とある怪異の泥田坊   作:Fヒカル

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いつもの公園

学園都市。

 

東京の三分の一の面積を誇り、総人口は約230万人。その八割が学生という、言わば学生の町。

 

さらにこの町には、能力開発という時間割り(カリキュラム)があり、個人差はあるものの、町の学生はなんらかの能力に目覚めている。

 

そんな学園都市の、第七学区にある、飯島中学校の校門から、浜面皇仕は出て来た。

 

平均的な身長で中肉中背、所々癖っ毛のある、ぼさぼさした黒髪の、いたって普通そうな少年。

 

彼の他にも校門からは多くの生徒が出ているが、彼は一人で下校しようとしている。

 

そんな彼に話しかける者がいた。

 

「よう浜っち、一緒に帰ろうぜぃ」

「ん、ああ、丹波か」

 

浜面と同じく、飯島高校の制服を着た服部丹波は、浜面のクラスメイトであり、同じ寮の隣に住んでいる。

 

なにより、家族ぐるみでの付き合いの為、よく遊ぶ仲ではある。

 

「いやぁさっきさぁ、麻琴ちゃんのタイプ教えてくれー、ってカミやんに頼んだらカミやん怒っちゃってさ。全力で逃げてきたわけよ」

「お前...ほんと忍者っぽくないよな」

 

溜め息混じりに、そう呟く浜面。

 

そう言われた服部は、レベルは低能力者(レベル1)であるものの、実家は伊賀服部家の末裔であり、服部本人も、実は忍者のレベルは相当高い。

 

「なに言ってんだ浜っち。今時の忍者は大体こんなもんだぜ?今時全身黒装束の忍者なんていねぇよ。それより麻琴ちゃんのタイプ知ってる?」

「...なんかお前見てると、凄いガッカリした気分になる」

 

そんな事を話ながら、歩く二人。

 

寮の近くまで来ると、近くの公園により、自販機で何か買おうという話になった。

 

「ヤシの実サイダーは、っと」

 

ガタゴトという音がし、中からジュースを取り出す浜面。

 

「じゃ、俺はこれもーらお」

 

そう言って服部が押したのは『いちごおでん』と書かれたジュースである。

 

「おっ、出て来た出て来た。....うひゃー!これほんと旨いんだよなー!」

 

冗談なしに、いちごおでんを美味しそうに飲む服部。

 

「お前...よく飲めるよな...そんな化学兵器」

 

それを見て、呆れる浜面。

 

一回、服部に勧められ飲んでみた事があったが、気がついたら公園のベンチで寝ており、記憶が抜けていた、と言う事があった為、記憶にはないが、浜面にとってトラウマになっていたりする。

 

「んー、なーんでこの旨さが分かんないかなぁ」

「分かってたまるか。お前みたいな舌死人(ぜっしじん)と一般人の俺を一緒にすんじゃねえ」

「なっ!?舌死人(ぜっしじん)とは聞き捨てならないな!」

「舌が死んでなきゃ、脳が死んでんじゃねえの?」

 

散々な言い様に、ギャーギャー喚く服部を無視し、ヤシの実サイダーを飲み干す浜面。

 

と、ここで向こうから見覚えのある人影が走ってくるのが見えた。

 

「おーい、皇仕ー!」

 

灰色のプリーツスカートに、半袖のブラウスにサマーセーターと言う服装をした、黒髪で短髪の女の子。

 

周りにいた人々の視線は、彼女に注目している。なにせ、彼女が着ている服は、名門校で有名な常盤台中学校、別名お嬢様学校の制服で、滅多に見ることが出来ないからだ。

 

「あっ、麻琴ちゃーん!」

 

そんなお嬢様の彼女、上条麻琴に反応した服部。

 

「あっ、服部さん。こんにちは」

 

そんな服部に、礼儀正しく挨拶をする上条。

 

「よう、もう学校終わったのか?」

「そうだよ!ついさっき終わったとこ!」

 

浜面の言葉に、元気に答える上条。

 

何故、お嬢様学校の上条が、浜面達がこんなに親しく接しているかというと、この上条麻琴とも、浜面達は家族ぐるみの付き合いなのである。

 

さらに、彼の兄と、浜面達は同じクラスで、小さい頃からの友人だからだ。

 

「ねぇねぇ麻琴ちゃん聞いてよ!浜っちが俺の事舌死人(ぜっしじん)って言ってくるんだよ!ひどくない?」

「ハハハ」

「えっ、麻琴ちゃん?なぜにそんな引きつった笑顔を...?」

 

服部の苦痛の叫びに、笑み(愛想笑い)を溢す上条。

 

「麻琴。こういう時は正直に言ったほうが本人の為になるんだぞ」

「黙れ!お前に意見は求めてねぇ!ねぇねぇ麻事ちゃん!俺の舌っておかしいと思う?」

「そ、そんな事ないですよー」

 

再び愛想笑い発動。

 

「ほら見ろぉ!だーれが舌死人(ぜっしじん)だよバーカ!」

「餓鬼かお前は」

 

それに気づかない服部に、浜面は再び呆れた目を向ける。

 

「ふんっ。あんな奴ほっといて二人で旨い店行こーぜ麻琴ちゃん」

「えっ、でも...」

 

浜面を無視し、困惑する麻琴を連れ公園の外に向かう服部。

 

「いーのいーの、あんな本当に旨い物を知らない奴なんてほっといて、それより美味しい店知ってるんだよね。クリームうどんっていう、うどんに生クリームを入れた奴が、ほんと美味しくてねぇー!あっ、それはそうと、麻琴ちゃんのタイプってどんな...」

「おい」

 

そんな服部に、一つ、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

ギギギっ、と錆びた機械ように、ゆっくりと後ろを振り向く服部の目に入ったのは...

 

「家の妹連れてどこに行こーってんだ?」

 

怒りの形相で仁王立ちする、上条麻琴の兄、上条冬樹だった。

 

「い、いやぁー、さっきぶりですなぁー。えっ妹さん?やだなぁー別にどうこうしよーってわけじゃーないですよ。ただ美味しい物を食べて欲しくてですねぇ」

 

冷や汗を滝のように流す服部。

 

「ま、まあ落ち着いてください義兄さん」

「だーれが義兄さんだエセ忍者があぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

冬樹が叫ぶと同時に、青白い火花が服部を襲った。

 

そんな二人を止めようとオロオロとする麻琴。

 

そんな彼らを見て、

 

「...なにやってんだ。あの馬鹿共」

 

浜面はヤシの実サイダーをゴミ箱に入れながらそう呟いた。

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