「やっと1人脱落…か」
沙嗣はピアノ専用の椅子に座り楽譜を見ながらそう言った。もう1、2週間経っているのにまだ1人しか脱落していない。あまりにも遅すぎる。1年かかりますと宣言されても納得してしまう。まさか、本当に1年かかってしまうのか??
「あまり、自分を環境を責めない事ですよ」
「あぁ、解ってるよ。清姫…」
清姫はフフッと微笑みスーッと姿を消す。沙嗣はふぅ、とため息をつき演奏し始めた。『木星』だ。この曲を弾けば心が落ち着く。ピアノを習い始めてからそれをやってきた。自然と浄化され嫌な事が無かった事になるような…錯覚..
「こんなもんかな」
沙嗣は、よしっと弾きながら思った。美しい。確かに音色は美しいが…どこか外れているそんな感じにも聞こえる。それは沙嗣が焦っているから?沙嗣の願いが塵になってしまうという不安や焦燥からなのかもしれない。本人は自覚が無いようだが。
いい汗をかきながらピアノを弾き終える。
「いい演奏ね」
「まだまだだよ」
もう、謙遜しちゃって…と秋菜は私服姿で牛乳を飲んでいる。風呂上がりなのだろう。牛乳を飲んでいるということは。なぜかこの家には丁寧にフルーツ牛乳が常備されている。それが物凄く美味しかったというのを覚えているため懐かしく微笑んだ。
「他の惑星も聞かせてよ」
「良いぞ。火星な」
拒否権は無いと冗談混じりに言う。なにそれと秋菜は軽く笑う。家中に火星が鳴り響いた。心地よい。この時間だけ聖杯戦争の事を忘れる事が出来る。
美しい。ただただそう思った。
☆☆☆
「嫌に静かね…」
清姫は透明化になりながら夜の警備をする。まぁ、ただ単に特定されていないだけというのもあるが聖杯戦争のせの字も無い。ここが本当に戦場なのか?疑ってしまう。ここは偽物で本物は別の場所でやっているのではないか??
「まぁ、安全なのはいい事なのでしょうけど…あまりにも…」
生暖かい風が吹き始めた。嫌な予感がする。
『誰』かが来る。時が動いた。そんな感じ…耳を澄ます。警戒に警戒を重ねる。まさか、逆にストーキングされていたとは…
「私はライダーです。話がしたい」
ライダー。清姫は首を傾げる。なんだその現代で浮いてそうな衣装は…と清姫は困惑したが自分も似たようなものだったので五十歩百歩という事で自己解決した。
「あらあら、私に話?確かに、月は綺麗ですけど…告白なら受け付けないわよ??もう心に決めている人がいるので」
「いやいや、そんな事はしませんよ…私はこう見えて紳士。あっ、変態紳士ではありません。普通の紳士です」
ライダーは微笑する。
「で?本題は…?」
「…本題。そうだね、2人で協力してアサシンを倒したい。マスターの命令だ。というか、マスターと決めた事だ」