戦姫絶唱シンフォギア -聖遺物に取り憑かれた太陽-   作:ぬヰ

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この話は6話となっています


太陽を守る為の力

「切ちゃん、大丈夫!?」

 

礼との訓練を終えた調は切歌が目覚めたと耳にし、急いでメディカルルームへ足を踏み入れた。

ベッドの上には切歌の姿が合ったが、どうやらまた寝てしまったようで、エルフナインがシーっと口に人差し指を当ててジェスチャーを送る。

 

「ふぇー、もう食べられないデース………」

 

寝言を言っている切歌を見て調はホッとした。

エルフナインから聞いたところ目を覚ましたが、お粥を食べたらまた寝てしまったらしい。

 

「切ちゃん、絶対に私が守ってあげるから……」

 

調は聞こえもしない切歌に向かってそう言うと、メディカルルームから去っていった。

 

「調さん……」

 

エルフナインは調を見て少し心配しながらも仕事に戻った。

 

 

「デスガールはどうだった?」

 

メディカルルームから出ると外には礼が腕を組んで壁に寄りかかっていた。

 

「ご飯を食べてゆっくり寝てたよ」

 

「そか、それは良かった…」

 

礼が微笑むと調にもう一頑張りだと言い、トレーニングルームへ向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

トレーニングルームに着くとクリスと弦十郎の姿があった。

 

「あれ、ゆきねぇにおっちゃん、なんか用か?」

 

礼はさっきあった事なんて気にしないぐらい明るい雰囲気で2人に話しかける。

 

「ちっとばっかし気になってな、あとお前にシンフォギアを見せておかねぇとなんか気がすまねぇ」

 

クリスがそういいペンダントを手に持つ。

 

「俺はそのついでだ。要望があるなら答えてやろう」

 

と言いつつも弦十郎は体を動かしていた。

 

「ほぉー、それは有難いな。調たんの特訓にもなる」

 

そして、クリスはイチイバルの詠唱を唱え、シンフォギアを纏った。

 

「これがシンフォギアだ」

 

「へぇー、武装するって感じかー」

 

礼が変身したクリスを感心しているとクリスはいきなり礼に向かって攻撃を仕掛けた。

それは矢の様なもので礼は一瞬の判断でその矢を手で食い止めた。

 

「おぉぉーおっかないおっかない…」

 

「やっぱり普通じゃねぇな…」

 

「あッ!そうだ!調たんとゆきねぇちょっと戦ってみてくれよ!」

 

礼はいきなりそう提案する。

両者とも別にいいけどと言う返答が帰ってきたため礼は内容を詳しく説明する。

 

「ゆきねぇはそのシンフォギアを纏った状態でいいだろ、だが調たんはシンフォギアを纏うのは禁止だ」

 

「はぁ!?お前何言ってんだ!?いくら特訓だからって鬼畜にも程があるぞ!?」

 

クリスは礼の馬鹿な提案に半ギレした。

しかし、調はやると言ったためクリスはその怒りを抑えた。

 

「け、怪我しても知らねぇぞ?」

 

「それはここのシステム使えば何とかなるだろ、なぁ?おっちゃん」

 

「あぁ、それは問題ないが……お前が思っている以上にシンフォギアは性能が良い、生身の人間とぶつかればすごく危険だ」

 

「んなこと分かってるわ、調たんなら大丈夫だから言ってるんだよ」

 

クリスと弦十郎は礼のぶっ飛んだ考えが理解出来ないままその提案に乗った。

 

そして、クリスと調が向かい合う。

 

「クリス先輩、手加減しなくていいですからね」

 

「んな事言われてもなぁ……」

 

「手加減したら……怒りますよ…?」

 

調が久しぶりにクリスに鋭い目線を飛ばしたのがクリスに伝わり、クリスはどうにでもなれと自分に言い聞かせて、全力でやる事にした。

 

「調たーん、さっき教えた通りに、何事にも焦らないで落ち着いてやるんだ」

 

礼がそう呼びかけると調はコクリと頷き、体勢を低くする。

 

そして弦十郎の口から始めッ!!と合図が下ると先行でクリスが弓を射る。

 

調はさっき礼がやって見せた光の塊を想像した。

 

(礼はあの時右手を前に出して、まるで盾みたいに私の攻撃を防いだ……つまり、掌を盾と見れば…出来るかもしれない……)

 

調は掌にオーラを溜めるようにして、攻撃を受け止めるという目的を決めた。

調が目を開くとその目は礼とやり合った時と同じように何かに取り憑かれたような眼差しで、右手を前に出した。

すると、礼のように光の塊が盾のように展開され、クリスが放った矢を弾き飛ばした。

 

「紫の光……か……あれが調たんのオーラの色彩…」

 

礼は初めて調のオーラをまともに見て、素直に驚いていた。

礼は過去にこの戦い方を何人かに教えて来たが、教えて来た人皆が色を想像しろというと礼のオーラの色の黄色を思い浮かべ、想像が豊かではなかった。

しかし、調はその黄色に囚われずに紫という自分自身の色を具現化させた。

 

「しかも、あれは俺がさっき調の攻撃を受け止める時にやったもの……いや、すげぇな……」

 

遠くから見物していた礼は思っていた以上に調に素質がある事に気付いた。

 

「嘘だろ……ッ?お前、今何を……」

 

クリスは到底今の出来事を理解出来ずに混乱していた。

 

「ここら辺で締めかな…」

 

礼は調の体力が限界だと悟り、立ち上がる……が、調はさっきみたいに息を切らしていなく、しっかりと軸が安定していた。

それを見た礼はもう少し見てる事にした。

 

「こ、これならどうだッ!!」

 

クリスは手加減無しに巨大ミサイルを2つ調に飛ばした。

 

「待てッ!それは流石に危険すぎるッ!!」

 

弦十郎が叫んで止めようとするがその2つのミサイルは既に調に向かって発射されていた。

発射した後にクリスは調が生身だという事に再度気付き、やべッ!と声に出す。

だが、調は逃げようともせず目を瞑っていた。

 

(流石にこれは受け止める事が出来ないかもしれない……なら…ッ!)

 

調は両手の指先に光を集め、この弾を防ぐのではなく跳ね返す事を目的に決める。

そして、調は目を開き両手を前に出し、その2つのミサイルを食い止める。

調の身体はズズズッと後ろへ押されるが調は両手をくるりと時計回りに拗じると、調の前にある光の塊はまるで鏡のように反射し、クリスのミサイルを跳ね返した。

その弾は右へ飛んで行き、誰もいないところで爆発した。

 

「はぁ……はぁ……出来たッ!」

 

「調たぁぁん!調たんすげぇな!!正直あの攻撃はどうする事も出来ないって俺諦めてたんだけど、調たん良く挫けなかったな!!すげぇよ!!」

 

礼は華麗な調の戦い方にテンションが上がりまくっていた。

 

「冗談じゃねぇ……アレまでも防がれるのかよ……」

 

「調君、アイツに何を教わったんだ……」

 

クリスと弦十郎は調の圧倒的な強さに驚き以上に恐怖を抱いた。

 

「クリス先輩!ありがとうございました!」

 

調は達成感に満ち溢れ、クリスに笑顔で挨拶をした。

 

「いやいやまてまて、どーなってやがる!」

 

変身を解いたクリスは礼に調に何をしたか強引に聞き出そうとした。

 

「どーもなにも、調たんに戦い方を教えただけだ。デスガールを守るために必要不可欠な事を教えたんだ、でも上出来過ぎる、流石に俺も驚いた」

 

クリスは到底理解出来ずにまた怒りが込み上げてきた。

弦十郎はこの状況を冷静に考えるが結論には至らなかった。

 

その途端、調がフラッと倒れる。

 

「おぉっと、大丈夫か?調たん」

 

「少し、疲れた……」

 

礼はお疲れさんと言い、調を抱えてメディカルルームへ連れて行った。

それにクリスも同行した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

ベッドに寝かせた礼はベッドの横の椅子に座るとクリスから質問の嵐を受けた。

 

「あの力はどういう原理だ?」

 

「あれは自分の体力を力に一瞬にして大きな力を使うことが出来る戦い方だ」

 

クリスの返事を待たずに礼は話を進める。

 

「お前さんは見た限り体力が無いらしいからな、かなり難しい……と言いたいところだが、調たんも思ってるよりも体力が多い方ではない。ゆきねぇにも可能性はあるが、素質はないだろうな」

 

「何故そんなことが分かる」

 

「オーラだよ、調たんは微かにオーラに素質があった。ゆきねぇはシンフォギアを纏うとオーラが出始めるんだが、普通の状態だと皆無だ」

 

「な……ッ」

 

「もしかしたらデスガールを守りたいと言う思いが力の源になったのかもな」

 

「調…切歌を守りたいっていつも以上に言ってたな、そう言えば…」

 

「お前さんは調たんの手助けをしてやってくれ、ゆきねぇがその点では最強だからな」

 

「お前……やっぱり何者なんだ……」

 

 

 

「利奈坂 礼。ただの高校生だ」

 

 

 




ご覧頂きありがとうございます!
今回はクリスと調の手合わせ回でした!
全力でやったクリスを圧倒的に上回った調はこれからもどんどん強くなっていきます。
そして、珍しく切ちゃんのセリフが無い!!
と思ったら寝言でセリフ言ってました……w

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