馬鹿4人によるFGO SS 1週間1本勝負   作:作家活動から逃げるな。

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先週末までに間に合わず、関係者各位に多大な迷惑をかけた事、期待してくださってた読者皆様を裏切った事、この場と活動報告を借りて謝罪させていただきます。大変申し訳ございませんでした。

(追記)※注意 この短編にはfate/grand order 1.5章亜種特異点Ⅱ『アガルタの女』のネタバレを含みます。その点をご注意の上お読みいただけると幸いです


海賊王の休息 前編 (獣八)

額から血が流れる。

相手の攻撃を予測し、その上であえて受けた(・・・・・・・・・・)のだから、傷自体は別段気にする程では無かった。

とはいえ出血そのものは気持ちの良いものでは無いし、拭い損ねた血液が視界を遮るのは鬱陶(うっとう)しく、ほんの少し後悔を呼び起こす。

「―――そんな攻撃すら避けられないの?」

粉塵をゆっくりとかき分け、(あざけ)りを含んだ微笑を浮かべながら、フランシス・ドレイクの姿をした人形は侮蔑の言葉を投げかける。

 

ダユー

こちらに対して容赦ない攻撃を仕掛ける彼女は戦闘の前、ドレイクの姿、声でそう名乗った。

ハリの無い声、白磁の様に白く冷たい病的な肌、紫紺の衣装、『欲するものは自ら奪え』『自ら奪ったものは欲するな』という退廃した思想。

外面だけを切り取ればドレイクと対称的に見える彼女……だが実際は反転化(オルタ)ではないと、彼女と出会った全員が確信していた。

そこにいたある一人を除いて、その確信の理由をうまく言い表すことは出来なかった。だが、カルデア一行全員が直感的に共有した事がたった一つあった。

ドレイクが海賊だから(・・・・・・・・・・)水上都市の伝説の女主人ダユーをあてた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

ただそれだけだと(・・・・・・・・)

―――要するに、それっぽい女性であれば誰でも良かったのだ、と。

この三流の配役(おぶつ)を、その場に居なかった作家陣ならこう形容し、解説しただろう。

極上のキャストの顔のみを切り取り案山子に貼り付ける、グロテスクなその場しのぎの役作り。

絹の生地に綿の布を継ぎ当てるような、染めた布の上にペンキをぶちまけるような、急造の不出来で歪な構成。

誰かに見せる事も、いや作り上げる事も考えていない、ただそこにあればいい(・・・・・・・・)物語、だと。

……事実、このアガルタは「死なない事」さえ達成すればいいという理念の元に、バラバラの物語を無理矢理繋げて作り上げられた世界だったのだから、この時抱いた感想は間違っていなかったのだと、後日発覚する。

―――ともかくそれはどこまでも醜悪で、派遣されたカルデア一行に怒りを覚えさせる要因として十分すぎる程だった。

 

そしてその中でもとりわけ強くダユーに殺意を向けるサーヴァントが一人いた。

「……っへ、2Pカラー以下の、よく分からん紫生ゴミの攻撃なんか避けるまでもねえよ」

滴り落ちる血を手の甲で拭いながら、大男―――エドワード・ティーチは濁声(だみごえ)で答える。

嘲笑に対して、いつもの様に軽口で返す彼は一見普段通りだった。

だがカルデアでの彼をよく知る者なら、彼が口調すら保てない程激怒している事に気付くだろう。

ダユーがドレイクの反転化(オルタ)ではない理由も、黒髭からしてみれば明白だった。

そもそも反転化(オルタ)とは、大雑把に言えば『主義の為に選ぶ手段が真逆になる』もしくは『目的の為への手段が真逆になる』と言ったものだ。

平和なブリテン王国を実現するため、絵に描いたような名君を目指すアルトリア・ペンドラゴンが、反転化(オルタ化)すると、平和なブリテン王国を実現するために圧政でそれを実現しようとする暴君(・・・・・・・・・・・・・・・・)へと変貌するのが代表的な例だろう。

だがダユーは違った。そもそも目的が歪められていたのだ。ドレイクの主義は『財を得てそれを消費する』つまり財を使いそれ以外の何かを得る事―――ここで得たものは更なる富、形にならない満足感、果ては『財を失ったという虚無感(・・・・・・・・・・・)』すら当て嵌まるだろう―――そのサイクルこそ彼女を彼女たらしめている。

だが、ダユーは「財を得る事」のみが彼女を構成しているのだ。それは確かに一都市を治める貴族としては正しい姿だろう。富を得る事そのもの、それこそが貴族の本質の一端であるのだから。

この通りダユーはドレイクではない。だが本質の一部はドレイクと重なる。だからこそドレイクはダユーへと捻じ曲げられ顕現したのだ。

 

ドレイクの尊厳を踏みにじった上での顕現、それこそがダユー。

―――ドレイクに最大の敬意を払う黒髭にとって許せるものでは無かった。

海賊の美学を、誇りを(けが)した。それは彼にとって、ダユーとアガルタの支配者へ怒りを、その延長線上にある殺意を抱く理由として充分過ぎるものだった。

ティーチの殺意は―――矛盾するようだが―――彼をある種の悟りの域へと到達させる事に一役買っていた。怒りを超えた純粋な殺意は、『相手を殺す』と言う目標に対して、最適かつ快適な、涅槃に似た境地を、目的への直線を描き出す。

そしてそれは、生前目標の為に手段を選ばない事を体現した、海賊という存在の頂に立っていた男であった黒髭にとってはある種懐かしさすら思い起こさせた。

 

そうした思考の贅肉(ぜいにく)味わい(・・・)つつも、もう一度ダユーを殺す事に意識を集中させる。

その為にまず周囲を見渡す。そこに広がるのは一面の褐色の肌―――ダユーの配下、イースの海賊の群れだ。

本能のままに襲うそれらは、個々で見れば大した戦力では無かった。

問題はそれらの数だった。それらはその身に精を宿す限り、増殖し続けるのだ。

精さえなくなれば止まるのだから、理論上は有限ではあった。だが、周囲をぐるりと囲むそれらの数を考慮すると、こちら側の方が先に消耗するのは明白だった。

多対一を得意とするサーヴァントがこちらに多いのは事実だ。こうして周りを見渡している最中にもデオンとアストルフォはかく乱を続けているし、レジスタンスのライダーも武器である鉄球で数多くの肉塊を薙ぎ払っている。

だがこちらが攻勢に出る事は現状決して出来なかった。それだけ相手の物量が圧倒的なのだ。たった一人とは言えダユーの元まで辿りつけたこと自体が奇跡かもしれない。

問題は更にある。ダユーの技量の高さだ。

正確に言うのなら、ドレイクの技量の高さだった。接近からの連射、斧による牽制から速射、力を溜めた二点バースト……それらは全てドレイクの熟達した技量のなせる業だった。それをティーチは、あえて弾丸を食らう事でしっかりと確認していた。

一方ダユーとして自然体である時の彼女は、ただ残酷なだけで戦闘そのものは素人だった。だが、そんな人形の意志に関係なく、その肉体は精神を守るためその技量を存分に奮う。

―――その技はてめえのもんじゃねえだろう―――!

心の中で黒髭が叫ぶ。

元々戦う力のないダユーが、自らの技量を誤魔化す為にドレイクの技術を扱う。その事がまた黒髭の怒りを高める。

そんな圧倒的不利の中に唯一幸運を見出すのなら、それはマスターに決して攻撃が届かないことだった。少年期のフェルグスはしっかりとその役目を全うしていた。

……それは確かに幸運だが、黒髭本人の現状には何の影響もないのも事実。

絶体絶命。

それが現状の黒髭を説明する際に最も適切であることは火を見るよりも明らかだった。

だが、どうしてだろうか。

黒髭は、笑っていた(・・・・・)

確かに、心の底から現状を楽しむ様に。

黒髭は、笑っていたのだ(・・・・・・・)

それは本人すら気付いていなかった。知らず知らずのうちに、顔面に汚い三日月が浮かんでいた。

―――更に、黒髭の生涯が走馬灯のように、彼の脳内を駆け巡る。

何故だろうか、それは黒髭自身にも分からなかった。

だがそれは止まらなかった。止めるつもりも無かった。

現在と過去を意識が駆け巡る。

まるで自分の過去と照らし合わせる様に、比較する様に。

 

生きる意味を、探し出すように。




(追記修正)スプラウトが多忙の為今週も僕が引き続き執筆するので、後編は今週あがります
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