馬鹿4人によるFGO SS 1週間1本勝負   作:作家活動から逃げるな。

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注意事項
・明らかにFate世界設定からしておかしいことになっていると思います。
・新宿のアーチャーが登場しています。真名は隠していますが、推測は十分可能だと思いますので一応ネタバレ注意です。
・恋愛要素とか一切ないです。
・アタランテとエレナはいいぞ。


自然に浮かぶもの (ライター・スプラウト)

晴れ渡り、雲一つとて存在しないほど透き通る、青い、蒼い、空。

 

その空を、まるで貫くかのように、一陣の風が、吹きすさぶ。

 

一直線に、ただ一点に向かって。

 

まるで、的に向かって放たれた、一矢のように。

 

そう。それは、風ではない。

 

本当に、矢であった。

 

風よりも速く、光より尚鋭く、音さえ切り裂くように研ぎ澄まされて放たれたその矢は、数瞬の後には、終着点に辿り着いていた。

 

その終着点は、大木すら薙ぎ倒す程の巨体でありながら。

 

ただ一本の、眉間に突き立った矢によって、その生命の息吹を、途切れさせたのであった。

 

 

 

「……よし」

 

すっと、黒く大きな木製の弓を降ろし、警戒を解く一人の女性がいる。

頭頂部付近までは翡翠色でありながら、そこから毛先に至るまで、黄金色に近い白金色を長髪を伸ばした、緑色の服の、女性。

その頭には、まるで獅子のものと見紛うほどに精巧な――いや、まさに獅子のものと同じ、耳が生えていた。

更にその臀部からは、これまた獅子の、というよりは、こちらは猫のものに近く感じる獣の尾が、スカートの下からするりと伸びていた。

その尾を垂らし、真に警戒を解き終わった女性は、自身が仕留めた巨影に向かい突き走った。

その速さたるや、果たしてその細く、柔そうな脚で出せるものとは到底思えないほど。

車どころではない。ミサイルのように、しかしミサイルですら追いつけないだろう、まさに一陣の風のような速さ。

その速さで、時には地面を直に走り、時に数十メートルを跳躍し、時には木の枝から枝へと飛び移り、数分もしないうちに、巨影――ワイバーンエビルのもとに辿り着いた。

 

「……やはり、でかいな」

 

女性は自身で仕留めたソイツを見て、顔を顰めながら言った。

そう、そのワイバーンエビルは通常の個体よりも遥かに大きかったのである。

通常ならばせいぜいが四、五メートルのそれが、今ここに倒れ伏すものはゆうに十メートルを超えているだろう。

このサイズにもなればドラゴンと言ってもいいだろう。

 

「お疲れ様、アタランテ!」

 

そんな風にワイバーンエビルの死体を眺めていると、女性に声をかけてくる、別の女性がいた。

胸の先端から脚の付け根までしか隠さないほどのきわどいワンピースのような服の上に長いコートを腕に通す程度に羽織った、まるで少女のような見た目をした女性。

 

「あぁ。そちらこそ、エレナ」

 

かけられた労いの言葉に、彼女――アタランテは、真顔のままに答え、また返した。

返された桃髪の少女――エレナ・ブラヴァツキーは、呆れたかのように溜息を零していたが。

 

「……どうかしたか?」

 

「はぁー……あのね、労うならそんなに真顔でなくてもよいのではなくて?そんなに固い顔で労われても、少しもリラックスできなくてよ?」

 

「む、すまない……その、あまりそういうことにはなれていなくてな」

 

エレナの指摘に、アタランテは申し訳なさそうにしながらも、やはり表情は真顔に近いものであった。

そこに、虚空から同意するかのような声が響く。

 

『そうだぞぅ。せっかく見目麗しいんだから、もっとはにかんでもいいんじゃないかな?』

 

そう言うと同時、虚空に青いホログラフが浮かびあがる。

そこに写るのは長髪の女性。

現在、アタランテやエレナを指揮するマスターの指揮役、レオナルド・ダ・ヴィンチであった。

今回彼女たちがこの場に来ているのも、彼女からの指示である。

曰く、「この特異点で急に魔力反応が確認されたから確認してきて」とのこと。

それを確認しに来てのこれである。

 

「だからさっきも言っただろう、不得意なんだ、そういうのは」

 

「まぁそれは仕方ないからいいわ。……それにしても、本当にデカいわね」

 

「あぁ。汝の強化魔術と宝具による弱体化、それに……」

 

と言って、ちら、と少し離れたところを見るアタランテの視線の先には、特徴的な形の青い襟をした、スーツ姿の初老の男性が、地面に倒れていた。

その服は至る所が黒こげになっている他、一度踏み潰されたのか、ぴくぴくと痙攣していた。

それを白い服の少年が枝で突きながら治療魔術を施しているようである。

 

「……あの男のカリスマと作戦、そしてあの様があってこそ、だ。それが無ければ流石に一矢では倒し切れなかっただろう」

 

「……ブレスにカウンターをかけるように宝具を発動しようとしたところまでは滅茶苦茶渋くてダンディーだったのに、そこで腰がグキって言うあたり残念なオジサマよね……」

 

「聞こえてるよキミたち……私、こんなキャラじゃないはずなんだけどネ……」

 

「はいはい、あなたは大人しくマスターの治癒を受けてなさいな」

 

「辛辣よくないと思うよ……」

 

とだけ言い残して再び地面に突っ伏す初老の男を放置し、アタランテとエレナは倒したワイバーンエビルの死骸に近寄る。

 

「……どうみてもこれ、自然発生のやつじゃないわよね」

 

「だな。明らかに無理のあるサイズだ」

 

アタランテは獣としての感性で、エレナは魔術的視点から、ワイバーンエビルの死骸を検分する。

 

「うーん、魔力回路が明らかに増えてるわね……これ、外から移植されたやつかしら? でもあまり拒絶反応なさそうね……そういうところ人間ほど複雑じゃないけど、こんなにマッチしてるなんて一体……」

 

「――エレナ」

 

エレナがワイバーンエビルの頭に手を触れながら思考していると、喉のあたりからアタランテが声をかける。

エレナはすぐにアタランテのもとに駆け寄った。

 

「何か見つけた?」

 

「あぁ」

 

そう言ってアタランテが指差した先には、薄い、それこそこうして近くに寄って注意してみなければわからないほどに薄く隠された、縫合痕があった。

 

「……手術痕ね、これ。それも割と新しいやつ」

 

「明らかに人の手が加わった後の証拠だな。しかしなんと小さい傷だ」

 

「……もしかしてだけど、これ……」

 

その手術痕を見て何かを察したのか、エレナは再び死骸の頭に手を当てる。

そして今度は先ほどよりも深く意識を集中させて、ワイバーンエビルの死骸に残る魔術回路を詳しく調べていく。

魔術には明るくないアタランテは邪魔にならないように、エレナの後ろで静かに見守っていた。

五分ほど経過したところで、エレナが静かに死骸の頭から手を離す。

 

「――やっぱりこの増えてる魔術回路、他の『幼体ワイバーンエビル』から移植されたものみたい」

 

エレナの言葉に、アタランテと、初老の男性を治療していた少年が首を傾げた。

 

「そんなことができるのか?」

 

アタランテの疑問も当然である。

魔術回路は本来固有のもの、いうなれば神経系、あるいは内臓器官と同類である。

であるならば、移植することはとてつもない困難なことであり、そうそう出来ることではない。

よしんば出来たとしても(もっともこのワイバーンエビルには成功しているわけだが)、そんなことをして拒絶反応が出ないはずがない。良くて魔術回路の暴走、悪くて即死だ。

それが、体躯がここまで巨大化する以外の影響が出ていない。それが、幼体から移植するだけで起きうるものなのだろうか。

 

「多分だけど、このワイバーンエビルも元は幼体だったのよ。で、きっと目覚める前の回路を移植してから回路を目覚めさせることで、無理矢理このワイバーンエビル固有の回路にしたてあげた……それならいけそうじゃない?ね?ダ・ヴィンチちゃん?」

 

『まぁ理論上はそれであってそうだけど……むちゃくちゃな理論だなぁ』

 

「そこに転がってるオジサマも似たようなことやってるし出来るとは思うけどね」

 

「多分全然違うと思うけどネ……」

 

「となればあとはこいつをここまでした魔術師を見つけねばな。それほどの技量を持つなら、更に危険な存在も作れるだろう。すぐに――」

 

『――少し失礼。おそらくその心配はいらないと思われる』

 

『あ、ちょっ!?相変わらずだなぁキミは!』

 

アタランテの言葉を遮るように、通信先を写すホログラフがダ・ヴィンチから若き青年の姿に変わる。

オールバックに黒いインバネスコート、左手にもつパイプから紫煙を曇らせるのは、最近になってカルデアに滞在するようになったサーヴァント・ルーラー――シャーロック・ホームズであった。

彼が出てきた瞬間、初老の男性がワイバーンエビルの後ろに隠れたがそんなことに気を向けず、アタランテはホームズに疑問を投げかけた。

 

「その心配はいらないと言ったが、どういうことだ? 汝は何を知り……いや、推理してみせた?」

 

『種明かしが必要か……そういうのはあまり好きじゃないんだが。まぁ仕方あるまい。おそらく――』

 

「――このワイバーンは急成長し、魔術師の手を離れた。その際に、魔術師はこいつに食われた、といったところかね」

 

ホームズの言葉を、初老の男性が遮って、答える。

 

「この傷痕、見た感じ一、ニ週間以内に付けられたものだ。であれば魔術回路が移植されたのもそれくらいだろうねぇ。それにも関わらず、この巨体にまでなっている。ということはこいつは何らかの影響で急激にこのサイズにまで成長したと考えられる。その理由は、十中八九魔術回路の覚醒だろうが――覚醒させるために何かしたからか、あるいは魔術回路を覚醒させるためにわざとかは知らないけど、ネ」

 

「……食われた、ということか」

 

アタランテが目を閉じてそう呟く。それは決して、魔術師を悼む気持ちの為でも、ワイバーンエビルを弔う為のものでも無い。

エレナも特に何も言わず、ただ死骸を見つめ続けていた。

そして彼女らのマスターは、ただ一言。

 

せめて、弔ってあげよう

 

それだけ、言った。

 

 

 

 

 

 

 

『……ワイバーンエビルの死骸の完全な焼却を確認。その特異点から検出されていた異常な魔力は観測されなくなりました。お疲れ様でした、先輩。レイシフト準備、できてます!』

 

マスターを先輩と慕うシールダーだった少女の言葉に体から余計な力を抜き、流されるままに彼女らの拠点、カルデアに帰還する。

マスターはそのままダ・ヴィンチらのもとに今回の出来事を報告しに行き、今回同行した三人はそのまま解散となった。

初老の男性はそのままマスターについて行った――ホームズにでもちょっかいをかけに行ったのだろう――ので、アタランテとエレナはそのまま自身に割り振られた部屋に戻ろうとしていた。

が。

 

「ええいだから交流はダメなのだ!!」

 

「やかましいぞこの凡骨が!」

 

「……あの二人はほんっと、いっつもああなんだから……ちょっと止めてくるわ。今回は本当にお疲れ様ね、アタランテ!」

 

「あぁ、お疲れ様、エレナ」

 

挨拶を済ませ、電流コンビの喧嘩を仲裁しにいったエレナを見送り、アタランテは再び自室へ戻って行く。

途中、子供姿のサーヴァント三人衆がじゃれていたり、金ぴかの王が騒いでいたり、赤い弓兵が掃除をしていたり……

 

そういう光景を見て。

 

「ふっ、ここは相変わらずだな」

 

アタランテは、小さく笑みをこぼした。




初めまして、ライター・スプラウトです。

本企画一発目の作品、いかがでしたでしょうか。
皆様のご期待に添えられていたか不安ですが、少しでもアタランテのカッコよさとエレナの可愛さが伝わればと思います。あんまエレナ書いてあげられなかったゴメンネ。

その他自身については活動報告にあげておきますので、もし気が向かれたらご覧になられていただければ、と思います。

次回担当はMKDN兄貴です。もう一本の方も書いて同時投稿するとか言ってるので、ご期待ください(プレッシャーかけていくスタイル)
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