煩悩の焔も満ちて今ここに目覚めし魂
和歌山県、御坊市日高郡日高川町にある道成寺。『安珍・清姫伝説』が語られる場でもある。実際、存在するかしないかは置いといてここに清姫の墓が供えられている。道成寺には千手観音が置かれ迫力のある演出が見学に赴く人に魅了効果が発動。見てよかったなと写真を撮れない惜しさに帰路へ向かう。それでまた見たいと道成寺へ向かうのだ。絵巻で『安珍・清姫伝説』の説明も執り行っておりそちらも人気らしい。
道成寺に住んでいる住職、桜井安嗣の息子桜井 沙嗣(すなつぐ)は寺を出て行って魔術を終らせたいと願っていた。なぜならば両親を友人を魔術の手によって抹殺されたからだ。運が悪く観光で来た外国が魔女戦争、表向きはゲリラ戦として扱われていたが…。とにかく魔術を行使した戦争は醜いものだった。当時、名前は和喜だった。
「和喜!早く!逃げて!!!」
「裕樹!見捨てられないよ!!」
「君!その子から離れるんだ!!」
刹那、おじさんの声が聞こえたかと思ったら裕樹の体が黒く汚染されまるで夢でも見ているかのような…悪だった。業火の地、両親の叫び、友人の謎の死。当時5歳だった和喜には1度には整理し難い内容だった。受け止めきれず放心状態。そんな中もう1人のおじさんが
「切嗣…こいつあ、奇跡だ!この子1人が生きている!!!あんたの願いとは程遠いが…これは救済と言える!!」
「何言ってるんだ、僕はこの街を救えなかったから正義の味方失格だ。つい、三時間前に会った人もこの中にいると言うのに…詩蓮…それは救ったとは…言えない救済の欠片だ断片に過ぎない」
「しかし!俺は!俺達は…まぁ、いい。ここを片付けてからにしよう…」
おじさんこと、里見詩蓮は白魔術と黒魔術を交互に扱える魔術師だ。もう1人のおじさんは衛宮切嗣。切嗣は心臓の鼓動を遅らせたり、自身の速さを速めたりする能力を持つ魔術師だ。切嗣が魔術師になれたのは殺した父親の遺体から魔術刻印の1部を2割ほど継承したというのもある。
「…後は我々がやる…」
「…っ、魔術協会っ!」
「なにも言わずに下がっていろ里見詩蓮、衛宮切嗣」
名前も素性も明かさないかのような格好に切嗣と詩蓮は息を飲む。切嗣は昔、見たことがあったのだがよく覚えていない。
「僕は、救いたいんだ…」
「…!よせ、切嗣!今は抑えろ!」
切嗣が沸騰する前に詩蓮が抑える。それを見た魔術協会の1人は嘲笑うかのようにこの魔女戦争を終焉へと導かせた。
魔女戦争から半年、切嗣と詩蓮は日本へ一旦帰還する。詩蓮の地元は和歌山なのでまず先に和歌山の日高川町に足を運んだ。
「久しぶりの日本は良いな…!なぁ、切嗣?」
「あぁ、僕もそう思うよ。しかし、長居は出来ない。聖杯戦争が待ってるんだからな1度アイリの所に戻るとするよイリヤも待っているだろうし」
「あぁ、ホム…いや、あんたの嫁さんか写真みたけど初々しうて可愛かったぜ…子供さんもよ」
「悪いが君には渡せないよ」
それはどういう意味だ?と詩蓮は言おうとしたが愚問だと感じ言わないで微笑した。
「あ、またお前1人で行動する気?」
「いや、1人サポートしてくれる人がいるよ」
「あ、さてはまた女の人だな?」
「まぁ、そんな感じかな」
喜びも悲しみもないトーンで切嗣は言った。
和喜は今、詩蓮の背中(だっこ状態)で寝ている。なんとも可愛らしい姿だ。
「じゃあ、僕はこの辺で知り合いの人の所は解るね?」
「地元の人間を舐めてもらっちゃ困るね」
「なら、良いんだ僕は早急に戻らなきゃ行けないから君の知り合いの寺には挨拶出来ないからよろしく伝えて欲しい」
「…解った」
切嗣はそう言いどこから来たのか迎えの車が道路の端に止まっていた。クラシックな感じな車だなと詩蓮は和喜を起こさないようにその車を眺める。
「もしかして…さっき言ってたサポート役ってあの女の人か?くーっ、モテやすねぇ!!」
おっと、と詩蓮はバランスを崩しそうになりショートヘアの女の人を少し見つめる。…目が合い向こうから軽くお辞儀したのでこっちもお辞儀で返した。
車は和歌山を後にし冬木へと向かった。
「なんやかんや言って恵まれてるよあんた、切嗣」
詩蓮はそう言い残し和喜の養子を引き受けてくれる知り合いの道成寺に足を運んだ。
こうして桜井沙嗣は生まれたのである。
「はぁ、この寺を継ぐ気はないと。だから、外国へ留学しに行ったんだな?沙嗣」
「あぁ、外国に行ってまでやりたかったことがあったからな。ボランティアとかその他諸々…。そんで、この日本で観光ガイドを通訳的な役割で仕事をしたいと思っている」
「何を言うのかと思えばまたそれか…留学の功績は認めるが…」
「しかし!だったら!!」
沙嗣は息を上げる。我慢出来なかったら拳をハゲ頭に喰らわせるところだ。この彼の将来の夢は親を説得させるための罠的処置。本当は聖杯戦争を行える万全な体にするために留学し今年始まる冬木の聖杯戦争に向けて準備するために上京したいという。
「あのな、沙嗣。21歳にもなってバカバカしいとは思わんか?大学で仏教の事学んでるんだろ?どうなんだ?」
「あれは、スペアだ」
「そうかそうか、自信ないのだな?観光魂が…まぁ、それは止めて素直にここに継ぐことだ」
「くそっ!だったら!」
魔術を展開しようと思ったがここではマズいと我に帰り自分を止めることに成功する。
「ふっ、なにをするのかと思えばワシに暴力を拳を喰らわせるつもりだったか。21歳にもなってこれとは情けない」
「〜!だったら、もう出ていく!」
「…あてはあるのか?」
安嗣は笑いながらないだろうと思いながら訊ねた。しかし安嗣の期待を裏切り彼はこう言った
「あてはあるさ」
安嗣はその自信ありげな一言に怒りを覚え背中に苦痛を覚えながらも立ち上がり安嗣は怒りの一言を言う。
「じゃあ、出ていけぇ!!!荷物まとめてなぁ!!!でけ!!!!!」
「言われなくてもっ!!!」
沙嗣は待っていたのかと言わんばかりの部屋の出方に安嗣は文字通り腰を抜かした。
沙嗣は今日、和歌山県から家を道成寺の家を出て行った。遠家出。
沙嗣は無事に冬木に着き安堵する。親の事を考えるとモヤモヤするがそこは後回しにしようと脳みそ倉庫の奥へ仕舞った。親には日々感謝しているが親が親なため意見の相違が生まれ喧嘩になる。それが5割の確率で発生するので蓄積され嫌気がさした。そして今に至るわけだ(しかし今回はイレギュラー)。
沙嗣は深呼吸しもう始まっているであろう聖杯戦争の舞台冬木に鋭利な刃物で刺すような目付きで景色全体を見渡した。
夜刻、沙嗣は召喚の術式を展開させ沙嗣は息を整えて--
『 素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
みたせ みたせ みたせ みたせ みたせ
閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
―――――Anfang
――――――告げる
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!』
自分でもこんなに上手く詠唱できるとは思いもしなかった。やはり成果の賜物だなと自負しながら己の令呪を見つめる。
「さて、そろそろ…」
「…後ろですよ…」
女性の声が後ろから聞こる。透き通っていて怖いぐらいに聞こえる聞こえの良い音。一言で言うと雪女。魂を持ってかれそうな雰囲気を背後に感じ取る。別に震えている訳ではないが沙嗣は刹那の速さで後ろを振り返った。
「問いましょう?其方が私の、マスターですか?」
着物を着た女性はなんとも幻想的で、才色兼備という言葉が似合うであろう方だった。全てを知っているかのような笑みを浮かべ沙嗣に恒例の挨拶をする。
「あぁ…間違いない…!あんたが俺のマスターだ!!!バーサーカー!!!!!」