火竜がちょっと変なリリカル?の世界に逝く 作:パーシヴァルヴレイヴ
「ん…寝てたのか、俺」
目を開けて辺りを見渡すと、バカ広いリビングに大型テレビ、綺麗に整えられた家具などがある。
最初の頃は驚いたものの、今ではどれも見慣れたものだ。
俺、『桜火夏樹』が転生して六年が経ち、今年、公立で近所の海鳴第一小学校に入学しました。
何で赤ちゃんの時から始めないんだって?
そんなの決まってる……あんな黒歴史を思い出すのは嫌だからだ。
ま、転生してから両親に愛を持って育てられた結果、今に至ると言う訳だ。
「さてと、そろそろ起きるか…」
俺はさっきまで寝ていたソファに手を置き、ゆっくりと起き上がる。
「うぅ〜ん」
そして軽く伸びをすると、リビングに掛けてあった時計に目をやる。
今が12時だから…寝てたのは1時間くらいか。
(お目覚めですか、マスター?)
何処からともなく声が聞こえてきた。
(あぁ。『サラ』、おはよう)
頭に響いてきた声を聞き、サラに教えてもらった念波で返事を返す。
(おはようございます、マスター。良く眠れましたか?)
(おかげさまで良く眠れた。あれ? 父ちゃんと母ちゃん、それに『美遊』は?)
机に置かれていたアクセサリー(妖精の尻尾のマークの形)を首に掛ける。
今更だが、紹介しておこう。
さっきから念波で話しているのは、首に掛けられているアクセサリー、もといデバイスと言う名の便利道具、『サラマンダー』、通称サラだ。
あの女の人から貰った三つの特典の内の一つでもある。
後、名前に関しては何も言わないでくれ。安易だと自分では思うが、サラが気に入ってくれたので良かった。
(『和哉様』と『美来様』は先ほどお出かけに。その際に美遊様も『イリヤ様』の所に行かれたようです)
(そっか。なら俺もイリヤの所に行くとするかな)
先ほど出てきている美遊は俺の双子の妹である『桜火美遊』、イリヤってのは、お隣さんで両親共に仲良くして貰ってるアインツベルン家の子で、『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』、長いのでみんなはイリヤと呼んでいる。勿論、俺たちの友達だ。
「寝癖よし!格好よし!マフラーよし!さて行くか!」
俺は赤のTシャツに白の短パンに身を包み、最後に父ちゃんから貰った白のマフラーを首に巻く。
そして、Nと言うアルファベットのキーホルダーの付いた鍵を持ち、玄関先へと到着する。
「行ってきまーす!…ま、誰もいないけどな」
俺はしっかり戸締りを確認し、アインツベルン家に足を進めた。
アインツベルン家に着くまで、この世界の話でもしとくか。
この世界は、魔法を使えるようになった少女が主人公となり、その少女を中心に色々とドンパチする話らしい。
それだけでもガクガクブルブルものだってのに、この世界には本当はここに在ってはならない異分子、イレギュラーを多数含んでいるそうだ。それが良い方向、悪い方向に向くかは現れてみないと分からないんだとさ。
その話をサラから聞いた俺はあの女を恨んだな。何故こんな厄介な世界に送ったんだってな。
ま、転生特典が分かったし、妹や友達が出来てからは変わっちまったけど。
その特典ってのが三つ存在して、一つ目はフェアリーテイルの主人公、ナツ・ドラグニルの滅竜魔法。これは最初から使えると言うわけではなく、練習すれば原作並みかそれ以上になれるらしい。これによって、それなり鍛えておけば戦闘に巻き込まれても何とかなりそうな……気がする。
二つ目は、さっき紹介したデバイスのサラ。本来、俺のフェアリーテイル式の魔法はこの世界の法則に囚われず、自由に魔法を使えるから必要ないらしい。しかし、デバイスと言うのは魔法の制御だけではなく、戦闘のサポートとして十分頼りになるし、他の魔導師へのカモフラージュにもなると言う事で、あの女が用意してくれたそうだ。
これに関しては感謝してる。サラがいなかったら、俺は今頃どうなっていたか…
そして、最後の三つ目はなんとも大きな卵だった。なんとその卵を羽化させたら、フェアリーテイルのハッピーたちみたいな猫?(エクシード)が産まれるらしい。
これを見た父ちゃんは驚くかと思ってたんだが、「産まれたら大事に育てろよ」の一言で済まし、母ちゃんと美遊に至っては、今か今かと産まれる時を待ってる状態だ。全く、豪快な俺の家族ですよ。
後言うと、この世界には俺以外に転生者が三人いる事だぐらいかな。どんな能力、人物の詳細とかはサラも聞いていないらしく、会ってからでないと分からないんだってさ。分かっているのは、俺と違ってその三人は自分でこの世界を選んできたと言う所ぐらいだ。
その三人さんが原作に関わってくれれば、俺としてはありがたい。正直関わりたくないからなぁ…厄介そうだし、面倒だしな。
「と言うか、俺って誰に話してんだ?」
(マスター、考え事はその程度に。着きましたよ)
「あ、本当だ」
いつの間にかもうアインツベルン家の前に着いていたようだ。
我ながら、自分の妄想力が怖…
(いつまで考え事してるおつもりですか、マスター? 早く入りましょう)
「はい…」
サラさんって時々冷たいよね。
俺は掛札の少し下にあるインターフォンに手を伸ばし、ボタンを押す。
『だれ?』
すると、インターフォンから女性の怠け声が聞こえてきた。
どうやら出てるのはリズさんか。
いつもならセラさんなんだが…っと、こんな事考えてる場合じゃない。返事を返さないと…
「夏樹です。遊びに来ました!」
『ナツか。今開ける、待ってて』
リズさんがそう言うと、数秒後、ドタドタと言う音と共に、凄い勢いで玄関のドアが開いた。
そして、そこから一つの影がこちらに飛び込んできたのだ。
「ナッツー!」
「おっ…と!」
飛び込んできた『日焼けしたように肌が黒い』少女を俺は難なく受け止める。
これもアインツベルン家に来ると必ずと言っていいほど、起こるイベントなので、とっくに慣れた。
「『クロ』、こうやって突撃してくるのはやめろって言ってるだろ?」
「えへへ。そんな事言っちゃってさ、これがないとナツも家に来た実感がないでしょ?」
俺が注意するも、この少女は謝ることもせずに、逆にやって当然みたいな事を言ってきた。
…ったく、こいつは。
「そんな事しなくても実感はありますよっと!」
全然反省などしていない少女の頭に俺はチョップを繰り出した。
「いたっ⁉」
俺がクロに軽くチョップをする…これも毎度の出来事だ。
頭を抑えて痛がっている少女、この子は『クロエ・フォン・アインツベルン』、イリヤの双子の妹だ。クロ自体は自分が姉だと言い張ってるけどな。
「こ、これがナツの私に対する愛情表げ…」
「お邪魔しまーす」
俺はクロを軽く無視してアインツベルン家に足を踏み入れた。
年端もいかないガキが何言ってんだよ、全く。
「待ってよ、ナツ〜!」
俺に置いていかれたことに気づいたクロはすぐに俺の後を追いかけてきた。
「お前が一人でブツブツ言ってるからだろ…あれ? 美遊の他に誰か来てるのか?」
俺は自業自得だとクロに言い聞かせ、靴を脱いでいると、美遊の他に見慣れない靴がある事に気づいた。
「あぁ。それは行ってからのお楽しみって事で! さぁさぁ行こ行こ!」
「お、おい押すなよ!」
クロは結局誰が来てるのかは教えてくれず、俺はクロに押されるがまま、二階にあるイリヤの部屋に向かっていく。
「セラさんとリズさんに挨拶するの忘れてた…」
「ま、リズが出てる時点でセラも気づいてるだろうから、大丈夫だよ。さ、入ろ!」
俺はいりやと書かれた掛札が掛かっているドアの前に立っている。
しかし、リズさんとセラさんに挨拶するのを忘れていた俺は上がってきた階段を下りようとしていた……が、クロがそれを許さない。俺の腕を引っ張り、ドアノブに手を掛けると、勢いよくドアを開いてしまったのだ。
「ナツが来たよ!」
「「「きゃっ⁉」」」
勢いよくドアを開けた結果、部屋にいた『三人』は声をあげ、驚いていた。
「も、もう! びっくりしたでしょ、クロ!」
「お、お兄ちゃん、起きたんだ」
「びっくりしたの!」
三人中の二人がクロに文句を言い、後一人…俺の妹である美遊は俺に近づいてきていた。
「おう、ついさっきな。で、美遊の他に来てたのは、『なのちゃん』、お前だったか」
「うん!今日はイリヤちゃんに誘われたから遊びに来たの!」
そう言って俺に満面の笑みを浮かべるなのちゃん。
やっぱり子供の笑顔って微笑ましいよなぁ…荒れていた心が癒される。
紹介が遅れたな。この子は『高町なのは』、サラが言うにはこの世界の主人公らしい。
俺たち四人と『桂美々』、『嶽間沢龍子』、『栗原雀花』、『森山那奈亀』を含めた八人でドッチボール公園でしていたのだが、その際にタツコが、ブランコで何もせずに座っているなのちゃんに、思いきって話しかけたのが初めての出会いだった。
最初の方は誘っても冷たくあしらわれて、瞳に涙を溢れさせていたタツコだったけど、俺たちもなのちゃんを説得する事によって、なのちゃんも遊ぶようになった。
それからだったよな、なのちゃんと俺たちが友達になったのも。
なのちゃんも徐々に俺たちに心を開いてくれて、その時抱えている問題の事も話してくれた。
ま、その事は俺や空気読まないKY(タツコ)が何とかしたから、今では暗い顔などせずに、なのちゃんは本当の意味でいつも明るく笑っている。それが見れただけでも頑張った甲斐があったと言うものだ。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
俺より少し身長の低い美遊が上目遣いで俺を見上げていた。
どうやら考え事をしていたせいで、ほったらかしていたようだ。
「いや、何でもない。ちょっとボーッとしてただけだ」
「そう、ならいい」
そう言って俺は可愛い可愛い妹の頭を撫でる。
美遊はそれを嫌がる事なく受け入れ、目を細めていた。
あぁ!可愛い!可愛すぎるぞ、妹よ! 今すぐ抱きしめた…
「はいはい、そこまで。ナツも美遊も一度離れましょうね」
「そうなの。その方がいいと思うの」
そう言ってイリヤとなのちゃんが俺たち兄弟を無理やり引き剥がした。
「シスコン」
俺の胸にそんな言葉が突き刺さると思っているのかね、イリヤくん?
「へっ、シスコンで何が悪い! こんな超絶可愛い妹がいたら、シスコンになるのは当然…いや、必然だ!」
シスコン、そう一言俺に告げたイリヤに、俺はブラコンである事を恥じず、必死に肯定する。
そんな光景を見ていた我が妹の顔が少し赤かったのは間違いではないはずだ。
「そんなナツも私は好きだよ」
「やめとけ、クロ。冗談でもお兄さん、お前の事好きになっちまうぞ?」
「お兄さんって…同い年でしょ」
クロの大胆な告白も、俺の返しも今に始まった事ではないので、イリヤが軽くツッコミを入れる。
その横に座っているなのちゃんは苦笑いを浮かべていた。
ピンポーン
「あ…また誰か来たみたい」
「多分『隆治』だ。さっき呼んだら、すぐ来るって言ってたし」
「そうなんだ。じゃあ、ちょっと行ってくるね」
イリヤはそう言って、駆け足気味にこの部屋を後にした。
「いってらー。で、俺が来るまで四人は何やってたんだ?」
「えーっとね…ゲームやったり、昨日出た宿題をしたりかな」
「取り敢えず、クロ以外は宿題を終わらした」
なのちゃんが何をやっていたか、説明すると、それに付け足すように美遊も口を開いた。
「何でお前は終わってないんだよ、クロ」
クロも人並み以上に勉強はできるはずだ。みんなと一緒にすれば終わるだろ。
「面倒くさかったの、てへ♡」
俺がジト目でクロを見ると、クロは可愛らしいキメポーズをしていた。
「はぁ…」
月曜日になって、泣きついてきても知らねぇからな、クロの奴。
俺は何を言っても無駄だと言う事を悟り、頭を抱えてため息を吐いた。
俺が心の中で愚痴を言っていると、階段を上ってくる音が聞こえてきた。
「連れてきたよ〜」
「お邪魔します」
ドアが開くと、そこには迎えに行っていたイリヤ。そして、俺にとって唯一の男友達である隆治がいた。
「案外来るのが早かったな、隆治」
「うん。別に何か用があったわけでもないからすぐ来たよ」
隆治は笑みを浮かべながら俺の横にゆっくりと座った。
こいつは『鏑木隆治』。なのちゃん家の近くに住んでる俺たちの友達だ。俺の両親ともに仲良くさせてもらってる。そして、『転生者』でもある。
隆治の能力は全部で5つ。魔力の増強、身体能力の強化、五分間だけ身体能力が百倍になる『ハンドレットパワー』、対象の命を一度だけ蘇させる『レイズデッド』だったか。後一つはとっておきらしく、俺にも教えてくれなかった。
にしても、自分で決めれていいよな、隆治は。俺なんか二つも少ないし、勝手に決められてるし…はぁ、出来るだけ!本当に!原作に関わらないようにしよう。
オ、オッホン! 話が逸れたな。そして、隆治が転生した目的は『この世界の主人公達がハッピーエンドを迎える』だそうだ。
『この願いは歪んでいるし、偽善だ。それでも、僕はその願いを必ず叶えるよ。例えこの身が犠牲になろうとも、誰かに恨まれようともね』
隆治はそう言って俺に目的を成し遂げる覚悟をみせてくれた。
場所がトイレじゃなかったら、充分カッコ良かったんだがな…
「どうしたの、ナツ?」
「いや、ちょっとお前と会った昔の事をな」
俺はそう言って隆治に笑みを浮かべた。それを見た隆治は大体の事を分かったのか、苦笑いを浮かべていた。
「さてと!今日のメンツが揃った事だし、何して遊ぶとしますか?」
いつもはタツコにスズカ、ミミ、ナナキ、『アリサ・バーニング』…
「アリサ・バニングスだよ、ナツ」
あぁ、悪い悪い。間違った、『アリサ・バニングス』だった…
あれ? 隆治、何故俺の心が読めた?
それと『月村すずか』を合わせた12人、『仲良しブレイカーズ』で遊ぶんだが、6人は今日用事があるらしく、誘えなかったんだ。
後、仲良しをブレイクしてどうすんだよ!とか、名前に関しては何も言わないでくれ。変えてもいいんだけど、タツコのバカが無い頭を捻じって必死で考えた名前なんだ。大事にしようと思う…
「今日は公園でドッチボールでもしない?」
「そうだね。この頃、家でゲームばっかだったし、少しは体を動かさないとね」
「だな。美遊たちもそれでいいか?」
イリヤの意見に賛同した隆治と俺。俺は他のみんなにもそれでいいのか意見を求めた。
「イリヤとお兄ちゃんがいいなら、文句はない」
美遊が隣り合う俺とイリヤを見て直ぐさま答えた。
美遊、お前はもう少し俺たち以外にも心を開きましょうね。
「私もそれに賛成なの!」
なのちゃんは大きく手をあげ、賛成の意を表していた。
なのちゃん、君はいつもそう言って、最初にばてて、途中からへばってるけども今日は大丈夫なのか?
「前は体調が悪かっただけなの! 今日の私は完璧だよ!」
心が読まれただと…⁉(デジャブ)
「愛の成せる技なの!」
「はいはい、分かりました〜。で、クロは?」
「むぅ…」
何故心が読まれたかは已然分からない為、なのちゃんが言ってることを軽くスルーする俺。
そしてまだ何も答えていないクロに目を向けた。
「わ、私も賛成かな。でもその前に…」
『前に?』
何かやる事でもあったっけ?
何か言いたげにしているが、直ぐに言い出せないクロ。俺たちはそんなクロを見て、頭に?を浮かべていた。イリヤはすぐにわかったようだが。流石は姉妹。
数秒後、覚悟を決めたクロは俺たちに頭を下げる。
「宿題を手伝ってくださいっ!」
見事な土下座だった。
それから数十分ほどでクロの宿題を終わらせ、俺たちは公園に遊びに行くのであった。
これがいつもの俺たちの日常だ。