今回は原作でも公式でもあまり言及されていなかった、ホグワーツに掛けられた魔法について、独自の解釈をします。
また、姿くらましについて書きますが、解釈ミス等の指摘があればおっしゃっていただけると私が恥をかく期間が短くなります。(生き恥を晒せというなら……)
夏の暑い時期になるとお腹を壊しやすいのはなんなんでしょうね……。最近は体温以下の飲み物はあまり飲まないようにしてます。
姿現し。という呪文がある。移動系の魔法で、術者のいるの地点から見ると姿を消したように見える。 術者が現れた地点から見て「姿現し」と呼ぶこともある瞬間移動の魔法である。
この術を使えば任意の場所に移動できるが、遠くなればなるほど術の難易度は上がり、危険度も増してくる。術に失敗することを「ばらける」と言い、術の始点に体の一部を置いてきてしまうことを指す。
その危険さから、ホグワーツで姿現しを学ぶのは六年生になってから、魔法省の役人を特別講師として呼んで講習を行う。授業を受け終えても終わりではなく、講習を終えたものだけが受けられる魔法省でのテストに合格しなければならない。
呪文には反対呪文が編み出されるものがあり、姿現し・姿くらましには防止呪文が存在する。防止呪文が掛けられた場所では、姿現しも姿くらましもできないのである。しかし普通の魔法使いが掛ける防止呪文の範囲はあまり広くない。
そして、ホグワーツでは姿現しも、姿くらましもできない。防止呪文が掛けられているのは明白だが、その範囲は城内どころか、敷地内全域に及んでいる。ホグワーツ創始者の一人、または四人全員が掛けたとされる守りの魔法は強固であり、歴代校長でも一部をいじくるのがやっとだとされる。
侵入不可能、最も安全とされるホグワーツであるが、ごく一部のものはいともたやすくホグワーツから姿を消すことができ、また、姿を現すことができる。
ホグズミード村へと向かったハリーを探すために、アルフレッドは叫びの屋敷に来ていた。傍らには赤い髪の少女ではなく、大きな赤い翼を広げた不死鳥が右肩に留まっていた。
村はずれの小高い場所に建っている叫びの屋敷。窓には板が打ち付けられ、庭には草が生い茂り、昼日中でも薄気味悪い。ホグズミードの話をする生徒の中で、叫びの屋敷を話題に上げない者はそういないだろう。というのも、ここはイギリスで一番怖い、呪われた幽霊屋敷だといわれているからだ。なんでも、夜中になるとこの屋敷の中から恐ろしい声が響いてくるのだという。しかもこの屋敷に玄関はあるものの、塞がれており中に入ることはできないので、内部に人が入れるはずがないのである。だからこそレイラとアルフレッドはこの場所を選んだのだが。
雑然とした部屋の中を見回すアルフレッド。床は染みだらけで、家具という家具はすべて破損している。耳を澄ましてみるが、誰かがいるような音は聞こえてこなかった。
「よし、いいぞ」
肩に留まっている不死鳥にそう声を掛ければ、不死鳥はアルフレッドの肩から飛び立ち、彼の前方でその姿を変えた。
「へぇ、これがイギリス一怖い幽霊屋敷か」
「ただの家だな」
「そんなはっきりと……」
「いや、何かしらの悪霊が取り憑いていたりだとか、そういうことはなさそうだからな」
辺りをぐるりと見まわしたアルフレッドは、部屋のドアを開けた。
「ん?」
部屋の外を確認したアルフレッドが、何かを見つけたらしい。どうしたのかと、彼の背後からレイラが外を覗いてみる。最初は何もないと思ったが、視界の下に茶色の猫がいた。マグルの世界ではあまり見かけないその猫は、ハーマイオニーの飼い猫であるクルックシャンクスだった。
ドアを塞ぐような体勢だったアルフレッドの脇からするりと部屋の外に出たレイラは、クルックシャンクスを撫でる。
「よーしよし。あー……、猫っていいな、癒される」
「そいつ、たぶんニーズルの血が混じってるぞ」
「おお。じゃあお前は賢いんだな、うりうり」
「…………」
数秒撫でられていたクルックシャンクスは満足したのか、静かに歩き去ってしまう。残念がるレイラの前で、歩いていたクルックシャンクスは立ち止まり、レイラとアルフレッドをじっと見つめる。
「ついて来いって、ことか?」
「ん、もしかしたら上にハリーがいるのかもしれないな」
念のためにと、二人とも杖を抜き、クルックシャンクスの後に続いて階段を上る。屋敷の内部はどこもかしこも埃だらけだと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。上っている階段にも埃はあったが、誰かが最近ここを通ったようだ。クルックシャンクスは素早く階段を登り切り、開いていた扉から部屋の中に入ってしまった。
レイラとアルフレッドはお互いに目配せをすると、杖を構えて部屋の中へと踏み込んだ、
部屋の中には立派な天蓋付きベッドがあり、クルックシャンクスが寝そべっていた。そしてその横には、囚人服に身を包んだシリウス・ブラックが座っていた。
突然の訪問者に驚いている様子のブラックに対して、アルフレッドがレイラを隠すように前に出た。
「まさか、ホグワーツの目と鼻の先に潜伏しているとはな。ダンブルドアも驚くだろう」
杖をブラックに向け、不審な動きは許さないといった姿勢のアルフレッド。ブラックが無実であるという認識の二人ではあるが、それはあくまでも二人の間でだけ。加えて、情報源は妖精王からとなれば、安易に口に出すことはできない。ブラック自身はレイラとアルフレッドが自分が無実だと考えているとは微塵も思っておらず、どのように場を切り抜けるかと考えを巡らせていた。
レイラはこの時、前方を遮る形で立つアルフレッドが、何かを恐れているように思えた。
「……あんたは本当に、罪を犯したのか?」
発せられた声音がわずかに震えていたのを、レイラは聞き逃さなかった。いったい何があるというのだろう。アルフレッドが恐れる物とは何だ。
「罪……か」
掠れた声だった。まるで何年も口を開いていないかのように、ぎこちない声だった。
「否定はしない。…………後ろにも誰かいるな」
ブラックは静かに言った。それを聞いたアルフレッドが身を強張らせる。半歩、レイラの方へと下がり、アルフレッドの右腕が、レイラの右腕に触れた。押さえつけるように力みかけた腕をゆらりとすり抜け、ブラックの前へと進み出る。
「やけに含みのある言い方……ですね?」
「おい……」
小首を傾げたレイラを見て、ブラックの目の色が変わった。今まで暗く淀んでいた目は、驚愕に見開かれている。緩慢な動きでベッドから腰を上げると、ゆっくりとレイラに近づいた。
「こうして君をしっかりと見るのは、あの晩以来だ」
「あなたと会うのはわたしが生まれたての時以来のはずですが?」
いやいやと、ブラックは首を横に振る。レイラが疑問に思う中で、ブラックの姿が変容した。
「――!?」
二人は全くの同時に驚いた。そこにいたのはくたびれた囚人服に身を包んだシリウス・ブラックではない。死神犬にも見まごう、大きな黒犬だった。
そして二人が見つめる中で、黒犬がシリウス・ブラックになった。驚きが隠せない二人の表情を見て、ブラックは得意げににやりと笑ってみせた。
「この通り、私は犬に変身ができるんだ。北に向かう前に、君たちの姿が見たくてね、この姿で現れたというわけさ」
「それで……あなたの犯した罪とは?」
そうレイラが問えば、ブラックの顔から笑みが消えた。それと同時に、アルフレッドにも再びの緊張が走る。
「君の両親が亡くなったのは、私が原因だ。私が二人を、殺してしまった……」
ひどく疲れ切った声音だった。その声には、後悔や遣る瀬無さと言ったものが感じ取れた。レイラとアルフレッドは、ブラック自身の口から、彼が無実であるとの言葉を引き出さねばならなかった。誰にも妖精王から話を聞いていることを教えてはならない。常若の国の存在を秘し、あたかも自分たちがブラックの話に納得した風を装う必要があった。
だからこそレイラは、ブラックの口から真相を聞き出すために、杖を握る右腕を上げた。
「聞いています。あなたは、ホグワーツでの親友であった父と、母をヴォルデモートに売ったのでしょう?」
「ち――」
口を開こうとするブラックを、レイラは杖を突きつけて黙らせる。
「嘘をつけば分かりますから……その場合、即座に舌を切り落としますね」
にっこりと微笑んでから、レイラは杖を下げた。ブラックは脱力し、クルックシャンクスが寝転がるベッドへと腰を下ろした。そしてとつとつと話しだした。
「闇の帝王が猛威を振るっていた時代、ある予言がなされた。その予言によれば、闇の帝王を打ち倒すものが七月の末に生まれるという。君のお母さんのリリーはちょうど身ごもっていてね、お父さんと二人で、闇の勢力に狙われることになった」
予言については、ダンブルドアからすべてを聞かされている。しかしそれが原因で両親が狙われることになったとは、レイラは考えが及んでいなかった。
「ダンブルドアの勧めで、二人は忠誠の術で身を隠すことにした。一人の生きた人間の中に秘密を封じ込め、秘密の守り人とする。私は、ジェームズとリリーが、ゴドリックの谷にある家に隠れているという秘密を封じ込んだ。私が秘密を洩らさない限り、家の窓から中をのぞいたって、二人がそこにいることは分からないはずだった」
「はずだった?」
レイラが思わず聞き返す。つまりブラックにとって予期せぬことが、その時起こったということだろう。
ブラックはゆっくりと頷き、レイラをチラリと見た。何かを考えている様子だった。
「二人の親友だった私が何か情報を持っていると考えた
涙声になり、ブラックは背を向けた。レイラは背後で心配そうに見つめるアルフレッドを見て、大丈夫だと頷いて見せる。それでようやく肩の荷が下りたのか、アルフレッドから緊張が抜けたことが分かった。
「つまり、ペティグリューが真犯人で、あなたは無実であると?」
「ああ……しかし私のせいで君のご両親が亡くなったのは事実だ。レイラ、私が殺したも同然なんだ」
嗚咽を隠し切れないブラックに、レイラはハンカチを差し出した。遠慮するブラックに無理矢理押し付け、レイラは杖を振るって埃だらけの周囲を綺麗にした。
「ペティグリューの居場所は?」
その言葉を聞いて、ブラックはぴくりと眉を動かしたが、幸いにも背を向けていたために悟られなかった。
「…………まだ、つかめていないんだ。ここに来たのも、君とハリーの様子を見てみたくなって寄っただけだからね」
「そうですか。……居場所が分かったら、必ず教えてください」
レイラは「必ず」の部分を強調しながら告げた。ブラックは二、三度首を縦に振った。そのタイミングで、ブラックの腹がぐうと鳴った。
「ほう! ではハリーは地図を使って城を抜け出したんだな! そうかそうか……ジェームズはきっと、自分の子どもが地図を使ってるなんて聞いたら大喜びだぞ!」
猫を膝に乗せ、クッキーを頬張りながら大笑する男性。囚人服を着ていなければ、気さくな三十代のハンサム。しかもこれが大量殺人を犯した大罪人としてアズカバンに入れられるほどの人物などと、いったい誰が思うだろうか。
今まで碌な食事を摂っていなかったシリウス――レイラがブラックさんと呼んだら嫌がられた――に、レイラがハンドバックに常備していたクッキーを渡したのだった。ブラックは二人が、ホグワーツを抜け出してホグズミードに向かったハリーを探しに来たことを話せば、目の色を輝かせてその話に食いついていた。
渡したクッキーを食べ終える間に、シリウスは様々なことを話してくれた。学生時代のレイラの両親の事、父ジェームズとは親友だったことから、シリウスの口からは父親と起こした数々のいたずら話が出てきた。父の他にも親友と呼べる人が二人おり、四人で忍びの地図という、今まさにハリーが持っている特殊な地図を作ったらしい。シリウスが黒犬の動物もどきになれたように、父であるジェームズは牡鹿の動物もどきになれたという話は、レイラを大いに喜ばせた。彼女の守護霊が、牡鹿だからというのが理由の一つだった。
「ホムンクルスの呪文が役に立つとわかった時は、みんなで喜んだものさ。あれのおかげで、地図は完成に近づいたんだ」
当時を思い起こしているのか、シリウスはどこか遠いところを見つめるようにしていた。
時計を確認したアルフレッドが、レイラにそろそろハリーを探さなければならない旨を伝える。それを聞いたシリウスはというと、寂しがるそぶりは見せず、まるで父親が子を送り出すかのようににこやかだった。
「もしまたここに来るなら、暴れ柳の下を調べてみるといい。ホグズミードから来るよりも、ずっと安全で早い」
「……? 分かりました。お話を聞かせてくれてありがとうございました。それではまた」
気さくに手を振って見送るシリウスに頭を下げ、二人は隠されていた出口から叫びの屋敷の外へと出て行った。
辺りは一面の銀世界となっていた。
ホグズミードに向けて木々の間を二人が歩いていると、一本の木の根元に誰かが腰を下ろしていた。全身が防寒具に包まれているのでわかりにくいが、その顔を見てレイラはすぐにそれがドラコだとわかった。
ドラコのほうも、近づいてくるレイラとアルフレッドに気が付いたようだった。彼は二人を手招きしながら、もう片方の手で「静かに」というジェスチャーをしていた。
近づいてみれば、なぜかドラコは全身雪まみれになっており、とても雪の中を歩いていただけのようには見えなかった。二人はドラコと同じように木の陰に身を伏せる。
「見てみろ、あそこだ」
指で指し示された方向を見れば、そこにはロンとハーマイオニーの二人が歩いていた。
「ロンとハーマイオニーだね。二人がどうかしたのかい?」
「あの二人の間を見ろ、誰もいないはずなのに、勝手に雪の上に足跡ができているんだ」
目を凝らして見れば、確かにその通りだった。ロンとハーマイオニーの二人が通ってきたであろう道を見れば、三人分の足跡がある。レイラはそれがすぐに、透明マントを被ったハリーだと見抜いた。
ハリーが無事にホグズミード村を楽しむことができれば問題のないレイラは、特に干渉することもなく、三人を見守ることに決めた。
「よし、三人に着いていこうか!」
なぜかそれを聞いたドラコがため息をつき、アルフレッドがドラコに向けて首を横に振っていた。
叫びの屋敷はホグワーツの敷地外だと思っているのですが、原作でハリー達は構わずに魔法を使っていますし、魔法不正使用には該当しないのでしょう。なのでレイラさんたちも魔法を使っていいはずですね。