1人の白いワンピースを着た金髪の少女が、辺り一面に色とりどりの花が咲き誇る場所に立っている。彼女は辺りを一度見渡した後、静かに歩き出した。何か目印があるわけでもないが、彼女は歩き続ける。まるでその先に何があるのか、いるのかを知っているように。
彼女がしばらく歩いていると次第に花々の中に変化が訪れた。
彼女の右前方に大きな湖が見え、その湖の上に見目麗しい妖精たちがいる。妖精たちは、彼女を一瞥すると1人の女性の姿をした妖精が美しい羽を羽ばたかせて彼女の前に飛んできた。他の妖精たちは彼女の前に飛んで行った妖精をじっと見つめていた。
彼女の前に飛んできた妖精は、言葉を発することはなく手招きをして彼女についてくるように指示し、前に向かって飛んで行く。彼女は妖精が案内してくれるであろう場所に誰がいるのかをある程度予感していながらも何も話さずに妖精の後について行く。
それから自分の体内時計で約30分ほど歩いていると、次第に高くそびえ立つ塔が視界に入ってきた。その塔はこの場所にはとても不釣り合いなもののように思える。塔は天高くまで伸び、一見脆そうに見えるがその作りはとても頑丈で、例え世界の終わりがきたとしてもこの塔だけは残るのではないかと思えるほどの塔だった。その塔の中に少し大きな鳥籠のような部屋が見えた。鳥籠の中には1人の人影が見える。はっきりと見えたわけでわないが、彼女にはそれが誰なのか既にわかっていた。
妖精はこれで自分はお役御免だと言うように、塔を指差すと彼女に頭を下げてその姿を消してしまった。彼女は妖精が指差した塔を目指して歩き続けていると、咲き誇っていた花々が急に成長し、人の姿を形作った。
「やあ、久しぶりだね」
花には発声器官などついていないはずなのに男の声がした。
その声の主は、かつての自分の師であり、多くの戦いで共に戦略を考えた戦友の声だった。
「ええ、お久しぶりですね、マーリン」
「まずは、君とのようやくの再会を祝福したいものなのだが、そうはいかなくなった。君に一つ頼みごとがあるのさ。」
マーリンと呼ばれたその人の形をした花々は、一呼吸置いて先ほどよりも少しだけ力強い声で彼女に告げる。
「君に世界を終わらせてきてほしい」
少女の思考はその瞬間に真っ白になった。確かに、自分はかつて多くの民族や龍や巨人とも戦い多くの戦争を勝利に導いて来た。
言い訳になってしまうようだが、それでもその戦いは必要なものだった。戦わなければ自分たちが殺され多くの人々が傷ついた。少女は人々に少しでも幸福であってほしいという願いから剣を取り、多くの騎士たちと背中を預け合い戦ってきたのだ。
もし、それを認めたとしたら、それはこれまで彼女が殺してきた者たちと同じ事。いや、それ以上の邪悪だ。
彼女はこれまでの自分の人生に誓って、そして、その後のあの美しくもはかない奇跡のような日々に誓って、決してそのような事はできない。少女は激情を抑えきれずに言葉を吐き出す。
「それはどういう事ですか⁈私に一つの世界を壊す魔王になれと言っているのですか⁈」
「まあ落ち着きなさい。話は最後まで聞くものさ」
彼女は荒ぶった息を整えるために大きく息を吐いた。
彼女のその姿を花越しに見たマーリンは話を続ける。
「君は王としてブリテンの終結を見た後、模倣聖杯を求めて多くの英雄たちと戦った。しかし、君は聖杯をちゃんと諦めて今ここに至った。そうだね?」
彼女はこくりと頷く。
「君は王としての人生では得られなかった経験をした。それはある少年たちとの戦いの記録の中で確かに育まれたものだ。そのことに関して、僕は彼らに感謝しなければならないね。でも、今はそれどころではなくなってしまった。いや、正確に言えば、君が出張るまでもなく、事は解決するかもしれないが、僕や妖精たちは世界の抑止力だけでは収集がつかないと判断した。君はもう一度戦わねばならない。今から君が行う戦いは世界を壊す戦いであり、世界を穏やかな終わりへと導く戦いだ」
『穏やかな終わり』それはかつて彼女が目指した国の終わり方だった。マーリンはきっとその言葉が少女には引っかかる言葉であることを認識しながら言葉を紡いだ。
人の形をした花々は彼女の見えない聖剣を指差す。
「君はその剣の鞘を持って限界してはいけない。というか出来ない。理由は説明できないが、君を送るときにおそらく自動的にこちら側に残ることになるだろう。」
もう話は終わったとばかりに人の形をした花々は踵を返し、立ち去ろうとする。
「ちょっと待ってください!あなたはいつも説明が足りないのです!」
「ははは!今のは少しだけ傷ついたぞ!まあ、事情はそのうちわかるさ。さあ!行ってくるといい!偉大なる最後のペンドラゴンよ!」
少女は慌てて花に手を伸ばすが、彼女の手が触れた瞬間に花々は言葉を残しながら散ってしまった。
そして散った花々はしょうじょのまわりをまわりはじめおおきな
その瞬間、彼女の視界は白くかすみ、大きな光に包まれた。
「行ってらっしゃい。アルトリア」
そう言うと、マーリンは塔の中でふふふと笑みを浮かべた。
アルトリアを送り出して数分が経った頃だった。
「うん?どうしたんだい?」
マーリンがふと塔の外を覗くと1人の要請が慌てて飛んできた。
「ふむふむ、送る時間を約3カ月ほど間違えたと、
……………………3カ月なんて誤差みたいなもの、あの娘ならなんとかしてくれるさ!」
高らかに笑いながらマーリンは明後日の方向を向いたのだった。
この場にいた全ての妖精たちは思った。
やっぱり、こいつはダメだ、と。
はじめまして。
後書きからで失礼します。
今回登場したアルトリアさんですが、しばらくの間でてきません!
アルトリアさんがでてくるんなら読んでみようかな、って考えていた方には申し訳ないのですが、後々にちゃんとでてくるので長い目で見てくれたら幸いです。
では、次回の話も頑張りますので応援よろしくお願いします。