星の鼓動は誰がために 作:ジャマイカン・ダンダダン
※誤字を修正しました。報告感謝します
◆ジャミトフ視点
ジャミトフ・ハイマンは忙しい日々を過ごしていた。
自らの願いである地球の再生を行うための、第1段階であるティターンズの設立とその功績による大将への昇進。
それらの予算、人員の確保に自らの派閥の維持、他派閥との折衝に忙しくしている時にとあるティターンズの佐官からの面会の申請があった。
普通なら即却下していたがジャミトフの記憶ではバスクの腹心であり、軍政においてなかなかに有能と漏れ聞いた彼の名は聞き覚えがあった。
ひょっとしたらどこかで見かけたかもしれない。
多少の興味もあり側にいた秘書に面会を許可するように伝え、ジャミトフは溜まっていた書類にサインを書き始めた。
平凡。
面会の申請を受けて執務室へ入ってきた男を一目見てそう思った。
ゴップのモグラのような老獪さもブレックスのマヌケのような温和さの中の激情など特徴的な物も持ち合わせていない佐官。
ティターンズに入る程度の有能さはあっても何かを為すとは思えなかった。
早くも面会を許可した自分を後悔しつつジャミトフがその男に向き合ったときに驚いた。
特に何かが変わった訳ではない。いや、ほんの少し纏う雰囲気が変わったに過ぎない。
「ジャマイカン・ダニンガン少佐であります。この…」
「御託はいい。話はなんだ」
この男は自分の容貌の平凡さで自身の非凡さを隠してるのに違いない。
勘だがなんとなく当たってるように思っえた。
ジャミトフ自身が地球連邦上層部で政争に鎬を削ってきたからこそ気づけた。
このような手合いは敵でも味方でも一番面倒だと経験則で分かっている。
それでも興味が湧いた。
この男がわざわざ自分に面会を申し入れてきたのか。
何をしたいのかだ。
側にいた秘書に退室を命じ、話を聞いてみる。
閣下の目的についてですと話したあとにこう言った。
「小官が思うにティターンズという組織の目的はジオンの残党狩りなどではございません」
「根拠はなんだ?」
ジャミトフの言葉は言外の肯定を意味するものだがそれを当然のようにしてジャマイカンは言葉を放つ。
「連邦軍の指揮系統に含まれない武装集団。極論を言うならば軍隊よりは私兵との表現のほうが適切かと」
「まあ、その通りだな」
「そして小官は、閣下の立場でこの私兵を必要とする理由があるのならばそう多くは思いつきません」
ここからだ。
自分の考えをどこまで読めるのか、ジャミトフはこの男を試す気持ちで話を聞いていた。
「そもそも小官はバスク大佐が指揮官であることに疑問を持っておりました。佐官クラスで他の妥当な人員はいなかったのかと」
「あやつに聞かれようものなら大問題だな」
「率直に言ってバスク大佐はスペースノイドに対して過激すぎる考えを持っております。武力を持ってスペースノイドを弾圧するでしょう」
「それで?」
そこまではバスクという一大佐の人となりを知れば容易に想像できるはずだ。奴は過激という言葉が生温いと感じるほどの排スペースノイド論者だ。
しかし奴は自分の腹心の腹の色を見れるほどに目が磨かれてなかったと見える。
「それに危機感を持った別の派閥。恐らくはブレックスでしょうな。それらが連邦軍やもしかしたらそれ以外から力を借りて、対抗する軍事組織の成立させ、ティターンズに対抗するという形になるかと」
「そこまで読めるなら後の流れはわかるな?」
「ブレックスには政治力が足りていません。そちらから手を回し奴らをジオン残党とでも認定し、武力用いて排除をします。それらを多少長引かせれば口実でもつけてティターンズの権限強化も行えるでしょう」
「
「基本的には奴らは事なかれ主義です。直接的な行動は行わないかと」
「まさにモグラだな。レビルの表現も妥当だろう」
「ブレックスとその周り、それらを叩ければ
ここまで私の計画を読んだ奴はそうはいまい。
だがここからだ。
私の目的を理解し、協力するならばよし。
違うなら敵として扱う。それだけの話をしに来てるのだ。
「ふむ。では私の考えはどこまで読める?」
「私の考えでは閣下はアースノイド至上主義ではないと思っています。むしろそれらを憎んでいる節さえあるかと。今地球の環境について真剣に考える人々は少なくありますまい。」
「私のことがそいつらのように見えたか?」
「いえ。ただ閣下のその理念については理解されず、さも第2のザビ家のような扱いになりましょう。その状況でブレックスらが真面目に対抗する気があるならば、地球圏での武力衝突もありうるかと。今地球圏でそのような戦乱が起きようものなら、無駄な金を垂れ流してる地球の再生計画も頓挫します」
そこまで聞けば大体はわかるだろう。詳細についてジャミトフは言葉を継いだ。
「それを理由に無能どもの尻を叩き地球から追い出す。場合によっては経済的に締め上げ、飢えさせてでもすれば地球に人はいなくなり再生の芽がようやく見えるだろう」
バスクすら未だに今話したティターンズの真の目的は知らない。
これを他者に話したのは初めてになる。
「しかし私にはいくつかの懸念がございます」
「言って見たまえ」
だがこの男は何かが気になるらしい。何事も完璧はありえない。
陳腐な言葉だが物事に確実はないということだけは確実なのだ。
「バスク大佐は有能ですが頭を抑える人間が閣下しかいない点です。ティターンズの事実上の指揮官は大佐であるために、誰も意見できずに虐殺すら含む強硬措置を取りかねないかと」
「まさか!そのような「ありえないと断言できますか?」」
被せるように言われて考えれば確かにそう思える。
このごろティターンズの実務はバスクに委ねており、ジャミトフは政治活動に力を入れていた。
それ以来言動の端々に生来の傲慢さとも言うべきものが滲みでているような印象があった。
「指揮官がバスク大佐お一人では確実に大佐が増長します。対抗する別の派閥があっても構わないでしょう。」
ようやくこの男の目的がわかった。
バスクのタコめ。腹心だと抜かしていたがこやつはバスクにとって獅子身中の虫もいいとこではないか。
「それを貴様が請け負うと?」
「はい。私は閣下の意思を組みつつ行動できると自負しております。時期を見て大佐に提案させていただきます。将来的なティターンズの基地確保でもちらつかせて部隊の一部を連れ、ルナツーへ向かおうかと考えております」
「さも奴に利がある風に提案するのだろうな。食えない男よ」
「食わせるほど安くはないつもりなので」
「それで?ルナツーの理由はなんだ?コンペイトウでもかまわんだろう」
コンペイトウ(旧ソロモン)は観艦式襲撃の被害が治りきってないとはいえ、結構な規模ではある。
「いささかコンペイトウは離れすぎています。またルナツーを掌握できれば…」
「核か」
「ええ。大佐も私の意図を察して喜んで送り出してくれるでしょう」
バスクは確かに横暴だが無能ではない。だがこやつの真意に気づくことはないだろう。
バスクの犬を演じていた奴の真意に気づくのは事態が進んだ後になるだろう。
ルナツーを基盤とし、核を手元にもったティターンズ内部の対立派閥の成立を。
「あいわかった。その計画を実行に移す際に多少はこちらから融通することもできるだろう。今手元に必要なものとその計画に必要なものをそれぞれ言え」
「でしたらなるべく早く口が堅い有能な副官を。MS戦術に関して造詣が深いものを希望します。あとは確実に閣下のお力で潰していただきたいところがございます」
副官は理解できる。実働部隊を指揮するにあたってMS戦術の専門家は必須とも言える。
一年戦争後には時代遅れの大艦巨砲主義が軍の主流になりはしたが、デラーズ動乱にてその脆弱さが改めて露呈した。
しかし潰してほしいところ?
「ムラサメのニタ研を潰したいと思います」
その会談が終わったときジャミトフは言いようのない不安感に襲われた。
どこかでジャマイカンの真意を読み違えてるのではないかと。
なにか目的があって己に近づいてきたのではないかと。
バスクが信じ切れないのと同様にジャマイカンも信じることはできない。
しかし彼の手元にティターンズレベルの規模を指揮できるものはそういない。
バスク自身は指揮官としての適正は連邦内でも高い方だ。
ジャマイカンが貶していたが、バスク以外には指揮官を任せられるものはいない。
そうジャマイカンとの面談から悩み続けた彼の目には惑星開発計画の書類が手元にあった。
その責任者の名前を見てジャミトフは面談の予定を秘書に入れさせた。
次回から主人公のほうにいきます。
用語解説
ニタ研
ニュータイプ研究所の略称
連邦軍が主に一年戦争後に設立した研究所。
薬物投与や暗示などモロ非人道な方法で擬似的なニュータイプを作り出すことを目標としてる。
代表的なのはムラサメ研究所やオーガスタ研究所。
解説が必要そうな言葉がありましたら教えてください。
簡単にですが解説いたします。