を組んだ。
——まるで探偵の真似事だな。楽しいけど。
二人にしてみれば、やはり危険は犯すべきものではなく、話のネタに上がる程度であった。ハリーたちが思い切り、首を突っ込んでいることを知らないままに。
クリスマス休暇が終わりに近づくと、家に帰っていた生徒たちがこぞってホグワーツに戻ってきた。そして新学期が始まり、授業が始まる。
その日、レイラはいつものように図書室で教科書を開いて勉強していた。普段、図書室の一番端の席は静かな空間であるのだが、この日は少し騒がしかった。
授業が終わってから、図書室で勉強すると言うと、アルフレッドは持ってくるものがあると寮に戻っていった。そうして黙々と勉強を始めたレイラだったが、棚を一つ挟んだ向こう側で、ヒソヒソと話す声が近づいてきた。
「図書室の本はもうここで最後よ、後は閲覧禁止の棚しかないんだから」
小さいが、聞いたことがあった声に、レイラは顔を上げた。果たしてやってきたのは、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人組だった。
「やあ三人とも。探し物かい? 図書館の本なら、ある程度は場所がわかるよ」
その言葉に、三人は顔を見合わせた。ハーマイオニーがおそるおそるといった様子で訊ねてきた。
「あの、あのねレイラ。できれば今日わたしから聞いたことをスネイプには言わないで欲しいの」
「スネイプ先生だよ、ハーマイオニー。……まあ、いいよ。言わないであげるから、聞かせてごらん」
三人はホッとしたように息をついて、ハーマイオニーがコホンと咳払いをした。
「わたしたち、ニコラス・フラメルという人を探しているの。覚えがあると思うけど、禁じられた廊下の隠し扉の先に隠された物に、その人が関係しているのよ。現代の著名な魔法使いの本なんかも読んだのだけど、見つからなくって」
「ふーん、なるほど。ニコラス・フラメルの……」
——なるほど、隠されたものはアレか。
カタリと席を立って、レイラはいくつもの本棚を通り過ぎ、目当ての本の前で止まった。レイラの目線の先には、巨大な本が棚に収まっていた。
「ふん、……うあ、やっぱり重い…………」
細身で非力なレイラでは、その本は重かった。ヨタヨタと両手で抱えて持っていれば、突然本が持ち上げられた。本を持った男子生徒は、呆れたようにため息をついた。
「魔法で持ち上げれば楽だろうに、なんでわざわざ肉体労働をするんだ」
「ああ、それは盲点だった。筋トレの代わりになるんじゃないか」
またもため息。もしかして彼は苦労性か何かかと、レイラは少し心配そうに見つめた。本を抱えた生徒、アルフレッドは難なく本を持って、「いつものところか?」とレイラに聞いた。そうだと頷けば、レイラに歩みを合わせて歩いていく。
もといた席に戻れば、ハーマイオニーが興奮したように本のタイトルを見ていた。レイラはアルフレッドに、今日のことは五人だけの秘密にするように釘を刺してから、パラパラと本のページをめくった。
「いいかい、ニコラス・フラメルという人は一三二七年に生まれた錬金術師だ。現代の魔法使いに関する書を調べたところで、載ってはいないだろうね」
自分が見当はずれの場所を探していたことにショックを覚えたハーマイオニーを、レイラは肩を叩いて慰めた。
「フラメルは今も生きている。ああ……その説明をするから、落ち着いて。そもそも錬金術とは賢者の石を創造することを最終目標とした学問なんだ。どんな卑金属も金に変えることができ、飲めば寿命を延ばす「命の水」を作ることができる。フラメルは現存する唯一の賢者の石の所有者であり、この命の水で延命しているよ。あとは、ダンブルドアと共同研究をしたことがあるって有名かな」
——今年で六六五歳って、化け物だよな。いや待てよ、確か校長が一〇〇歳を越えてたような……魔法使いって長生きか?
一瞬で浮かんだ思考を脇へ投げ捨て、レイラは本を閉じた。するとハーマイオニーは「わかった!」と手をパンと打ち合わせた。
「あの犬が守っているのは賢者の石に違いないわ! きっとフラメルは誰かが石を狙っているのをわかって、ダンブルドアに頼んだのよ!」
「金を作る石、決して死なないようにする石! スネイプが欲しがるのも無理ないよ、誰だって欲しいもの!」
ハリーがそう言ったのに対してロンが頷くのを見たレイラは、側のアルフレッドを見た。彼は首を横に振ったので、レイラは自分がズレていないと思えた。
三人がいなくなった後の図書室の片隅で、レイラは目を丸くしていた。アルフレッドがローブのポケットからヘアブラシを取り出したためだ。
「アルフレッド、そのヘアブラシはなんだい?」
「……この前言っただろう、ブラシをかけてやるって」
——ああ、本気だったんだ。
せっかくヘアブラシを持ってきてくれたのだからと、レイラはくるりとアルフレッドに背を向けた。
「じゃあ、お願いする」
アルフレッドは黙って、レイラの深い赤色の髪にヘアブラシをかけていく。驚くことに、するすると髪の絡まりが解けていき、さらにはまっすぐになっていく。
レイラがそのことに気づき、驚きの声を上げる。
「え! すごい、あんなに硬かったのに……」
「ブラシには直毛薬が染み込まされているのと、掛けられた魔法のおかげだな。ずっとあくまでブラシだからな、直毛薬を直に使うことを勧める」
ストレートに直った髪を見て、レイラは感動した。今まで苦労して直していた髪が、こんなにもあっさり直ったのだ。これを喜ばないことはないだろう。
「ありがとう、アルフレッド。できればまた、ブラシをかけてほしいかな」
そう言ったレイラに、アルフレッドは少し遅れて頷いた。
「今度から、ブラシを持ち歩くようにしておく」
その顔は、レイラから見て嬉しそうに見えた。
◇
数日後の図書室で、「闇の魔術に対する防衛術」の授業で狼人間に噛まれた傷の処置についてのノートをまとめ直していたレイラを、ハリーが呼び出した。誰もいない部屋に連れてこられ、そこでハリーは一気にまくし立てた。
「僕たちは正しかったんだよ。スネイプだったんだ、あいつが賢者の石を狙ってる。フラッフィーっていうハグリッドの三頭犬を出し抜く方法を知っているかってクィレルを脅してたのを見たんだ。……それと、クィレルの『怪しげなまやかし』のことも何か話してた……フラッフィー以外にも石を守る何かがあるんだと思う。きっと、人を惑わすような魔法がいっぱいかけてあるんだよ。クィレルが闇の魔術に対抗する呪文をかけて、スネイプがそれを破らなくちゃいけないのかもしれない……」
最後にハリーは、「スネイプに脅されたらきっとクィレルはすぐに口を割っちゃうよ」と言って、一人でさっさと教室を後にした。
残されたレイラは、教室の窓際に腰掛けた。そこへちょうど緑髪と金髪の妖精が窓の外に見えたので、窓を開けてやる。
「いいよ、『おいで』」
嬉しそうに教室に入ってきた妖精たちに、レイラは持っていたビスケットを小さく砕いて渡す。窓を開けたことで、そよ風が教室に吹き込んで、レイラの髪がふわりと揺れた。
「賢者の石で富豪になるか、命を伸ばすか。そんなことをして何が嬉しいんだろうな」
妖精たちは首を傾げて考え始めたようだが、すぐにやめてレイラの周りを飛んだり跳ねたりし始めた。その様子を見て、レイラはクスリと微笑んだ。
「自分一人だけ生きながらえるなんて、わたしにはできないな」
——だって……
もう一度、レイラの髪がふわりと揺れた。
アルえもんの秘密道具の一つ、魔法のヘアブラシ
直毛薬を染み込ませたクッションパッドから伸びる毛先が、といた髪をストレートにする。さらに彼にヘアブラシを渡した人がかけた呪文によって、髪の絡まりを解く高性能ヘアブラシ。