本日は全国的に晴れて、気温の変化に身体が付いていけません。皆さま、熱中症に気を付けてください。
時刻は深夜。すでにホグワーツの生徒たちは夕食を済ませ、ベッドに入って寝静まっていることだろう。
他の生徒たち同様、レイラも寝ようかと思っていたところで、ふと思い至ったことがあったのだ。
果たしてシリウスは、食事をちゃんと摂っているのだろうか、と。
こっそりとベッドを抜け出したレイラが寝室から出ていこうとしたが、上着の裾を誰かに捕まれ、動きを止められた。おっと、ばれたか。
予想外のことではあったが、レイラは服をつかんでいる人物が誰かはすぐにわかっていた。だからこそ慌てることなく、ゆっくりとその人物へと振り返った。
「起こしちゃったかな、ダフネ」
そう声を掛けられたダフネは、ベッドから起き上がり、気遣わしげな目でレイラを見つめる。
「寒いですから、しっかりと暖かい格好をしていってくださいね」
「あはは……ありがとう」
止められるどころか、寮から出るための身支度を手伝われていることに苦笑いしながらも、それがダフネなりの心配の仕方なのだろうとレイラは考えた。実際、ダフネはレイラが校則違反をして寮を抜け出すのを止めることは諦めている。
レイラの細首に、ダフネのスカーフが巻かれていた。
「あまり遅くならないようにしてくださいね」
ベッドに腰かけながら、ダフネが言い聞かせるような声でレイラに告げる。
「うん、なるべく早くに帰るよ」
「はい。お気をつけて」
「うん、おやすみ」
姉がいたら、あんな感じなのだろうか。レイラは暗くなった廊下を、一人で歩いていた。アルフレッドは隣にいない。思い立ったのが深夜ということもあって、すでに寝ているであろう彼には何も告げずに出てきた。
レイラは厨房で働く屋敷しもべ妖精にお願いして、いくつかの食料と水の入った瓶を用意してもらった。物は手に入れたので、あとは叫びの屋敷に向かうだけである。問題はどのように叫びの屋敷に行くかだが、その方法はシリウスが示してくれていた。暴れ柳の根元だ。
近づくものをなんでも攻撃してくる暴れ柳。その危険性から、生徒は誰も近づきたがらない。遠慮なくたたきつけられる太い枝に、進んで押し潰されたい者はいないだろう。しかし暴れ柳の性質を調べれば、容易にその危険域に入ることができる。
誰にも気づかれずに校庭に出たレイラは、暴れ柳に近づいた。そして軽く杖を振って、幹にあるコブを刺激してやる。すると暴れ柳は脱力したように枝をしならせ、動かなくなってしまう。
素早く近づいたレイラは、暴れ柳の根元を調べる。すると一か所だけ、根元に穴が開いていた。人ひとり通れてしまうほどの穴だった。レイラは「ルーモス。光よ」杖先から光を発生させ、暗い道を進んでいった。
しばらくまっすぐの道を進み、やがて段々と急になってきた暗い道を進み、その先にぽっかりと空間があることに気づいた。警戒しつつ穴を抜ければ、そこは雑然とした埃っぽい部屋だった。
「ふうん。なんだってこんなところに繋がっているんだろうな」
レイラはその空間に見覚えがあった。昼頃にも一度来た、叫びの屋敷の内部だった。なぜホグワーツから叫びの屋敷に直通の隠し通路があるのか、レイラには見当がつかなかった。
気にしていても仕方がないので、レイラは用事を済ませるべくシリウスを探した。果たしてシリウスは最初に会った時と同じ部屋のベッドで、体を丸めて眠っていた。外敵から身を守るような寝姿は、アズカバンの牢獄での癖が抜けきっていないのだろうか。
食料を置いてメモでも残して帰っても良いのだろうが、食事は誰かと一緒にした方が楽しいだろうと考え、レイラはシリウスを起こすことにした。
起こされたシリウスは最初驚きつつも寝ぼけていたようで、レイラのことを彼女の母親であるリリーと間違えていた。苦笑しつつも間違いを正し、レイラは肩から掛けていたハンドバックから、食料と水を取り出した。それを見て眠気が覚めたシリウスは、レイラが食べていいといった後、勢いよくかぶりついていた。
厨房からもらってこれたのはパンとハムくらいだが、しばらく禄な食事を摂っていなかったシリウスは、とてもおいしそうに食べ進めていた。
「いやあ、最近は森の木のみばっかり食べていたから、こうしてまともな食事がとれるとは思ってもみなかった。君には感謝しているよ。しかし、こんな遅くに女の子が一人で寮から抜け出しているのは、あまり感心しないな」
切られていないハムに豪快にかぶりつきながら、心配そうな目でシリウスがレイラを見る。レイラはそんなことはどこ吹く風と聞き流し、シリウスに水をさしだす。
「いつものことなので、平気ですよ」
「……そうかそうか。君はやっぱり、ジェームズの子だな。懐かしいよ、学生時代、友人たちとよく夜中に校内を探検したものさ。……そういえば、ハリーは元気かね? この間のクィディッチの試合で、その」
「あー……」
別に隠すつもりはなかったが、聞かれたのはちょうどいい。せっかくだからシリウスがハリーからどう思われているのかを教えてしまおうか。
こほんと咳ばらいを一つし、レイラは居住まいをただした。語ったのは、ハリーの箒であるニンバスが折れてしまったこと。シリウスが両親の仇だと思って、彼のことを憎んでいることだ。そのほか、ハリーは自分が見た黒い犬を死神犬だと思い、呪われているのではないかと不安になっていることも話した。
「と、いうことがあり、ハリーは今傷心中です」
すべてを聞き終えたシリウスはうなだれ、ショックから言葉も出ないようだった。
それからしばらくして、シリウスは弾かれたように立ち上がった。
「そうだ、今からでもハリーのところに行って、全ての事情を伝えればいい。そうすれば私の事で誤解をすることもないだろう!」
「馬鹿ですかあなたは、証拠もなしにあの子が信じてくれるわけないでしょう」
そのままドアから出て行こうとするシリウスをレイラは「インカーセラス。縛れ」と唱えて拘束する。
「ここでの休息が終わり次第、すぐにペティグリューを捕まえて、ハリーの前ですべてを話せば、あの子もわかってくれるでしょう。だから、なるべく早く、お願いしますね」
もし、ペティグリューが目の前に現れたら、自分はその時どうするのだろう。殺そうとするのだろうか。それとも……。今考えても仕方のないことだ。
縄に縛られたシリウスが、またしても閃いたというような表情になった。
「ハリーに贈り物をするというのはどうだろうか?」
「ああ、それはいいですね」
唐突に出たにしては、なかなかに良い案のように思えた。言葉で励ましたり、慰めたりするのでは、今のハリーには届かないだろう。ハリーの気持ちを変えられるような物といえばなんだろうか。無くなってしまう物よりは、長く使えるものがいいだろう。あの子の好物は糖蜜タルトだけど、それは今じゃないだろうし……。
「私にいい考えがあるんだよレイラ。ハリーはクィディッチのシーカーだろう?」
「はい、父さん譲りで、すっごく上手なんですよ」
「ジェームズも鼻が高いだろうさ。箒が折れてしまったのはショックだったことだろう。だから私は、ハリーに箒を贈ろうと思うんだ」
それはとても良い案に思えた。魔法界に来てクィディッチに引き込まれたハリーにとって、箒に乗って空を飛ぶことは何より楽しいことだろう。
ということで、シリウスからハリーに箒が送られることになった。レイラの中で生まれた問題は、どの箒を買うかだったのだが、シリウスは後見人としてハリーに何かできる事が嬉しいのか、にこにこ顔で朗らかに言った。
「ファイアボルトを買おうかと思うんだ」
「……失礼ですが、値段をご存じで? 五百ガリオンですよ、五百」
「もちろんだとも。それに、君がそんなことを気にすることは無い。今まで君とハリーには何一つとしてしてやれなかったのだから、こうして何かできるだけで、私には幸せだよ」
「シリウス……」
目を細めて笑うその笑顔が、シリウスの気持ちを雄弁に語っていた。その思いに胸が熱くなるのを感じながら、レイラは努めて冷静さを保った。これはハリーを元気付けるためなのだから、手抜かりはないようにしたい。その後はどのように箒を買うのかや、メッセージを付けても良いかなどを話しあった。
間もなく日付も変わろうかという時間になって、サプライズプレゼントの計画が整った。
「では、必要なものは明日の昼までには、フクロウに届けさせますね」
「今から緊張してしまうな。ハリーは喜んでくれるだろうか」
「もちろん。すべてを知った後ならなおさら、喜んでくれますよ」
レイラがスリザリン寮に戻った頃には、とっくに日付が変わっており、レイラは静かに自らのベッドに潜り込んだ。ハリーが箒を受け取った時に笑顔を浮かべることを想像しながら、レイラは眠りについたのだった。
私、ドルフロを海外版のころからプレイしていて、推しはカルカノM1891なのです。しかし回せど回せど、カルカノは来てくれません。リー・エンフィールドだったり、ワルサーだったり、モーゼルは出るのに……。
ガチャは悪い文明。