2004/11/25時点でのカードプールを元に構築したデッキによるミラーマッチ。
デッキに投入されたカードには相手のカードに対する最適解があるので、リスク管理能力などが重要視される。
新エキスパートルールを採用しているので、マスタールール4と違って優先権を行使してモンスターの起動効果を発動する事ができる。
「ねぇ遊司、今日は04環境で遊ぼうよ」
「いいよ。そっか、こないだ必死にストレージで禁止カード漁ってたのはそういう」
俺こと『氷室遊司』と、目の前の少女『赤羽遊奈』はカードゲーム同好会のメンバーである。
普段はもうちょっと人がいるこの同好会は、今日は皆の都合が悪く2人しかいない。
ちょっといい雰囲気になる、という気配は全くなくいつも通りデュエルをする事になる。
とはいえ今回はちょっと昔のルールとカードで遊ぶという特殊な物なので、遊奈にデッキを貸してもらう。
04環境の遊び方自体は聞いた事があるものの、実際のカードプールに触れるのは未知なので思わずワクワクしてしまう。
「うわ、《サイコ・ショッカー》とか《
《
「そうなんだ。
私が始めた時はもう
私が知ってる《
「まあこの状態だと結構な問題児だからなぁ、
一通りデッキに目を通して構築を覚えたので、早速デュエルの準備をし始めた。
机2つを合わせ、その上にプレイマット敷いてデュエルフィールドを構築する。
俺のプレイマットは《ブラック・マジシャン・ガール》の同人イラスト、遊奈のプレイマットは四天の龍が映った
学校に持ち込むにはお互い際どい一品だが、そんなのはいつもの事なのでお互いに指摘などしない。
お互いにデッキのシャッフルを終えたら後やるべき事は一つだけだ。
どちらが先行かを決定づけるため、お互いに六面
「「ダイスロール!」」
俺のダイスは1。
遊奈のダイスは6。
なんだこの出目格差は。
かくして先行は遊奈のものになった。
「私の先行、ドロー!
カードを3枚伏せてターン終了」
いきなり伏せカード3枚か。
少なくとも攻撃を確実に防ぐ手段があると見て間違いない。
《スケープ・ゴート》なんかがあると《
「俺のターン、ドロー」
初期手札は《
そしてドローカードが《ライトニング・ボルテックス》。
なら初動は決まりだな。
「1000LPを払って《
そら、手札を見せてくれ」
遊司:
「げっ、いきなり
毒づきながら公開した手札にあったのは《
パッと見た危険度では、攻撃力3400で攻撃できる《お
だがそうすると彼女の手札には《
蘇生カードであるそれを使えば捨てさせたはずの《お
となれば《
「《
この【04環境】のデッキには《
攻撃でダメージを与えるだけで相手の手札を破壊するという、凶悪極まりない効果を持ったカードだ。
伏せカードが3枚ある以上、こちらのフィールドにモンスターが残る保証はほぼない。
従って手札破壊のリスクを潰す為、《
「さらに、《
バトルフェイズに入ってそのまま攻撃するよ」
攻撃力300という一見心許ないモンスターだが、このカードも《
ほぼ防がれる事は分かりきっているが、ここで伏せカードを消費させる為にも攻撃が
「甘いよ、《
攻撃してきた《
「じゃあメインフェイズ2で、カードを2枚伏せてターン終了」
「エンドフェイズに《サイクロン》を発動! 左の伏せカードを破壊!」
案の定攻撃は防がれたものの、デッキに2枚ある内1枚の《
がら空きのフィールドを補うために伏せカード2枚を伏せるものの、《
残った《
「私のターン、ドロー!
《お
そのまま直接攻撃!」
「攻撃時に《
《お
「うーん、やっぱり防がれるかー。
このままターン終了で」
《リリー》は迎撃できたものの、《
急場を凌げるカードを引かなければ、このままゴリ押しで負けてしまう。
「俺のターン、ドロー。
……モンスターをセットしてターン終了」
今伏せたモンスターはたった今ドローした《
これで再び《
それに加え、《
布石としてはピッタリの1枚だ。
「私のターン、ドロー!
《光の
「裏守備モンスターは《
そのモンスター効果で《
危ない、ここでセットモンスターが《ファイバーポッド》だったら一方的にイニシアティブを取られていたところだ。
この場で《
「うーん、当てが外れたか。
なら私は通常召喚で手札から《
《カイクウ》で《
遊奈:
遊司:
《
一気に2体のモンスターを対処できるカードは【04環境】では《ライトニング・ボルテックス》ぐらいなので、この苛烈な攻めは最適解といえるだろう。
「ターン終了!
よし、このまま押し切ってやるわ」
「それはどうかな?
俺のターン、ドロー」
彼女に運が無かったとすれば、こちらが対処札である《ライトニング・ボルテックス》を握れていた事、加えて今の攻撃で墓地に光属性と闇属性のモンスターが揃ってしまった事だろう。
おまけに今のドローカードは《
これからするパワーカードの3連打に、彼女は伏せカード1枚では対抗できないだろう。
「《
選ぶのは《
さあ、どれを選ぶ?」
「数ターン凌がれたくないし《
《
「じゃあそれ以外を墓地に置き、選ばれた《
そのまま発動して2枚ドローするよ」
新たに手札に加わったのは《リビングデッドの
都合が良すぎる引きに思わずほくそ笑んでしまう。
ここからは一方的な蹂躙だ。
「《
「ああっ、《カイクウ》と《リリー》がー!」
「さらに《
何もなければそのまま《光の
「ううっ、何もないです」
これで残り1枚の伏せカードが《
ならほぼ安全に、このデッキの切り札召喚は成立するという事だ。
「墓地から光属性の《
「えっちょっ」
「《カオス・ソルジャー ‐
何かありますか」
「……何もナイデス」
あの伏せカードは《
したがって《スケープ・ゴート》、《
《リビングデッドの
「バトルフェイズに入って、《ブレイカー》と《
「ごめんなさい《
《
遊奈:
「メインフェイズ2でカードを1枚伏せ、ターン終了」
読み通り《カオス・ソルジャー ‐
「私のターン、ドロー。
うーん……。ごめん、ちょっと長考するね」
一気にローテンションになった彼女は、ドローカードを見た途端にシンキングタイムに入ってしまった。
ハイテンションな彼女が黙りこくっているためか、数分の長考は10分近いものにも錯覚した。
「《
バトルフェイズに入って《ウィルス》と《ブレイカー》で相打ちするよ」
「何もない。そのまま通すよ」
彼女のその宣言を聞き、なるほどと合点がいった。
《
次ターンまで《
だが、それを実行するには彼女の残り
次の俺のドローカードが《
それを回避するために、伏せカードでの迎撃が来る可能性を承知した上で《
非常に合理的な判断。
だが残念な事に、彼女は運が無さ過ぎた。
「じゃあこのままエンドで」
「エンドフェイズに《リビングデッドの
蘇生対象は当然《
「何だってアンタはそんなに引きいいのよー!」
理不尽に立ちはだかる切り札の再臨によって絶望の雄叫びをあげる遊奈。
「そんじゃ、ドローするよ。
バトルフェイズに入ってそのまま《
そのままターン終了」
「つらい」
遊奈:
モンスターを引ければその時点で勝ててたけど、そんなに運はよくなかったようだ。
まあ《
「除去札来い! 除去札来い! ドロー!
おらっしゃ《
選ぶのは《
さあ、《ならず
「うわ、《リビングデッド》で蘇生しているのが仇になったか。
じゃあ《ならず
「《ならず
そのまま自身をリリースして《
謎のテンションにスイッチが入ってきたのか、ご丁寧に中指まで立てて破壊効果の起動を宣言する遊奈。
残り
「それじゃ、俺のターン。
……このままターンエンドで」
「こりゃ私にも運が巡ってきたかな?
ドロー! ……カードを伏せてエンド」
「俺のターン、ドロー。
……モンスターをセットしてエンド」
俺が召喚できないカードを引いた事で調子に乗りかけていた遊奈も、自分の引きを見てテンションが下がっている。
お互いジリ貧のこの状況、先に有効札を引いた方が優位に立てるのだが、どうにも芳しくない。
「私のターン! 来い来い来い! ドロー!
おお来た! 《
起死回生のモンスターカードを引く事ができ、ハイテンションのまま遊奈は攻撃を宣言する。
「《
墓地から《
「……ターンエンドで」
だが、その勢いは伏せモンスターの起動で一瞬にして潰えた。
それでも
「俺のターン。
《
そして《
「
投げ槍気味に残った伏せカードを表にする遊奈。
《サイコ・ショッカー》と残り
「理不尽だ!
この世は腐ってる!」
「まあまあ、最後の伏せモンスターは《キラー・スネーク》以外だったら詰みだったんだし仕方ないよ。
あれは一種の事故だよ事故。
《ファイバーポッド》での手札交換から虐殺とかいう展開にならなくて良かったじゃないか」
「《
というよりそっちがパワカ連打しすぎ!
運だけ勝負じゃん!」
「確かに遊奈に目立ったプレイングミスはなかったね。
まあそういう事もあるよ」
「ううー、悔しい!
2戦目行くよ2戦目!」
そう宣言するや否や、彼女はデッキのシャッフルに着手する。
遊奈はいつもこうだ。
負けてもその不満は次のデュエルの糧へと昇華させるのだ。
「あ、でも遊奈がさっき先行だったから、今度の先行は俺ね」
「分かってるってー。
むー、先行の優位を活かせなかった自分が憎い」
ぶー垂れながらも互いのデッキをカットする手捌きに淀みはない。
きっとそれは、彼女が純粋にデュエルが好きだからだ。
そして俺も彼女と何気なくデュエルをする毎日が楽しい。
「それじゃ、よろしくお願いします」
先ほどと違い、先行決定のダイスロールはない。
宙を舞うダイスの代わりに彼女の柔らかい挨拶がデュエル開始を告げる。
さて、今回の初手はどんな感じだろうか。
左手の5枚と右手に掴んだ1枚のドローカードを眺め、今後の展望を想起した。
短編なのであと1話投下して完結になります。