「いつか、戻ってきたら…抱いてくれますか?」
「あぁ、約束するよ」
安珍は幼い頃の清姫にありもしない約束をした。そのお陰で災厄が訪れるということを知らずに。安珍はその場しのぎで約束を交わしたのか約束の日には覚えていないと清姫に言い彼女を絶望させた。絶望の感情によって生まれたのが大蛇。この大蛇は安珍を追い追い追い込み安珍諸共燃やし尽くした。
「…。夢…」
桜井沙嗣はバーサーカーのマスターになって2日目の朝を迎えた。その前夜に清姫は「あなたは裏切らないですよね?」と言った意味が翌日ようやく解った気がする。
「お兄ちゃん起きたの?また、ピアノ聞かせて!」
お兄ちゃん、と呼んだのはサーヴァントではなく生身の人間。冬木の隣町、久米次(くめつぎ)でとあるショッピングモールにあるピアノで弾いてたところ予想外の客が観ていた。それがこの小2ぐらいの女の子。今回出て行くにあたって小2ぐらいの女の子、雪菜(せつな)に厄介になっていた。無論、この雪菜に許諾を得たわけじゃなく雪菜の姉、秋菜(高校2年ぐらい)に許可を得たのだ。と言うのはここには姉妹だけが住んでおり姉が母親代わりになっているとのこと。ここに厄介になるのは胸が苦しいところが何ヶ所かあるが妹の雪菜に気に入られちゃ断るわけにもいかない。しかもその姉とはただの関係ではなく昔、ピアノの師弟関係だった。なので快く秋菜も受け入れ今こうしている。偶然を通り越して運命ではないかと目で疑うほどだ。しかし、この後の事を考えるとこんなに事が上手くいって良いのかと胸がソワソワする。悪い方向で。
沙嗣はショパンが好きなので雪菜にショパンの曲を弾かせたらかなり気に入ってくれた。幻想即興曲とかも弾かせてやりたかったがかなり無理難題だと思い練習中でもあるので諦めることに。あの曲に関しては聴いているだけでいいと思った。
「あら、前より上達してるじゃない?」
「そうか?まだまだだよ」
沙嗣は照れ隠しなのか謙遜しているのか解らない。解らないが秋菜は微笑した。
『私、ちょっと警備の仕事に行ってきます』
『あぁ、気をつけて』
清姫から伝言があったので脳で返した。近い言葉で言えばテレパシーだろうか。しかし、ここでピアノを聴いていればいいものをと沙嗣はたとえサーヴァントであっても疲れは来るだろうと心配してたがあのトーンの様子だとまだ大丈夫なんだろうなと感心する。
でも、サーヴァントの気配もマスターの気配もないこの街で何を警備するのだろう。一応念の為というのもあるしと沙嗣は考えるのを止めた。