馬鹿4人によるFGO SS 1週間1本勝負 作:作家活動から逃げるな。
今週の担当をさせていただく馬鹿その2、MKDNです!
自己紹介は活動報告のほうでさせていただきますので、早速ですが本編のほうをどうぞ!
「おーい、マスターいるか?」
僕がマイルームでダ・ヴィンチちゃんから借りた魔術書、「素人でもわかる!簡単魔術入門!」を読んでいると、戦闘シミュレーションルームに行っていたはずの槍ニキーーークー・フーリン(槍)がマイルームに入ってきた。
「あれ?槍ニキじゃん、シミュレーション戦闘はどうしたの?」
「んあ?ありゃぁだめだ。あんなんじゃ、まっっったく滾らねぇ…。逆にストレス溜まっちまったぜ」
やっぱ実戦じゃねぇとなー、などとぼやく槍ニキを見てやっぱりこの人は根っからの戦闘狂なんだなぁ、と思う。
まぁ聖杯に掛ける願いが無い上、聖杯戦争への参加理由が「死力を尽くし、強者と戦うため」っていう時点で分かってたんだけどね?改めて感じちゃうよね。
「っつーわけでだマスター。ちょっと俺のストレス発散に付き合ってくんねぇか?なぁに、悪いようにはしねぇからよ!」
「うん、別にいいけど…どこ行くの?シミュレーションルームじゃないんだよね?」
「なぁに、簡単な話だマスター。『シミュレーションで発散できねぇなら実戦で発散すればいい』、ってな!」
ニカッと笑いながらそんなことを言ってくる槍ニキ。
ってことはつまり…
「『どっか満足できる相手がいるところにレイシフトしてその相手と存分にやりあおう』、ってこと?」
「そういうこった!理解が早いなマスター!」
「いや、あそこまで言われたら誰でも気づくと思うよ…?それで、行くとことか決まってるの?」
「おう、良さそうな相手ならもう思いついてんだ。第一特異点、覚えてるかマスター?」
「…もちろん覚えてるよ。白いジャンヌ達と一緒に黒いジャンヌ達と戦ったよね」
そう、当然覚えてる。
忘れたくても、忘れられない。
ーーー滅びゆく街を見た。
ーーー死にゆく人々を見た。
ーーー自分のために消えていく仲間たちを見た。
ーーー「戦争」というものがどんなものかということを思い知らされた。
「僕が生まれて初めて、本物の『地獄』を見た場所だ」
槍ニキにとっては生ぬるいのかもしれないけどね、と苦笑を漏らしながら付け加えてそう言うと、槍ニキは複雑そうな表情を浮かべた。
「…そうか、マスターは元は一般人だったな。すまねぇな、嫌なこと思い出させちまってよ」
「ううん、違うんだ。確かにあれは嫌な、絶対に忘れられないような思い出だけど…それだけじゃなかったんだ」
そう、あそこで僕は確かに地獄を見た。
けど、僕はあの場所で人間の素晴らしさも知ることができた。
ーーー今にも滅びそうな街の中でも明るく振舞い、今を懸命に生き抜く人たちを見た。
ーーーたとえ敵わないと分かっていても、武器をもって敵に立ち向かう、勇敢な人々を見た。
ーーー自分の命をなげうってでも、思いを、未来を、僕につないでくれた人がいた。
「それを見て僕は思ったんだ。『人理焼却なんて絶対にやっちゃいけないことだ』って。心からそう思ったんだ」
それまでは何が何だかわからなかった。
アルバイトをしようと思って応募したら雪山の頂上に拉致られて。
可愛い後輩に出会ったと思ったら突然大爆発が起きて。
あれよあれよという間に「人類最後のマスター」になって。
第一特異点に来るまでは、ちゃんと分かってなかったんだ。
ただ、皆が困っていたから自分ができることをしようと思った。ただそれだけだった。
「僕はあの場所で、本当の意味で覚悟ができたんだと思ってるよ。『絶対に人理を救う』っていう覚悟が」
槍ニキは黙ってじっと僕の話を聞いてくれている。
「だからどうか謝らないでほしい。たしかにあの場所では嫌なことがいっぱいあったけど…あそこは、この旅における僕の原点だから」
そう話を締めくくると槍ニキは、
「…そうか。お前も十分立派な男だった、って訳だな」
そう言ってぐしゃぐしゃと頭を撫でてきた。
「わぁっ、ちょっ、何するんだよ!」
「ははは、すまねぇな!ついつい嬉しくなっちまってよ!」
そう謝りながらも笑いながらぐしゃぐしゃと撫でてくる手を止める気配はない。
「…なぁ、マスター」
どうしようもないので抵抗をやめてしばらく大人しく撫でられていると、槍ニキが話しかけてきた。
「確かにお前は『人類最後のマスター』だ。それは今となっちゃもうどうしようもならねぇ事実だ」
だけどな、と一旦区切り。
「何もお前1人で人理を救うわけじゃねぇ。俺がいる。相棒の嬢ちゃんだって、あのいけ好かねぇ紅い弓兵だっている。お前にゃ頼れる奴らが周りにわんさかいる。それを忘れんじゃねぇぞ」
そう、言ってきた。
あぁ、やっぱり。
この人は正しく英雄だ。神話の通りの、偉大な大英雄なんだ。
「…うん、肝に銘じとくよ」
「おう、そうしとけ。…話は戻るがマスター、そういうわけで行くところは第一特異点、オルレアンだ。そこにいい感じのヤツがいる。」
「そういえばそんな話だったね。にしてもオルレアン…邪ンヌがうちに来ちゃってあそこに居ない今、残留思念だとしても残ってるのは…」
「そ。あの竜殺しが屠った災厄の竜、さんざん俺たちを苦しめてくれやがった、『邪竜ファフニール』だ」
「…ほい、っと。到着だなマスター」
「うーん、結局お忍びでレイシフトしちゃったけど大丈夫なのかなぁ…」
レイシフトには存在証明やらなんやらが必要なのではなかっただろうか。
お忍びだったから誰にもレイシフトすることを言ってないけどその辺大丈夫なんだろうか…?
「まぁ、大丈夫だろ。問題があってもあの医者が何とかするだろうしよ」
「そういうもんかなぁ…」
うーん、不安だ。
「安心しろよマスター。俺のこの槍にかけて、お前にゃ傷一つ負わさずに帰してやるからよ」
不安がっていたら槍ニキがどや顔でそんなことを言ってきた。
顔もセリフもイケメンですごく様になっているんだけど…
「『必中の槍が当たらない』って有名な人にそんなどや顔されてもなぁ…」
正直こんな気持ちで心の中はいっぱいである。
や、確かにかっこいいんだけどね?
「てめぇ、マスター!それどっから情報仕入れやがった!なんでお前がそんなこと知ってやがる?!」
「エミヤが教えてくれたよ?」
「やっぱりあの弓兵か!どこまで行ってもいけ好かねー野郎だ!」
「『穿つは心臓(笑)、謳うは必中(爆)!』とも言ってた」
「よーし、あの野郎帰ったらボッコボコにしてやらぁ!テメェが馬鹿にした槍を存分に喰らうがいいわー!!!」
そんな雑談をしながら槍ニキの先導で目的地に向かって歩いていく。
十数分歩いたところにあった開けた場所で槍ニキが止まり、何やら地面に書き出した。
どうやらルーン文字で作った魔法陣のようだけど…?
「槍ニキ、何やってるの?」
「ん?あぁ、そもそもの相手を呼び出そうと思ってよ。」
「呼び出す?ファフニールを?」
「おうさ。モノホンはあの竜殺しが斃しちまったからな。残ってる残留思念をかき集めて奴を再現する、ってスンポーよ」
「へぇー…そんなこともできるんだね、ルーン魔術って」
「まぁこんなことができるのは限られたごく一部の使い手だけだけどな、それこそ俺レベルの」
「じゃあそれ普通の魔術師じゃ無理じゃん」
「あったりめぇだろ…神代の失われたルーンも入ってるから絶対に出来ねぇぜ?」
「えぇ…何、槍ニキ実はすごい魔術師だったの?」
「だからキャスタークラスの俺が召喚されてんだろうが?!このクラスではめんどくせーから使わねぇだけだっつの!ほら、そろそろ出来上がるから離れてろ」
「はいはーい」
槍ニキの言葉に従い、素直に後ろへと下がる。
すると、下がってから数秒で魔法陣の周りに黒いモヤが漂いだした。
それはだんだんと増えていき、やがて一塊になっていく。
それは黒い竜だった。
見た者全てに災厄をもたらすような、底なしの絶望を凝縮したような黒い竜だった。
その吐息は圧倒的な破壊と死をもたらし、ひとたび足を踏み鳴らせば大地が悲鳴をあげる。
人間など歯牙にもかけない巨体の化け物が、殺意をもってこちらに迫りくる。
もし僕一人でこの災厄の竜、ファフニールと対面したなら死は免れなかっただろう。
だけど、僕の前には彼がいる。
一騎当千、万夫不当、百戦錬磨の彼がいる。
「おーおー、元気なこって…そうでなくっちゃ
そう、彼こそはアルスター伝説における大英雄。
太陽神ルーの子である「光の御子」。
「『赤枝の騎士団』にこの人あり」と謳われた「クランの猛犬」、クー・フーリンーーー!
「邪竜ファフニール…その心臓、貰い受けるーーー!!!」
「…それで?何か申し開きはあるかね?マスター」
あれから数時間後、オルレアンから帰ってきた僕は中央管制室でエミヤの前に正座していた。
周りには怒った顔をしたマシュとお腹を抱えて笑っているダ・ヴィンチちゃん、エミヤの威圧なぞどこ吹く風、といった体の槍ニキがいる。
「いや…無断で特異点にレイシフトしたのは悪かったけど、槍ニキも一緒だったし…」
「そういう問題ではないんだマスター!いきなりどこかへ消えてしまった君を、私やマシュ、スタッフの方々がどれだけ心配したと思っている?!」
「そうですよ先輩!私、すっごく心配したんですからね!」
「うっ…面目次第もございません…」
エミヤだけでなくマシュにまで言われてしまってはただ謝るしかない。
男の子は総じて女の子に弱い生き物なのだ。
「まぁまぁ。嬢ちゃんも弓兵も、マスターはこの通りかすり傷一つ負わずに帰ってきたんだからいいじゃねぇか」
そう槍ニキが助け舟を出してくれるも、
「それはただの結果論だろう?万が一、ということもある。誰もスタッフがいない状態でカルデアスに異常が起こって意味消失、なんてことになったら君は責任を取れるのか、クー・フーリン?」
冷ややかな目線と共にごもっともな反論をするエミヤ。その後もつらつらと彼の危惧する状況を列挙していく。
「それに君と違ってマスターは普通の人間なんだ。それも元一般人のな。何度も何度もする必要のない血なまぐさい戦闘に参加する意義がない」
それは、確かに。
「さらに言うならば、だ。勝手に連れ出した結果、予測不能な事態が起こってマスターに何らかの後遺症が残ったらどうなる?もしトラウマになって『レイシフト恐怖症』なんてものになってしまったら人理は焼却され今までの我々の努力が無駄になるんだぞ?」
…いや、まぁ確かにごもっともなんだけど、さ。
「…なんつーか、マスターに対する過保護がすげぇな…テメェ、受験生の母親かよ」
あ、思っても言わないようにしてたのについに言っちゃった。
そうなのだ、召喚した直後はそうでもなかったのだけど、共に特異点を乗り越えていくにつれて段々とエミヤはまるで母親のようなことを言ってくるようになったのだ。
服はしっかり畳め、とかご飯は三食きっちり食べろ、とか明日も早いんだし早く寝ろ、とか。
…や、全部やってない僕が悪いんだけどね?
「あー、やだやだ。こんな口うるせぇのが母親とか、俺だったら死んでもごめんだね」
確かにそうだろうなぁ。
槍ニキ、責任は自分で取るから好き勝手やらせろ!って感じだし。
「はっ、『待て』もできない番犬風情がよく吠える。そういうことはもう少し他人の言葉に耳を傾けてから言ってもらいたいものだな。」
あっ。
「テメェ…今『犬』と言ったか?」
エミヤの挑発に対しこめかみをびきびきさせながら言う槍ニキ。
これは…いつもの流れじゃな…?
「事実だろう、クー・フーリン。待機を命じてもすぐにどこかへ飛び出して行ってしまう。まるで躾のなっていない猛犬だ」
「貴様こそ、よくぞ吠えたなアーチャー…抑止力の奴隷風情が。いい加減白黒はっきり付けようや…」
「望むところだアイルランドの大英雄。少しは言うことを聞くように躾けてやろう」
「抜かせ。後で吠えずら掻いても知らねぇぞ?」
「それは君の役目だろう?なんせ『犬』なのだからな」
互いに挑発を繰り返しながら戦闘シミュレーションルームへと歩いていく二人。
あと数分後にはいつものようにどったんばったんと騒がしい戦闘音が聞こえてくるのだろう。
この状況で僕が言うべきことはただ一つ。
「やめて!もう僕のために争わないで!」
「冗談になっていない冗談はダメです先輩?!」
今日もカルデアは平和です。
ーーー『
ーーー『
ーーー『先輩、そろそろ止めないとまずいですよ!先輩!せんぱーい!!!』
平和ったら平和なんです!
というわけで記念すべき私のFGO SS 1週間1本勝負、初めての作品でした。
お楽しみいただけましたでしょうか?
当初はここまで長くなる予定じゃなかったんですけどね…
いつの間にか5000字近く書いちゃってました。
あ、私が元々書いていた方も同時刻に上がっていますので、そちらももしよろしければ見てやってください。
来週は物書き活動初挑戦の我らが馬鹿その3、アイアムメイデンが担当です。
どうか温かい目で見守っていただきますようよろしくお願いいたします。
それではこちらではまた一か月後にお会いしましょう!さようならー!
MKDN