ハリー・ポッターと不死鳥の姉   作:駆華野 志想之介

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オリキャラ登場と魔法生物の独自設定がありまふ。

追記 : ハグリッドのセリフでハリーの「石筍と鍾乳洞」の違いに関する問いに対して「二文字か三文字かの違いだろ」と答えているシーンを、原作に近い形に修正しました。


ダイアゴン横丁

目の前に広がるダイアゴン横丁の通りには、今までに見たことのない店が道を挟んで所狭しと並んでいる。大鍋を売る店、フクロウ百貨店などなど。箒を売っている店もある。

 

「見ろよ。ニンバス2000の新型だ……超高速だぜ」

 

あ、もしかして箒で飛べるのかな?

マントの店、不思議な銀の道具を売っている店もある。様々な店に目移りしながら歩いていると、ひときわ高くそびえる真っ白な建物の前でハグリッドが立ち止まった。

 

「グリンゴッツだ。中の小鬼には気をつけろ」

 

グリンゴッツの中に入ると、そこは広々とした大理石のホールだった。百人を超える小鬼が、細長いカウンターの向こうで帳簿を書き込んだり、真鍮の秤でコインの重さを計ったりしている。

 

「ハリー並びにレイラ・ポッターさんの金庫を開けたい」

「鍵はお持ちですかな?」

「ああ、俺が持っとる」

 

ゴソゴソとポケットの中を弄るハグリッドは、一分程かけて黄金の小さな鍵をつまみ上げた。

小鬼は慎重に鍵を調べてから、「承知いたしました」と言った。

 

「それと、ダンブルドア教授からの手紙だ」

 

ハグリッドは胸を張って、重々しく言った。

 

「七一三番金庫にある、例の、アレについてだ」

 

小鬼は手紙を丁寧に読むと、「了解しました」とハグリッドに返した。

やがてグリップフックと呼ばれた小鬼が出てきて、三人を案内することになった。グリップフックが無数にある扉の一つ開け、細い石造りの通路に入った。そこで四人はトロッコに乗り込む。トロッコは勢いよくビュンビュン走った。しばらく走ったところで、視界の端に火が吹き出したような気がした。ハリーは身をよじって見ていたが、おそらく見えはしなかっただろう。

トロッコはさらに深く潜った。地下湖のそばを通ると、巨大な鍾乳石と石筍が天井からせり出していた。

 

「僕、いつもわからなくなるんだけど」

 

トロッコの音に負けないよう、ハリーはレイラとハグリッドに大声で呼びかけた。またか、その質問を何回すれば覚えるのかな。

 

「鍾乳石と石筍って、どう違うの?」

「字面が違うだけだろ。頼む、今は何にも聞いてくれるな。吐きそうだ」

 

確かに、ハグリッドはグロッキー状態だ。ジェットコースターに弱いのかな。

間違いを正すのはあんまり気乗りしないんだけどなあ。

 

「鍾乳石が上から、石筍が下から生えてくるんだよ」

「ああ、そうだったっけ」

 

小さな扉の前でトロッコはやっと止まり、ハグリッドは降りたが、膝の震えが止まるまで通路の壁にもたれかかっていた。

グリップフックが扉の鍵を開けた。重そうな扉がゆっくりと開き、ハリーとレイラはあっと息をのんだ。中には金貨や銀貨の山、銅貨までもが大量に置かれていた。

 

「父さんと母さんがお前さんたちに残してくれていたんだ」

 

ハリーとレイラはハグリッドから渡された袋に必要分とお小遣い分のお金を詰めた。

 

「金貨はガリオンだ。銀貨がシックルで、十七シックルが一ガリオン。一シックルは二十九クヌートだ。簡単だろう」

 

お金を詰め終えた一行は、七一三番金庫へとトロッコで向かった。金庫には鍵穴が無かった。

 

「下がってください」

 

グリップフックが長い指の一本でそっと撫でると、扉はガチャガチャと鍵が外れるような音を立てて開いた。

重々しい態度で「例の」などと言っていたハグリッドの言葉から、ハリーは興味津々に身を乗り出して中を除き、レイラはなるべく興味を持たないように努めた。ハグリッドは金庫の中に身を滑り込ませると、茶色い紙で包まれた薄汚れた小さな包みを拾い上げ、コートの奥深くにしまい込んだ。

 

「それは何?」

 

ハリーが我慢できないとばかりにハグリッドに訊ねる。

 

「それは言えん。ホグワーツの仕事でな。他人に話すと俺のクビが飛ぶ」

 

もう一度強烈なトロッコを––––ハグリッドが口を押さえた!お願い堪えて!––––乗りこなして、陽の光が当たるグリンゴッツの外に出た。

ハグリッドは元気薬を飲んでくると言い、フラフラしながら『漏れ鍋』へと向かった。

 

「その間に制服を繕ってもらうといい」

 

二人は顔を見合わせて、ハグリッドが示したマダムマルキンの洋装店––––普段着から式服まで。そう書かれた看板の服屋に向かった。

マダム・マルキンは、藤色ずくめの服を着た、愛想のよいずんぐりした魔女だった。

お店では同い年くらいの男の子が丈を合わせ始めるところで、サイズを測れる人がマダム・マルキンともう一人の魔女しかいなかったため、レイラはハリーを先に測らせた。

ハリーの隣の、青白い、あごのとがった男の子は気取ったようにハリーに話しかける。

君たちもホグワーツなのか。自分の両親は今何をしているか。クディッチという知らない競技の話や学校での寮の話などを次々としていった。

ハリーはウンザリしていたようだが、男の子は気づいていなかった。最後に彼がハリーにした質問。君の両親はどうした、という問いに、ハリーが死んだのだと答えた時に男の子は謝ったが、とても謝っているような口ぶりではなかった。

そのことにハリーは機嫌を悪くしたが、レイラは男の子の中に別の感情があるように気がして、嫌いになることはできなかった。

 

「じゃ、ホグワーツでまた会おう。多分ね」

 

気取った男の子が出て行って直ぐ後にハリーの方も終わり、お金を払い「先に行くね」と少し俯き加減に出て行ってしまったので、レイラは呼び止めることができなかった。

そのまま測定を終えたレイラは、ハリーの制服とローブを受け取り、自分の分のセーターやシャツ、スカートに靴下、それにローブも受け取ったので、荷物が多くなってしまった。店を出てみれば、当然のごとくハリーもハグリッドもいない。入学用品のリストとにらめっこしながら、鍋を買い、次に薬瓶を買いに行こうと決めた。だが……

 

「あ、だめだ。場所がわからない」

 

ウンウンとあっちこっちを見回していたレイラだが、クイッと左手の袖を引っ張られていることに気づいた。

何事かとそこを見れば、小さな手のひらサイズの人間が浮いていた。いや、羽が生えている。これってあれじゃないかな、妖精。

その妖精が、パタパタと羽を光らせながらどこかへ連れて行こうと踏ん張っている。

もしかして……

 

「薬瓶を売ってるお店に、連れて行ってくれるのか?」

 

そう問いかけると、金髪のショートカットに白いワンピースといった出で立ちのかわいらしい妖精は、嬉しそうにこくこくと頷いた。そしてわたしの肩に乗ると、まるで「あっちだよ」と言うように方向を指差してくれた。

移動中誰もレイラの肩の妖精を気にする人はいなかったので、もしかしたら魔法の世界では妖精は普通の存在なのかもしれない。そう考えているうちに薬問屋さんの前に着いた。妖精は肩から飛び立ち、元気いっぱいにわたしにバイバイと手を振ると、どこかへと消えてしまった。

 

「あんた、妖精が見えるのか?」

 

少年はいつのまにかレイラの隣にいた。その容姿に、思わずレイラは息をのんだ。サラサラとした銀髪に、綺麗さと儚さを持った翡翠の瞳。中性的な顔立ちをしていた。

 

「やっぱり、妖精だったのか?」

「なんだ、知らないのか。普段は人に見えないように姿を隠すものなんだが、気に入ったやつには姿を見えるようにするんだ」

 

ということは、気に入られたってことかな。そうレイラは考え、悪い気はしなかった。

 

「薬瓶を買いに来たのか?」

「うん。お店がわからなかったけど、妖精が教えてくれたよ」

 

その言葉に少年は目を丸くして驚いた。なんでも、妖精はいたずら好きで善良ではないものが多いらしく、人の手助けをする妖精はそうそういないのだとか。

 

「もしかしたらあんたは、妖精に好かれやすい性質なのかもな」

「……そういうものか」

 

妖精は自分がポッターだとわかって興味本位でやったんじゃないかと、レイラはそう考えもしたが、あの元気いっぱいな好意にそんな理由は合わないかと思考を打ち切った。

そのまま少年と薬問屋で薬瓶を、他の店でしっかりした秤を買い、望遠鏡も買いに行く。

その途中で少年と様々な話をした。ハリーの名前を伏せて弟の話や、今日は付き添いの三人でダイアゴン横丁に来ていることなどを話す。少年は世話をしてくれる人がここまで送ってくれ、帰りは迎えに来るのだと言っていた。

 

「ねえ、ホグワーツの寮ってどういった風なんだい?」

「四つある。グリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリン。入学式で、一年生はどの寮に行くかを決められるんだ」

 

なるほど、こっちの世界のクラス分けみたいなものか。他に聞くものは。そう考えたレイラの目についたのは、ショーウィンドウに飾られる箒を見つけた。

 

「あの箒は? 掃除用じゃないだろう?」

「ああ、クィディッチという競技で使う、飛べる箒だ。マグルでいうサッカーみたいなものだ、ボールが四つの」

 

レイラは気になるものを、しつこくならないように聞いた。少年の方も悪い気はしないのか、スラスラと答えていた。

二人はフローリシュ・アンド・ブロッツ書店で教科書を買い揃えた。

八冊の教科書はかなり重く、興味を惹かれた本を数冊買ったのでレイラは荷物を持つ手が塞がりつつあった。そんな彼女を見て、少年はあるものをくれた。ハンドバッグサイズのそれは、レイラの持っていた教科書全てを入れてしまうことができた。

どう見ても一冊が限界なのに、膨れた様子すらない。重さはそのままであった。

 

「検知不可能拡大呪文だ。収容できる面積を増やすことができる」

「魔法ってすごいな。ありがと」

 

気にするな、と少年は手をパタパタと降った。最後に杖を売っているオリバンダーの店に連れて行ってくれた。

 

「最後はここだな、杖の店では有名どころだ」

「急だったけど、案内してくれて助かったよ。本当にありがとう」

「好きでやったんだ、いい。……そろそろ俺は行く時間だ。また、ホグワーツで会おう」

「そか、ホグワーツで、な。ああ、いけない。名乗ってなかったな、レイラ・ポッター。好きに呼んでくれ」

 

それを聞いて少年は僅かに片眉を上げるだけで、落ち着いた雰囲気を保っていた。ああ、きっと彼は色眼鏡なしで見てくれる人だ。

 

「アルフレッド・ルーク。よろしく、レイラ」

 

軽く手を上げて、ルークは人ごみの中に消えていった。

 

 

オリバンダーの店に入ると、そこにはちょうどハリーが来ていた。

 

「レイラ! 今ちょうど杖を買ったところだよ!」

 

誇らしげに杖を見せるハリーの後ろには、大きな薄い目を輝かせた老人が立っていた。

 

「なるほど、あなたがレイラ・ポッターさんですな」

「ええ、こんにちはオリバンダーさん」

 

レイラは先ほどまでアルフレッドと話していたような口調を直し、丁寧に答えた。

 

「目の色はお母さんだが、目つきがお父さんに似ているね。いやはや、懐かしい」

「そうですか。そう言ってもらえると嬉しいです」

 

オリバンダーは顔を近づけ、レイラをよく観察した。

 

「さて、それではポッターさん。杖腕はどちらで?」

「……ん、右利きです」

「腕を伸ばして。そうです」

 

一応左右両方の腕を使うことのできるレイラではあるが、どちらかと聞かれれば右腕が利き腕といえる。

オリバンダー老人はレイラの肩から指先、手首から肘、肩から床、膝から脇の下、頭の周り、と寸法を採った。

 

「ポッターさん。オリバンダーの杖は一本一本、強力な魔力を持った物を芯に使っております。一角獣のたてがみ、不死鳥の尾羽根、ドラゴンの心臓の琴線。使う生き物は全て違うのじゃから、オリバンダーの杖に一つとして同じ杖はない。杖には忠誠心というものがありますから、他の魔法使いの杖を使っても、決して自分の杖ほどの力は出せないのです」

 

オリバンダー老人が話を続けている間に、巻尺が勝手にレイラを測定し続けていた。最初は腕の周りや足の長さを計っていたから良かったが、胸周りを図ろうとしていたので掴んで止めた。

 

「こりゃ失礼。困ったことに、勝手に動き出してしまうのです」

「いえ、お構いなく」

 

力強く握った巻尺の先端がまるで蛇のようにジタバタともがいていた。女の胸を測ろうとするからだ、この変態巻尺。

 

「ポッターさん、こちらをお試しください。黒檀と不死鳥の尾羽根。なに、振ってみればよいのです」

 

言われるがままにレイラは杖をヒョイと軽く振る。するとポン、という音を立てて杖先から煙が出た。思わず目を丸くするレイラから杖を取り上げたオリバンダー老人は、別の杖を握らせる。

そうして何度もレイラは杖を振っては交換するのを繰り返された。

 

「ふむ、難しい。ハリーさんも、そうだが、あなたもなかなかだ」

 

そう言って杖を選びに行くオリバンダー老人。その時、レイラの視界に再び同じ妖精が現れ、彼女の目の前を飛び回る。

 

「どうしたの、レイラ」

「ハリーには、見える?」

「えっ、何が」

「……ううん、見間違いだったみたい。気にしないで」

 

なるほど、目の前を飛ぶこの子はわたしにだけ姿を見せてるってことか。

妖精はレイラを見つめた後、視線を杖が積まれている棚に移した。そして白いワンピースをひらりと揺らし、一つの杖が入った箱を小さな体で引っ張る。

この時ハリーには、並べられている箱の一つがひとりでに動いたように見えた。一度動いただけなら見間違いと思うところだが、この箱は何度もガタガタと揺れた。

やがてそれに気づいたオリバンダー老人が、不思議そうにその箱を取り出す。

 

「ふむ、レイラさんの魔力に引かれたのか……はたまた妖精でもいましたかな」

 

レイラに見える妖精は、自分の引っ張った箱を取り出してもらえてご満悦のようだ。

 

「では試しに、どうぞ。トネリコの木に不死鳥の尾羽根、19センチ、柔軟性がある」

 

レイラがその杖を受け取った瞬間、妙に手に馴染む感覚を覚えた。

そして杖を一振りすると、鮮やかに燃える炎の鳥が杖の先から現れ、消えていった。

 

「すばらしい。どうやら選ばれたようですな」

「そのようですね、ありがとうございます」

「ハリーさんにはお話ししましたが、彼の杖は、名前を言ってはいけない例のあの人が持った杖と同じ不死鳥の尾羽根から作られておる。兄弟杖が、ハリーさんに額の傷を負わせたのじゃ。ふしぎなことにだが……」

 

レイラは息をのんだ。

 

「三十四センチ、イチイの木じゃ。あの人もある意味では、偉大だったのじゃろう」

 

夕日が出てくる時間帯。三人は人気のなくなった「漏れ鍋」に戻った。

夕飯をハグリッドが奢ってくれることになり、長椅子に三人で腰掛けていた。

その席で、レイラは豆のスープを飲みながら、ハグリッドに疑問を訊ねた。

 

「ねぇハグリッド。例のあの人って、誰?」

 

その問いに、ハグリッドは盛大にむせた。毛むくじゃらの髭に飲んでいたスープをこぼし、テーブルにもぶちまけた。

分厚いコートの袖でゴシゴシとこぼしたスープを拭ったハグリッドは、身を乗り出して小声でボソボソと話した。ハリーも気になるようで、三人で額を突き合わせていた。

 

「魔法使いはいいやつばかりじゃない。昔ある魔法使いが悪の道に走った、そいつの名は……ウウン。いいか、本当は無闇に口に出すもんじゃねえんだ。……ヴォルデモート」

「ヴォルデモート?」

「シーッ」

 

思わず口に出してしまったハリーをハグリッドがいさめた。

 

「そいつは多くの魔法使いを暗黒の道に引きずり込んだ。立ち向かったものは殺された。お前の両親も……やつに命を狙われて生きていたやつはいない。お前さんたちを除いてな。死んだって話もあるが、俺はそうは思わん。やつは今も生きてるだろう。これだけは覚えておけハリー。お前の何かがやつを追い払った、その傷はその時に出来たもんだ。レイラの左目もな」

 

ヴォルデモート––––それが両親を殺した魔法使いの名前。わたしの……仇。

 

漏れ鍋を出て、駅に着いたハリーとレイラは、ハグリッドから入学式の日に乗る電車の切符をもらった。

 

「九月一日––––キングス・クロス駅発––––全部切符に書いてある。ダーズリーのとこで何かあったら、ハリーにやったフクロウで手紙でも寄こせ、フクロウが俺を探してくれる。金庫の鍵は、レイラに預けておく。なくすんじゃないぞ」

 

電車が走り出し、ハリーとレイラはハグリッドと別れた。見送ろうと電車の中からハグリッドを見ていた二人だが、ほんの一瞬姿がぶれたかと思えば、ハグリッドの姿は消えていた。




妖精に好かれたレイラさん。原作を持っている方で妖精さんに興味のある方は、3巻245頁また6巻上478頁をご覧あれ。そんなに記述はありませんが笑。

妖精
魔法省分類:XX 害はなく、ペットとしても飼える。
姿は人と同じで、羽の色は個体による。人間の言葉を理解するが、彼らは話せない。仲間とは羽音でコミュニケーションを取る。

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