今映画版を見ながら描いてましたが、映画準拠でサクサク行きますよぉ。
ゴイルに変身したハリーと、クラッブに変身したロンは、廊下で出くわしたマルフォイとともに寮に行き、椅子に座って対面していた。
ハリーとロンは椅子に座ってから動かないマルフォイを不思議に思って顔を見合わせたが、どう話しかけて良いか分からず、クラッブに変身したロンはテーブルの上に広げられていた新聞を手に取った。
そこに書かれていた内容を読んで、ロンは顔面蒼白になった。小刻みに震える手で新聞の内容を読み終えると、力なくその新聞をハリーへと手渡した。何が書いてあるのか気になったハリーだったが、記事を読んだ瞬間にハッとした。
新聞には、ハリーとロンが乗っていたフォードアングリアが、マグル製品の不正仕様に当たるとのことで、ウィーズリーおじさんに罰金が科されるとの旨が書かれていた。
ハリーはてっきり、マルフォイがこのことについてウィーズリーおじさんのことを馬鹿にしたりするものだと思っていた。しかしマルフォイはハリーの考えとは違っていて、ロンとハリーが変身したクラッブとゴイルが新聞を読んでいようと、全く気にもしていないようだった。——いや、実際気にはした。というよりは、訝しんだ。そして顔を上げて、まじまじと二人の顔を見た。
二人は、もしや変身が解けているのではと、お互いの顔を見合わせるが、おかしなところは何もないはずだ。するとマルフォイが不思議そうに声をかけた。
「まさか……字が読めたのか?」
一瞬、談話室ないから音が消えたかに思えるほど、三人の間に沈黙が漂った。
やがて、ハリーが絞り出すように答えた。
「あ、ああ……」
マルフォイは冗談だとでもいうように鼻で笑うと、テーブルの上のチョコレートの包みを一つ、手に取った。すぐには食べず、手の中で転がし始めた。
やがて、長い溜息を吐いた。
「……まったく忌々しいことに、どいつもこいつもポッターがスリザリンの継承者だと思い込んでいる。休暇が明けるのが嫌になるとは思いもしなかったね」
スリザリンの継承者がマルフォイだと考えているハリーとロンは、もう少しでマルフォイが、自身が継承者であると口を割るはずだと待ち構えた。
「そもそもポッターはグリフィンドール生だろう。継承者がいるとしたら、スリザリンが最もふさわしいだろう?」
マルフォイの問いかけに、ハリーとロンは無言で頭を縦に振った。ここで何か言うべきだと考えたハリーは、核心に迫ろうとした。
「誰が陰で糸を引いているか、知ってるんだろう」
「……またそれか。ゴイル、知らないと何度言えば分かるんだ」
ロンの顎がカクンと開いた。ハリーも、初めは何を言われたのかすぐに理解できなかった。
キョトンとした様子の二人だが、マルフォイからしてみればいつもの二人組の様子に特に気にかけることもなく、手の中のチョコレートの包みを解いて口に入れた。
「お前達には話していなかったか……父上から聞いた話では前回扉が開かれたのは五十年前。我が家の家系の人物ではないそうだが、誰だかは教えてもらっていない。けれど一つだけ教えられたのは、前回の時には、『穢れた血』が一人死んだらしい」
「前に『部屋』が開けたやつが捕まったかどうか、知ってる?」
「ああ、うん……誰だったにせよ、追放された」
マルフォイはため息をついて、口を閉じた。代わりとばかりに、ハリーが口を開いた。
「本当に、ポッターのやつがスリザリンの継承者じゃないのか?」
ハリーは心のどこかで、マルフォイも自分のことをスリザリンの継承者だと疑っているのではないかと思った。だからこの場で、ハリーは自分から問いただしておきたかったのだ。
どこか期待の入り混じった気持ちのハリーだったが、直後にマルフォイが睨みつけてきたので驚いた。
「その話もいい加減飽きたぞ。いいか、これっきり言わないが、その疑問を口にするな。特に、レイラの前ではな」
なぜここでレイラの名前が出るのか、ハリーには見当もつかなかった。きっとクラッブとゴイルが何かやらかしたのだろう。
「そうでなくとも、その時はお前たちに閉口呪文をかけてやるから、そのつもりで——」
「ホー!」
突然、ロンが声を上げた。
マルフォイが、ロンが変身したクラッブを見た。ハリーも見た。するとロンの髪がだんだんと赤くなり、鼻が伸びてきた——時間切れだ。ロンは元の姿に戻りつつあった。ハリーを見るロンの目に恐怖の色が浮かんだのは、きっとハリーも今まさに自分の姿に戻ろうとしているに違いない。
二人は大急ぎで立ち上がった。
「胃薬だ」
ロンが呻いた。二人は振り向きもせず、スリザリンの談話室から端まで一目散に駆け、石の扉に猛然と体当たりをし、廊下を全力で疾走をした。
途中でクラッブとゴイルを閉じ込めている物置の前に二人から拝借した靴を置き、ソックスのまま全速力で大理石の階段を上って女子トイレに戻った。
トイレの扉を開けて、暗がりの中に立っていた女子生徒が見えたので、姿をろくに確認せずにハリーは声をかけた。
「ハーマイオニー、君に話すことがいっぱいあるんだ!」
しかし、女子生徒はじっと暗がりから出てこず、動かないでいた。
「ハーマイオニー?」
「あはは、よく見なよハリー。わたしはハーマイオニーじゃあないよ」
月明かりの下に現れたのは、驚くことにレイラだった。
「ハーマイオニーをどうした!」
ロンが怒声をあげて、レイラに詰め寄った。レイラはロンを落ち着かせようと、両手を胸の高さまで上げて、押しとどめる。
「落ち着きなよ。ハーマイオニーには彼女の事情があってね、体調が悪くなったってことで医務室まで送ってきたのさ」
今日はもう遅いから、明日にでも行きな。レイラはそう言うと、ハリーとロンにそれぞれの服を渡してトイレを出て行こうとした。
「ああ、そうだ」
トイレの扉を開ける前に、レイラは二人を振り返った。なんてことはない、おやすみとでも言うかのように軽やかに言った。
「スリザリンの継承者について調べるなら、十分に気をつけて。それから、あまり夜遅くに出歩かないで」
そう言うと、今度こそレイラはトイレから出て行った。
翌日、医務室にハーマイオニーを探しに行ったハリーとロンは、猫の姿に変身してしまった彼女を見て、大いに笑ってしまった。
その日、マートルのいる女子トイレで、ハリーはトム・リドルという人の日記を拾った。
先日お気に入り件数が777を記録していまして、なんだかほっこりしました。