たとえ住む世界が違っても、俺達は奉仕部だ   作:皐月 遊

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2話 「再開」

千葉から電車で東京まで来たが、やはり東京は人が多い。 今はもう夜の6時過ぎだというのに、東京駅の周りには人混みが出来ていた。

 

「……あんていくはどこだ」

 

あんていくが20区内にあるのは知っている。 だが、20区のどこにあるのかは分からない。 流石にこの東京をしらみつぶしに探すのは無理だ。

…つまり……

 

「…人に聞くしかない…よなぁ…」

 

人に道を尋ねる。 これは余程のコミュ力がなければ出来ない技だ。

俺は、とりあえず駅員に20区の行き方を教えてもらい、なんとか20区に着くことに成功した。

 

「今は7時過ぎ…か。 結構暗いな」

 

東京とはいえ、夜は暗い。 しかも俺は東京で寝る場所を確保していない。

まぁ寝る場所なんてネカフェでいいけどな。

 

「あんていく…あんていく…」

 

周りを見渡しながら歩くが、当然見つからない。 東京駅で駅員に聞いたところ、20区への行き方は教えられるが、あんていくという喫茶店はしらない。 と言われた。 確かにそうだ。

逆に駅員が東京のすべての店を把握してたら怖い。

 

考えながら歩いていたからか、知らないうちに人気のない場所に来ていた。

東京で迷子なんて洒落にならんぞ…

 

「えーと…地図は…」

 

だが俺にはスマホがある。 スマホの地図があれば迷う事はない。 …多分。

そうして、スマホに夢中になっていると、頭上から声をかけられた。

 

「こんな場所に1人で来るなんて、自殺願望でもあるのかしら?」

 

「可哀想だけど、運が悪かったね」

 

その2つの声が聞こえた瞬間、俺は即座に反応した。

”似ている”。 あの2人の声に…

 

辺りを見渡すと、見つけた。 声の主は、高い壁の上に立っていた。 まっすぐ俺を見つめている。

2人とも仮面をしているので、顔は見えない。

 

黒猫の仮面と犬の仮面だ。

 

「あら、死んだ魚のような眼をしてるわね。 ……喰べても美味しくなさそう」

 

「ダメだよゆき…黒猫。 好き嫌いせずにちゃんと喰べないと!」

 

そう言って仮面の2人は壁から降り、俺の前に着地する。

やはり似ている。 声も、やり取りも、背丈も、……胸も。

 

これだけ似ている奴はそうそういない。 …試してみるか。

 

「あ、パンさんだ」

 

「えっ、どこ?」

 

……俺の指差した方向をジッと見つめる黒猫の仮面。

ふむ…これで黒猫の方はほぼ確定か。 次は犬の方だ。

 

俺は犬の仮面をジッと見つめ…

 

「お前…ビッチっぽいな」

 

「なっ…! ビッチいうなし! 私はまだ…! 」

 

はい。 これで犬の方もほぼ確定。 んじゃ、王手だ。

 

「やっはろー」

 

「やっはろー! って、えぇ!?」

 

犬の方がノリノリで挨拶したあとにびっくりする。 そりゃびっくりするよな。 見ず知らずの相手がこんな挨拶を知ってるわけがないもんな。

 

…こんな早く会えるとは思ってなかった。

 

「…あなた、一体何者?」

 

「私達の事を知ってるの?」

 

「あぁ。 知ってるさ。 雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣」

 

俺がその言葉を口にした瞬間。 俺の右足に痛みが走った。

 

「ぐっ…!?」

 

右足を見ると、刃物のようなものが刺さっていた。 その刃物は、まっすぐ黒猫の肩に続いていた。

 

……確か…赫子だったか…?

それよりも…ヤバイ…出血が止まらない…!

 

「何故あなたが私達の名前を知ってるのか分からないけれど、生かしてはおけないわ」

 

「ま、待ってくれ雪ノ下…! 俺は…!」

 

「黙りなさい。 今楽に殺してあげ…!?」

 

「うおおおおっっ!!」

 

黒猫が赫子を俺に突き刺そうとした瞬間、急に現れたガタイのいい男が振り回した武器によって、黒猫は遠くへ飛んで行った。

 

「君、大丈夫ですか!?」

 

そう言ってきたのは、コートを着た黒髪の男だ。 …この人も漫画で見た事がある。 名前は確か…亜門鋼太郎。

 

亜門は、丸太のような武器を構え、黒猫達を睨む。

 

「Sレート喰種。 ”黒猫”と”白犬”だな。 貴様らと会うのは2度目か」

 

「あら、白鳩とは沢山会ったから、いちいち顔なんて覚えてないわ」

 

「ふっ、そうか。 貴様らは喰種、俺は喰種捜査官。 貴様らを駆逐させてもらう!!」

 

「やれるものなら、やってみなさい!」

 

亜門の武器…確か、クインケか。 クインケと、黒猫の剣のような赫子がぶつかり合う。

両者とも実力は互角らしく、一歩も動かない。

 

そこに、尻尾のような物を腰から生やした白犬が、黒猫の後ろから現れた。

 

「くっ…!」

 

白犬は尻尾のような赫子で亜門を刺そうとしたが、亜門は後ろに飛んで回避した。

 

俺はただ、唖然としていた。 目の前でこんな光景を見せられたんだ、当たり前か。

昨日まで同じ部室で、一緒に話していた雪ノ下と由比ヶ浜が、今目の前で戦っている。

 

こんな光景を、俺は信じる事が出来なかった。

 

「あら、今のよく避けたわね」

 

「…ねぇ黒猫、もうすぐ時間だよ」

 

「そう…でも、あの眼の腐った男は殺さないと」

 

「うん、そうだね」

 

2人の喰種の視線が、俺に向いた。 …なるほど、俺はあいつらの名前を知っている。 それを捜査官に知られるとまずいから、俺を殺したいわけか。

………あれ? やばくね?

 

そんな事を考えてると、目の前に黒猫が現れた。

 

「死になさいっ!!」

 

「うおおっ!?」

 

黒猫が剣の赫子を薙ぎ払うが、俺は運が良かったらしく、尻餅をついて回避した。

だが、もう黒猫は俺を突き刺す動作をしている。

 

…流石に避けられない。

 

「させるかあああっ!!」

 

目の前の黒猫が消え、代わりに亜門が現れた。

どうやら亜門が黒猫を突き飛ばしたらしい。

 

「…邪魔ね…!」

 

どうやら亜門はかなり強いらしい。 俺という足手まといを庇いながら雪ノ下達と互角に戦っている。

 

そして、黒猫と白犬が飛び上がり、電柱のうえに乗った。

 

「…もう、時間ね…」

 

「うん…あの人を殺せなかったのは辛いけど、もう行かなきゃ」

 

「えぇ…そうね」

 

そう言って、2人は暗闇に消えていった。 そのあと、俺は亜門の手を借りて立ち上がった。

 

「良かった。 俺が帰宅途中に気づかなければ、君は死んでいました。 これからは、こんな時間に人気のない場所には立ち入らないようにして下さい」

 

「…はい」

 

その後、亜門と共に人が多い場所へ行き、亜門とは別れた。

俺はその日、ネットカフェで一夜を明かした。

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