大きな樫の木の扉が開くと、エメラルド色のローブを着た背の高い黒髪の魔女が現れた。レイラの記憶にある、あの女性だ。
「マクゴナガル先生、イッチ年生を連れて着ました」
「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」
マクゴナガル先生は玄関ホールへの扉を開け、生徒を連れて大きなホールを横切った。入り口の右手の方から、何百人ものざわめきが聞こえた。しかし、マクゴナガル先生は生徒をそこへは案内せず、ホール脇の小さな空き部屋に一年生を入れた。
「みなさん、ホグワーツへの入学おめでとうございます」
マクゴナガル先生が挨拶をした。
「新入生の歓迎会が始まりますが、その前に、皆さんが入る寮を決めます。
寮は四つ。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そしてスリザリン。ホグワーツにいる間は、寮が皆さんの家です。良い行いをすれば寮に加点がされ、逆に悪い行いをすれば減点されます。学年末には最高得点の寮に名誉ある寮杯が与えられます。どの寮に入っても、皆さん一人一人が寮にとって誇りとなる存在になるよう望みます。
まもなく全校列席の前で組分けの儀式が始まります。待っている間、できるだけ身なりを整えておきなさい」
マクゴナガル先生は一瞬、ロンの汚れた鼻の頭や、ネビルのずれたマントの結び目を見た。レイラは落ち着いた様子でネクタイが曲がっていないかを確かめる。
「学校側の準備ができたら戻ってきますから、静かに待っていてください」
先生が部屋を出ていった。その途端、多くの生徒はどうやって寮を決めるのだろうかと話し合い始めた。
「いったいどうやって寮を決めるんだろう」
ハリーがロンに訊ねている。
「試験のようなものだと思う。すごく痛いってフレッドが言ってたけど、きっと冗談だ」
みんな不安そうな顔をしていた。ハーマイオニーに至っては、覚えているのであろう呪文らしきものを早口で呟いていた。
レイラは隣で冷静にしているアルフレッドを見上げて、小声で聞いた。
「アルフレッドは、何をするか知ってるかい?」
「知りはしない。けど、魔法に触れてこなかったやつもいるから、実技関連はなさそうだな」
「それもそう、か」
たしかに、魔法を使うどころか、一ヶ月前まで知りもしなかったマグル出身者にいったい何をしろというのか。そう考えれば、儀式の内容は先生方との面談や心理面でのクイズ形式で決めたりなどかな。レイラは一人、頷いた。
マクゴナガル先生が戻ってきた。手には巻紙を持っていた。
「準備ができました。来なさい」
一年生は部屋を出て再び玄関ホールに戻り、そこから二重扉を通って大広間に入った。
そこには、レイラが今まで見たことのない、不思議な光景が広がっていた。何千もの蝋燭が空中に浮かび、広間にある四つの長テーブルを照らしていた。テーブルには上級生たちが着席し、キラキラ輝く金色のお皿とゴブレットが置かれている。
広間の上座には、四つのテーブルと直角になる置かれ方をした長テーブルが一つあり、先生方と思しき人たちが座っている。マクゴナガル先生は上座のテーブルの前まで一年生を引率し、上級生の方に顔を向け、先生方に背を向ける形で一列に並ばせた。
天井を見上げたレイラは、感嘆の息を漏らした。ビロードのような黒い星が浮かぶ夜空がそこにはあった。
「本当の空に見えるように魔法がかけられているのよ。『ホグワーツの歴史』という本に書いてあったわ」
ハーマイオニーがそう言うのが聞こえた。
そこに天井があるようには見えない。大広間はまさに天空に向かって開いているように感じられる。
先生方の長椅子の前には四本足のスツールが置かれ、マクゴナガル先生によって、その上には古ぼけた茶色のとんがり帽子が乗せられた。
その瞬間、ホール内で喋っていた上級生は口を噤んだ。レイラは不思議に思い、帽子に何かあるのではとジッと見つめた。すると、帽子がピクピク動いた。つばのへりの破れ目が、口のように開いて歌い出した。
私は綺麗じゃないけれど
人は見かけによらぬもの
私を凌ぐ賢い帽子
あるなら私は身を引こう
山高帽子は真っ黒だ
シルクハットはすらりと高い
私はホグワーツ組分け帽子
私は彼らの上をいく
君の頭に隠れたものを
組分け帽子はお見通し
被れば君に教えよう
君が行くべき寮の名を
グリフィンドールに行くならば
勇気ある者が住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール
ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない
古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
既知と学びの友人を
ここで必ず得るだろう
スリザリンではもしかして
君は真の友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ
被ってごらん! 恐れずに!
興奮せずに、お任せを!
君を私の手に委ね(私は手なんかないけれど)
だって私は考える帽子!
歌が終わると広間にいた全員が拍手喝采した。四つのテーブルそれぞれにお辞儀をして、帽子は再び静かになった。
「なるほど。人の心、と言うよりは内面を見る帽子か。これは効果的だな」
「試験だとか痛いだとか、一年生をからかうためのジョークだったわけだ。……あはは、魔法だねえ」
寮のことを悩んだことはないけど、割とどこでもやっていけそうだよな。
マクゴナガル先生が前に出て、長い羊皮紙の巻紙を開いた。
「ABC順に名前を呼びます。呼ばれた生徒は前に出て来なさい」
「アボット・ハンナ!」
ピンクの頬をした、金髪のおさげの少女が、転がるように前に出た。スツールに腰掛け、マクゴナガル先生が帽子を被せる。一瞬沈黙し……
「ハッフルパフ!」
と帽子が叫んだ。右側のテーブルから歓声と拍手が上がり、ハンナはハッフルパフのテーブルについた、
「ボーンズ・スーザン!」
帽子がまた「ハッフルパフ!」と叫び、スーザンは小走りでハンナの隣に座った。ハンナは笑顔でスーザンを迎えた。
「ブート・テリー!」
被ってすぐ、「レイブンクロー!」と発せられた。今度は左から二番目のテーブルに拍手がわき、テリーが行くと何人かが立って握手で迎えた。
次の「ブロックルハースト・マンディ」もレイブンクロー。その次の「ブラウン・ラベンダー」が初めてグリフィンドールになった。一番左端のテーブルから弾けるような歓声が上がった。ロンの双子の兄弟がヒューッと口笛を吹くのが見えた。
そして「ブルストロード・ミリセント」はスリザリンになった。
「フィンチ=フレッチリー・ジャスティン」はハッフルパフ。「フィネガン・シェーマス」は一分ほど椅子に座って、それからやっと帽子が「グリフィンドール」と宣言した。「ゴイル・グレゴリー」はスリザリンに決まった。
「グレンジャー・ハーマイオニー!」
ハーマイオニーは走るようにして椅子に座り、待ちきれないようにグイッと背筋を伸ばした。
「グリフィンドール!」
「……うぇ」
帽子が叫んだ直後、レイラの後ろでロンが呻いた。どうした?
「グリーングラス・ダフネ」という上品そうな女の子は帽子をかぶってすぐに「スリザリン!」と叫ばれた。
汽車でヒキガエルを探していた「ロングボトム・ネビル」が呼ばれた。決定にしばらくかかったが、帽子はやっと「グリフィンドール!」と叫んだ。
次いで「マクドゥガル・モラグ」が組分けされ、マルフォイが呼ばれた。
踏ん反り返って座った彼の頭に帽子が触れるか否かのところで、「スリザリン!」と叫んだ。
「ノット・セオドール」「スリザリン!」……「パーキンソン・パンジー」「スリザリン!」……「パチル・パドマ」「レイブンクロー!」……「パチル・パーバティ」「グリフィンドール!」
……そして、ついに––––
「ポッター・ハリー!」
ハリーが前に進み出ると、当然広間中にシーッというささやきが波のように広がった。
「ポッターって、そう言ったよね」
「あのハリー・ポッターなの?」
「じゃあレイラ・ポッターも?」
ハリーが椅子に座り、帽子がかぶせられる瞬間を、レイラは黙って見ていた。
帽子はウンウンと唸り、かなり悩んでいるようだ。やがて、帽子が重々しく口を開いた。
「よろしい。……グリフィンッ、ドール!」
一際大きい声で帽子が叫んだ。ハリーが嬉しそうに帽子を見上げ、次いでレイラを見た。レイラはにこりと笑いかけて手を振った。
とてつもなく大きな歓声に迎えられていることを、ハリーは緊張から全く気づいていない様子だった。ウィーズリーの双子は「ポッターを取った! ポッターを取った!」と歓声を上げていた。グリフィンドールが明るい雰囲気の寮でよかった。あれならきっと、ハリーは多くの人に囲まれて、ちゃんと歩いていけるだろう。
残る組分けは五人。さあ、私の番だ。
「ポッター・レイラ!」
マクゴナガル先生の声が響く。それを皮切りに、ホール内が水を打ったように静まり返る。
コツ。と、ローファーが大理石の床を叩く音が響くほどに静かだ。全生徒、先生がじっとレイラを見つめていた。その視線に全く動じることなく、レイラは背筋をピンと伸ばし、堂々と進む。階段を登りきったところで、帽子が唸った。そしてまだ帽子を被らないうちに––––
「スリザリン!」
ざわりと、全ての人がざわめいた。鉤鼻とねっとりした黒髪が特徴の男性は食い入るようにして、ダンブルドア校長は身を乗り出し、レイラを見つめている。
「どういうこと?」
「なんで……」
そんな声がホールのあちこちから聞こえる。その声をスリザリンの席から上がった歓声が覆う。
ざわざわと喧騒が鳴り止まぬ中、レイラは毅然としていた。静かに帽子に頭を下げると、そのままスリザリン寮のテーブルに腰掛けた。
「……よろしく」
「あ、ああ……」
正面のドラコはたじろいぎながらもそう返した。隣にはダフネという上品な女の子が座っており、まるでレイラを見定めるような表情で見ていた。やがてその相貌を崩すと、ふわりと笑った。
「不躾に見てしまってすみません。ダフネ・グリーングラスです。同じ寮同士、これからよろしくお願いします」
「レイラ・ポッターだよ、よろしくダフネさん」
「さんはつけないでください。同い年の女の子じゃないですか」
「ああ、ごめんね。改めてよろしく、ダフネ」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。レイラ」
レイラはダフネ・グリーングラスという少女の認識を、上品な少女から、上品で多少強引な少女に変えた。しかし、レイラにとっては初めてまともに話せる同年代の女の子となった。ダーズリー家にいた時は、ダドリーに睨まれるからという理由で、レイラとハリーに友達はいなかったのだ。
生徒たちの囁き声が止まない中、組分けはつづがなく進んだ。
「ルーク・アルフレッド!」
アルフレッドはスツールの上で帽子をかぶせられ、じっとしていた。やがて「スリザリン!」と叫んだ。
「やあ、同じになったな」
「帽子に薦められたんだ、ここがいいだろうって」
「帽子が? 生憎わたしは喋るどころか、触れさえしなかったから、少し羨ましいね」
上級生に会釈をし、アルフレッドはレイラの横に腰掛けた。その後「タービン・リサ」がレイブンクローになり、「クラッブ・ヴィンセント」がスリザリンに入った。ドラコとゴイルはこれを歓迎した。
最後に残った「ウィーズリー・ロナウド」は帽子をかぶるや否や「グリフィンドール!」と叫ばれていた。彼が笑顔で席について、ハリーや兄たちから歓迎されていた。
最後に「ザビニ・ブレーズ」がスリザリンに決まり、組分けの儀式は終わった。
アルバス・ダンブルドアが立ち上がり、腕を大きく広げてニッコリ笑った。まるでみんなに会えたのがこの上ない喜びだというように。
「新入生諸君、入学おめでとう! それでは、宴を始めようかの」
そうダンブルドア校長が言った途端、今まで金色の皿とゴブレットしかなかった机の上に、様々な料理を乗せたお皿が一瞬で現れた。ローストビーフ、ローストチキン、ポークチョップ、ラムチョップ、ソーセージ、ベーコン、ステーキ、茹でたポテト、グリルポテト、フレンチフライ、プディング、ケチャップ、数種類の野菜、そしてなぜか、ハッカ入りキャンディ。
ダーズリー家でお腹いっぱいになるまで料理を食べたことがなかったレイラにとって、溢れんばかりの料理を自分の目の前に出されるのは不思議な気分だった。取り敢えず野菜と茹でポテトを少しずつ口にしていたレイラに、背後から声をかける人物がいた。
「少女よ、もう少し肉を食え」
レイラは後ろを振り返ってしばし瞠目した。
全身が銀色で、向こう側が透けて見える。隣のダフネが「ゴーストですよ」と教えてくれた。虚ろな目にげっそりした顔、衣服は銀色の地でべっとりと汚れている。他の生徒から、血みどろ男爵と呼ばれていた。
「お気になさらず。普段あまり油ものを食べなかったので、少しずつ慣らそうかと」
「ふむ……まあ良い。スリザリンは六年連続で寮杯を取ってきた、今年も期待しているぞ」
男爵は気分良さげにそう言うと、他のスリザリン生の方へと向かっていった。
食事がデザートに変わる頃、マルフォイが得意げに話を振ってきた。
「レイラ。魔法族には家柄というものがあってね、これには良い家と悪い家がある。良ければそれを––––」
「あら、それなら私が教えて差し上げますわ」
「グリーングラス、君は何を考えているんだい?」
「なにって、女同士の方が話しやすいのではなくて?」
レイラを巻き込む形で、ドラコとダフネの間にバチバチと火花が散っているように見える。結果としてドラコが丸め込まれ、時間があるときにダフネが魔法族というものについて教えることになった。ダフネはニッコリと微笑んだ。
「あなた方はマグルの元で暮らしていたと聞いています。分からないことがあれば、遠慮なく聞いてくださいね」
「うん。ありがとうダフネ」
デザートのアップルパイをお腹に詰め込んだところで、レイラはお腹がいっぱいになってきた。ふと、レイラは来賓席の先生方を見上げた。漏れ鍋で会ったクィレル先生が、ねっとりした黒髪、鉤鼻、土気色の顔をした先生と話している。レイラが色濃く覚えている記憶の一つ、母を抱いて泣いていた、あの男の人であった。
その人物と、レイラは目が合った。憂いを帯びて目でレイラを見て、すぐに目を逸らしてしまった。
あの先生は誰なのか。監督生のジェマ・ファーレイに訊ねようとしたレイラだったが、クィレル先生のターバンを巻いた頭を見た時、左目の奥が痛んだ。
「––––ッ!?」
「レイ?」
アルフレッドがどうしたのかと見てくるが、なんでもないと手を振って誤魔化す。痛みはすぐに引いた。
みんながデザートをお腹に収め終えた頃、テーブルの上からデザートが消え、ダンブルドアが立ち上がった。
「みんなよく食べ、飲んだことじゃろう。さて、新学期を迎える前に行くつかお知らせがある。構内にある森には入ってはいかん。また、管理人のフィルチさんから、授業の合間に廊下でいたずら目的の魔法を使わないようにとの注意があります。これが最後になるが、四階にある右側の部屋には入らないように。中には恐ろしい死が待っておる」
最後の忠告に笑う生徒が何名かおり、その中にはハリーの声も混ざっていた。みんな真面目な表情で校長の話を聞いていた。
「寝る時間じゃ、ほれ」
スリザリン生は監督生のジェマ・ファーレイを先頭に、一年生が続いた。
大広間から出る前に、レイラはハリーとほんの僅かに言葉を交わせる機会があった。
「レイラ! スリザリンはダメだよ、そこには『例の」
「ハリー」
時間の無かったレイラは、ハリーの言葉を遮った。そして先ほどまで溜め込んでいたものを、ほんの一瞬だけ吐露した。
「ごめんね、寮……離れちゃった」
ハリーはその言葉に動けなくなり、グリフィンドール生の波に消えてしまった。それを見届けたレイラは、毅然とした態度に戻った。
地下牢にあるという寮に向かう途中ジェマは歩きながら、ものすごい勢いで喋っていた。
「一年生のみんな、スリザリンへの入寮おめでとう! これから寮に向かうわけだけど、きっと気にいると思うわ。詳しくは言わないけど、神秘的な空間よ」
狭い螺旋階段を下へ下へと降りながら、不快にならない声でジェマは続けた。
「スリザリンについての話を聞いたことがある人は多いと思うけど、誤解を解いておくわ。たとえば、全員闇の魔術にのめり込んでいるとか、先祖が有名でなければ除け者にされるなんていうやつね。私から言わせれば、あんなものは他の三寮の言いがかりよ。闇の魔法使いだって、なにもスリザリンからしか出ていないわけじゃないわ。みんなそれに目を向けないのよ」
寮の前に着き、ジェマがゴツゴツした岩の前で合言葉を言った。
すると岩がスッと消えて、石製の扉が現れ、ゆっくりとその扉が開いた。
「さあ、入って」
薄暗い、でも怖い感じはしない広い談話室だった。沢山のソファにテーブル、真ん中には赤々と燃える暖炉が置かれ、窓から見える景色はなんと湖の中だった。
ジェマが杖を一振りすると、パッと部屋が明るさで満ちた。彼女は満足気に頷くと、一年生をぐるりと見回した。
「今日からあなたたちはこのスリザリンの一員よ。困ったことがあれば、上級生に聞いてくれていいわ。……それから、グリフィンドールには気をつけてね。彼らは私たちを目の敵にしてよく突っかかってくるけど、彼らはスリザリンの追いかけをしているだけよ。仲間を大切に思う気持ちは同じかもしれないけど、馴れ合うつもりはないわ。グリフィンドールは私たちをやっつけるのが好きなのだから。ま、私たちの方がその気持ちはすこし高いかもね」
それから一行は、談話室を抜けた奥にある階段の前まで進んだ。
「寮に入るための合言葉は二週間ごとに変わるから、談話室の掲示板で確認を怠らないこと。女子の寝室はこの階段を右に、男子は左に行くとあるわ。荷物は部屋に運ばれているわ、それじゃ、おやすみ」
ジェマが階段を上って消えたあと、後を追いかけようとしたクラッブとゴイルが、間違えて階段を右に進んだ、その途端階段の段差が消え、急な斜面が出来上がった。
二人は訳がわからないと言うような顔で呆然としており、レイラが指摘をした。
「いい? 男子の部屋は左だよ。あっち。フォークを持つ方の手」
「あ、ああ……」
「わかった」
埃を払う二人を、ドラコがため息をついて連れて行く。それに男子が続いていき、次いでパンジーやミリセントも部屋に上がっていった。
残ったのはレイラとアルフレッド、ダフネの三人だった。三人は寝る前に少しだけ話をしようと、暖炉の前のソファに腰を下ろした。
最初にダフネがアルフレッドを見て、話し始めた。
「そういえば、あなたにはまだ挨拶をしていませんでしたね。ダフネ・グリーングラスです」
「……アルフレッド・ルークだ。よろしく」
それから短い時間ではあるが、三人は昔からの友人のように語り合った。レイラは二人に魔法界ではどのような生活を送るものなのか、ドラコの言っていた家柄とはなんなのかを訊ねた。
魔法界には聖二十八族というものがあり、魔法使い同士の結婚で血筋を固めてきた純血と呼ばれる括りがあり、ドラコのマルフォイ家や、ダフネのグリーングラス家もこれに当たるという。
純血の家はそうではない家を非難する傾向が強いらしく、注意が必要だとはアルフレッドの言だ。
夜も更けてきた頃になって、三人の談話は終わりを迎えた。寝室へと向かう階段で、レイラはふと、気になったことを試してみた。
「レイ、なにをしているんだ?」
「……?」
「いや、さっきクラッブとゴイルが階段で滑ったのは、女子部屋に行こうとしてでしょ? その逆はどうかと思って」
そう言いながら男子部屋への階段を恐る恐る登るレイラ。階段は消えることなく、彼女は数段登って降りてきた。
「満足したか?」
「まあね。おやすみアルフレッド」
「ああ、おやすみ」
「おやすみなさい」
レイラはふかふかのベッドの中で考えていた。
ハリーは今、どうしているだろうか。離れてしまったわたしを恨めしく思っているのかな。でも、離れ離れになったとしても……
––––ハリーはわたしが守る。
スリザリンの談話室は湖に面している?ようです。時折窓から巨大イカが見えるそうですよ。
気になるのは、原作の組分けの時に、ダフネやクラッブ、ゴイルの名前が無かったことです。全員分は書くのが大変だったから飛ばしたとか……?