昔昔、山の翁という暗殺集団がいた。教主ハサン・サッバーハは異名『呪腕のハサン』と呼ばれていた。彼自身仕事をこなしているだけなので殺人に哀楽を求め犯している理由(わけ)ではないためその点では下の下ではない。そんな彼の聖杯の願いは顔と名前を戻す事。ハサンは生前顔と名前を捨てお面を被りお面と共に行動していた。彼自身その行動に悔恨の念、後悔している。長いため息がつくほど悩んでいるのだ。
ハサンはマスターは絶対裏切らない、最後の時まで必ず行動する、無茶な命令でも訊くという暗殺心とはくっつきにくい心を持っている…。
「おい、ジャック」
「鉄炮塚、なんで、ございましょう」
今回のハサン・サッバーハ(以下、呪腕のハサン)のマスターは鉄炮塚健司。彼は小説家で魔術を題材にし面白おかしく書いている。鉄炮塚がなぜこんなに魔術についてリアルに書けるのか…それは彼が魔術師だからだ。一般人にはそんなに魔術が本当にあると認知されていないため娯楽として読書してくれる。彼らの無知さで直木賞を獲得したと言っても過言では無いと下劣な考えを持つのが鉄炮塚健司。
話に戻るがなぜ鉄炮塚がハサンの事を『ジャック』と呼んでいるのか…?という疑問を解決するとしよう。ヒントを与えよう。名字、鉄炮塚はペンネーム。それを呪腕のハサンが聞きピーンと頭に何か閃きの光が灯した…。解答フェイズへ移行しよう。そもそも『ジャック』というのは『ジャック・ザ・リッパー』からとったもので鉄炮塚が自分の名字が『真名』じゃないからと比喩し、そう聞いた呪腕のハサンが思い付いたのは『偽名同士の信頼』だ。それに意味あるのかと突っ込みたいところだが彼らにとって遊びの範疇。この遊び心あってこその信頼。これで聖杯戦争がスムーズ、円滑に進める事が出来ると思ったのだ。
「その宝具とやらは使えるのか?」
「私、その、宝具に、誇り、思っている」
「ふふふ、そうかそうか。ならそれを信じよう。まぁ、ジャックが負けてもスポーツマンシップに乗っ取り行動するのが我のモットーだからな…。責めはしないさ」
「ありがたき…」
呪腕のハサンは笑い返し一礼。
「…本当にその仮面の中を見てはならぬのか?」
「だめ、絶対、たとえ、マスター、許せない」
鉄炮塚は我ながらいい考えだと口にこぼしてしまいそうな不敵な笑みを浮かべる。
「令呪で命令、してもか?」
刹那、呪腕のハサンは投擲を鉄炮塚の首筋に掠める。鉄炮塚の耳元でこう呟いた。
「これが、答え」
鉄炮塚は両手をあげ抵抗しない姿勢を見せる。呪腕のハサンは解ればいいと言わんばかりの動きをした。投擲をゆっくり静謐に仕舞ったのだ。鉄炮塚は冷や汗を掻きながら
「ふぅ、解ったよ。頭冷やしがてら執筆しているからジャックは気配遮断とかでも使って他のマスターとかの様子やらを見てきて…」
と命令。鉄炮塚は本気で死にそうな顔をし過呼吸を抑え普通の呼吸へと変換させる。
「御意」
呪腕のハサンは静かに霊体化し去っていった。