「あぁーあ、折角旨い店教えてやろーと思ったのによぉ」
カウンターで頬杖をつきながら、服部はそう言った。
「生憎、俺達はこの年で死ぬわけにはいかないんでね」
「それどういう意味だよ」
「お前が思ってる通りの意味だよ」
そんなやり取りをする、浜面、冬樹らの三人の横で、麻琴が苦笑いをしている。
「いやほんとにおいしーんだって!生クリームうどん!生クリームの甘さがうどんの液と見事にマッチしてて...」
「佐天さーん。私とんこつラーメンくださーい」
「俺しょうゆで」
「塩お願いしまーす」
「無視しないで!麻琴ちゃんまで!あっ俺餡かけチャーハンください」
「はいよー」
服部をスルーしながら、厨房で麺を切る、この中華屋”さてん”の店長の佐天涙子に注文をする三人。
「でも、佐天さんのラーメンも美味しいし、いいじゃないですか」
「いやまあ、そりゃあそうだけどさぁー」
麻琴に言いくるめられ、不貞腐れる服部。
「....んなに家の飯が嫌か服部」
そんな彼に、白いエプロンに頭に手ぬぐいを巻いた、綺麗な金色で短髪の少女が、若干イラつきながら話しかけた。
「んぁ?...なんだ、スナスナか...」
「なんだじゃねえよ、私を見た瞬間落胆してんじゃねーよ!つーかスナスナって呼んでんじゃねー!」
金髪の彼女、砂皿すみれを見た服部の落胆ぶりに突っかかる砂皿。
「いやースナスナはスナスナだからねぇ。スナスナ以上にスナスナしてる奴見たことないしぃ」
「なにワケわかんねえこと言ってんだお前は!なんだスナスナって!」
服部の言動に、怒りを募らせる砂皿だったが、当の本人は麻琴と会話に戻っている。
「すみれー、いーから仕事して仕事」
「あっ、すいませーん」
そんな服部に、さらにむかついた砂皿だったが、佐天にそう言われ、不本意ながら仕事に戻った。
「はいよっ、とんこつとしょうゆと、あと塩ラーメンおまち」
「ありがとうございまーす!」
やって来たラーメンをすする、服部以外の三人。
「ん~!やっぱり佐天さんのラーメンおいしー!」
「ははは、ありがと麻琴ちゃん」
この店一番人気のとんこつラーメンを食べて感嘆の声を上げる麻琴。
「ほんとほんと、ここの餡かけチャーハンは学園都市一旨いですよぉ」
「舌が死んでるお前が言っても褒め言葉にならん気がするが...まあ旨いよな」
「カミやん、一々一言多いんだよ。」
文句を漏らす服部だったが、冬樹は完膚なきまでのスルーをかました。
「そんなことないよー。常盤台にはもっと美味しい店あるでしょ?」
「でも、それ含めても佐天さんのラーメンが一番ですって!」
麻琴達の褒め言葉で、佐天は『えーそう?』と上機嫌になっていっている。
実は、この佐天涙子とも、麻琴達は知り合いで、麻琴の親が中学生の頃に知り合った友人らしい。
その事もあって、佐天とは幼い頃からの知り合いで、麻琴達はこの店の常連になっていたりする。
砂皿すみれは、この店に住み込みで働いている。柵川中学に通っている
「まあ、この塩ラーメンは本当に旨い。やっぱラーメンは塩だよな~」
そんな浜面の一言に、麻琴はムッ、となった。
「いやいや、確かに塩も美味しいけど、でもやっぱりとんこつが一番だよ!」
そう言いながら、『あれを見ろ!』と言わんばかりに『一番人気!さてん特製とんこつラーメン』と書かれた看板を指差した。
「.....フッ」
そんな麻琴を見た浜面の失笑に、カチンと来た麻琴。
「なーに言ってんだお前ら」
そんな二人のやり取りを見ていた冬樹が、二人の会話に割り込んできた。
「一番はしょうゆだ。異論は認めない」
「兄ちゃんまでなに言ってるの!」
「たとえ相手が麻琴でも、これはゆずれないね」
「じゃー服部さんとすみれさんは何が好き?」
分からず屋の二人をほっとき、今の今まで、遅れてやって来た餡かけチャーハンを食べていた服部と、丁度近くで黙々と店の掃除をしていた砂皿に意見を求めた。
「う~ん、俺ぁラーメンよりチャーハンのが好きだけど、どれかって言われたら....」
「「味噌ラーメン」」
「ん?」
「むっ」
ぴったしにハモった服部とすみれ。
「げっ、お前と一緒かよ....」
「えー、げっってスナスナひどくない?別にいいじゃん。ちょ、今舌打ちしたろ」
「うっせーよ!つーかスナスナいう.....」
『キャああああああああ!!』
砂皿が言い返そうとしたとき、外から聞こえたのは一つの悲鳴だった。