ユグドラシル最終日、モモンガがナザリックのNPCたちのカルマをプラスの500に変更していたら、というお話です。

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2018/5/13 「セベス」となっていたところを「セバス」に訂正しました


カルマ500のナザリック

「飲め」

 

 そう言ってアイテムボックスからつまみあげたポーションを差し出すモモンガ。

 だが、それに対する2人の村娘、エンリとネムの反応はというと感謝の言葉どころか、「の、飲みます! だから妹には――」、「お姉ちゃん!」という、何やら今にも生贄にささげられようとする互いの身をかばい合うかのような悲壮感と切迫感あふれるやり取りであった。

 

(なんでこんなことになってるんだろうなあ……。一応、俺は助けてやった側なはずなのに)

 

 モモンガはそう心の中でぼやく。

 なんと説明したらいいものやらと嘆息しているその横合いを、何かがさっと駆け抜けた。

 

 ハッとして視線を動かすモモンガ。

 モモンガの後ろから、目にも留まらぬ速さで少女たちの前へと飛び出したのは、自身の護衛として呼んだナザリックの守護者統括アルベドであった。

 

 

 そして、黒い全身鎧(フルプレート)――体の線がくっきり出ている、その外形から察するにおそらく女性――の人物が自分たちの目と鼻の先へ近寄ってきたことに息をのむエンリとネム。 

 

 (すぐさま、あの薬を飲まなかったから二人とも殺されてしまうのだろうか……?)と恐怖に身を震わす彼女らの眼前で、その女戦士は汚れ一つない漆黒の鎧、そしてその身に纏う深紅のマントが汚れることも厭わず地面に片膝をついた。

 面頬付き兜(クローズド・ヘルム)ごしながらも、その視線の高さを腰を抜かして座り込む2人と合わせる。

 

 そして手にしていた、並みの騎士ならば鎧ごと切り裂くことも出来そうな、長大にして重量のありそうなバルディッシュを傍らに置くと――。

 

 

 ――ガッとエンリの手を掴んだ。

 

 

 思わず「ひいっ……!」とくぐもった悲鳴を上げるエンリ。

 ネムもまたその身を大きく震わせた。

 

 だが、そんな彼女らに対し、その凶悪極まりない外見の鎧を身に纏った女戦士――アルベドは、本当に心の底から彼女らを心配し労わるように、優しく声をかけた。

 

 

「心配しないで、これは怪我を治すポーションよ。私たちはあなた方を助けに来たの。大丈夫、私たちが皆を守ってあげるわ」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 その時、モモンガは一人、玉座に腰かけていた。

 周りには、本来は第十階層入り口で侵入者を待ち受けているはずのセバス並びに六連星(プレアデス)たち、そしてこの部屋を守護する守護者統括アルベドのみしかいない。

 

 

 モモンガは大きくため息をついた。

 

 今日はユグドラシルの最終日である。

 最後だから皆で集まりませんかとギルメンたちにメールを送ったのだが、そうしてやってきたのはわずか数人のみ。

 そしてその誰もがゲームが終了する深夜12時を待たずにいなくなってしまった。

 

 肘掛けによりかかるように頬杖をついていたアインズは、閑散とした玉座の間で一人、過去の思い出にひたっていた。

 

 

 あの日。

 モモンガが異形種狩りに会い、殺されかけていたとき、颯爽(さっそう)と現れ助けてくれたのは純白の鎧を身に纏った聖騎士、たっち・みーであった。

 

 その後、共に行動するようになり、やがて仲間が増え、クランからギルドに格上げし、最も有名な1,500人からなるプレイヤー及びNPCの大軍勢を撃退させた戦いなどが繰り広げられ、ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の名は伝説となった。

 

 だが、そんな輝かしい功績の中でも、やはりモモンガにとって一番の思い出となるのは間違いなく、あの最初の出会い。

 《正義降臨》の文字と共に告げられた『誰かが困っていたら助けるのは当たり前』という言葉が頭の中に浮かび上がってくる。

 

 

「それが一体どうしてこんなになったんだったかな?」

 

 その後、紆余曲折を経て、ユグドラシルにおいて自分たちのギルド《アインズ・ウール・ゴウン》はDQNギルドとして、その名を馳せていた。

 『誰かが困っていたら助けるのは当たり前』という言葉とは、まったく正反対である。

 

 それはそれで楽しかったのは事実であるが、やはり心の中では、純粋に正義の味方というのにも心惹かれるものがあった。

 

 

「正義の味方か……」

 

 ちらりと空中に浮かぶ、開きっぱなしのマスターソース画面を眺める。

 カタカナ順に、ずらりと並んだNPCの名前。

 その脇に表示されているカルマ値は――キャラクターによってかなりのバラつきがあり、プラスの値になっている者もそれなりにはいるが――基本的にそのほとんどがマイナス。中には最も低いマイナス500の値になっている者も少なからずいる。

 

「……まさに悪のギルドだなあ。これじゃ、到底正義の味方とか言えないよなあ」

 

 しばし、そのままの姿勢で黙考していたモモンガであったが、「よし」とつぶやき、玉座の上に座りなおした。

 背もたれに預けていた体を起こし、コンソールに向かいあう。

 

「まあ、最後だからいいかな」

 

 そんな独り言と共にその指を動かす。

 続けざまに響く電子音。

 

 

 今、モモンガは、ナザリックのNPCたち全員のカルマの(あたい)、それをプラスの500に変更していた。

 

 

 カルマの値というものは、ユグドラシルのゲームにおいて様々な行動に影響する。カルマがプラスの者のみに効く攻撃、逆にマイナスの者のみへ効果があるものもある。また、自身のカルマ値によって発動した能力の効果が増減する、もしくは発動条件となっていたりする特殊技術(スキル)や能力もある。

 

 当然であるが、通常、キャラメイクをする場合は、そうした能力がちゃんと活かせるようにカルマ値を設定するものだ。

 そして、ナザリックのNPCたちもそれを考慮に入れた上で、特殊技術(スキル)職業(クラス)を組み合わせている。

 今、モモンガがやっているように、ただカルマ値を変更するというのは、各キャラクターの能力が十分に発揮できなくなってしまう恐れがある、決してよろしくない行為だ。

 

 

 だが、今日はユグドラシル最終日である。

 こんな時間になっても誰一人、このナザリックの攻略に挑もうとする者はやって来ない。また、仮に現れたとしても、もう終了間際の今からではどうやっても、たとえすべてを素通りしてきたとしても、この玉座の間まで辿りつくことなど出来ようはずもない。

 今更、ナザリックの戦力が減少しようが、別に支障はないのだ。

 

 わずかに気にかかるのは、皆が知恵を絞って作り上げたキャラクター達、それを汚してしまう事になるのではないかという懸念であったが、それを言うならモモンガはすでに先ほど、アルベドの設定を『ちなみにビッチである。』から『モモンガを愛している。』に変更してしまっている。

 もはや、今更であった。

 

 

 数分ほどで、ギルド長特権をもって全NPCの設定変更が終了した。

 コンソール画面に並ぶ各キャラクターのカルマ値はどれも『500』と表示されている。

 

「ははは。悪のギルドならぬ、正義のギルド《アインズ・ウール・ゴウン》か」

 

 一人、乾いた笑いをたてていたモモンガは、やがて「はあ」と息を吐いた。

 

 別にカルマを変更した事に何の意味もない。

 NPCたちの行動を左右するのは、それぞれに設定されたAIであり、カルマ値をいじったからといって、行動が変化したりするわけではない。

 

 

 ましてやその程度の事で、正義の味方になれるわけでもないのだ。

 

 

 無益()つ無駄な事に最後の貴重な時間を使ってしまい、湧き上がる虚しさに(ひた)りきったまま、視界の隅に表示されている時計、それが0:00:00に変わるのを、モモンガはただ見つめていた。

 

 

 

 

 

「……ん? ……どういうことだ?」

 

 

 

 

 

「どうかなさいましたか? モモンガ様?」 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 あの時、どういう訳だか0時を過ぎてもユグドラシルは終了せず、それどころかナザリックのNPCたちがまるで生きているかのように行動し、話し始めたのだ。

 夢想だにしなかった不可思議な事態にモモンガは混乱しつつも、最後まで残ったギルド《アインズ・ウール・ゴウン》のギルド長として、ナザリック地下大墳墓の安全の確保に努めた。

 そして、どういう訳だかはしらないが、ここは現実であると認識すると同時に、〈遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)〉の使い方を調べていたところ、たまたま何者かに襲撃されている村を発見した。

 

 当初、その光景を目にしたモモンガは放っておこうと考えた。

 わざわざ助けても、このナザリックに何ら利益をもたらさず、かえってナザリックを危険にさらす羽目になりかねないと判断したためだ。

 

 しかし、傍らに控えていたセバスの姿にかつての友人、『誰かが困っていたら助けるのは当たり前』という言葉と共に自分を助けてくれた聖騎士たっち・みーの姿を重ね見た彼は、とっさに魔法で殺されかけていた少女らの許へ転移し、彼女らを襲っていた2人の騎士を倒した。

 その後、護衛として作りだしたはずの死の騎士(デス・ナイト)がどこかに走り去ってしまい、途方に暮れていたところ、ナザリックから新たに護衛としてアルベドがやって来た。その事に安堵するとともに、とりあえず怪我を負っているらしき少女らにポーションを渡そうとしたのであるが、怯えた少女らはまるで毒を飲まされでもするかのごとくに互いをかばい合うという状況になってしまった。

 それにどうするべきかと悩むうちに、護衛として背後に控えていたアルベドが、風のように少女らの(もと)へ進み出て、安心させるようにその手を取ったのだ。

 

 

 

「心配いらないわ。これを飲めばあなたの怪我はたちどころに治るの。さあ、飲んで」

 

 そう(うなが)されるも、差し出されたのは見た事もないとろりとした赤い液体。エンリはどうしても、口にするのを躊躇してしまう。

 そんな彼女の逡巡を見て取ったアルベドは、その兜の面頬をあげた。

 

 そこから現れたのは、この世のものとも思えぬほど整った美しい女性の顔。

 だが次の瞬間、エンリそしてネムは、ハッと息をのんだ。

 

 

 目の前の漆黒の鎧を着た美しい女性。

 その顔を覆い隠していた兜の奥にあった、その瞳。

 金色のそれは、人間とは明らかに異なる、まるで蛇のような縦長の光彩を持っていた。

 

 

 明らかに人間ではないと知れる、その瞳を前に、異形種はおろか、亜人種すらもろくに間近に見たことがない彼女らは、恐怖にその身を凍りつかせた。

 

 自分の容姿に怯えている彼女らの様子に、アルベドはその(かんばせ)を曇らせる。

 

「あなたたちが私の姿に怯え、恐れるのは分かるわ」

「あ、あの……わ、私は……」

「ええ、それは人として当然のこと。自分たちとは異なる種族を警戒するのは、ね。でも、お願い。信じてちょうだい。困っている人を放ってはおくことはできない。私たちはあなた方を助けたいの」

 

 そう訴えかける美貌の女戦士。

 その真摯にして、慈愛の溢れる声色(こわいろ)に、エンリの心が揺さぶられる。

 やがて、エンリはその赤い液体の入った瓶を眺め、覚悟を決めると固く目をつむり、それを一息に飲み下した。

 

 ごくんごくんと喉が上下する。

 ぷはぁ、と大きく息を吐いた次の瞬間、「うそ……」と思わず声を漏らした。

 深く切られた背中。たった今まで焼けつくような感覚があったはずなのに、それがまったく、たちどころになくなったのだ。

 

 

 驚愕に目を見開くエンリ。

 その目に映るのは、ただの見知らぬ村娘でしかないエンリの身を案じる、人間ではない異形種の女性。

 彼女はエンリの怪我が癒えた様子に、安堵の息を漏らし、そして立ち上がった。

 

 

 そして、いまだ抱き合ったまま、地面にへたり込んでいる2人にモモンガは魔法をかけると、動かぬようにと言い残し、アルベドを引き連れ、村の方へと歩いて行こうとする。

 

 エンリ、そしてネムは慌てて、去っていくその背に感謝の言葉を投げかける。

 そして、差し出がましいようだがと、村にいる両親を助けてくれるよう頼んだ。

 

 それに対し、アインズ・ウール・ゴウンと名乗った骸骨の魔術師は、可能な限り助けると約束し、それを聞いたアルベドは、とても穏やかな笑みと共に頷いた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「申し訳ないが、そいつらを引き渡していただけないかな?」

「お断りいたします」

 

 やや疲れた様子のガゼフの言葉に対し、アルベドは怒りをにじませた声で()()もなく断った。

 そのやり取りを前にしてアインズは、困ったものだなと内心で嘆息した。

 

 

 

 

 時はしばし遡る。

 

 

「お父さん!」

「おお、何ということだ……!」

「まさか! 信じられない……」

 

 村の人間は異口同音に驚きの声をあげ、互いに抱き合い、喜び合った。

 そして、奇跡を起こした目の前の異形の存在に対し、感謝の言葉を投げかける。

 

 人々の輪に囲まれているのは、まさに奇怪とでもいうより他にない姿をした存在。

 人間のメイド服を身に纏ってはいるものの、その首の上に載っているのは毛足の長い犬の頭部。そして、その頭頂部から顎の下まで縦に一見雑な縫い目が走っている。

 

 ナザリックのメイド長、ペストーニャ・S・ワンコである。

 

 彼女はアンデッドや負のエネルギーで動く存在が多いナザリックの中では珍しく、通常の生物にも効力を発する神官魔法を高位のものまで習得しており、その中には死亡後、それほど時が経たぬうちであれば、レベルダウン等のペナルティを負うことなく対象を蘇生させられるという高位の復活魔法もある。

 彼女は、謎の騎士の襲撃により多数の死者が出たこのカルネ村に、アインズの命によって呼び寄せられ、そして死亡した村人たちを蘇らせたのだ。

 

 

 歓喜の涙を流す村人たち。

 その様子を眺めていたアインズは、ちらりと嫉妬マスク越しに、傍らに立つアルベドへと視線を向ける。

 全身を鎧で包み、すでに兜の面頬を下げてしまっているため、その表情は見て取れないが、歓声をあげる村人たちを前にして、彼女が喜んでいる様子であるのはなんとなく感じ取れた。

 

 

 

 正直な話。

 アインズとしても、ここまでやる気はなかった。

 

 アインズがこの村を助けようとしたのは、セバスの姿に『誰かが困っていたら助けるのは当たり前』と言ったかつてのたっち・みーの姿を重ね合わせたというのもあるが、それ以外にもこの地における戦力の調査、実地での戦闘の体験という意味合いがあった。

 そのため、あまり深入りする気もなく、自分が使える魔法の他はせいぜいが手持ちのアイテムを使用する程度ですませるつもりであった。

 

 

 そんなアインズの考えを変えさせたのは、アルベドである。

 

 アルベドはアインズのすることに決して異を唱えることは無かった。

 しかし、エンリらを助けた後、村の周辺で警戒していた騎士たちを倒していたところ、それをアルベドが憂いの表情で見つめている事に気がついたのだ。

 その目の奥に宿るのは悲嘆そのものであり、人間を殺してしまうことを悲しんでいる様子であるのは、アインズにも見て取れた。

 

 

 それに対し、アインズは困惑を感じた。

 

 ――なぜ、そんなに悲しむのか?

 

 騎士たちは、こちらを襲ってくるのだ。

 それも凶器を手に。

 彼らのレベルでは〈上位物理無効化Ⅲ〉を持つアインズには傷一つつけられないようではあるが、それでも普通の人間ならば大怪我、下手をしたら命すら危ういような武器を振りまわしているのである。

 アインズのやっている事は、完全に正当防衛といえる。

 

 むしろ、アインズとしてはそんな騎士たち、すなわち人間を殺しても、自分の心が全く動揺もしない事から、肉体だけではなく心まで人間ではなくなったのかと、ある意味覚悟を決めたところだというのに。

 

 

 しかし、そんなアインズが魔法で騎士達を打ち倒すたびに、アルベドは悲し気な瞳を向けた。

 

 

「アルベドよ……。私がこいつらを殺すことに思うところはあるか?」

 

 問われた彼女はその整った顔に憂いの影を湛えながらも、首を横に振った。

 

「いえ、いと(とうと)きアインズ様のなさること、(しもべ)たる私に是非などあろうはずがございません」

「そんな事を言わずともよい。アルベド、お前の本当に思ったところを聞かせてくれ」

 

 重ねて問われたアルベドは、再び兜の面頬をあげ、深い悲しみの色をその声ににじませ、答えた。

 

「はい。私は彼らに、村人、そして騎士たちにも憐れを感じています。なぜ、同じ人間同士でかくも無益な争いを繰り広げなくてはならないのか? ただ他人が自分より多くのものを持っているかどうかなどという些末な事にばかり気を取られるのか? どうして目の前のものを奪う事だけに心奪われているのか? なぜ、本当の幸せが何なのかも考えようともしないのか?」

 

 語るアルベドの頬に、一筋の涙がこぼれる。

 アインズは無言のまま、その眼前にアイテムボックスから取り出したハンカチを差し出す。

 

「……そうだな。人間同士が争い、奪い合い、命を落とす。実に無益というより他にない」

 

 涙をぬぐい、顔をあげたアルベドにアインズは言った。

 

「アルベド……お前の考えは分かった。私はこの地の人間たち、我らに好意を向ける者だけではなく、敵意を向けてくる者たちに対しても、慈悲の心を示そう。この地に生けるすべての者たちが誰にも虐げられることなく、平穏無事に生き、人間らしい暮らしが出来るように取り計らおう」

 

 そして、アインズはいまだ涙に濡れるアルベドの瞳を見つめ、先ほど走り去っていった死の騎士(デス・ナイト)へ、例え相手が敵だろうと可能な限り殺さぬよう指示を与えると同時に、アイテムボックスから蘇生の短杖(ワンド)を取り出した。

 

 

 

 村の内部において、すでに村人のうちに幾人もの犠牲者が出ていると知ったアインズは、ナザリックからペストーニャを呼び寄せることを決断した。

 

 アインズの保有しているアイテムの内、蘇生の短杖(ワンド)ではゲームと同様、蘇らせようとした対象のレベルが一定以上でなかった場合、対象が消滅(ロスト)してしまうようであった。実際に、村を襲っていた騎士達に使用してみた結果、その死体までもが消滅してしまったことからそれが分かった。

 

 一方的に村人を殺していた者たちですら、低級の蘇生魔法に伴うレベルダウンに耐えきれなかったのだ。

 ならば村人はなおさら耐えきれまい。

 そういう判断からであった。

 

 

 そのアインズの考えは見事に当たり、彼女は襲撃によって命を奪われた村人たちを次々と蘇生させていった。

 当初は一目で異形種と分かるペストーニャの姿に忌避感を覚える者も多かったのであるが、彼女が死んでしまった家族、顔なじみの村人たちを蘇生させていく様を見て、すっかりその態度は変わった。

 誰もが、犬の頭部を持つ彼女に対して、深く頭を下げ、感謝の言葉を述べた。

 

 そして、そんな感謝と敬意は彼女を呼び寄せた人物、村を襲撃していた騎士達を倒したアンデッドの主である魔法詠唱者(マジック・キャスター)、アインズにも向けられた。

 先ほど助けた姉妹、エンリとネム、そして彼女らの隣に立つ見知らぬ大人の男女――おそらく彼女らの両親であろう――を始めとした多くの者が、奇怪な仮面をつけた素性も知れぬ謎の魔法詠唱者(マジック・キャスター)という、どう考えても胡散臭いとしか言いようのないアインズに頭を下げた。

 

 アインズはちらりと後ろに控えるアルベドの視線を投げかけた後、「困っている人を助けるのは当然のこと」と胸を張って言った。

 

 そんなアインズに対し、村の人々は本当の英雄を見るかのような、純粋なる崇敬の瞳を向けた。

 

 

 

 ――と、ここまではよかったのである。

 

 

 その後、村を助けた報酬代わりに、村長からこの地の情報をあれこれと聞き、とりあえず知りたい情報もそれなりに得ることが出来たので、そろそろ()()()()しようとしたところ、なにやら怪しげな騎馬軍団がこの村に近づいてくるという。

 もしや襲撃してきた騎士たちの仲間かと警戒し、村長宅に村人を集め、一方自分たちは村長と共に村の外で彼らと対峙したのだ。

 

 そして、彼らのリーダーらしき人物と話をしたところ、彼はこの国の王国戦士長ガゼフ・ストロノーフであると名乗った。

 その言葉が本当か確かめるすべはないのだが――実際は魔法を使えば出来るのではあるが――その堂々たる態度から、彼が嘘を語っているわけではないようだという事は知れた。

 そこで彼に、この村であった一連の出来事。どこかの騎士風の者達が村を襲っていたところへ、旅の魔法詠唱者(マジック・キャスター)である自分たちがたまたま通りがかり、彼らを撃退して村を救ったのだという事を――死んだ村人らを蘇生させたこと、並びにそれをやったペストーニャの存在に関しては誤魔化しながらも――大まかに話して聞かせた。

 

 一連の事情を聞いたガゼフは深く頭を下げ、村を救ってくれたことに感謝の言葉を述べた。

 王国戦士長という立場にありながら――実際はそれがどれほどの地位なのか、アインズにははっきりとは分からなかったが――素性も知れぬ相手に頭を下げるという行為に、アインズは好感を抱いた。

 

 

 そうして、互いに警戒の色が和らいだ空気の中、あれこれと話をしていたのであるが、そこで一つの問題が起きた。

 

 村を襲った騎士たち、そいつらが生きたまま捕らえられていると聞いたガゼフは、彼らを引き渡すよう言ったのだが、それに対しアインズの(かたわ)らに控えていたアルベドが反対したのだ。

 

 

 ガゼフの要求は当然である。

 彼はこの王国の治安を預かるものとして、犯罪を行った犯人を確保する必要がある。

 村の襲撃はこのカルネ村のみにとどまらず、周辺地域で何件も起こっていたためだ。これはけっしてただの野党による単独行動ではなく、明確な目的をもって行われたものであり、その背景を探らねばならない。

 

 しかし、それに反対の言を述べるのは、襲撃の際にいち早く現場を訪れ、村を救った当人である。たとえ素性のよく知れぬ相手とはいえ、(ないがし)ろにしてしまっていいものではないだろうというのが、ガゼフの心情であった。

 

 

 

 それで、先ほどから互いの言い分は平行線のまま、延々と口論が続いているという訳だ。

 

 

 

「いいかな、お嬢さん。我々はこの地を治める国に仕える者だ。彼らは我らが王国の地において、乱暴狼藉を働いた。ならば、我が国の法によって、彼らは裁かれねばならないのだよ」

 

 噛んで含めるような言葉。

 だが、それに漆黒の女戦士は首を横に振った。

 

「いえ、彼らについては私たちが身元を預かります」

 

 先ほどから何度も繰り返された言葉を再び発する。

 

 

 ガゼフはいかにも困ったというふうな表情を浮かべ、その額に手を当てた。

 仮に相手がその胸の内になにやら後ろ暗いものを隠しているような様子があるのであれば、彼はこの地を治める王国に使える者として、出来うる限りの強引な手をも取っただろう。

 だが、目の前の全身鎧に身を包んだ女性――おそらく――は、一切腹蔵なく言葉を発してる。

 それはこの場にいる誰の目にも明らかであった。

 そのことがガゼフに公権力の行使を躊躇させ、説得という方法を選ばせていた。

 

「お嬢さん。分かるだろう? そいつらを放っておいたら、また第二、第三の被害が出るんだ。そうならぬよう、しっかりと法による裁きを受けさせねばならんのだ」

「心配せずとも、彼らについては、二度とこのような事はさせないようにするつもりです」

「それはどうやってだね?」

「彼らにはいかに自分たちが愚かな事をやったのかを理解させ、反省させます」

「反省? 本当にその『反省』とやらをしたとどうして分かる?」

「その行動、思考で十分わかります」

「一体、それをどう証明するのかね?」

「別にあなたに証明する必要などありません。我々がそれを分かっていればそれでいい事です」

 

 その返答には、ガゼフの背後にいた者たちが色めき立った。

 

 あまりといえば、あまりな答えの仕方だ。

 そもそも、本来であれば王国戦士長の地位にあるガゼフと、素性の知れぬ魔法詠唱者(マジック・キャスター)と戦士など、差し向って話をしていい間柄ではない。

 ガゼフの前でアインズらは膝をつき、首を垂れるべきなのだ。

 自分たちが辿りつくよりも先に村を救ってくれたという事への謝意を示すかたちで、こうして互いに立ったまま話をすることを、ガゼフの方が許してくれているに過ぎないというのに、そんな寛大な態度を持って接しているガゼフに対し、自身の立場をわきまえようともせず、それどころか彼の事を歯牙にもかけぬかのごとき無礼な物言い。

 

 思わず、武器に手をかけ、剣呑な視線を投げかける。

 

 

 しかし、そんな殺気に気づかないほど技量が劣っているのか、それともその程度でひるまないほどの胆力の持ち主なのか、アルベドというらしい一分も肌をさらさぬ女戦士は堂々たる態度で胸を張った。

 

「仮に聞きましょう。あなたは王国の法によって裁きを下すと言いました。彼らはどんな裁きを下されるのでしょうか?」

 

 その問いにガゼフはほんのわずかだけ考え、口にした。

 

「おそらく斬首だろうな」

 

 その言葉にアルベドは鼻を鳴らした。

 

「引き渡せば、ただ無残に命を奪われる。それを分かっていて、みすみす引き渡すと?」

「お嬢さん……」

 

 ガゼフは深くため息をつく。

 

「幸いにして、そいつらはこの村の襲撃には失敗したようだ。ゴウン殿らの力によってな。しかし、彼らが襲った村というのはここだけにとどまらない。すでに数個もの村落がそいつらによって襲われた。結果、村は壊滅。村人たちは皆、惨たらしく殺されたのだよ」

 

 それを聞き、アインズの傍らに立っていた村長はびくりとその身を震わせた。

 

「私たちはそれらの村を廻り、生き残りから話を聞いた。まさに悪魔の如き所業だ。彼らのしたことは決して許されることではない」

 

 だが、それを聞いてもなお、アルベドはその兜に覆われた頭を横に振った。

 

「ならば、なおさら引き渡すわけにはまいりません」

「なに?」

「この村を襲った騎士達により、かなりの被害、死傷者が出ているとおっしゃいました。すでにそんなに死者が出ているというのに、さらに彼らまで死者の列に加えるというおつもりなのでしょうか?」

 

 その場にいた者たちは、アルベドの言葉に面食らった。

 

「人はたやすく死を迎えます。そして死んでしまったら、その先はありません。……まあ、魔法などで甦ることも出来ますが、それは軽々しく行えるような事ではありません。死は終わりなのです。それなのに何故、あなた方はそう軽々に、他者に死を与えるのでしょう? どうしてあなた方は同じ種族、同族たる人間同士で傷つけ合い、奪い合い、そして殺し合うのですか? 争うより、互いに手を取り合い、本当の幸せのために生きるべきではないですか?!」

 

 

 その発言に誰もが唖然とし、その場は静まり返った。

 誰かのゴクリというつばを飲み下す音がことさら大きく響いた。

 

 ――甘い。

 甘すぎる。

 

 それが彼女の言う事を聞いた者たち全員の思いであった。

 

 まるで、この世のすべて、人間には善なるものが宿っていると信じているかのような発言。

 それは、善意や慈愛を通り越し、もはや狂信と言ってもいいレベルのものである。

 

 如何に善性を説かれても、人はその通りに行動することなどしようとはしない。

 言われてすぐは心を入れ替え、清らかに生きようと決意しようとも、何か困難に直面しでもしたら、いやそれこそ、ほんのわずかな気まぐれ程度のことでも、そんな誓いなどたやすく破ってしまいかねない。

 誰だって人としてすべきこと、人として行ってはいけないことは理解している。誰も望んで悪意の道に踏み込もうとはしないだろう。

 しかし、一点の曇りもなく、ただ善なる心のままに生きることのなんと難しい事か。 

 人は迷い、苦しみ、そして罪を犯す。

 そして、罪を犯したのならば、裁かねばならぬ。

 そうする事が善なる者を助けることになり、そしてより多くの悪に傾きかけた者を踏みとどまらせることに繋がるのだ。

 

 

 だが――。

 

「たしかに彼らは悪を行いました。それは決して見過ごされるべきことではありません。無かったことにはできません。しかし……しかし、だからといって殺してしまってよいわけがありません! 生きていてこそ、罪を償い、本当の幸福のためにその力を使う事が出来るのです。死んで終わらせる道より、己が行いを悔い、善行を詰ませる道を選ばせるべきです!」

 

 そう断言するアルベド。

 その言を発した事に、まったく()()()もない。

 彼女は信じているのだ。

 どれほどの悪行をこなした者であろうとも、反省と共に更生へと至る道を閉ざしてはならないのだ、と。

 

 

 ガゼフは喉の奥でうなる。

 説得の言葉を探し、そして何も思い浮かばず、その目を泳がせた。

 

 目に留まったのは、彼と相対するアルベドの後ろに位置する、この村の村長と、彼女の旅の仲間であるゴウンという魔法詠唱者(マジック・キャスター)。……アンデッドの騎士は数に入れなくともいいだろう。

 

 

 ガゼフからの視線に、村長は戸惑ったまま、そっと目をそらした。

 

 村長としては、村を襲撃した騎士達はガゼフらに連れていってもらいたかった。

 アインズらに生き返らせてもらったとはいえ、彼らによって村人の多くが一度、殺された事は事実なのだ。そのことは決して許すことはできない。

 しかし、騎士達を退治し、そして被害に遭った村人たちを助けた旅の魔法詠唱者(マジック・キャスター)アインズ・ウール・ゴウン一行は、彼らを殺そうとはしなかった。

 逃げられぬよう死の騎士(デス・ナイト)によって手や足を折られるなどした者はいたものの、命を奪うことはなかった。

 内心、色々と思うところはあっても、命の恩人であるアインズらがそうすると決めたのであれば、彼らがいなければ滅びるしかなかったカルネ村の住民として、異を唱えることなど出来ようはずもない。

 

 

 次にガゼフは、アルベドの仲間らしいゴウンなる魔法詠唱者(マジック・キャスター)に目を向けた。

 奇妙な仮面をかぶっているが、彼と視線が重なり合ったのは分かった。

 視線を投げかけられた彼は、何か自分も話そうと思ったのかその手をあげかけたが、不意にピクンと身体を震わせたかと思うと、その手を口元に――仮面越しだが――あて、しばしそのまま動かなくなった。

 

 おそらく、何か思いついた考えをまとめているのだろうと考え、ガゼフは再び、視線を目の前に立つアルベドへと戻す。

 

 面頬越しだが、強い意思を感じさせる眼力。

 正面から浴びせられるガゼフからの視線にも、アルベドは全く怯む様子も見せない。

 

 もはやどうすればいいのかと困りきり、歯を噛みしめるガゼフに、声をかけたのはアインズであった。

 

「ガゼ……ストロノーフ殿。自分でこういうのもなんですが、私は魔術に秀でております。どうでしょう? 私が彼ら一人一人に対し、二度と他人を害さぬよう呪いをかけてしまうというのは?」

 

 再び、そちらに目を向けるガゼフ。

 それに対し、仮面越しながらアインズは穏やかな視線を返した。

 

 アインズが言いたいこと、それは――。

 

 ――この辺でお互い手を打ちましょう。

 

 ということだった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 来た時と同様、馬に乗って走り去っていったガゼフたち。

 村から少し離れた場所で、アインズは遠ざかるその背を見送った。

 

 

 結局、あの後、ガゼフは首を縦に振った。

 

 どうあっても引かぬ様子のアルベドという女戦士。

 このままでは(らち)が明かぬことは明白であったためだ。

 

 アインズの提案した魔法による行動の制限が本当にできるのかは分からないが、それを否定し、法を盾にした引き渡しを強硬しようものなら、下手をすれば戦いになるやも知れぬ。

 この不思議な魔法詠唱者(マジック・キャスター)たちの戦力は、はっきりとは判断しきれなかったが、数十人もの騎士を命奪うことなく捕まえたという実績を考えれば、かなりの実力者である事は確かであろう。

 

 王国において魔法詠唱者(マジック・キャスター)の力は軽視される傾向にあるが、若いころ各地を旅してまわった経験のあるガゼフには、魔法の力とは決して侮る事の出来ないものである事は骨身にしみて分かっていた。中には魔法の習得のみに専念し、実戦の経験すらない者も多いのではあるが、しっかりとした実戦経験があり、前衛となる戦士と連携した場合、その力は恐るべきものとなる。

 

 そして、その魔法詠唱者(マジック・キャスター)の脇には、金属製の全身鎧(フルプレート)、並びにバルディッシュとカイトシールドを身につけながらも、まるで重さを感じぬかのごとくに動く当の女戦士アルベドと、常人ならば見ただけで竦みあがってしまいそうな凶悪な外見のアンデッドの騎士がいたのだ。

 およそ彼女らが前へと進み出て、ゴウンなる魔法詠唱者(マジック・キャスター)の壁になるだけで、はなはだしいまでの脅威となることは明らかであった。

 

 

 仮に戦いとなった場合、ガゼフ自身がその目で見極めた、優れた能力と勇敢さを併せ持つ彼の戦士団とはいえ、被害を出さずには終われぬであろうことは容易に推測できた。

 そうして多大な労苦と犠牲を払い、たまたま通りがかった村が襲われているのをわざわざ助けるほどの好人物である彼らを殺してまで手に入れられるのは、犯罪者の身柄のみ。

 どう考えても、割に合わぬとしかいいようがない。

 

 そのため、再度の魔法詠唱者(マジック・キャスター)からの提案、『騎士達が身に着けていた、なんらかの紋章がついた鎧などの装備一式は、そちらにお渡しいたしますので』というもので妥協したのである。

 

 

 

 傾きかけた日を浴び、その場に佇むアインズ。

 その場にいるのは彼とアルベド、そしてどういう訳だかいまだに消えようとしない死の騎士(デス・ナイト)のみである。

 

 すでに村長は、村の後片付けに戻っていた。

 村人たちは皆、生き返ることができ、また怪我一つ残っていないとはいえ、襲撃によって破壊された家屋も多数ある。少なくとも今日中には、家を失った家族の泊まるところを用意し、そして明日からの復興の段取りを立てねばならない。

 

 

 いまだ身じろぎひとつしようとはせぬアインズの傍らに、アルベドは音を立てて膝をついた。

 

「申し訳ありません、アインズ様。アインズ様の御意向を聞く前にあのような事を言いだしてしまって。さりながら、私はあの者らに、騎士達を渡すことは……」

「よい。よいのだ、アルベド。お前の全てを許そう」

 

 アインズはゆっくりと、顔にかぶっていた嫉妬マスクを外し、彼方を眺めた。

 小さくなっていくガゼフらの騎馬。

 そして、それが消えていくはるかな地平。

 

 

 正直な話、あの時のアルベドの態度を不快に思わなかったといえば嘘になる。

 ガゼフからの引き渡し要求を突っぱねるのを見て、(なぜそこまで……)と内心、ウンザリしたものも感じていた。

 

 何故、アルベドがあのような事を口にしたのか?

 何故、そこまで異形種である彼女が人間、それも自分たちに襲ってきたものにまで慈悲をかけようとするのか?

 

 それにアインズはようやく思い至った。

 

 

 アルベドの慈愛の理由。

 それはユグドラシル最後の瞬間、アインズ自身がやった行為。

 

 すなわち、本来マイナス500だったはずのカルマを、プラスの500へと変更したためだろう。

 

 

 ユグドラシルというゲーム中では、カルマという値は特殊能力などによる効果、発動を決める、ただのパラメータの一つに過ぎなかった。

 だが、現実になったことでカルマの値が、NPCたちの行動を左右することになったのだろう。

 

 カルマの上限は500。

 つまり今のナザリックは、最高の善なる集団。

 誰もが、先ほどのアルベドと同様、たとえ敵とはいえ人間に危害を加えることに躊躇しかねないという事だ。

 

 

 これはかなり危険なことである。

 この村を襲った者たちや、王国戦士長と名乗ったガゼフの実力からみて、この付近に住む人間たちの実力は、そう高くはないと推測される。

 しかし、仮にもっと強力な力を持つ者たちがこの地にいて、ナザリックの攻略に乗り出したら……。

 

 ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』はPKなども行うDQNギルドとして、その悪名を轟かせていた。

 ならば、その悪名を知っている他のプレイヤーらが、ナザリックと敵対したとしたら……。

 

 

 ――その時、ナザリックの者たちは本来自分の持ちえるその力の全てをもって、侵入者と戦えるのだろうか?

 

 

 その想像にアインズは苦悩し、ユグドラシル最後の時に自分がやった(たわむ)れ、カルマの変更を悔いた。

 そんな彼の前に、アルベドは深く(こうべ)を垂れた。

 

「アインズ様。もしアインズ様が苦悩なさっている原因がこの私めにありましたら、今すぐこのそっ首を切り落としてくださいませ」

「……いや、それには及ばん」

 

 アインズはゆらりとその身を揺らせ、振り返った。

 

「アルベドよ。先にも言ったな。私はこの地に生けるすべての者たちが誰にも虐げられることなく、平穏無事に生き、人間らしい暮らしが出来るように取り計らおう、と」

「はい」

「だが、この地においては、弱き人間は虐げられ、強き人間は我が物顔で振る舞っているようだ」

「悲しい事です。どちらも同じ人間だというのに」

「そうだ。皆、同じ人間なのだ」

 

 膝をつくアルベドの肩に手を当て、立ち上がらせる。

 そして、その手を両手で優しく包み込んだ。

 残念ながら、今のアルベドの手はいかにも凶悪そうな棘のついた籠手を着けているため、彼女の体温を感じることは出来なかったが。

 

 

 アルベドは小刻みにその身を震わせる。

 おそらく面頬付き兜の奥で、その顔は今、暮れかけている夕日のごとく、真っ赤に染まっていることだろう。

 

「アルベド。……私の今の気持ち、それはお前と一緒だ」

 

 アインズは固い決意と共に頷いた。

 

「やろう。アルベド。この地がどんな世界なのかはいまだに知れぬ。もしかしたら、我らの想像をはるかに超えた悪徳がはびこっているかもしれん。だが、どんな困難が待っていようとも、ナザリックと一緒ならば越えられる。人々が皆、笑って暮らせる、本当の幸福が溢れる地を作ろうではないか」

 

 

 アインズはそう宣言し、夕闇が迫る空を見上げた。

 

 

 ――そうだ。それこそが自分がこの地に来た意味なのだろう。

 

 かつて、アインズ――鈴木悟が生きたリアル世界では人権など、富裕層の者のみに認められる特権でしかなかった。貧困層の者は、ただ使い捨ての道具として、過酷な環境に生き、そして死んでいくしかなかった。

 それは到底、人間らしい生き方と言えるようなものではなかった。

 ただ、生命をつなぐことだけに汲々(きゅうきゅう)としていただけであった。

 しかし、どういう訳だかは分からないが今、自分はゲームと同じ、強大なる力を得た状態でこの世界にやって来たのだ。

 ならば、せめてここにだけでも、人が人らしく生きれる世界、誰もが笑って暮らせる幸福に満ち溢れた世界を作りたい。

 その為にこそ、この力を使おう。

 

 そう固く誓うアインズ。

 そんな彼に、感極まったアルベドが抱きついた。

 

 

 棘の生えた金属鎧に加え、100レベル戦士であるアルベドの怪力で抱きしめられ、ちょっとどころではなく、かなり痛かったのであるが、それに対してアインズは何も言わなかった。

 

 そんな二人の様子を、傍らで死の騎士(デス・ナイト)は何も言わず、見つめていた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「正当なる支配者たるアインズ様の元に、この世界の全てを」

「アインズ様の元に、この世界の全てを! ナザリックに栄光あれ!」

「アインズ様の元に、この世界の全てを! ナザリックに栄光あれ!」

「アインズ様の元に、この世界の全てを! ナザリックに栄光あれ!」

 

 

 わずかの狂いもない唱和の声が、ナザリック第十階層玉座の間にいつ果てるともなく響く。

  

 最後に残った至高の御方モモンガのアインズ・ウール・ゴウンへの改名宣言、並びにこの地のすべてにその名をとどろかせよという勅命、そしてデミウルゴスの前でアインズが語ったという世界征服の言。

 それらを聞かされた今、ナザリックは熱狂の渦に包まれていた。

 

 やがて、空気を震わす震動となって耳朶を打つその声が止んだ後、アルベドは口を開いた。

 

 

「さて、それでは皆。我々ナザリックはこの世界に生きる人間たちを庇護し、彼らが幸福のままに暮らせるようにしなくてはいけないわ。これはモモン――もとい、アインズ様の御意向よ」

 

 その言葉に、その場に集まったナザリックの者たちは深く頷いた。

 もとより、その事に異論などあろうはずもない。彼らとしてもそうしたいと願っていたことである上、それは彼らの絶対なる主、アインズの望むものでもあるからだ。

 

 

 その場の全員を見回し、その顔に浮かんだものを確かめ、満足そうに頷いたアルベドは次にその視線をデミウルゴスへと向けた。

 

「それで、デミウルゴス。例の件はどうなったかしら?」

「ああ、その事なんだがね。おい、連れてきたまえ」

 

 その言葉に、アインズが去った後のこの玉座の間へ、一人の人間が連れてこられた。

 カルネ村を襲撃した部隊の隊長であるベリュースである。

 今、よたよたと歩く彼の目は虚ろのまま虚空に向けられ、半開きの口からは涎が垂れている。

 とてもではないが正気の人間とは思えない。

 

 そんな彼が左右に大きく身を揺らしながら歩く様子を前に、デミウルゴスは悲し気に首を振った。

 

「〈記憶操作(コントロール・アムネジア)〉を使用する案だが、先ずこの魔法は使用に際し、あまりにMP消費量が多いという欠点がある。また記憶を再構築しようにも、変更しなければならない個所があまりにも多すぎるため、上手く書き換えるのは容易ではなく、下手にいじってしまうとこの者のように再生不可能になってしまいかねない。また、〈記憶操作(コントロール・アムネジア)〉を使える(しもべ)は、このナザリックでもごくわずかしかいない。それらの理由により、これでこの世界に生きるすべての人間たち、その精神を操作してしまうというのは非現実的であると結論付けざるをえないね」

 

 デミウルゴスの言葉に、その場に集まっていた者たちからは悲嘆の声が漏れた。

 沈痛なものが漂う広間。

 だが、それに対し、デミウルゴスはことさら明るい口調でつづけた。

 

「おっと、皆。悲しむのは早いよ。たしかに〈記憶操作(コントロール・アムネジア)〉を使用する案は破棄した方がいい。だが、私はそれ以外にも、別のアプローチも試してみたのだよ」

 

 ぱちんと指を鳴らすデミウルゴスの合図と共に、今度は別の人間が彼らの前へ現れた。

 その場にいたほとんどの者が、その名も知らぬままであったが、ガゼフを罠にかけて暗殺しようと試みたスレイン法国の陽光聖典の隊長、ニグン・グリッド・ルーインである。

 彼の率いる陽光聖典の者たちは、ひそかにカルネ村を包囲しようとしたところ、後詰として隠れ潜んでいたアウラやマーレ、そして八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)を始めとした者たちに捕捉され、ガゼフらには存在すら気付かれることすらなく、捕らえられたのだ。

 

 そして今、彼は口元をまるで三日月のように吊り上げ、その顔に満面の笑みを浮かべながら、スキップをして進んでくる。

 その口からは「アインズ・ウール・ゴウン、ばんじゃい! ナザリックにえいこーあえ!」という若干呂律(ろれつ)の回っていない言葉が、壊れたテープレコーダーのように幾度も繰り返し発せられていた。

 

「皆もボディ・スナッチャーという怪物(モンスター)の事は知っているね? 生物のうなじから肩にかけた部位に張り付いて寄生し、その体を操る寄生生物だ。本来であれば、こいつは宿主の精神を乗っ取ってしまうのだが、それをさせずに宿主の知性だけを低下させ、そこへナザリックへの忠誠を教え込んだ結果が、ご覧の通り。彼は見事にすべての苦悩から解放され、ナザリックを讃える言葉のみを唱え続けるようになったのさ」

「デミウルゴス……」

 

 自慢げなデミウルゴスに対し、アルベドは無表情のまま、冷徹に言葉をかけた。

 

「……つまり、あなたの代替案というのは、その怪物(モンスター)を人間に寄生させることで、本来備わっている人間の知性を奪い取ってしまおうということなのかしら?」

「ああ、その通りだよ。実に簡単、且つ手早い方法だろう?」

「……デミウルゴス……」

 

 

 

 そして、アルベドは大きな声を上げた。

 

 

「……それは……素晴らしいわ!!」

 

 

 

 アルベドは感極まったとばかりに、その豊満な胸の上で手を組み、デミウルゴスを褒め称えた。

 

「なるほど、それを寄生させるだけなら実に手軽ね。それで、そのボディ・スナッチャーとやらは、十分な数がいるのかしら?」

「今現在、ナザリック内にいる分だけでは、とても十分とは言えないね。しかし、こいつらは一つの母体から、およそ数百の子を生むことが出来る。苗床となるものを集め、繁殖させる事で、大量に増殖させることが可能さ」

「では、さっそく量産にかかりましょう。なにせ、この世界の人間たち、そのすべてを変えてあげなくてはいけないんだから」

「うん、そうしよう。この地に生きる数多(あまた)の人間たち。彼らが皆一様にアインズ様を礼賛する言葉を口にする。ああ、その光景が目に浮かぶようだよ」

 

 アルベドとデミウルゴスの言葉に、その場にいた誰もがその情景を頭に思い浮かべた。

 

 地の果てまでを埋め尽くす無数の人間たち。

 そんな彼らが、一斉にひれ伏し、そしてアインズに対し賛美の声をあげるのだ。

 なんと素晴らしい光景なのだろう。

 

 

 だが、そんな輝かしい未来を夢想し、その実現のためにより一層頑張らねばと各人が決意を新たにするなか、一人の人物が異を唱えた。

 

「恐れ入りますが、それはいかがなものでしょう?」

 

 全員の視線が、その発言をした者に集まる。

 もし視線に力があるのならば、それだけで押しつぶされそうな、そんな中心に立つのは一見、ごく普通の人間の姿をした老執事。

 セバスであった。

 

 

「申し訳ありませんが、私にはあまり良いとは思えませんが」

「セバス。君は何を言っているんだね?」

 

 反論を口にしたセバスに対し、デミウルゴスは全く遺憾だとばかりに詰め寄った。

 

「この地の人間たちがアインズ様を讃えることに、君は反対だというのかね?!」

 

 その言葉に、セバスはかぶりを振る。

 

「いえ。この地に生きるもの全てがアインズ様を称揚する。それ自体は実に喜ばしい事だと思います」

 

 一呼吸おいて、セバスはつづけた。

 

「されど、それはあくまで彼らの自由意思をもって行うべきことであると考えます。先ほど、デミウルゴス様が説明された行為、怪物(モンスター)の寄生による自意識の剥奪、言うなれば洗脳によって、それをさせることにいったいどれほどの価値がございましょう?」

「やれやれ。いいかい、セバス。人間たちにも、アインズ様を褒め称える光栄を分け与えてやろうと言っているのに、そこになんの問題があるというんだね? そもそもだね……」

 

 デミウルゴスが更に言いつのろうと口を開きかけた矢先、「待ちなさい」とアルベドが制した。

 

「ええ、セバス。あなたの言いたい事は分かるわ」

 

 彼女は愁いを帯びた瞳をセバスへと向ける。

 

「あなたは、そういった事は人間たちが自発的に行うべきことであり、外部から精神を操作しての行為はよろしくない。ひるがえって、我々が今やるべきは、そんな寄生生物を育てることではなく、この地において、いかにアインズ様が偉大な御方なのかをあまねく全ての者に知らしめることだと、そう言いたいのよね?」

 

 その言葉に、セバスは首肯した。

 アルベドは「ふう」、と大きく嘆息した。

 

「ええ、分かる。あなたが言いたい事は分かるわ。でもね、セバス。それをやるのには一体どれほどの時間がかかるかしら? アインズ様、そしてアインズ様の意を受けた我々ナザリックの(しもべ)たちが、各地に散らばり、人々を助け、より良い方向へと導いていけば、やがて人々は自然とアインズ様を讃えるでしょう。でもね、セバス。もう一度言うけど、それにはどれほどの時がかかるのかしら? 数年、いえ数十年、あるいは数百年という可能性もあるわ。それほどの時をかけなければ、それは為しえない。それほどの間、人間たちにつらい思いをさせ続けるというの? 人間の寿命はせいぜいが50年程度。長くても100年ももたないわ。あなたのやり方では、いつかは達成は出来るでしょうけど、今、生きている人間たちを全員を救うには間に合わないかもしれないのよ」

 

 

 アルベドはこの場に集う全ての者たちに、その視線を投げかける。

 

「皆。アインズ様はこの地の人間たち、その誰もが笑って暮らせるような、本当の幸福が溢れる地を作ることを宣言なされたわ。でも……本当の幸福、それはいったい何かしら?」

 

 アルベドは一欠片の迷いもなく言った。

 

 

「本当の幸福……それはもちろん、至高なるアインズ様を讃え、至高なるアインズ様の為に生き、至高なるアインズ様の為に死ぬことよ。それこそが本当の幸福、本当に人間らしい生き方に他ならないわ!」

 

 

 断言するアルベド。

 そしてもちろん、それはこの場にいるすべての者も同様の考えである。

 

 ――至高なる御方のお役に立つことこそが真なる至福。

 それは間違いない。

 自分たちは幸運にも最初から至高の御方の手により創造され、何の迷いもなく、本当の幸福のままに生きることが出来た。

 これは自分たちだけで独占すべきではない。

 他の者たちにも、自分たち生まれつきナザリックにある者と同じ幸福を、同様に分け与えてやろうではないか。

 

 

 だが、次の瞬間、アルベドはその美しい顔を曇らせ、悲嘆にたえないという様子でかぶりを振った。

 

「だというのに、人間はそんな本当の幸福に気がつこうともしない。知ろうともしない。まさに愚かな生き物としか言いようがないわ。所詮は下等にして大した力も持たない種族だというのに、ごくわずかな力の差で自分の方が強い弱いなどと比べあい、強い者だから弱い者を虐げてもいい、殺してもいいとなどと、うそぶいているのよ。そんなもの、私たちからすればどんぐりの背比べ程度の差でしかというのにね。ああ、なんて悲しく、なんと愚かで、そして不敬極まりない行為なのかしら。この世のすべてはアインズ様の所有物となるべきものなのに。いいかしら、皆? 彼らはアインズ様にささげられるべき世界、それを無駄に消費し続けているの。この無駄を一刻も早く、一分一秒でも早く止めさせ、改善しなければいけないわ。それには私たちの力が必要なのよ」

 

「そうだね。人間たちが幸せに生きるためには、他者による適切な管理が必要だろうね。人間というのは哀れな生き物だ。その思考は一点を向き続けようとはせず、ほんのちょっとしたきっかけで、あれこれと散漫な思考が次々と浮かんでくるものだからね。まるで水面に湧き出る泡のように、ね。それをいかに止めようと思っても、自分で制御することすらも出来ない。それがたとえ、どのようなものでさえ。そう例えば、至高の御方に対する叛逆の気持ちすらも」

 

 デミウルゴスの言葉に、一同の心に憤怒が、そして哀れみの感情が広がる。

 至高の御方への反抗などという愚かな考えが――たとえ、それがほんのわずかだとしても――自分の頭に浮かんでくることを止めることすら出来ぬ人間とは、何と憐れな生き物なのだろう。

 

「ええ、だからこそ、私たちが彼らを導いてあげなくてはならないわ。そんな愚かな思考が浮かぶ可能性がある知能などいらない。そんな(あやま)ちを生み出す人間の知性など、我々の手で取り除いて捨ててあげるべきだわ。それこそが、彼らが本当の幸福に近づくための最短にして最善の方法なの。アインズ様はおっしゃられたわ。自分の心はこの私と一緒だと。つまり、アインズ様もまた、この地の人間たちの窮状、そして真なる幸福へと至ることのない人間の本質に心痛めているという事。一刻も早く、生きることに迷う彼らから、懊悩を取り除くべしとお考えになられていることは間違いないわ」

 

 アルベドは皆を見回す。

 

「かつて、至高の御方の御一人、たっち・みー様はおっしゃられたというわ。『誰かが困っていたら助けるのは当たり前』、と。そのお言葉通り、私たちは困っている人間たちを助けなくてはならない。でも、愚昧(ぐまい)な人間たちは、自分たちが困っているという事にすら気がついていないでしょう。私たちが手を差し伸べる理由すら理解できないでしょう。それは、本当の幸せを知らないから。本当の人としてあるべき生き方がなんなのかを想像すらできないから。私たちは彼らにそれを教え、導いてあげなくてはいけない。それがいち早く、本当の幸福にたどり着き、それを甘受することが出来た私たちの使命でもあるの」

 

 そこまで言いきり、アルベドは大きく、その両手を開いた。

 

「やりましょう、皆。この地がどんな世界なのかはいまだに分からない。もしかしたら、我々の想像をはるかに超えた悪徳がはびこっているかもしれない。だけど、たとえそこにどんな困難が待っていようとも、私たちは乗り越え、制圧しなくてはならないわ。人々が皆、笑って暮らせる、本当の幸福が溢れる地を作りましょう。この世界に生きる人間の誰もが、自由にアインズ様を褒め称え、賛美することが出来る。アインズ様のために働くことが出来る。そして、アインズ様のために命を捧げることが出来る。そんな素晴らしい世界を、私たちのこの手で作り上げましょう!」

 

 

 その力強い宣言に、ナザリックの(しもべ)たちは一斉に声をあげた。

 誰もが、これからやるべき崇高なる使命を思い、人間たちへの慈愛に満ち溢れた決意を胸に固く刻んだ。

 

 

 

 そんな熱気あふれる部屋の片隅で――。

 

「うきっ。うききっ。アインズ・ウール・ゴウン、ば、ばんじゃい! な、ナザリックに、え、えいこーあえ!」

 

 ――と、ニグンは顔一面に笑顔を張り付け、焦点の合わぬ目のまま、ぼんやりと床にへたり込むベリュースの周りをいつまでもスキップし続けていた。

 

 




 続きません。

 ボディ・スナッチャーは捏造モンスターです。
 当初、ブレイン・イーターに知能を吸わせようと考えたのですが、なんだかそういった事は出来ないようでしたので。


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