火竜がちょっと変なリリカル?の世界に逝く 作:パーシヴァルヴレイヴ
お久しぶり、桜火夏樹です。
あれから二年が経ち、俺たち『仲良しブレイカーズ』はみな、小学三年生になりました。
後、一年前に特典で貰ったエクシードの卵から『ハッピー』が産まれました。
今では二足歩行で歩き、言葉も話せます。桜火家では家族同様に想われ、日々逞しく育っております。
その話はまた後日にでもゆっくりとするとしましょう。今はそれをやってる暇がない。
今日はイリヤが俺の家に泊まりに来ているんですが…(クロ? クロはなのちゃん家に泊まりにいってるらしいです。タツコ達と)
只今、俺は目の前に広がる光景に目を疑っています。
何故なら…
「な、何これ〜〜!!」
「イ、イリヤ、落ち着いて!」
我が妹、美遊と親友兼イタズラ相手であるイリヤが俺の家の庭で…
「やっぱり上手くいきましたね〜。新生カレイドルビー、『プリズマイリヤ』爆誕ですよー!」
「同じく、カレイドサファイア誕生です」
ヘンテコなステッキを持ち、魔法少女っぽいコスプレをしているからであった。
「…イ、イリヤ、美遊…お前らにそんな趣味があったなんてな…」
その歳でコスプレは難易度が高いとは思うが、何も言うまい。趣味は人それぞれだからな。だけど、お兄ちゃんは出来ればその格好はやめて欲しいかな。何たって露出度が高すぎる!
俺はその光景を見なかった事にし、そそくさと家の中に入ろうとした。
ガサッ…
「「だ、誰⁉」」
が、どうやら逃走は無理のようだ。
なんで最後の最後にミスをするかなぁ…
俺は自分の不運を呪いながら、イリヤと美遊の前に姿を現した。
「よ、よう! 二人とも似合ってるぞ?」
「「ナツ(お兄ちゃん)⁉」」
申し訳なさそうに出てくる俺を見て、二人は驚きを露わにした。
「ど、どうしてお兄ちゃんが…⁉」
「えっと…何か下で騒いでるなぁと思って見に来たんです、はい」
「そ、そうなんだぁ〜」
そう言って笑顔を浮かべるイリヤ。しかし、その顔は引き攣っており、目が凄い勢いで泳いでいる。
一秒間で何往復してんだよ、おい。
「で、魔法少女?みたいなコスプレをして、お二人は何を?」
俺がそう言うと、二人は自分の服装を思い出したのか、手で体を覆い始めた。イリヤに至ってはアタフタして顔を真っ赤にしている。
「こ、これは違うの! コスプレなんかじゃなくて…」
「お、お兄ちゃん、私たちの話を聞いて」
二人は必死で弁解をしようとしていたその時、今度は自身の耳を疑った。
「この人がイリヤさんの想いび…」
「うわー! わぁぁぁ!何言ってるのよ!」
イリヤがいきなり大声をあげたのにも驚いたが、それよりも…
「つ、杖が喋ったぁぁ⁉」
イリヤが持つ、如何にも魔法少女が持ってそうなステッキが喋った。その事が何よりも俺に衝撃を与えた。
「どうも! わたしはカレイドステッキの『ルビー』ちゃんでーす!よろしくお願いしますね〜」
「どうもこ丁寧に…って違うっ!」
「『サファイア』と申します。よろしくお願いいたします。美遊様、こちらの方が美遊様のお兄様ですね?」
美遊のステッキも同様にだ。
こいつらはサラと同じようなデバイスと思えばいいのだろうか?
「そうだけど、今はそれよりも…お兄ちゃん、私たちに起こった事を話すから聞いて…」
「お、おう…」
ステッキに同意した美遊はこのままでは拉致があかないと思ったのか、何故自分がコスプレをする事になったのか、まだ混乱している俺に説明してくれるようだ。
俺としてもこの現状を早く理解したいので、美遊たちの話を聞く事にした。
だがここでまたもやイレギュラーが発生してしまったのだ。
「見つけたわよ、ルビィィィィ!!」
「ようやく見つけましたわよ、サファイア!」
声が聞こえてきたかと思うと、髪型をツインテールにし、胸の辺りにロザリオを形どった赤い服と黒のミニスカートを着た女性に、髪型を縦ロールにして青を基調としたエレガントなドレスに身を包んだ女性が、ぜぇぜぇと息を荒くして、俺たちの前に立っていた。
と言うか、これって不法侵入じゃ…
「ルビー!よくもあんなところに置いていってくれたわね!」
「マスター契約を取り消すとはどういう事ですの、サファイア!」
このお二方は、イリヤたちの持ってるヘンテコステッキのお知り合いのようだ。
「言ったじゃないですかー、『凛さん』あなたたちお二人は、カレイドステッキを『師が下した任務』ではなく、『お二人のケンカの為』ばかりに使う。そんなお二人には付き合いきれませんーと。全く…魔法の力を私闘に使うなんて、本末転倒を良いとこですねー」
「ぐっ⁉」
ツインテールの人…凛さん?がルビーに正論を言われ、ぐうの音も出ない。
「ルビー姉さんの言う通りです」
「サファイア、あなたまで⁉」
どうやら美遊の持ってるステッキさんにも、思うところがあるみたいだな。
何の内容を話しているか、全然読めないけど…
「任務を無視した傍若無人な振る舞い…恐れながら『ルヴィア様』はマスターに相応しいお方ではないと判断しました」
「なっ⁉」
まさか自分が裏切られるなど思ってもいなかったのか、縦ロールの人、ルヴィアさん?も驚きで顔を歪ませていた。
「ですので、わたしは何処ぞの年増魔法少女モドキではなく、こちらにいるイリヤさんがわたしの新しいマスターになりましたー。やっぱり魔法少女はロリッ子じゃないとダメですねー!」
このステッキ、バカだ。
「わたしも勝手ながら、美遊様を新規のマスターとさせていただきました」
「あんたたち…?」
「どういう事ですの…?」
「ち、違うんです! 詐欺!騙されたんですよ!」
「わ、私もそうです! いつの間にかこうなってて…」
それを聞いた四人…イリヤ、美遊は慌てふためき、凛さん、ルヴィアさんはイリヤたちを親の仇を見るように睨めつけていた。
一人取り残された俺は、夜に庭先でこれ以上ここで騒ぐわけにもいかないと思い、二人に一つの提案をした。
「あ、あの〜すいません」
「「何よ(ですの)っ!」」
「俺に当たらないでくださいよ… と、とにかく! ここで騒いでたら近所迷惑になるんで、一旦移動しません?」
「そ、そうね…。で、気になってたんだけど、あなたは誰?ルビーたちには何もされていないようだけど…」
俺の意見に同意してくれた凛さんは、興味深くこちらを見つめてきた。
「俺はそこにいる魔法少女(笑)になったイリヤの友達で、超絶可愛い美遊の兄、桜火夏樹です! ナツって呼んでください」
「何か扱われ方が段違いだね⁉ 可笑しいよね⁉」
「お、お兄ちゃん…人前で恥ずかしい」
俺の自己紹介を聞いたイリヤは俺に可笑しいと迫り、美遊は顔をほんのり赤くして、目を背けた。
「ガハッ!…」
美遊が可愛い過ぎて死ねる…!
「お兄ちゃん⁉」
「私は無視⁉」
「ドンマイですね、イリヤさん」
俺に無視されて落ち込んでいるイリヤをルビーが慰めていた。
ステッキが慰めるって、何かシュールだな。
「コホン…ナツくん、そろそろいいかしら?」
「先ほどの話の続きをしたいのですが?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!
イイ笑顔を浮かべる凛さんとルヴィアさん、すっごい怖い…
「は、はい。じゃあ俺の部屋に。そこで話の続きをしましょう」
「…分かったわ。それでいいわね、ルヴィア?」
「ええ。あなたに同意するのは癪ですが」
「な、何ですってぇ〜⁉」
はぁ…懲りないな、この二人も。
二人がまたケンカになるところだったので、何とか止めて俺の部屋に移動するのであった。
「…ふぅ。三人とも理解出来たかしら?」
凛さんはそう言って、メガネを掛け直す。
何故メガネ?…って言うか、いつの間に掛けてたんだ?
あれから俺たちは親にばれないようにひっそりと俺の部屋に移動した。そして、イリヤたちが何故魔法少女になってしまったのか、凛さん、ルヴィアさんは何を目的に海鳴に来たのか、ルビーたちは何なのか、その他諸々を、何も知らない俺やイリヤ、美遊は教えてもらった。
「はい。大体は理解しました」
「大丈夫です」
「わ、私も」
凛さんの話を噛み砕いて要約すると…
凛さんたちはあるカードを回収する為に、この町、海鳴に来た。(時計塔とか言う魔術を研究する大学?から要請を受けて)
そのカード…クラスカードは高度の魔術なんちゃらで出来たカードで、悪用されれば、町ひとつを簡単に滅ぼせるくらいの力を持っているんだと。そして、そんな危険極まりない物がこの地に全部で『8枚』眠ってると言う訳だ。
イリヤがやけに斬新な例えをしていたが、そこはカットしておこう。
それで、そのカードの回収は生身ででは無理だと判断された為、凛さんたちは、ルビーとサファイア、最高位の魔術礼装であるカレイドステッキを貸し出された。
でも、凛さんたちは本来の任務を忘れて、ケンカばかりをしていた為、ステッキたちに見限られてマスター権限がイリヤたちに渡ったと言うのが、今までの流れだ。
「本来ならわたくしたちも無関係な人間を巻き込みたくはありませんわ。でも、サファイアはわたくしの言う事を聞いてはくれませんし」
「ルビーも同様ね。だから、あなた達には私たちの代わりに戦ってもらう事になるわ。覚悟しておいて」
「そ、そんな…いきなり」
「戦う…ですか?」
いきなり急展開についていけないイリヤと美遊だったが、俺はそんな二人に一言声を掛ける。
「ま、やれるところまでやってみればいいんじゃないか? この町を守るためだと思って。それに、俺も手伝うしさ」
『えっ?』
俺がそう言うと、この場にいる四人と二本は驚愕を露わにした。
「え…ナツ、手伝ってくれるの?」
「でも…お兄ちゃん、私たちみたいにステッキも何もないのにどうやって…?」
イリヤと美遊は俺が手伝う事に戸惑いを隠せないみたいだ。
無理はないか…イリヤと美遊は俺を『普通の人間』だと思ってるしな。
「止めておきなさい。あなたは、この子達みたいにステッキのマスターでもないし、魔術の心得もないのよ」
「そんな状態でカード回収にいけば、足手まとい…邪魔になりかねませんわ」
美遊に続いて、凛さん、ルヴィアさんは、手伝う気でいる俺を止めた。多分、俺の事を思っての事だろう。
だが、俺はそんな四人に一言、こう言った。
「大丈夫、大丈夫。だって俺、『魔導士』だし」
この時、波乱に満ちた俺の人生が幕を開けるのであった。