Fate/stay night ~The Ash,Fire of Vanished world ~   作:冷たい谷のグンダ

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 よう、あんたか。まだ無事なようで、何よりだ。
 
 どうも。まあ、二週間に一話の定期で投稿しているわけですが・・・・・・。なんか、二週間って長いような気がする。なんか余裕がありすぎて、あんまり筆が進まないので、次は10日ごとにしてみようか、と少し考えました。
 10日後に投稿されれば、そういうことで。されなかったら、まあ、そういうことだったんだなと。

 一話の方で誤字があったようです、誤字報告ありがとうございました。現在修正済みです。

 読んでくださった皆様に、感謝を!

 話が長くなった。始めようか。じゃあ、よろしく。


            決定

「ん、もう、朝・・・・・・・?」

 

 ・・・・なんだか、だるい。ぼんやりとした意識のまま窓に視線をやると、とっくに日が昇っていた。

 

「・・・・・・・・・・・ああ、九時過ぎてる・・・・・・遅刻どころの話じゃない・・・・・。今日はサボろう。」

 

 ベッドからもそもそとはい出して、少し伸びをする。ふと、おろした手の甲に浮かび上がる二画の令呪が目に入る。

 

「わたし、なんでか二人のサーヴァントを呼び出したのよね。しかも、どっちもセイバーじゃなかったし。おまけにどっちも自分のことがわからないなんて、ああ、なんかいきなり頭痛くなってきた。」

 

 とりあえず、二人に掃除を頼んでおいた居間に向かおう、と思い立ち上がると、座っていた時にくらべてダルさが・・・・・・・。

 

「はあ、だるい。・・・・・・・召喚で魔力を持っていかれたかぁ。」

 

 どうやら、体の中の魔力の半分近くは持っていかれてしまったみたいだ。でもそれ以外に異常はなし。

 今日は、綺礼のところにもいかなきゃならないし。そう考えると少し憂鬱。

 考え事をしながら、歩いていくと綺麗に直された居間の扉の前についた。正直なところ、直す前の状態よりも少し綺麗。そのまま、扉をあけ放つ。

 

「・・・・・・うわ、見直したかも、これ。」

 

 扉だけじゃなくて、中もすっかり元通りだった。

 せめて瓦礫ぐらいは片付けさせよう、と思っただけだったから、ここまできれいになっているなんて思っていなかった。あんなことを言っていたけど、居間をめちゃくちゃにしたことを気にしてたんだろうか? でも、正直二人いたとはいえ、ここまでしてくれるとは思っていなかった。

 ――――――殊勝な心掛けというか、やっぱり、わりといい奴っていうか。

 

「日はとっくに上っているぞ。また、随分とだらしがないんだな、君は。」

 

 そして、件のサーヴァントはまた偉そうに椅子に腰かけ、紅茶をたしなんでいた。勝手に人の家のカップを使って。・・・・・・・多分、茶葉も。

 

「おはよう。アーチャー。だらしがなくて悪かったわね。」

 

 前言撤回、このふてぶてしさ、どこに殊勝な心掛けがあるっていうのか。

 

「アンタ、随分とリラックスしてくれてるみたいね。居間を好き勝手に使ってくれちゃってさ。」

「なに、一晩過ごした部屋だからな。だいたいではあるが、どこに何があるかは把握したよ。ああ、ついでだから厨房も片付けておいた。少し汚れていた程度で、思っていた以上に綺麗な状態だった。一人暮らしの洋館にしては上等だな。」

「どうしてサーヴァントのあなたに生活をチェックされなきゃいけないのよ、わたしは。」

 

 サーヴァントっていうのは、基本戦うコトしか頭にないっていうけど、コイツ実はサーヴァントとして欠陥品なんじゃないだろうか・・・・・・・・?

 

「・・・・・なるほど、どうやらその様子を見る限り、まだ本調子ではないようだな。昨夜は元気だったように見えたが、睡眠をとって疲れが出たのだろう。

 ふむ、私が入れた紅茶でよければご馳走しよう。無論、茶葉を仕入れたのは私ではないが。」

 

 勝手知ったる人の家。

 

 わたしの返事も聞かず、アーチャーは立ち上がると、淀みのない仕草で新しいティーカップを持ち出して、上等な赤色をした紅茶を淹れている。

 正直、言いたいことはたくさんあるんだけど、不思議と何も言う気にはならなかった。洗練された動き、そして、まあまあ気が利いているわけだし。

 椅子に腰を下ろす。

 

「カップは温めていないが許してほしい。」

 

 流れるような所作でアーチャーの手から、ティーカップがわたしに差し出された。とりあえず、一口だけ口に含んでみる。

 おいしい、口からこぼれた。わたしのお気に入りの茶葉の一番おいしいところなんだから、まずく入れられたら怒る。けど、ここまでおいしいとは思わなかった。

 

 そんな私を見てアーチャーは少し口元を緩めた。

 

「・・・・・・・ちょっと、なに笑ってるのよ。」

「いや、なに。たいしたことではない。」

「ねぇ、そういえばレイダーは? 姿どころか気配も感じないんだけど。」

「彼なら、地下室に行くと言っていたが。」

「何のために?」

「さあな。そこまでは聞いていない。・・・・・・ん、どうやら彼も来たようだ。」

 

 コツコツと廊下から足音が響き、部屋の前で止まった。

 

 そして、ぎぃ、と扉を押し開けた人物は騎士甲冑のレイダー。

 ではなく、見知らぬ青年だった。

 

 その青年の容貌は、アーチャーと似たような色のすすけた灰の髪、西洋系の均整の取れた顔立ち。また、やけに白い肌。きわめつけに、深淵の闇を思わせる両の黒眼に、燃え上がる円環が浮かび上がっている。でもって、なんとも高そうな金の刺しゅう入りの鎧をまとっていた。

 青年は、私の存在を認めると漂わせていた異様な雰囲気を引っ込めて、その代わりに軽く笑みを浮かべる。どことなく、人懐っこい笑みではあるのだが、どこか影を感じずにはいられないような、そんな印象を受けた。

 

「――――――おお、目を覚ましたか、貴公。ん? どうしたのだ、そのような顔をして。」

 

 唐突に声をかけられて我に返る。

 

「あなた、レイダーであってるわよね?」

「無論だ。逆に問うが、他に誰がいるというのだ。アーチャーは此処にいるし、それに彼なら敵対するサーヴァントが侵入したとあれば、寝ている貴公を即座にたたき起こすだろう。」

「それもそうか。にしても・・・・・・。ふぅん、あんたってそんな顔してたのね。」

「あんまりじろじろと人の顔を見るものではないぞ、マスター。その行為はたとえ相手がサーヴァントであったとしても、失礼にあたるのではないか?」

 

 いつの間にか私の後ろに立っていたアーチャーが、私の服の襟をつかみ、私を持ち上げた。

 

「アーチャー? 自分のマスターを、まるで猫か何かみたいに摘み上げるという行為は、失礼に当たらないのかしら?」

「む。確かにそうだな。失礼した、マスター。」

 

 持ち上げる力が少し緩んで、下ろされた足が床につく。持ち上げられた拍子に足から落ちてしまったスリッパを履きなおしながら、アーチャーをにらみつける。

 

「まったく、アンタは。わたしは、一応アンタのマスターなんだから、少しくらい遠慮じゃないけど。敬うじゃないけど、そういう気遣い的な感情を持ったらどうなの?」

「善処しているつもりだが。」

 

 これで善処しているって、いったいどんな神経してるのやら・・・・。昨日は、私をマスターとして認めるって言ったくせに。正直、アーチャーにはこれ以上、何かを言っても意味はないんじゃないかと思う。

 まったく、もう。

 そのまま、わたしはレイダーに向き直って、地下室で何をしているのかを聞き出してみる。

 

「で、レイダー。あなた地下室で何してたの。何か気になるようなものでもあった?」

「ああ、なぜ貴公が二人のサーヴァントを同時に呼び出せたのか、と思ってな。私なりに召喚について調べ、考えてみた。その中で、わかったことが一つだけある。」

「何か一つでも分かったの!?」

 

 まさか、だ。マスターである私でさえ理解すらできなく、原因は何一つわからないっていうのに、レイダーは一つでも見つけてみせたっていうんだから。

 まあ、まだ自分で調べてすらいないんだから、この状況がどうして発生することになったかなんて、理解なんてできるはずもないか。

 

「一体、何がわかったのか教えてもらえる、レイダー。」

「無論だ。」

 

 ―――どうやら、とレイダーはそこまで言って口を閉じ、また開いた。

 

「何もわからぬ、ということが分かった。」

「―――はあ!? なにそれ、アンタわたしを馬鹿にしてるの!? 分かったっていうからちょっと期待したのに!」

「馬鹿にしているつもりなど一切ない。現状として、我々がどれだけ力を尽くしてこの状況を解明しようとしたとしても、何一つとしてわからぬだろう。貴公の言う”協会”の連中ならどうかは分からぬが、間違いなく、今の我々には突破口どころか、この状況がなぜ起きたのか、その糸口を見つけることすらできないだろう。」

 

 ここまで言って、最後にレイダーは、力になれなくてすまないな。とこぼした。

 

「それなら、仕方ないわ。わたしこそごめん、あなたはあなたなりに調べてくれたのよね? それなのにあんな態度をとって。」

「気にしていない。」

 

 レイダーは何でもなさそうにいう。というよりは、なんかどうでも良さそう・・・・・・・。まるで自分がそれを言われたわけではない、みたいな感じ。

 

 少しの沈黙。この沈黙をどうにかしよう、と思ったわたしは新たな話題を出す。決して逃げようとか、そんなつもりはないけど、この空間はちょっと・・・・・・・。

 

「ね、そういえば。アンタ達二人とも、記憶は少しでも戻った?」

 

 二人のサーヴァントは、各々で否を示すジェスチャーをした。

 

「そっか、まだ何も思いだせないか・・・・・・・。」

 

 これも、綺礼に聞けば何とかなるかな。ならないにしても、何か少しでも解決の糸口でもつかめればいいのだけれど・・・・・・・・・・。二人のどちらがわたしのサーヴァントとして認められるかは分からないけど、二人を不完全な状態で召喚してしまったのはわたしだ。

 わたしの一人の手でなんとかできるとは思っていないけれど、敵になるにせよ、味方になるにせよ、すこしでも聖杯戦争での不利を減らした状態にしてあげたい。わたしだったら最初から不利な状態でスタートだなんて嫌だもの。

 

「分かった。それに関してはわたしの方でなんとか対策を練ってみるわ。たとえ、どちらかが敵になったとしても、貴方達を召喚したのはわたしなんだもの。それくらいのことはさせて?

 あと、とりあえず今日は協会に行きましょう。 そこであなた達二人に対しての判断を仰ぐことにするわ。

 だから、いつでも出られるように準備をしておいて、アーチャー、レイダー?」

「相、分かった。」

「ああ、了解した。マスター。」

 

 その後、結界を家に施し敵の侵入を感知できるようにしてから家を立た。その時に知ったことだが、どうにもレイダーは霊体化が”できない”らしい。

 さっと目の前で霊体化してみせるアーチャーに対し、再び鎧をまとったレイダーはなんとも堂々と玄関の扉を開けようとする。

 

「ちょ、ちょっと。待ちなさい。あんた、その恰好で外に出るつもり? そんな恰好で出歩いたら、一発で他のマスターにサーヴァントだって気付かれちゃうわよ。それに、一般的な人間から見ても異常よ、その恰好。すぐに警察とか呼ばれちゃうわ。

 あまり目立つような行動したくないんだから、何とかして。」

  

 そんなわたしの言葉を聞いたレイダーは、ふむ、それもそうだな、と呟く。が、少しの間をおいて今度は、だが、と口を開く。

 

「問題ない、存在の秘匿を行う程度、造作でもない。」

 

 と言い、――――――レイダーはおもむろに虚空から”魔力を帯びた結晶に覆われた鈴”を取り出すとボソリと何かを呟くと、チリンチリン、と二回鳴らした。

 すると、突然として目の前にいたレイダーの体と気配が消えた。

 

「それ、魔術? 存在の秘匿の魔術ってすごいわね。しかも、ほぼほぼ無詠唱って・・・・・・・・。

 それに魔術刻印なんて持ってないわよね。

 ―――はぁ、あなたがどんな英霊だったのかわからないのが、ちょっと悔しいかも。」

「何、貴公であれば、優れた師から学べばすぐ使えるようになるだろう。私が知っている魔術は触媒とコツさえつかめれば、そう難しいものではないらしいからな。・・・・・・・・私はコツをつかむのに、時間がかかったが。」

「そのようなこと、こんなところで突っ立ってなど居ずに歩きながら話せばよかろう。」

 

 すでに霊体化したアーチャーがいら立ったような音を出す。

 

「わかったわよ、行きましょう。」

 

 二人のサーヴァントを連れ、わたしは協会へ向かった。

 

――――協会。

 

 ここは、冬木郊外にポツンと建っている無駄に広大な土地を持つ教会。バシリカ式協会堂と呼ばれる様式を採用してあって、景観や外見こそ綺麗なのだが、参拝者が来ているのをわたしは一度としてみたことがない。近づく者すらいないような、もはや存在の認識すらされていないようなレベルで、人がいるのを見たことがない。

 地脈的にはどうも人が近づきにくいような傾向はあったけど、人払いの結界が張られていたような痕跡もなし。にもかかわらず、まったく人気がない。・・・・・・・まあ、私たち魔術師にとっては都合の良いことこの上ないけど。

 それに、この教会の主は”エセ”だからか、まったくもって気にしている様子はないみたいだし。

 

「―――――綺礼、いるーーー?」

 

 ぎぃ、と見た目よりは軽い木の扉をあけながら中に呼びかける。昼間だというのに協会の中は真っ暗で明かりといえば、祭壇の奥にあるいくつかのロウソクだけだ。

 そのうちの一つがふわりと宙に浮き、こちらに近づいてきた。

 

「来客の約束がなかったからだれかと思えばお前か、凛。」

 

 ロウソクと開け放たれた扉から差し込む太陽の光に照らされ、声の主の姿が顕わになる。久しぶりに顔を見たと思ったけど、まったく変わりが無い。相変わらずの何の面白みもない黒い神父服と首から下がる十字架。そして、その辛気臭さをとっても何一つ変わりようがない。

 

「まったく、再三の呼び出しにも応じず、やっと顔を出したかと思えば。どうにも、トラブルの一つや二つでも抱えてきたように見える。」

「久しぶり、綺礼。辛気臭いのは変わらずなのね。あと、トラブルの数は三つ。」

「三つとは、また・・・・・・・・・。お前は、よくよく私を困らせるのが好きなようだ。」

 

 露骨に面倒くさそうな雰囲気を出した綺礼だが、追い返そうという意思は感じない。わたしの知ってるこの男は、こういうやつなのだ。

 

「で、お前の持ってきた”モノ”とはいったいなんだ? お前が私を頼るのは、これが初めてだ。私に可能な範囲であれば協力してやろう。」

「じゃあ、まずこれは報告なんだけど。サーヴァントの召還について、これは成功したわ。」

「そのようだな。一応、確認しておくが一体どのクラスのサーヴァントを召喚したかわかっているのか?」

「アーチャー、――――。」

「そうだ、その通りだ。つまり、残りのサーヴァントはセイバーの一騎。これで―――」

「待って。わたしが召喚したサーヴァントは一騎じゃないのよ。まず、これが一つ目のトラブル。」

 

 続けてのわたしの言葉に綺礼は少しの動揺を見せたが、すぐにいつもの様子に戻ると口元をつり上げた。

 

「・・・・・・・・・冗談とは。お前が私に冗談をいう日が来るとは思っていなかったが。」

「冗談じゃないし、嘘でもないわ。信じられないっていうんなら、実際に見せてもいいわ。」

 

 わたしは腕を振り上げて、霊体化しているアーチャー、魔術によって姿を消しているレイダーを実体化させようとした。のだが、わたしが声を発する前に綺礼は、待て。と手を軽く突き出し、私を止めた。

 

「いい。お前のその態度を見て、嘘をついていないということは理解した。では、お前はアーチャーと、それ以外のサーヴァントの二騎を召喚したということでいいか。」

「そうよ。でも、もう一騎のサーヴァントはセイバーじゃない他のクラスのサーヴァントだ、っていうのよ。」

「しかし、私たち監督役が管理している霊器盤には、お前の言っているサーヴァントの情報は伝わってきていない。

 ・・・・・・・・まさか、エクストラクラスの召喚にでも成功したとでもいうのか? 確かに、エクストラクラスが召喚された場合は霊器盤に情報が伝わらないこともある、ということもあるらしいが。だが、もしそうだとしてもエクストラクラスは、三騎士のクラスまでの干渉はできないはずだ。」

 

 先ほどよりも確実な動揺をみせた綺礼は、顎に手をかけ、眉間にしわを寄せる。訳が分からないみたいな顔をされても、わたしに分かる訳がない。というより、わたしがそれを聞きたくて来たのに、あんたがそんな調子でどうするのか。

 

「わたしも、それをアーチャーから聞いて驚いたの。これが、二つ目のトラブル。そして、三つ目。

 どちらのサーヴァントにも共通して、記憶がない。まあ、これはどうにもわたしのせいらしいから、三つ目に関してはわたしの手でなんとかしようと思ってるけど。」

「ほう、なかなかに面倒な状況なようだ。そして、おまえ一人で解決できる程度の問題ではないということも理解した。」

「ええ。だから、あんたのところまで来たの。今回の監督官のあんたのところに。わたしは一マスターにすぎないから、聖杯戦争のルールについて干渉できないし、あんたの指示を仰ごうと思ったのよ。」

「まあ、一つ目については対して問題は無かろう。たとえ三騎士が揃わなかったとしても、現存するサーヴァントの騎数は、これで七騎。聖杯戦争のルール”七騎のサーヴァント”の参戦。ルール通りだ。」

「いいんだ? 意外とそこらへんはアバウトなのね。」

「ああ、騎数があっていれば問題はあるまい。多少のイレギュラーであっても、基本はルールに違反するものではない。ここで問題になってくるのは、凛。お前が二騎のサーヴァントを同時に所有しているということだ。

 今回、協会から監督役として派遣されるにあたって、イレギュラーへの様々な対処法を聞いてきたが、開始時点で二騎のサーヴァントを持つマスターへの対処法はさすがになかった。

 まあ、私個人の意見としてではあるが、それはそれで良いとは思っている。無論、引け目は感じるかもしれないが、開始時点で他のマスターとの戦闘において優位を保てるというのは非常に大きい。

 それに、お前も知っているだろうが、マスターとサーヴァントの関係を断ち切るには、令呪を全て使い切るか、サーヴァントが消滅するか、マスターが死亡するかのいずれかだ。いずれも、デメリットしかない。また、今ここでお前が退場したとしても、これ以降、他のマスターが参戦するかは、極めて怪しいところだ。」

 

 そこで綺礼は言葉を区切りこう続ける。

 

「まあ、お前に退場する、という選択肢は存在しないのだろうが。」

 

 あたりまえだ。今回の聖杯戦争のために十年も待ったんだから、退場なんてあり得ない。今回を逃したら、次の聖杯戦争はいつになるかわからない。それでは、お父様の悲願の達成なんて到底成し得ない。

 

「そうね、退場する気なんてこれっぽちもないわ。」

「では、このまま聖杯戦争に参加しろ。イレギュラーとはいえ、召喚されたサーヴァントの騎数はこれで七騎。聖杯戦争の開始の規定数七騎に達した。

 今この時をもって、凛。特例として、お前が二騎のサーヴァントを所持し、聖杯戦争に臨むことを協会は認めることにする。また、これ以降、お前があまりにも大きなルール違反を犯さない限り、協会は関与しない。励むことだな、凛。」

「それでいいの? あなたの独断で決めてしまっても問題はなし?」

「問題ない。今回の聖杯戦争の采配は、すべて私に一任されている。無論、聖杯そのものに関することならば、こちらで決めるわけにはいかぬ。が、この程度であれば、こちらの独断で進めても問題あるまい。

 そして、最後の問題についてだが、それに関しては私の知るところではないし、どうにかできるという事もない。

 さあ、これで問題は解決だ。

 すでに、幾人ものマスター達が動き出している。全ての願いの源は聖杯。聖杯をめぐる戦いはもう始まった。それは、最後の一人になるまで続く。

 さて、もう用事もないだろう、さっさと出て行け。私はこれから、祈りを捧げなければならない。」

 

 腑に落ちないようなこともあったが、これ以上はどうしようもないだろう。何よりも、今後の二人の扱いについても協会から許可も出たことだし、さっさと行動を開始しなければ。

 サーヴァントが二騎を扱うことができるっていうのは、大きなメリット。だけど、他のマスターよりも出遅れてしまったというのは、そのメリットを相殺するくらいでかい。急いで準備を整えなきゃいけない。

 

「分かった。ありがと、綺礼助かったわ。」

 

 礼を言って協会を出て後ろ手に扉を閉めるとき、かすかに――――――面白くなりそうだ。という声が聞こえた気がした。

 外に出たわたしは二人のサーヴァントに声をかけ、これからの動きを二人に伝えることにした。




これで、凛視点(プロローグ)は終了です。
 今回の内容、見ていれば確実にわかると思いますが、オリジナルの展開にになったとたんに一気に陳腐さが出てきましたね。 まあ、こんな感じで駄作の匂いがプンプンしだしたと思いますが、それに耐えられるという方はどうぞよろしくお願いします。

今回の話の中で、レイダーの姿が消えた魔術についての補足

「見えない体」
 その名の通り、体が透明になる魔術です。
 ゲーム本編では、半透明になるのですが、こっちでは完全に見えなくなるという設定にしました。

「隠密」
 読んで字のごとく、足音を消す魔術です。また、それとは別に落下ダメージをなくす効果もあります。
 本編では、足音を消す+落下ダメージ無効なのですが、こっちでは落下ダメージ無効と気配を消すを交換して、足音+気配を消すにしました。
 だって、せっかくサーヴァントになったのに、落下死で YOU DIED なんて悲しすぎますし。

「結晶に覆われた鈴」
また物語の中で解説するので、こちらではしません。ボルガ博士、お許しください。

 以上、今回の補足終了!!

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