カンピオーネ 明星の王   作:ノムリ

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隠す守り

「名を尋ねようか新しき王よ。私の名は知っていようが、私は貴様の名を知らぬ」

 

 不敵な笑みに上からの物言い、まさに年寄り臭さこの上ない。

 黙れじじい!と言いたい気持ちを抑えながら自分の名前を答えた。

「月宮流樹でも明星の王でも好きな方で呼んでくれ、で、なんの用だヴォバン侯爵。もしかして儀式に使った魔女や巫女を連れてかれちゃ困るっていうのか。てかさ、まつろわぬ神の招来に成功したんだろ。なんでこっち来てんだよ」

 

 質問をした時ヴォバン侯爵の眉間には皺が寄り、憎たらしそうな顔をして今だ戦闘音が聞こえる方角を睨みつけた。

 

「剣の王、サルバトーレの小僧が私の獲物を横取りしていったのだ!」

 問題しかお前は起こさないのかドニ!と此処には居ない知り合いに文句を心の中で叫びながら密かに権能の準備を始めた。

 

「それで、ヴォバン侯爵は俺に何のようですか」

「何、新しき王が居ると分かったのでな私の遊び相手になってもらおうかと思ってな」

  

 最悪の展開だ。

 権能について調べてないカンピオーネ相手に後ろには、迎えがくるまで移動もまともにできない怪我人が数十人。加えて狼を使役できる権能でも持っているのか知らないけど、自立して動くタイプだろうから周りに気を配り守りながら戦わなくちゃいけない。全く持って最悪だ。

 

「小僧よ。私が集めた贄を守りながら戦えるかな」

 両手を広げ始めようと言いたげなポーズを取ると、ヴォバン侯爵の周りに居た狼たちが一斉に流樹の後ろにいる少女たち目掛けて走り出した。

 

「精気なき肉体よ。冥界へ渡る魂よ。我は汝らを導きし先導者にして管理人。肉体は静かに眠り、魂は冥界で裁きを受けるだろう」

 

 聖句を高速で唱え地面から包帯を大量に生み出し少女たちドーム状にした包帯で覆い隠す。

 狼の群れはその牙と爪で包帯を噛み千切り、斬り裂いて行くがそれよりも早く包帯が生まれ空いた箇所を隠していく。

 

「せっかくだ、掌握が進んだ権能の効果をお披露目と行こうか。その身を隠す。狙われる我が身を茂みに隠す。草木に隠された我が身はたとえ神だろうと見つけることは叶わない」

 

 ドーム状の包帯は薄い緑色に輝き包帯が空気に溶けるように消えていくと中から現れたのは少女たちではなく。茂み、緑に輝き草木の揺れる茂みだった。

 

 アヌビスの権能『監督官の冥狼(ストゥム・ソウル)』の新しい効果である『身を隠す茂み』。

 発動条件は包帯で一定の範囲を覆い聖句を唱える事、ただし中に生物が居なくてはならない。一度発動すれば解除するか茂みの中にいる者が自分の意思で出てこない限りは外からの攻撃を受け付けない。破れるとしたらアヌビスの神話に関係する権能くらいだ。ただ面倒なことに『身を隠す茂み』を使っている最中は包帯が使えなくなる。理由は恐らくアヌビスは生まれてすぐにセトに殺されないように母親のネフティスの手によって茂みに隠された。その後成長したアヌビスはミイラを作る神になったつまりミイラ作りの神になる前の状態を表現した効果だからだろう。

 

「お前等そっから出てくるなよ、出てこない限りは安全だ。リリアナお前が指揮を取れ迎えが来たら他の奴らを連れていけ」

「分かりました。ご武運を!」

「さて、待ってくれてありがとよヴォバン侯爵」

「なに、観客が居ないのつまらないが、負けた後で守っていたことを言い訳にされては堪らないからな」

 

 ガゥ!

 

 少女たち狙っていた狼の群れは標的を流樹に替えて襲い掛かってきた。

 『妖狐の覚醒(ウェイク・キュウビ)』の聖句を唱える。

「本物にして偽物、この体に宿すは革命を示すものにして、九の尾を持つ妖の王」

 頭に耳と腰の辺りから生えた九本の尻尾。

 尻尾を鞭のようにしならせ狼をなぎ払う。吹っ飛ばされた狼は元からいなかったかのように消えてなくなった。

 

「狼は権能なのは間違いないけど、どこの神の権能だ」

 狼ならフェンリルが有名だけど、フェンリルが普通の狼を従えたなんて話は読んだことないしな。

 

「私の狼を簡単に倒すか、なら次は私を楽しませてくれた強者たちを紹介しよう」 

 パチン、と指パッチンをして合図を送ると、ヴォバン侯爵の影が伸びて影から出てきたのは人いや死者たちは、甲冑を着た騎士やローブを着た魔術師たちだった。

 

「死者を縛る権能か」

 死者達たちには呼吸も無ければ鼓動も無い。おそらく、感情すら無いだろう。

 

 ウオォォォォ!!

 

 パンデミック映画のゾンビのような声を上げながら手に持つ剣や斧を振りかぶり斬りかかってくる。

 死者に対しては『監督官の冥狼』の包帯は強力な対抗手段となるが、今は『身を隠す茂み』を使っているため使えない。残る権能は今発動している『妖狐の覚醒』と『明星の光源(ルミナス・スター)』の二種だが、『明星の光源』は使っても大した威力は出ないだろう。

 

 流樹は爪と尻尾を動かし攻撃を防ぎ、死者たちをなぎ倒し、放たれる魔術を避けながら空を睨んだ。

 そこには輝かし太陽の姿はなく、分厚い雨雲で隠され次第に強くなる雨があるくらいだった。

 

「ヴォバン侯爵と俺の相性は最悪だな。立っているだけで権能の効果が半減する」

 『明星の光源』星の、引いては太陽の光を源とした権能。太陽が隠されれば効果が落ちるは必然だった。玉藻前やドニの時に見せた上空から光鳥を落下させる技は今回は期待できない。

 

「さあ、新しい王よ。どうやって私を退けるか見せてもらおうか!」

 ヴォバン侯爵の感情に比例した嵐は激しさを増した。

 

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