馬鹿4人によるFGO SS 1週間1本勝負 作:作家活動から逃げるな。
注意
・第二部プロローグの壮絶なネタバレあり
・例によって独自解釈あり
・話の読み違えがあるかも
それでも良い方は、第二部のスタート前にお読み頂ければ幸いでございます。
ふわふわ、ふわふわ。
空を飛ぶ、そんな感覚。
地に降りるでも、空高く昇るでもない、ただ、雲のように、ふわふわと。
そんな感覚に、包まれて。
「おーい、マシュー?」
「ふぇあっ!?」
私は、私を呼ぶあの人の声で、そんな感覚から解き放たれました。
思わず周りをきょろきょろと見渡して、そこがカルデアの、私達のマスターーー先輩の部屋であることに気付きます。
「も、もしかして私、寝ちゃってしまいましたか……?」
「んー、多分? まぁ寝たって言っても数分も経ってないと思うけど」
「す、すみません先輩! よもや先輩とお話中に眠ってしまうなどと……」
「気にしないで。忙しかったし、疲れてるよね」
「いえ、そんな……確かに、新所長の就任と査問会の方の到着で気は張っていましたが……」
「え?」
私の言葉に、先輩はキョトン、としています。
「……大丈夫、マシュ? やっぱり、もうちょっと寝る?」
「い、いえ!」
「そう? いやでも新所長就任も査問会の取り調べもすぐ終わったから気を張るようなことも無かったと思うけど……」
「……え?」
今度は、私が先輩の言葉にキョトンとしてしまいました。
だって、新所長と査問会の査察官の方に私たちは……
私、たち、は……
「……すみません先輩、どうやら寝ぼけてしまっていたようです」
「やっぱり? まぁ無理もないよね。1度は退去させた皆を呼び戻して、そこからすぐに新年のお祝いの準備をし始めたんだから」
そうだ。
私たちは、
新年のお祝いをするために、宴会の準備をしていたんでした。
「どうする? パーティ始まるまで休む?」
先輩が心配そうに私の顔を覗き込んでくれます。
近寄る先輩の顔に、私の心臓が心拍数を上げて、顔に熱を持たせる感覚をもたらして。
「だ、大丈夫です! すぐに行きましょう!」
私はその感覚に耐えきれず、すっくと立ち上がって、部屋を出るのでした。
「かんぱーい!」
ダ・ヴィンチちゃんの号令のもと、皆さんが一斉に飲み物の入ったコップを掲げます。
そこからは大騒ぎでした。
一方ではお酒の飲み比べ、一方では料理の食べ比べ、喧嘩と聞き紛うほどの大音声が響いたと思えば、誰かの叫び声と爆笑の声。
今も、アーチャーのエミヤさんとタマモキャットさん、ブーディカさんが料理を次々と運んできていますし、黒髭さんはドレイク船長に絡み酒されてます。
その持ってきた料理を複数のアルトリアさんが根こそぎ持っていき、僅かに余ったものをランサーのクー・フーリンさんがため息とともにかき集めましたね。
少し落ち着いたところでは、小太郎さんと段蔵さんを筆頭に静かにお酒やお茶を酌み交わしていました。
そこにエリザベートさんが突撃したのを、メカエリチャンさんが制裁してるのを見て、騒いでた方たちの意識が向かってしまったみたいです、少し音量が大きくなってきました。主に信長さんがロックンロールしてるのが原因かもしれません。
「マシュー!」
巻き込まれないように、と少し距離を置いてみたら、エレナさんとアタランテさんに呼ばれたのでそっちに向かいました。
「呼びつけて済まなかった。良ければここに座るといい」
そう言って、とても優しい笑顔を向けてくれるアタランテさんに、私は思わず驚きを隠せませんでした。
「あー、ごめんね? 思ってたよりアタランテお酒弱かったみたいで。少し表情筋が緩くなってるみたい」
「む、聞き捨てならんな。確かに少しばかしアルコールは作用してはいるが、汝の言うほど酔ってなどいない」
アタランテさんがそう反論します。
確かに、表情がいつもよりも何倍も明るく優しいこと、顔色が少し赤くなっていること以外は、あまり変わらないように見えます。
「でも酔いは急に悪化する可能性もあります。お水を持ってきますから、少し待っていてくださいね」
「む……しかし好意は無碍には出来んな。済まないが頼めるか?」
「はい!」
そう言って、私はアタランテさんとエレナさんの座る席から立ち、アタランテさんとエレナさんのぶんのお水を用意しようとしました。
その時です。
「君が求めているのは、これかね」
そう言って、私に水の入ったコップを差し出してくれた人がいました。
それは、先輩でも、ダ・ヴィンチちゃんでも、ましてや今日までずっと尽力してくれたカルデアの職員さんでも、ありませんでした。
「あ、ありがとうございます。言峰新所長」
言峰綺礼新所長。
査察官も兼任していたこの人が、このパーティを執り行うのに、ある意味一番貢献した方でしょう。
彼が許可を出してくれたから、サーヴァントの皆さんが再びカルデアに来ることが出来たのですから。
そう。彼のおかげなのです。彼が居たから。
そういう判断を出来る優しさ。カルデアの職員達への、戦いの日々への敬意を払う仕草。私のこともキチンと、人として扱ってくれる度量。
とても、人として素晴らしいはずなのに。
『気をつけろ、マシュ、マスター。奴は、絶対に信用するな。例え真実を話しても、真相を、内心を話すことは絶対にないタイプだ、ああいうのは』
『オイオイ、まさかまたあの野郎と巡り会うとはな……別人だとしても勘弁して欲しいもんだぜ』
『ククク、ここまで来ると腐れ縁というやつやもしれんな。どれ、別なるものではあろうが、一杯酌み交わしてくるとするか』
『うーわ、マジで……? あー、マスター、マシュ。私の依代になってる子があのバカ神父に注意しろってすっごい騒いでるわ。気をつけた方がいいわよ』
再召喚された一部の方の言葉と。
マスターを初めて見た時の、一瞬だけ見せた、底冷えするような、冷たい視線。
それを思い出すと、私はーー
「どうかしたかね? マシュ・キリエライト」
「っあ、すみません、なんでもありません。お水、ありがとうございます」
いけません、つい言峰新所長の前で思案してしまいました。
私はお礼を言って、すぐにその場を立ち去りました。
そうしてアタランテさんのところに戻ってお水を渡すまで。
言峰新所長は、ずっと私を見ていた、そんな気がしました。
それからどれほど経たれたでしょうか。
気が付けば多くの方が食べ、飲み、騒ぎ疲れたためかお休みになられました。
私も多くの方とお話をしていただいたり、食べたりしたのですが、不思議と疲れて眠くなるなんてことがありません。
「お疲れ様、マシュ」
そうして部屋の中で、ぼうっとしていたら、先輩が声をかけてくれました。
「先輩も、お疲れ様でした。パーティは楽しめましたか?」
「うん。とっても楽しかった。マシュは?」
「はい、私もとても楽しかったです」
そうだ、楽しかった。
皆さんと、もう一度こういう風に、賑やかにすることが出来たから。
たとえ。
「たとえこれが、夢だとしても」
ざぁっ、と。
全ての風景が、泡のように消えていきました。
そこに残ったのは、私と、先輩だけ。
いいえ。
正確には、先輩の姿をした、あの人。
「……いつから気づいていたんだい?」
あの人は、先輩の姿をしたまま、私にそう聞いてきます。
「夢だとわかったのは、パーティが終わってからでした」
だって。
「私、ずっといろんな方とお話したはずなのに、ほとんどその会話の内容も、誰と話したのかも、わかりませんから」
私は確かに、このパーティが楽しいものだった、と覚えている。
それは多くの方とお話して、とても美味しい食べ物を食べたから。
そう認識しているのに、じゃあ誰とどんな話をしたかとか、どんな料理がどんな風に美味しかったとか、そういったことがほとんど記憶にないのです。
もちろんアルコールは飲んでいませんので、酔っ払って記憶がなくなったということもないでしょう。
ならばこれは、現実では無い。
「……流石だね」
そう言って小さく笑った先輩は、もう先輩ではありませんでした。
白い服に身を包んだ、冠位を持つ
「悪く思わないでくれたまえ。別に嫌がらせだとか、そういったことをしたかったわけじゃないからね」
花の魔術師は、そう言って謝ってきました。
「大丈夫です。確かに性格が悪いところもたまにありますが、基本的に親切心を持って接してくれることは知ってますから」
私がそう返すと、彼は「いやはや手厳しい」と笑いながら答えてくれました。
そうして、優しい笑みを浮かべながら、話を続けてくれました。
「うん。確かに親切心といえば親切心だ。これでも君たちと別れることになったのは割と寂しいのだからね。それに、これからまた君たちに訪れる苦難を思うとただで帰っていられない。だからこういった形を取らせてもらったのさ」
そう言う彼に、私は少し疑問を覚えました。
「でもそれならば、何故先輩にこの夢を見せてあげなかったのですか? きっと先輩の方が、この夢を見たかったと思います」
私がそう聞くと、彼は目を閉じて話してくれました。
「そうだねぇ。理由は二つ。一つは、今彼にこういった形でーーようは魔術的な接触をしちゃうと、彼の立場が悪くなる。ちょーっと、面倒なやつに目をつけられてるかもしれないからね」
面倒なやつ?
それは誰なんですか、そう聞こうとして、でも彼は私に言葉を発させてくれないまま、言葉を続けます。
「もう一つの理由は、簡単さ。彼はこの夢を、見る必要が無いからだよ」
その言葉に、さっきまで頭にあった疑問が塗り替えられました。
先輩がこの夢を見る必要が、ない?
「ちょっと言葉が悪かったな。彼はこの夢を夢だとは思ってない。いつかの明日、どこかの未来で、これが実現すると、信じている。だから、この夢を見せて、下手に精神を揺らがせたくなかったんだ。その点君は、これが夢だと、叶わないものだと思ってしまっている。だからこの夢を見せて、少しでも実現を願って欲しかったんだ」
ーーああ。この人は。
「……そう、だったんですね」
「とはいえ私も人の心の機微にはまだまだ疎いからねぇ。よくこういったことをしては怒られたりしたものだよ」
「……いえ、私は寧ろ、ありがたく思っています」
彼に言われて気付きました。
私はたしかに、あの光景を、あの楽しい大騒ぎを、もう二度と目にすることが出来ない。聞くことが出来ない。
そう思っていましたから。
でも、あの夢を見させてもらって。
私はたしかに、あの夢が実現してほしい。
そう、思っています。思えるように、なれた。
だから。
「この夢を叶えるために、そろそろ起きないと、ですね」
「……そうだね。そう思ってくれるなら、夢を見せた甲斐がある」
私がそういうと、彼の姿も少しずつ、花びらのように散っていきます。
きっと、彼の姿がすべて花びらと散れば、私の夢は覚めるはずです。
だからでしょう、彼があえて、別れの言葉とかを述べず、注意をしてきたのは。
「気をつけるといい、マシュ・キリエライト。君の夢にも出てきた、言峰綺礼。そして、ゴルドルフ・ムジークを唆した、コヤンスカヤ。あの二人は、確かに危険だ。特に、言峰綺礼に関してのサーヴァントの言葉は、僕が実際に英霊の座にいる彼らからちょちょいと聞いてきたものだからね」
「待ってください今サラッとすごいこと言いませんでしか!?」
「それでも君たちなら、きっと乗り越えられる。最後まで、諦めず突き進むんだ。いつかーー」
そこまで言って、彼の姿は全て消え去りました。
そして、私もーー
「……マシュ?」
目を開けると、そこには先輩の顔がありました。
「……えっと、おはようございます、先輩」
「うん、おはよう、マシュ。ただ、お昼寝から、だけどね」
そう言われて私は時計を確認します。
17時55分。本当にお昼寝でした。
「す、すみません先輩……」
「謝ることはないよ」
そう言って笑いながら、私の頭を撫でてくれる先輩の手の温かさが、とても心地好くて。
「……先輩」
「ん?」
「いつか、皆さんと一緒に、新年のお祝いパーティ、しましょうね」
「……もちろん!」
私は、いつか夢見た
そして。
全てが、動き出す。
はいどうも、ライター・スプラウトです。
つい先週?ぶりですね!二週間連続投稿じゃオラァン
さて今回のお話。
今回は自身の今まで書いてきた小説の中で初めて一人称視点に挑戦してみました。
そしてメインテラーは、さりげなく今までメインで書かれてきてないマシュをチョイス!
前回と違って、今回は結末が先に決まってからタイトルが決まりました。おいそこ、オーズのセリフのパクリとか言うんじゃない!!(
内容としましても割と在り来りかな?とは思ってます。ただマシュは、事実は事実だからと、どこか諦めてしまうところがあるんじゃないか、というのを書いてみたかったのがあります。事実がどうあれ、最高を願うというのは、マスターがいるからこそ、なんじゃないかな、と。
だから今回が、初めてマシュが自分から最高を願えるように……と書いたつもりがそうならなかったような気がしてならない。くっそう。
あと本編で出てきた騒いでる鯖、あれ今まで他メンツとかが書いてきたメンツをチョイスしたのは気付いていただけたでしょうか。こういう遊び心、好きなんです。
さて、あと数分もすれば第二部プロローグがまた動き出すはずです。
これから先の展開がどうなるか。
皆様も、いつかの明日のために、どうか歩み続けてください。
それでは、ライター・スプラウトでした!まぁ来週も僕なんですけどね!!